実は、これらマスターソアラと合わせた3頭は、昨秋の東京で同じレースでの初陣を迎えたライバル同士でもあったのだ。
ここではダミアンが乗ったダノンプレサージュ、クリストフで人気になったシニャンガも新馬戦から、見せ場十分であったし、理想的な運びであったが、今に至るまで、出世が見込めそうな路線に乗れていない。
また注目すべきは、秋のトップシーズンの新馬戦であったから、マッチングしやすいという意味での、理想のコラボだったはずで、今回も札幌に集まった両者は、例の札幌の一戦では用なしと、単なる観戦者にまわっていたが、それもそのはずである。
尋常ならざる仕掛け人たる男の手を借りるほどに、勝ったダノンプレサージュは内面から壊れかけていたのであるから、短期免許の出稼ぎ者に出番はない。
とはいえ、断然人気で新馬のパートナーとなったレーン騎手は、喜ばしいことと同時に、あれだけスマートに好位抜け出しをしていた彼女の危なっかしいレース内容に、複雑な感情を抱いたに違いない。
すぐに勝ち上がれたが、まだ未勝利1勝のみのシニャンガも、順調さに欠ける一頭。
そうしたライバルたちの動向に比べれば、新馬戦で、
61.1-33.7
の極端な後傾ラップを大外からぶち抜いてきたマスターソアラが、直後のクイーンCでもあわやデビュー2連勝を決めかけたという4着にも、納得感はある。
デビュー戦は華やかなものだから、2戦目以降は、ほとんどが己との戦いになる馬ばかり。
マスターソアラは、それこそ、シニャンガと同じような順調に使えない1頭に違いないが、クイーンCが、
58.6-34.0
という、クラシック展望の各馬にとって、様々な能力を総合的にジャッジするために有効なデータを集めるということでは、桜花賞で通用のジッピーチューンと1番人気だったジュベナイルフィリーズ2着馬のギャラボーグなどの即戦力発掘に役立った結果でもあったと同時に、オークスで僅差の攻防を落としたドリームコアのことを踏まえても、いくらか変わり者のヒズマスターピースには先着を許したものの、前を呑み込もうという勢いを見せていたマスターソアラも、坂が上り切って、もうひと押しが必要な場面で、新馬戦から継続騎乗した武史騎手も少し心配になるほどに、前に3頭を残し、力強さが失われたようなフォームになってしまった。
大きな故障を予期するものにも等しいそれは、休みを要するものであっても、綻びは最小限にとどまったという、肉体的に未熟な面がもろに死角として出ただけのものだったのかもしれない。
見せ場十分の2戦目でも、初陣のそれとは、アクションの大きさが、ゴール前であまりにも対比すると、著しい落差が生じたのだから、それでも重賞4着だったクイーンCで、彼女なりの成長や真価が見られたということでもあった証左とも言い換えられなくはない。
危険な支持の仕方であるが、キャリアわずか2戦の馬は、どういう風にも買われる。
あの日のライバルたちが、再び、眼前に現れ、あの新馬戦の接戦で再会を誓い合ったかのようなシーンが再現されたとて、不思議はない。
少なくとも、ダノンプレサージュは芸風が怪しく変化したようで、本格的な先行抜け出し型としての、新馬戦で見せた好内容を、良くも悪くも雑な進化の仕方をしているような感じで、実はああやって、やる気を引き出す形でモチベーションを上げさせると、いい方向に変化する可能性があったりもする。
新馬戦単勝1.5倍の馬が、妙な過程を辿ったとしても、最後は強い馬になっているケースは、よく見られるパターンである。
走る気は少しコントロール可能なレベルで2戦を終えたマスターソアラは、480kg前後での出走とは限らない、大いに成長期の3歳春、夏を経て、どういう体で出てくるのかも期待であるが、このインゼルの勝負服と言えば、真っ先に思い出すドウデュースも、2歳の無敗王者でありながら、本格化は、晩成の鑑あったイクイノックスより後の5歳シーズンであったわけで、こんなところでたとえ躓いたとしても…、という楽観視で、ここはざっくりとしたゆるい狙い方で、先物買いという方針でいくこととする。
そういえば、札幌リーディングに絡み、横山武史騎手の不参戦も考えられたが、前年から土日の開催が入れ替わった名物G3には騎乗するようなので、蛯名調教師やオーナーサイドらが、出られるかどうか不透明な馬に、除外も見込まれる立場で、オファーそのものをかけていない可能性もある。
同日はコリアCも開催されるから、ダートにお手馬も多いリーディング級には、いくら才能を買っている馬であったとて、セントウルSの裏でもあるから、父の盟友でも、無理にはいきづらい。
大野拓弥騎手の指名は、その中でも、最善手の一つであろう。
筆者も少し、G1で輝いていた頃の彼の姿と別の渋みを帯びた本質的な技術面の上積みに、ここ数年ほど、競馬で見かけない日も多かったが、とくに、末脚に見どころのある馬の持ち味を引き出すことにかけては、今まで以上に引き出しを増やしたという印象を持っている。
アラタがベテランになってから福島記念を制したのも、何度も馬が走ったことのあるコースとは言え、いかにも晩秋の福島…、というタフなコンディションで前がやり合うことを読んで、溜めに溜めて、直線で爆発させたというもの。
インで溜めて見せた浜中騎手の札幌記念も見事だったが、横山家と共同開発の晩成型を、重賞勝利へと導いた結果は、芝でもダートでもよく見てきた光景。
もしかすると、この関東のベテランを確保したことがきっかけで…、という流れが、何だか、アラタっぽいということでも、ここは十分に推せると踏んで、あとはパドックの時間を楽しみに、秘める豊かな成長力に期待するのみである。