美浦村主催と思われるファンフェスタに登場した際、眼帯をつけて、痛々しい姿を見せていた津村騎手は、芝の塊が飛んでくる不運もあるくらいで、春の勢いが少し陰っている印象もある。
付き合いも長く、いかにもタイプが似通った田辺騎手<まさに、名手・柴田善臣の正統な後継者といった2人、こちらの大先生とみんな仲良しらしい>が、昨秋の怪我で骨を固定するために埋め込んだものを除去した後の存在感が、飛ぶ鳥を落とす勢いの岩田望来、手綱冴えわたるダービージョッキー・松山弘平両騎手らにも、全く見劣りしないくらいの快調ぶりも手伝って、弟・妹弟子の躍動も重なり、すっかり平場で魅せるくらいの存在感しか示せていない状況に戻ってしまっている。
彼これ、東京開催以降の夏競馬を経た今までの勝利で、オープンクラスの記録は、実は、新馬戦から連勝の期待馬・ルークウォームと制したダリア賞を除けば、カウスリップとアイビスサマーダッシュから継続騎乗で実力勝ちを決めた稲妻Sだけ。
タイプから言って、新馬戦などの2歳戦で需要のある騎手ではあるが、主要路線にほぼ全方向に期待馬を抱えたことを示す躍進の重賞5勝の勢いにはないから、ここで存在感を、改めて、キレイに乗れる騎手であるということを大舞台に繋がるビッグレースで示しておきたい。
スプリンターズSは惜しかったが、ここらで、最後は勝ち切れることを見せつけないといけない。
主戦を務めるリアライズシリウスは、恐らくは、長いキャリアの中でも手駒でかなり優秀な部類の上の方にいるだろう才能。
もしも、彼がG1を勝てなかったとすれば、G1を勝っている状況で、彼の日のカレンブーケドール<主な勝ち鞍・スイートピーSということを皆忘れてしまったくらいの活躍馬>を駆った頃と、同じスタンスで絡めないと踏まえたら、この時の後悔を、引退する時に語るのかもしれないというほどの馬である。
ダービーを改めて映像回顧したが、マイケル・ディー騎手のメイショウハチコウが、絶妙にミドルラップに近い1000M・60.7秒で行ったから、もっと前進気勢で粘り込みを狙いたいリアライズシリウスは、津村騎手の判断でもっと前に行くことになったのだが、そこに至るまでに、いくらか11番枠から出負けの位置取り争いでの、いくらか厳しい部分があって、最後はペースの割には、皐月賞で外からいい位置をとって、理想の番手抜け出し<=ほぼ、相手が他の馬ならスピードで押し切れたという内容>を決めかけたという時とは、距離不安の分だけではない、チグハグ感があった。
現に、津村騎手はアクシデントで、騎乗が少々危ぶまれたりもしたほど。
自身は万全ではなかったのは確かだが、道悪の朝日杯で何もできないままで、不安が全て的中した時に、連戦でも耐えられそうな前段を整えられなかったことが、幾分、反動という形で、皐月賞とのコントラストを変な形で生んでしまった可能性も頭をよぎった。
二冠達成のロブチェンも同様に、少しパフォーマンスダウンだったが、もう少し気のいいタイプのリアライズシリウスは、もっと辛かったのかもしれない。
ダービーに出たくても出られなかった、きさらぎ賞勝ちのゾロアストロは、新潟記念で骨っぽいライバルをねじ込んで見せた。
それよりも強いと認知されるタイミングが早く、こちらはクラシック本番でも見せ場十分のリアライズシリウスが、ここでこのメンバー<古馬でタイトルを持つ馬がいないどころか、G2勝ちの馬も古い記録がある復活したけど…、というエルトンバローズのみ>に、休み明けのレースも苦にしないタイプでもあるのに、ひどい負け方をするようでは、世代のレベルはついに疑われる。
時計勝負になっているということは、考え方次第では、どんぐりの背比べという見立てもあっていいわけだが、抜け出した馬が存在しないということを、二冠どころか、2歳時からG1馬になっていたロブチェン号が、ありのままの現状をこの秋も示したばかり。
ロブチェンには自分の中の敵があるというよりも、父ワールドプレミアの先入観に振り回されているという哀れさも、いくらか、苦闘を繰り返す原因になっている向きがある。
ここに出てくれば、きっとまず間違いなく、リアライズシリウスに再度先着である。
皐月賞の結果に関し、距離延長での面白みを感じさせないトライアルの結果からも、自分の進むべき道を環境を整えてきた上に、あるべき姿をもっと現しやすい条件に出てきて、見どころなしとなれば、ライヒスアドラーの上昇度に危険性は残るとしても、ここでやられるイメージまでは湧かない。
あの高速皐月賞は、将来性を確約する類の好結果ではなかったかもしれないが、ダービーで不発でも、いずれは自分に見合った場面で、少なくともその最初のレースでは、十分な実績を持って、余裕を残した形でも勝ち切れるだろうことを類推するために、最も重要な実績を生み出した戦いであったはず。
また、ライバルたちと戦える。
2012年以来、14年ぶりとなる毎日王冠3歳馬ワンツーは、時勢の流れからも、ほぼ確定的な雰囲気にある。
津村明秀にとっても、無様な姿は見せられないレースとなるだろう。