社長の馬券を買いに行かされる

社長の馬券を買いに行かされる(渋谷編)

社長は会社経営と同じくらい、競馬予想の研究を行う人でした。言い方を換えれば、経営で得たお金を研究に投資していたわけです。研究の一環として毎週日曜日には競馬場に足を運び、馬券勝負を嗜んでいました。

競馬はテレビ中継ではなく、自分の目で実際に見なければダメだという確固たる信念があったのです。しかし土曜日は現地には行かず、その分翌日の検討に集中しておりました。しかし馬券を買わないというわけではありません。われわれ社員を束ねるだけあって、社長は根っからのギャンブラーでした。

■大金を持ち歩くリスク

馬券は社員が買いに行かされます。カバンに馬券代と携帯電話を入れて場外まで行くのですが、この仕事を好むタイプとそうでないタイプの社員がいました。この仕事を嫌がる理由の1つが、大金を持ち歩くリスクです。競馬予想会社の社長ともなると、買う馬券のケタが違うからです。金額も金額ですが、場所も場所でしたから、スリやひったくりに遭わないよう気を抜くことができませんでした。

私は渋谷の場外へ行くことが多かったです。新宿場外は狭くて人が多く、隠れて万札を数えたり、のんびり休んだりする場所がなかったから。というよりは自分のホームのようなところだったからです。

指示された馬券を買ってそのまま帰ることができることは少なかったように記憶しております。ハズれたらハズれたで次のレースで穴の買い目を追加、当たったら払い戻しを受け取ってくる。払い戻した金で、また追加購入などなど…。

なのでカバンと携帯電話は必須なのでした。大型でまだ普及していないころの携帯電話、そして大金。こそこそやっていたつもりでしたが、かなり目立っていたはずです。

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