あまりに全体の展望に大きな影響を与える4歳のG1馬の存在
ソダシやヴィブロスは人気には応えられなかったが、意地を見せた。
ブレイディヴェーグやディアドラが立派だったということも言える。
ただ、距離延長で良さそうな馬を除くと、この後にコネクションのあるレースが限られるということもあって、秋のここで輝きを見せて、もうおしまいという馬が多いというのも特徴。
いかにもワンターンが合っていそうなディアドラ以外の存在が、圧倒的に駆けやすい条件であるから、逆説的に言えば、エプソムCの牝馬版みたいになった今の府中牝馬Sが、それなりのポテンシャルであると仮定すると、途端に有力な前哨戦のような立ち位置となって、連対の2頭は期待もできる。
距離延長で戦う形をとりそうにないカナテープが上々の結果を残したとて、ヴィクトリアマイルがそこまでコネクションが強くないとすれば、勝ち切ったセキトバイーストも押さえないといけない。
一方で、ヴィクトリアマイル上位組はいないということ以上に、有力馬の多い4歳勢の中で、同期のG1馬も今回は皆無。
総じて、テーマが分散化することで能力発揮に不安のある連中が、人気馬ほど崩れる傾向ならば、前言撤回に等しい、ヴィクトリアマイル惨敗の組が面白くなってくる。
エプソムC2着の翌年にこのレースを勝ち切ったサラキアの妹が、同じ東京の1800でなってくれるのではないのか…。
こんなところから穴狙いのサフィラに注目したのだが、G2勝ちの実績を作った馬は、5番人気ぐらいにはなる。
どうしようか逡巡しながらも、推し材料ばかりがあるこの馬を買う以外にはないという狙いが、ここまでの答えとなったのは、明確な理由があったからである。
アイルランドトロフィー2025 予想 - 出走予定馬の血統/成績/タイム
驚きの一変を見せるのはいつも東京1800という、サロミナ兄弟の個性
サフィラの血統
毎日王冠を2戦2勝、無敗の朝日杯ウイナーとなったサリオスの全妹。
このレースを快勝したサラキアや長い距離の重賞に適していたサリエラの半妹でもある。
同時にサリオスの様に1800で快時計を残したエスコーラが、サラキア、サリエラと全兄弟。
母はドイツオークス馬で、母母も当地のG1連対馬。
一族は日本でよく走り、ブエナビスタやマンハッタンカフェと同族。
シュヴァルツゴルトのファミリーが日本で高速の馬場をこなすのは奇跡に近いが、特に、このサロミナの仔は東京でよく走る。
走ったほとんどの産駒がここで好走しているし、重賞連対馬は皆複数回の好走実績を残している。
サフィラは関西馬であるから、参戦は限られるが、押し並べて、この場所では大崩れしておらず、小柄ない馬だけに無理強いすると壊れそうな雰囲気を醸す繊細さもあるが、京都のワンターンでは崩れていないものの、最初の東京となったマイル戦のアルテミスSで、チェルヴィニアの2着に力通りで入線したことが全てでもある。
この基本ラインに戻せれば、いつでも、立て直していける。
必ず、階段の踊り場というような、宙ぶらりんの時期があって、一見すると成長が止まったように映る時間帯が存在する特性を持つ者同士の組み合わせ。
とりわけ、完成まで時間のかかるハーツクライの産駒なのだ。
リスグラシューが強くなったのはこの後。
サフィラにはまだ時間が1年以上ある<クラブの規定で6歳春には引退するきまり>のだから、十分な実績作りは可能であろう。
ここから始まるのかもしれない。
姉と比べて1年早いが、2歳重賞で好走しているから、その流れも前倒しになるはずである。
東京に運んでくると、滞在の時間の長さなのか、輸送時間の絶対量が格段に増えることが影響しているのかいつも減らして出てくる。
一見、2歳のアルテミスS2着時がマイナスの4kgで止まっているから、その後からの印象であるが、身体を作っている過程とは言え、阪神の未勝利を使って、これがマイナスの8kgというのだから、ここから減るというのはそもそもよくない。
この上で、阪神ジュベナイルフィリーズも使って、クイーンCでもう一度賞金加算を目論んだところ、後に男勝りの大型牝馬として世代の上位を競うクイーンズウォークに対し、あまりに貧弱な印象を残したマイナス10kgで、実は、3歳シーズンのプランが大きく崩れてしまったのである。
桜花賞にも出られなかったというか、下手に、賞金獲得上位馬の回避などを期待しながらの出走意思を見せたところで、将来性まで考えた時に、無駄が起きることは目に見えていた。
オークスも消耗戦、ローズSは道悪。
内面が不完全なサフィラには、どうにも、2歳デビュー戦の時に期待されたところで、内ラチ接触の中で3着に頑張ったことから、歯車がかみ合っていないように映ったその流れは、凡そ、陣営の抱える悩みとそう大きな乖離もないはずだ。
アイルランドトロフィー2025 予想 - レース展開と最終予想
暮れに2勝クラスを勝ち上がり<G3で2着の記録があるから、未勝利戦のみの勝ち星でも、1級飛ばしの自己条件>、これが逃げ切り。
気を遣ったクリスチャン・デムーロの仕草は、何とも気の毒なそれにも映ったが、今まで見せたことのない独走のゴール。
この後に1600を使って、松山騎手へと手が戻った3勝クラスで、掛かるのは仕方ないが、その後にG2を勝ち切るのはさすが。
後に、クイーンSを快勝するアルジーヌに一瞬前に出られたものの、差し返すというか、タイミング有利の中で接戦の勝ち星を拾ったのは、そうした星の下に生まれた、いかにもG1で1番人気に推されたような馬のそれでもあった。
ただ、東京のヴィクトリアマイルはまた体が減った。
前に行くことはある程度できたが、前と2番手以下の勝ち負けに必要な末脚が、例によって、このレースでは使えなかったというのは、これで3度続いた。
オークスはデビュー戦のまだ絞り込む前の馬体重であったが、きっと、万全の対策をした上での作り。
追い込むのはよくないが、一定程度のプレッシャーが活力になることもある大舞台に適した仕上げでは到底なかったように思う。
だから、3戦とも失敗。
でも、今度はクイーンC→オークスの間隔以上に、調整期間が取れるし、京都や阪神で4走続けて使ったもほとんど減らなかった分まで戻しつつ、自身の走りに足かせとなるような妙なことにはならない。
使い減りしないというか、見た目よりはずっと自在なところのあったサリオスの見た目の雰囲気が、このまだ非力なサフィラに当てはまる。
動けないから、勝負所で前に少し離されるから、前にいないと勝負にならないが、京都ではキレキレではないにしても、34秒を切るような、早い上がりを使える馬のこと。
デビュー3戦目のアルテミスSで、自身最速となる33.4秒の決め手を、チェルヴィニアに食らいつく中で繰り出したのだから、万全なら、むしろ、東京がベストのようにも思えた。
姉は雨の府中牝馬Sを圧勝したサラキア。
最近は、サリエラの方が馴染みもあるが、目方通りであるものの、厩舎が違うせいか、まるで守備範囲が違った。
ワンターン専門家ら最後は覚醒の5歳秋としたサラキアは、いささか極端な変貌であったが、450kg台の馬は、今の牝馬のマイル戦線では少し小さい。
ニシノフラワーとかシンコウラブリイの時代とは違う。
これより20kg以上は小さいサリエラは、パワー勝負の中距離戦をこなせなかった。
サフィラは父違いの妹でも、同じイメージで育てるノウハウを持った池添学厩舎の瓜二つの馬という理解で、ここまで進められてきたアドヴァンテージをここは買いたい。
ディープとハーツクライでは成長曲線が大きく異なるが、ドイツ牝系の割に、ノーザンダンサー系が少し多めに詰まっているものの、英仏のその手の配合とはコンセプトが違うせいなのもあってか、面白いほどに、サリオス以外は晩成に出る。
サリオスだけが肉体的な強さから、筋肉量の豊富さがあったためなのか、2歳から速い時計を繰り出し、5歳秋にも毎日王冠をレコード勝ち。
全てが異例だが、同族のブエナビスタもよく考えるとジャパンCは、実質4歳時と連覇でも、正式には主要タイトルをグランプリ以外獲り終えた5歳の秋だった。
ここに来てよくなる可能性は、もうG2に手が届いたサフィラなので、アイルランドTと正式に名称は変更されたものの、姉より1年早く獲って不思議ない。
モタモタを快勝する要素が、前の捌きとすると、突然直線一気型へとモデルチェンジを図ったサラキアのように、ある種のジャスタウェイ化<主要レースを勝ち切れず、ようやく勝利した秋の天皇賞はアーリントンC以来1年半ぶりだった>を信じたとして、それを要求するにはちょうどいい相手関係に思える。
どれだけ相手が動けるかにもよるが、動きの制約が序盤進行の縛りにばかり、不安を抱える体重減の作戦よりも、より大胆な仕掛け方ができる。
主に、北村友一騎手が姉の本格化に携わったわけだが、運命の馬・クロノジェネシスに騎乗した有馬記念では、池添家の秘蔵っ子という枠から飛び出した父兼雄元師の愛弟子である、この松山弘平騎手が騎乗し、ちょうどデアリングタクトで名を上げた年だったということもあるが、絶妙な動き出しで、あわや、クロノジェネシスを呑み込まんばかりの強烈な末脚で2着に入ったことは記憶に新しい。
このサフィラにも一度乗ったことがある北村友一騎手だが、慎重な立ち上げが求められたローズSだったので、低評価もあったが、姉のような動きを一応求めたような運びで、当然失敗。
ただ、1年後にほぼ万全に作り上げることが可能な状況となったところで、東京に運んできたならば、姉のような動きをここで魅せる可能性は大いにある。
期待が持てる東京であるからこそ、ひどい結果しか残されていない分の評価下げに逆らう価値を感じた。
凱旋門賞を終え、矢作軍団がコントレイルの初年度産駒と、未来のBCスプリント制覇を目論む3歳馬を含め、大船団・フォーエバーヤングご一行でデルマーへと転戦することが発表されたが、この男をもってして、凱旋門賞は今年、手駒の体調不良により、大奪取作戦失敗に終わっている。
行かないと始まらないことを理解しつつ、コントレイル産駒と自分の顔を売りに走る姿は、社台グループも真っ青な商魂の逞しさ。
凱旋門賞以外には、ずっと足踏みであった日本競馬が、少し動き出して、まだまだ挑戦そのものは足らなかったが…。
思えば、サラキアが大覚醒した府中牝馬Sで、矢作厩舎の無敗のオークス馬であるラヴズオンリーユーが、まだ燻っていたことを、皆さんは覚えているだろうか。
以降、有馬で引退するサラキアに先着は出来なかったが、これに食らいついていった結果、古馬混合2つを含むG1の3勝の記録を残す、牝馬としては歴史的なキャンペーンに繋がっていった経緯がある。
今年はボンドガールもその類のように思うが…。
勝ち切れなかった同期の面々が、なぜかたくさん集まって、毎日王冠で大敗を喫したチェルヴィニアに対し、これからは私たちの時代よと息巻くならば、このサフィラが最も相応しい、まさに最右翼の存在になるはずである。
女性首相がいよいよ誕生しようというのに、一部界隈を除いては、あまり歓迎ムードではない状況は、政権政党を寡占状態にした我々にも原因があるとしても、この牝馬たちが輝く未来には、遅まきながらにでも、いつまでも期待したい思いがあるのだ。