後藤浩輝騎手

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悼むために

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土日の乗り替わり手続きが全て完了し、その内容が発表されたのは金曜日の夕刻だった。
次週以降も、乗るべき馬は沢山いたはずで、ある種の職場放棄は事情を慮らなければ大変迷惑な話なのだが、今はそう思う余裕もない程の無力感が、競馬界に沈滞している。

「何故」
その答えを即求めることは、とてもつらい作業であって、また無粋な人間のやることにも思うが、最近信じられないような不幸に数多く見舞われている日本人が、そのことをすぐに無意識のうちに忘れてしまおうとしているような気がして、本当に堪らない。
もっと、前向きな姿勢でゴッティーを悼むには、彼が我々に求めてこなかった「不遇への共感」について、後悔をしながらも、競走馬という経済動物が折角介在しているのだから、それに癒してもらいつつ、熟考するより道はない。

騎手稼業は、どう見繕っても個人事業者である。その上、命へのリスクが大きい。
トップに近づくにつれて、騎乗馬の質が上がり、無理をしなくてもいい勝負になる半面、走る馬ほど個性的で、それは思わぬ事故に繋がることがある。
感受性にも長けた後藤浩輝という男は、馬を深く愛する騎手だった。
何度となく、騎手復帰はおろか、日常生活にも支障が出るような大怪我を積み重ねた事は、もしかすると、馬が死んでしまわなかったことで救われてきたところが、多分にあったようにも思う。
今回の落馬事故は重賞競走で起こり、何よりリキサンステルスは死んでしまった。

木曜日に何があったのか図りかねるが、真面目で賢い彼は不条理を自分の中で処理しようとして、今回ばかりは耐えきれなかったのかもしれない。
所詮は個人事業者。その職種があまりに特殊であるため、非関係者にできることはとても少ない。
心の不安は馬にだってある。今週は休養できなかったのだろうか?これが、我々の今提示できる唯一の回避方法だ。
稀代の表現者に捧ぐ。合掌。



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