筆者だけでなく、出走している全てのレースを多くのファンは見ているわけだが、いつも、道中はここにいて…、という確認作業までしているわけではない。
しかし、明るい栗毛のアーバンシックは、どういう結果となっても、道中でいつも目立つから、誰でも目視くらいはしている。
白毛より目立つわけではないが、似たような見た目の芦毛の馬と同じように、茶色い毛色をしていないから、顔も派手だし、確認するまでもなく、多くの観戦者は自然な形で、その存在を認識してきた。
ところが、暴れ馬まくった3歳秋を境に、この馬はすっかり平凡な馬に成り下がっている。
タイプ分類は正確には難しいのかもしれないが、やる気そのものを失ったような敗戦も多いから、見た目に反して、単に尻すぼみの傾向であるから、昨秋の天皇賞では、14頭立ての11番人気だった。
しかし、若き才能・プーシャンがそれとなく走らせてみると、先入観がなかったのもよかったのかもしれないが、人気馬マークのスタンス<実質的には、そうしたポジショニングの方が馬も走りやすいという総合的判断が優先されただけでもある>から、伸び負けというほどは負けていない5着。
この際の馬体重である514kgというのは、デビュー当初とあまり変わり映えしない数字ということもあって、いかにも成長していない印象を与える一方、どんな馬でも、大きくなるとは限らないという先入観こそが、この馬の伸びしろを奪ってしまった一部分のような気もする。
豊かな才能の持ち主とは言え、どう見ても窮屈なコーナー4つ以上の立ち回りを歓迎するようなタイプではないから、そこで香港を含めて、13戦した中で11度もこの手の小回りや大箱でもテクニックが必要な舞台でもある東京2400のようなステージ挑んでは、多くの敗戦を重ねてきたのだから、気の毒と言えばそうなる。
ノーザンファーム産のクラブ馬の宿命か、必ずしも適鞍でなくとも、準備されている中で、与えられた環境で結果を出さなければ、組織内の全体ランクも上がらないから、立場は苦しくなるのは仕方ない。
現に、京成杯でダノンデサイルにぶち抜かれたところから、菊花賞でしか先着できていないことが、事の真実そのものを指し示している。
菊花賞では、右回りでまともに走れないダノンデサイルは、鞍上の徹底したインラチ沿い走行で、不思議な展開で、捌きもうまくない大型馬とあって、進路を奪われただけの6着。
まともに走っていないが、敢然圏外から猛然と追いかけてきた姿は、あの雨馬場の宝塚記念でも目にした、ダービー馬らしい底力を感じさせる内容。
この馬だって、そこまでは大きく進化していないが、5歳になって、多少はまともに右回りの直線勝負で真っすぐ走れるようになっている。
菊花賞当時にそれができるはずもないし、ダービー以来の立ち上げが非常に難しい一戦。
真価を問われた有馬記念は、違った手法でアプローチを仕掛けてくる中山職人の十八番である奇策の先行で、ダノンデサイルも頑張って隊列の乱れを生んだが、勝機があったはずのアーバンシックは、出負けのリカバリーそのものはルメール騎手は完璧だったにも掛からわず、ドウデュース先輩さえいれば…、という恨み言が聞こえてきそうな、若馬らしい捌きの不完全さで、不発の結果に終わった。
何も、ルメールが馬を理解していないわけではないが、日経賞でも、スパートのタイミングで苦心しながらの直線一気を見せたとはいえ、菊花賞がいかにもフロックという結果だった3着。
中山のマジシャンは、別の馬で逃げていたのも印象深いが、それは本筋ではないか。
以降、秋の天皇賞を除けば、まともな状態で走れていない、というよりも、闘争心そのものを失ってしまったような金鯱賞のような内容から、ここも評価がかなり落とした状況での走りにもなるだろうが、藁にも縋る思いで、非常識な斤量設定を免れた中でのG3戦が、久々の2000Mのロングストレート戦。
中京も直線自体は長いものの、香港で変な捲りをした後の一戦で、鞍上も変更されていた上に、スローの瞬発力勝負に、後に札幌記念で完勝のシェイクユアハートの強さが、末脚の鮮やかさが際立ったような特殊な展開で、そもそも、立ち上げに慎重だった武井調教師も、三浦騎手に無理なお願いを出来るような状況ではそもそもなかったはず。
ついでに、肺出血を発症したとの情報もあったから、最初から負けゲームであった。
現に、いくらか余裕を持たせた馬体でもあったから、再度の香港遠征や適鞍を海外に求める、最近の社台のトレンドで何とか一発かますためのステップが、うまくいかなかっただけ。
菊花賞も皐月賞も、件の天皇賞も、得意不得意関係なしに上がりがメンバー最速でもないし、では、うまくいかなかったレースでもある京成杯2着時は最速、うまくいったセントライト記念は、コスモキュランダのように著中で動かなかっただけの記録。
どういうわけか、この馬も有馬の辺りで馬具に工夫を凝らしてから、大いに立ち直ったから、アーバンシックだって、上がり勝負必至の舞台で、キレ味自慢ではないが、豪快な競馬でたちまちの内に、シランケドのような決め手を繰り出しても不思議ではない。
上位2頭と少差で数字上は上だったという天皇賞の32.2秒の決め手を繰り出せるなら、徹底直線勝負のシランケドにクビ差交わされただけのアーバンシックにだって、ここでもチャンスがある。
あの特殊な天皇賞の展開からも、そうしたものが恒常的に安定して繰り返される条件である新潟記念で、菊花賞馬は復活するのだ。
奇遇なことに、シランケドに負けた馬がタフな展開の菊花賞を勝っている。
ここで少し、ルメールさんを驚かせてみようではないか。
あのおじさん達のように。