2018年 新馬戦レース回顧

JUST競馬予想ブログ

新馬回顧<6/16・17>

読了までの目安時間:約 3分

 

3週目にして、レパートリー増大。この時季難しすぎる決着の多いダート戦と、函館競馬が開始。

早速、人気馬が伏兵の引き立て役に回るシーンが続発した。

土曜の中央場所ではダート戦2鞍。

阪神1200は、ダート戦では珍しい牝馬の叩き合いを、ヘニーヒューズ産駒のチュウワフライヤーが制した。

評価の低かったサウスヴィグラス産駒とのマッチアップは、何となく理解できなくはないが、それ以外は難解そのもの。

道悪で高速決着必至だった東京1400は、人気のニシノコトダマを置き去りにした単勝90倍弱のパイロ牝駒・ラインカリーナの強さばかりが目立った。

1:25.3で2着馬に1秒差。他の馬にはこの時計で乗り切るスキルが、まだ備わっていなかったということだろう。

函館は土日とも芝の短距離戦。

初日は良馬場の下、1000Mで人気のロードワンダーが行き脚つかずの展開を味方につけただけには思えない逃げ切りで、タニノギムレット産駒のウインスピリタスが57.4の好タイムで勝利。

日曜もそっくり。人気馬が流れに乗れない中、離れた2番手から直線よく反応し、前を捉え切ったエイシンフラッシュ産駒のナンヨーイザヨイが快勝。

これがレコードと僅差の1:09.4だった。完成度とタフさも問われた。

一方、本州組は2世代目となるクラシックサイアーの取捨で、明暗が分かれた。

オルフェーヴル×ショウリュウムーンの良血・ショウリュウイクゾが人気に応えた阪神マイル戦は、勝ち馬が序盤は流れに乗れずも、直線で馬込みが内外に二分されたところをつく競馬で、難なく抜け出してきたので、ツキもあった。

東1600、好発でこちらもツイていたはずのロードカナロア産駒でダノンリバティの半妹・ベルクワイアは、この系統らしい正攻法の抜け出しで、人気に応えるような競馬をするも、最後はイン強襲のディープブリランテ産駒・トーセンギムレットに競り負けた。

使い出しが早かったのではないだろうか。

因みに、ロードカナロアは1400戦でも人気馬・ロードアクアを送り込み、こちらは同じような競馬で快勝している。

関西馬だから、ということではない。ルメール騎手が冴えないからか…。

 

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函館スプリントS -回顧-

読了までの目安時間:約 3分

 

土曜日の段階から、1200M戦は特に、極めてハイレベルの時計が頻発しており、昨年ほどではないにせよ、かなりの高速決着が予想されていた。

これはダメだな。

しかし、セイウンコウセイはGⅠ馬の意地を見せるように、ならばここは、シープスキンチークピーシーズの効果覿面で、隣のダイアナヘイローがアレレというようなスタートだったのとは対照的に、カンカン泣きは苦手な馬群からの抜け出しに対応させられる展開では想定されるという雰囲気の池添騎手のプッシュから、外にいるはずの速い馬がワンスインナムーンだけしかいない状況で、最後は気合い勝ちの単騎先行。

直線も粘り強く、後続をきっちり振り切って見せた。

ナックビーナスは上手に乗れてしまったというか、相手なりの競馬が身上の馬で、前走の厳しいところからの抜け出しで評価が上がっていたが、54の牝馬がなかなか連にまでは絡めない傾向が強まった最近、惜敗の多い馬らしい直線の今一つの反応であった。

出来とかの問題ではないだろう。

セイウンコウセイは昨年のこのレースで、1:07.3で4着。

今年はペースを自分で握り、言われるほどの流れにはならずに、1:07.6で勝利。

芝馬になって久しいヒルノデイバローでも、この辺りのタイムであれば、昨秋の京都で乗り切れた対応可能なレベルであり、渋とく伸びてきた。

この馬は四位騎手のお手馬。

生涯最少馬体重ながら、失うものはない7歳馬の意地もあったか。

ワンスインナムーンは歯痒い。

行き切ってもよかったような展開に思えたが、1200専門の快速型でもない。

だからといって、5歳牝馬の更なる飛躍のために役に立つ敗戦ではなかった。

ダイアナヘイローは振れ幅が大きい馬だから仕方ないが、小柄な牝馬に短距離重賞は厳しいのかもしれない。

急成長したところで、自分で時計を作れる馬にはならないだろう。

 

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ユニコーンS -回顧-

読了までの目安時間:約 5分

 

スタートは相変わらずだったが、重馬場からついに良化することのなかった馬場を味方に、平均ラップの展開を中団辺りからゆったり押し上げ、馬のリズムを崩さないように乗るお利口なデムーロさんの競馬で、直線はまるで手応えが違いという内容で、かつて独走のユビキタスが記録したレコードタイムをわずかに更新し、1:35.0のレースベストタイムで完勝したルヴァンスレーヴ。

パドックから放たれていたオーラは、馬体がしっかり絞れたというだけの印象ではなく、昨年の無敗街道の中で、我々に与えてくれた青天井の才能を秘めた一流馬のそれであった。

中央馬にとって、せせこましいといっては良くないかもしれないが、小回りの園田経由でジャパンダートダービーを目標とする以外では、ドバイに行く気がない場合は、2歳時に北海道か川崎で賞金加算をしてしまうと、その後のローテを組み立てるのは難儀で、尚且つ、大変な斤量を背負わされるリスクがある。

オープン特別にGⅠ馬が…、というのは、昨年ここで人気になる前に芝のGⅠで結果を出したリエノテソーロもそうだったわけだが、彼女との違いは、同じNHKマイルCを目標の一つに掲げることなく、ひっそりと中山の酷斤戦を無駄にすることなく、ステップレースにして、正味半年の調整期間を作れたことが、近年の1番人気馬と決定的に違ったのだ。

結果はこの通り。

かつて、シンボリクリスエスもそう、同系のブライアンズタイムの産駒が3歳春にこれ以上ないパフォーマンスを見せ、ファンに感動を与えてきた。

シンボリクリスエスと同期のタニノギムレットなど、批判を承知で使えるレースを全て使って、最後にはダービーを制した。

裏街道のシンボリクリスエスの反省を、その後、やはり皐月賞から使った方がいいといって、その孫でダービー制覇に繋げた藤沢調教師の勉強の機会に、このロベルトの血は一躍買っている。

ファンシミン系は、3歳春GⅠ連覇のラインクラフトに、その近親であるアドマイヤマックスが2度GⅠで快走を見せたように、狙うべきは春のレースという傾向があったりする。

それらのことは既に予想の段階で記していたが、今回改めて証明されたのは、

「重賞馬とその他との差」

それと予想の段階で、ローテ的にも問題のない園田の兵庫チャンピオンシップ組がいない点が、ルヴァンスレーヴに大きく味方するのではということを書いたのだが、そうではないローテで人気になった馬が、むしろ、芝のようにダービーを目標にするわけではないから、今後を展望するために使ってきたとすると、それはどうしたって、フレッシュな馬の方が伸びていくに決まっているのだ。

直線の伸び、というか、勝負どころの4角手前辺りで、主要レース経由の人気馬の手応えが怪しくなったのとは、あまりに対照的である。

代わりに、何となく立場が急に上がりすぎてしまったような面もあるグリムが失速。

完成度やスピード能力に不満はなかったが、スケール感が今回はあまりなかったような直線だった。

グレートタイムや伏兵・急上昇中のエングローサーとて、勝負を懸けた直線スパートで、共にロスなく回ってきた2頭。

それで上がりのタイムは、より鋭さを出したエングローサーと勝ち馬で全く同じ35.2秒。

どうせ推すなら、まるで人気のない立場で先行粘り込み、例年なら勝ちタイムになる程度の時計で乗り切ったホウショウナウ<ゴールドアリュール>、逃げたセイウンクールガイ<ヨハネスブルグ>らの、持ち場での躍進に期待した方が良さそうだ。

少し期待したコマビショウは東京が合っていそうな気がしたが、意外と晩成に出やすいエンパイアメーカー産駒だから、1:36.1で走り切るのが精一杯だった。

 

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新馬回顧<6/9・10>

読了までの目安時間:約 3分

 

雨が降ったり、レースの前になるとすっきり晴れ渡って暑くなったりと、梅雨時らしい、安定しない空模様に人間が戸惑う季節になってきた。

そんな中、不安定さ満点のジャスタウェイ産駒×ミルコ・デムーロという組み合わせでデビューした、土曜阪神芝1200Mでの新馬戦における主役・アウィルアウェイが、早速やってくれた。

この距離で何だかスタートは不安だなと思って見ていたら、案の定の逆噴射スタート。

ところが、対抗評価のユタカ騎手の馬も立ち遅れて、そこからの前を追いかける脚の差で、ほとんど、レースの趨勢は決まってしまった。

序盤こそ、騎手の叱咤に反応できていなかったが、3角の辺りではもう、その後が見えているような手応え。

結局、2着に2馬身差をつけて快勝。リアルインパクト、ネオリアリズムらの姪にあたる血統馬で、しばらくは注目の存在となる。

東京1400戦はスローに流れ過ぎて、返って、先行馬には苦しい展開になり、伏兵のレノーア<スクリーンヒーロー牝駒>が、決め手を発揮し、デビューウインを決めた。

どの道、全馬次戦を見ないことには評価できない組。

阪神は日曜日のマイル戦にも大注目の良血馬が登場。

ロードカナロア×シーザリオという配合の牡馬・サートゥルナーリアが、好発を決めて、結局は好位のイン追走、進路選択に迷った直線になるも、抜け出す時の反応はまるで違い、それなりに競馬をして、1.1倍の支持にしっかりと応えた。

デムーロ騎手にどのようなテーマがあったかは計り知れないが、前日の期待馬と比べ、兄にも乗っていたこともあり、良さを引き出しつつ、悪い面にも気を払った騎乗が、返って、窮屈な展開を作っただけで、本当は馬なり独走だったように思う。

東京でも1800戦から、期待馬・アガラスが登場。

ブラックタイド産駒にしては、早い段階の断然支持にやや抵抗感もあったが、直線は完全に独壇場。

古馬になって見違えるように成長する馬は少ないハニードリーマーの系統だから、血統の持つ傾向と生まれながらに持ち合わせたスピードを活かせる気性も考慮して、納得の結果ということになる。

 

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マーメイドS -回顧-

読了までの目安時間:約 3分

 

トーセンビクトリーの浜中騎手が、しれっとというか、策を考えるまでもなく、スローの逃げに出たように見えたから、これはうまいことハマったなと思って見ていたのだが、そんなに甘くない、超波乱が通常のマーメイドS。

まさか、外差しの印象が強いアンドリエッテがインを強襲し、伏兵陣を代表して、本当は雨が欲しかったはずの馬が、こうして激走するような展開になるとは…。

来そうな馬が来たというか、消えそうな馬は逃げたトップハンデのトーセンビクトリーを含め、みんな消えたレース。

思えば、アンドリエッテはチューリップ賞2着馬。

ワンブレスアウェイも、1年前までは連続連対を長く続けて、その後の飛躍が大いに期待された馬である。

おしくらまんじゅうのような勝負どころの争いから、スムーズに抜け出してきたアンドリエッテは、前走のパールSから斤量一気に4kg減の51。

雨が降っても、そうとはならなくても、この展開であれば、きっとこの馬が上位争いに加わっていただろうということが、何となく想像がつく、初めて目撃した彼女の勝負強さであった。

良馬場で行われた影響はあったとはいえ、1:59.1では、明らかに重賞としての質は高いとは言い難い。

しかし、自分の武器が自身のキャリアではなく、このような斤量面のアドヴァンテージだった時に、大きく動きが変わる馬もたまにいる。

中央場所という要素がそこに加わることで、単純に勢いに勝る条件戦好走馬にだけチャンスが現れない、こういった小難しい結果が頻発してしまうのがこのレースの特性。

ほとんど自分の競馬に終始して、力を出し切ったようなところもあるミエノサクシードや、1角までの位置取りがスムーズではなく惜しかったヴァフラームなどが、2馬身も前と離される力関係でもない。

コース取りは全てだったが、斤量の盲点は最大の取捨のポイントだということが、はっきり見えた一戦だった。

 

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エプソムC -回顧-

読了までの目安時間:約 5分

 

結果的に見ても、道中の情けないダイワキャグニーの動き一つとったところで、思い切って差す形を変えようがないサトノアーサーの方が、競馬はやりやすかったということだろう。

想像以上に悪化した馬場に加え、日曜日になると、やや異常なほどに外差しバイアスがかかっていた。

重賞での重馬場の経験もあるサトノアーサーは、勝ったこともある重馬場が苦手だとしても、こなせないわけではないことは証明していた。

同時に、4歳馬天国のこのレースに、やたらと上がり目のあるフレッシュ古馬がいたことで、狙いをそちらに転じたファンも多かったが、結果として、道悪の中にも様々な適性があるといっても、アドマイヤムーン産駒のハクサンルドルフには関係なく、その適性だけで自慢の決め手を発揮したわけだから、この馬だけが、まともに走った古馬。

しかし、サトノアーサーにしては自分のイメージ以上の競馬ができたことで、伏兵陣の出番は期待値の割には大きく膨らむ直線にはならず、大本命惨敗の中で、軸馬は当然のように4歳という傾向は、今年もしっかりと踏襲される平穏な決着になった。

最初から強かったサトノアーサーは、良馬場で置かれるだけではなく、道悪実質初挑戦のきさらぎ賞での完敗2着を機に、何だか扱いにくい馬になっていった。

かくいう筆者も、2歳時から目立つ好馬体に目を惹かれた彼のファンなのだが、以後、全く冴えない置かれるだけのディープという切ない内容の結果の連続と、その割に、彼の前で入線する馬がだいたい世代のトップホースというギャップにより、大勢のファン同様、隔靴搔痒の気分に苛まれ続けた。

思えば、道悪で結果を出した冬の洛陽Sにしても、ムーア騎手が測ったような差し切り勝ちで、この時は、超安定勢力に育ったグァンチャーレを競り落としただけで、モタモタ感も全く解消されていなかった。

前走も休み明けとはいえ、特段、高速の上がりになったレースではないのに、いつも差し損ねの3着。

このままでは…、と思ってしまうのも仕方がない状況であった。

ところが、3週間して馬場が大きく変質した今回、大本命だったはずのダイワキャグニーが、自慢の機動力も決め手も、最初の200Mくらいでエネルギーを全て奪われるような、ちょっと前に起こったマチカネキララショックを彷彿とされる残念なレースぶりに終わったのとはまるで対照的に、母リダウツチョイス×ヌレイエフ×マニラ×リヴァーマンという、配合だけは道悪巧者のバックボーンを味方につけるようにして、対抗馬・サトノアーサーが、今度は自分が主役になって、堂々の正攻法で勝ち切ったわけだ。

思ったのだが、こういうことは馬場がどうこうというより、時計が遅くなれば当然起こり得る話で、例えば、春の天皇賞などが、昨年と今年でシュヴァルグラン以外まるで質の違う馬が来たように、時計や展開が下の状態も含めて、大きく違ったものになることで、各馬の本質的な適性が、よりクローズアップされるような面があるのだろうと考えられるのである。

走り方からして、まるでお呼びではないという感じのサトノアーサーは、1600、1800における持ち時計はまるで平凡なものしかない。

機動力もあるダイワキャグニーには、スローの瞬発力勝負に対応できる自在性がある一方、ダービーでの結果や重賞成績にも反映されるように、手先の軽い走りでこなせる条件への適性があまりにもあった死角も、実は、皆がわかる範囲で明示されていたのだ。

それらの適性の差が、こういうタフなコンディションでははっきりとした違いとして現れる。

その意味で、互いの魅力的な能力をどちらが先に手に入れるかで、今後は変化していくことだろう。

あまり、高望みできそうな感じもしないのも事実だが…。

 

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新馬回顧<6/2・3>

読了までの目安時間:約 3分

 

いよいよ、2016年生まれの新芽が、中央のターフに顔を覗かせる時期に入った。

2015年生まれの若駒による春の祭典は、感動のうちに終幕し、未来という名の展望すべきステージに向け、各陣営の気持ちも切り替わった。

今週は、初お目見えの新種牡馬は量産して登場という感じではなく、既存の実績のある馬の仔が活躍した。

今季最初の新馬戦は、例によって阪神から。

東西とも1:35.9で決着するマイル戦の競馬で、なかなか見どころはあったが、西の勝者・ジャミールフエルテは、ルメール騎手が意識してのことか、ややスタート合わずの追走から、好位のインにいつの間に押し上げ、直線は内の狭いところから抜け出す勝ちに出る競馬で快勝した。

オルフェーヴルとはいえ、味のある競馬だった。

東京の牝馬戦は反対に、人気馬の逃げ馬と正攻法の外追い上げの2頭の争い。

上がりの速い競馬に持ち込み、かなり重厚な配合のダイワメジャー産駒・ジョディーが逃げ切った。ウインゼノビアも外からは伸びづらい馬場を考えると、上々の内容。

案外、この3頭はやってくれそうな予感がする。

日曜日は土曜戦に輪をかけて、更に高速決着が頻発。

阪神1400は波乱になるも、うまく立ち回ったシングルアップが、1:21.8の快時計で後続を突き放した。

キンシャサノキセキ産駒でコランディア系の良血馬。仕上がり早の馬も多いが、強烈な内容のキャンペーンであった。

一方の東京1600も、1:33.6で決着。

ディープ牝駒のワンツーながら、現時点でのランクは、先に抜け出し楽勝のグランアレグリアが遥かに上だろう。

勝ち馬がトレンドになりつつあるBR系のタピットが母父。2着馬は南米血統を母系に持つ。

伸びしろが失う危険性も孕んだ一戦の価値は、春を前に判然とするはずだ。

東京では芝1400戦も行われ、断然人気のロードカナロア牝駒・アカネサスがモタモタしながら、最後は前を捉えて勝ち上がった。

完成度はまだまだといった雰囲気で、こちらは成長力があるか。

 

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安田記念 -回顧-

読了までの目安時間:約 6分

 

炎の連闘が炸裂。

久方ぶりに勝った馬というのは、安田記念では4歳時のウオッカがいる。

古いところでは、同じく連闘で岡部騎手を背に鮮やかに差し切り勝ちを決めたバンブーメモリーや主な勝ち鞍ダートの準オープンのヤマニンゼファーが下剋上を成した例がある。

それら全ての共通するのが4歳馬だ。

今は58を背負わされるから、かつて57で出られた時代のバンブーやヤマニンのような存在は、まず皆無に等しい。

厳しいローテであると同時に、馬に課される負担が二重にも三重にも増えること以上に、相手が海千山千の安田記念。

早々は勝てないタイプの馬が、見事にGⅠ勝利である。

驚きは意外とない一方で、何の不利もなかったスワーヴリチャードやサングレーザー、道中から怪しい気配の厩舎の先輩・リアルスティールなどとは、まるで適性が違うというような勝ち方だった。

モズアスコット。素晴らしいスピードホースである。

父は無敵のミドルディスタンスホース・フランケル。

その日本の代表産駒たるソウルスターリングの主戦であるルメール騎手が、このレースに全く縁のなかったブライアンズタイムの一族に時代のトップサイアーをつけられた良血牝馬の母と、既出の名馬との組み合わせから誕生した天才を駆り、昨春のヴィクトリアマイルで見たような、実に賢いコース取りからの抜け出しで、見事な勝利を飾った。

1400Mでも1600Mでも、条件戦時代から素晴らしいタイムで走っていたモズアスコットは、不思議とルメール騎手が乗ると、その途轍もないスケール感を秘める才能を一端を示すように、これまで極めて優秀な時計を繰り出してきた。

500万①<阪神1600> 1:32.7

1000万①<東京1400> 1:20.4

阪急杯②<阪神1400> 1:20.1

マイラーズC②<京都1600> 1:31.5

そして今回の、

安田記念①<東京1600> 1:31.3

だ。

阪神C④<阪神1400> 1:19.9

という結果は、デムーロはデムーロでも、クリスチャンがテン乗りで普通に乗ろうとしたものの、タイトなコース取りでないとどうにもならない競馬で、それが初の一線級との争いでの結果だから、ノーカウントどころか、見事な才能の一端という意味で、理想的な叩き台になったのである。

3歳春の時点という意味では、アエロリットのこの記録、

NHKマイルC①<東京1600> 1:32.3

クイーンS①<札幌1800> 1:45.7

も負けていない。

ダービーも大阪杯も特別評価される時計での好走ではないスワーヴリチャードは、彼らの持ちうる才能に見事に完封されてしまった。

体調面に問題があったような印象のマイナス体重は、いつもしっかりとしたお腹の作りであったとして、本当に敵う相手だったかと言われれば、正直、疑問符が付く。

サトノアレスやサングレーザーも力は出し切っているだろう。

総合力勝負だけではなく、そこからのプラスアルファのスピード能力が求められた時に、彼らはまだ対抗できるだけの渋とさは秘めていなかった。

芸がない追い上げのようで、彼らの才能を最大限に引き出す好騎乗をしたのは、共に、素晴らしい内容で安田記念を制している名手だ。

1、2着馬には完敗である。

アエロリットという馬は、個人的にとても気に入っているから、今回も本戦に取り入れたわけだが、どうにも、【3202」という戦績が示すような、どうに越えられない壁にいつもぶち当たる傾向がある。

キャラはまるでレッツゴードンキのようになってきた。

そのいい目標がいたことで、天才・モズアスコットが幸運を味方に、素晴らしいGⅠ馬に成長を遂げた。

同父のソウルスターリングは、バランスの取れたドイツ系統由来の正しい血統構成で、オークスを素晴らしいタイムで乗り切ったが、こちらはアメリカ色の強いヘネシーが母父。

ニジンスキーがブライアンズタイムの全姉に配され、その次にミスワキが入ったという積み上げ方は、実は、様々な血を取り合わせることで活力を萎えさせないようにする、アメリカ型の血統馬の作り方の基本形を体現したものである。

血はどこかで交錯するようになるから、アメリカのような競馬大国では、南米の血も欧州の血も出たり出したりを繰り返す。

欧州マイラーは、得てして遅いことが多いが、彼は違う。

アメリカナイズされたことで、しなやかとパワフルさを両立させたのだ。

上がりトップはこれで、全キャリアの半数近くにあたる11戦中5戦目となる。

まるでディープ産駒の成功パターンに近いこういった結果が、サラブレッドの進化に大きく影響を与えるはずだ。

未来に繋がる最終末の春の東京GⅠの勝者は、実に興味深い才能と言えよう。

 

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鳴尾記念 -回顧-

読了までの目安時間:約 3分

 

土曜重賞で妙に勝負強さを発揮するデムーロ騎手のストロングタイタンが、変化球のイン強襲で、本命馬・トリオンフ斬りに成功した。

中団で妙に折り合っていたストロングタイタンは、本来の実力からする当然の重賞勝ちではあるものの、ど様々な勝因が重なったのも確かだ。

人気のトリオンフと同型の好位差しタイプであり、溜めても味がないアメリカン野郎のストロングタイタンにとって、血統構成こそ違えど、似たようなところのある逃げ馬・マルターズアポジーの存在は大きかった。

昨年の小倉大賞典では、GⅠ経験を味方に、そのマルターズアポジーに豪快な逃げ切りを決められて、直線ジリジリと追い上げるしかなかったが、以後陣営がこの辺りのクラスのレースに絞り、明らかに夏の2000M路線を狙ったローテーションを組んできた今年は、夏の小倉でもうまくいかなかった反省を活かし、フレッシュな状態でよく走る特性を考えて、前回は減った分を取り戻し、今回は一気に良化させるような仕上げではなく、キープするようにマイナス2kgで動きやすくしただけの作りで、あとは勝手に馬が走る気になればいいという作戦が見事に成功した。

昨夏は激戦も多く、増減の激しかったこの馬が、しっかりと立て直された結果が、この実力馬封じである。

一気の脚で展開利もあったトリコロールブルーは、前を行く2頭に対し、前走大阪城Sの1:45.3しか目立った時計のない馬が、勝ち馬から0.5秒差、1:57.7であれば、ここは上々と見るべきだろう。

平坦馬場なら若い頃から時計決着に対応していた上位2頭が、レコードゾーンでの快走。

何もここで速い時計に対応する必要はないが、本州組は七夕賞でさえ1分58秒台前半のタイムになる時代、それなりの引き出しがないと、チャンピオンになるのも厳しい。

ちなみ、宝塚記念を展望すると、揉まれ弱い印象の各馬だけに、少頭数の単騎で行けないと苦しいだろう。

 

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東京優駿 -回顧-

読了までの目安時間:約 6分

 

驚きが二つ。

直前の条件戦で、2:22.9が出てしまったこと。

もうひとつ。戸崎圭太がダービーのペースを作ったこと。

ダービーのタイムは馬場状態を考慮すると平凡もいいところだが、サプライズはもう一つあったということか。

「最後のワンピースは自分のベストライド」

福永祐一の悲願は、大外枠の差し馬という最大の課題克服を、結果として楽な外目の追走からの先行勢追撃に、スタートの素晴らしさで可能とし、見事にミッションをクリアするという自分のやるべき仕事をした結果により、ダービー制覇へと繋がった。

エポカドーロの戸崎騎手も、結果的には勝負に勝つことになった福永騎手も、牝馬でなら信用できる騎手なんだけどなあ…、のタイプで、もう少し意地を見せてほしいとみんなが思っていたところで、今年のこの結果。

強気で鳴らしてきた剛腕系の騎手も、当然乗れる、追える外国出身の両騎手も、真ん中の枠で不気味に牙を研ぐ歴史的名手らの出番はなく、代わりに、極端に人気を落としたトライアル勝ちのコズミックフォースに乗る石橋脩騎手が上位に入線。

みんなやるじゃないか。

本命党には到底手が出せない馬が絡んできて、上位人気総崩れはちょっと残念だったが、福永騎手のやや感情的なインタビューは印象深い。

冷静さを失わせるのがダービーである。

ディープインパクトやキングカメハメハ、その他数多の名馬を所有した金子真人さんが、祖母ブロードアピールのオーナーであることにも驚きつつ、マカヒキでダービートレーナーになった友道康夫調教師と、ここは福永祐一に何とかしてもらわないと、という執念が、実は好スタートを切った時に、プレッシャーとならなかった部分があるのは確かだろう。

全ての不安は頭から消え、勝ちの拘る乗り方だけに終始した。

十分に力ではワグネリアン辺りなら好勝負に持ち込める皐月賞馬のエポカドーロとて、距離不安があったのは事実だから、下げても面白かったのだが、持ち味を殺さない乗り方をダービートレーナーの藤原英昭調教師ともに、煙幕も張りつつ、計画通りに遂行したのかもしれない。

負けてはしまったが、青嵐賞のような同着ゴールは難しいから仕方ない。

連勝中の戦いは簡単ではないし、ダノンプレミアムもこの流れであれば、スタミナ云々はない。

その代わりに、上手に競馬できる馬だからこそ、最内枠で好位のインは、スローペースではやや不利になった。

反面、ほぼ勝つ馬と同じ位置にいたブラストワンピースという素晴らしい対抗馬も、ワグネリアンと福永騎手の勝ち気の騎乗で、少し勝負所で自由に動かせない位置に押し込められた。

この辺りも、実力は負けていない上位2頭がわが道を進むための競馬に徹したことで、ツータイミングほど置かれてしまったのである。

いつも違うことが起きる。それはダービーだから。

出来はともかく、さすがに適距離よりは長そうな印象のあったダノンプレミアムがキレ負けするのは仕方ない。

キャリアが浅く、仕上げの難しい面が、この余裕のローテになったブラストワンピースも、プラスの10kgはさすがに究極の仕上げだったとは言い難い。

キレを究極にまで引き出す調教が施されたワグネリアンに対し、無傷という戦績は、まだ若手の調教師の本来の技量の高さを鈍らせたのか。

調教は素晴らしかっただけに、クラシックの難しさが凝縮された結果と、ここは納得したい。

それにしても、あの福永騎手の積極的な騎乗は、本当に久々に見たものだ。

かつて、10年程前は前週のオークスで頗る冴えわたる好騎乗で毎年のように好結果を残し、自称オークス男とローブデコルテで勝った時には、表彰式に向かう去り際にわざわざ口にしたことが、印象に残っている。

あれから11年が経ち、自身の立ち位置が危うくなっていることを皆に指摘されるまでもなく理解する彼が、結果で存在感を示したのは、きっとその時以来である。

主戦であったジャスタウェイも、国内のあとのGⅠ勝利は柴田善臣騎手でのもの。

満を持して勝負すべき場面で、真の意味で価値ある勝利を挙げることに成功した彼が、遅ればせながらダービージョッキーになったことを一ファンとして祝福したい。

ワグネリアンの勝因は、自身にそれを求めるなら、弥生賞の強い2着でも東スポ杯でもなく、デビュー戦の中京で繰り出した上がり3F32.6秒の決め手が、ダービーに勝った時に、特別抜けた数字ではない34.3秒の末脚に凝縮されていることか。

こういう能力を秘めている馬は、たいがいは先行馬だが、弥生賞の厳しい差しての2着で、馬がタフさを備えたのだろう。

こういうことが起きるのがダービー。

だから来年も、またびっくりするようなことが起きるだろう。

 

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