ジャパンカップ 予想 – ◎エタリオウから~この秋、4歳馬による競演が続く
雨が降るとか、友道厩舎が1/3だとか、外国馬がついにいなくなったとか…。
まあしかし、ある意味で、そもそも難しいJC攻略の基本に立ち返るべき第39回にここはすべきと、心を決めた筆者。
ちょっとここはぶん回して、アウトサイドのボール球を強引に引っ張りこんで一発を狙う。
本命はエタリオウ。筆者、宝塚記念で期待を大いに裏切られ、それから約5か月間ほとんど無視していたのだが、4歳馬の復調と本質的な底力は、やはり前後の世代に対し、圧倒的なものがあると確信した。
中央の古馬タイトルは、この秋に入ってから全て、同期の4歳馬による競演である。
今回はそれにステーブルメイトという要素まで加わりそう。
神戸新聞杯の連対馬は、何故だか、ダービーよりコネクションが強い。
そして、秋華賞の1番人気かその勝ち馬がいると、それはそれで同じくらい心強い。
基本はその3、4歳の対象馬が、ほぼ確実にどちらか連対する。
ワグネリアンは外枠を克服できなかった秋天が切なかったが、スローの展開に近い状況で、自分より外枠に先行型を置いたことで、よりタフな戦術を選択せざる得なくなった。
序盤のミステイクが減り、川田騎手も若々しさを感じたというワグネリアンは、きっと自由な位置取りが今回は可能。
一方、エタリオウや前走4着のユーキャンスマイルは、馬に気持ちを尋ねてみないとはっきりとした狙いが生み出せない。
ユーキャンスマイルは期待の持てる4着だったが、如何せん、今度は先行型があまりにも少ない。
普通の策に出過ぎると、岩田ポジションでも終いが甘くなる死角は見え隠れしている。
何も友道厩舎だけで競馬をするわけではないが、隠れ左回り巧者で2400Mも案外合っているエタリオウが、本来不利な外枠を克服した時に、揉まれない強みを活かせる可能性が出てきた。
13番枠。ワグネリアンも桃色帽の17番枠からダービー制覇の逆算を始めた。
ここ数戦は内枠からのスタート、駆け引きを求めると、うまく動き出すような策を狙うミルコ・デムーロのスタンスとは、本質的に合わないだろう母方がスピード血統のエタリオウには、耐え難き1年間だっただろう。
内容的は惜しいように見えたが、今年はもう、春の時点で気持ちが萎えていた。
京都大賞典はスタートも悪かったが、すぐ隣にカラ馬がいるなど、ややこしいことを考えねばらない状況で、直線の競馬に徹する他なかった。
多頭数は嫌いではないが、きっと、ステイゴールドの良さがあるからこそ、決め打ちで結果を出してきただけで、自分を中心に考えてくれるとエタリオウが横山騎手の妙案を受け入れた瞬間、強引にダービー出走権を狙った青葉賞こそ正攻法だったが、それ以外は…、という彼の本質を塗り直し、宝塚記念でも前を目指そうとアタックはした鞍上のこと、例のミラクルが再び起こす可能性がある。
何も失うものはないエタリオウが、人間側の事情で沢山レースを使われてこなかったことが、ここで活きる。
スタートはお世辞にもいいわけではない彼が、レースメイクの概念を何度も崩壊させてきた横山騎手の狙いに対し、どんな思惑を伝えるのだろうか。
ここは本当にギャンブルである。
ただ、論拠の一点として挙げたいのが、GⅠ馬にはなってしまうが<ここ20年、JCを勝つのはGⅠ馬と相場が決まっていた>、
トウカイテイオー
エピファネイア
ショウナンパンドラ
ら、3歳GⅠ連対実績のある者がJC勝利した際が古馬GⅠ初連対だった、という実例。
当然、ワグネリアンがここに入ってきて、ショウナンパンドラと似た戦歴でここに挑むことになるわけだが、もし、ダービー馬との差異を明確化し、かつ、エタリオウに有利な面を示すとすれば、完全に終わった感じで出てしまった点だろうか。
エタリオウは王道路線を今年は進み、結果は全くのノー感じ。
が、良かれと思って鞍上を固定した結果、チグハグなままコンビは解散した。<ここでミルコはアリだったが…>
しかし、元来た道に戻れた時に、その才能は爆発するのだ。
どの馬も怪しい面を秘めた狂気の才能を持ったタイプ。
ワグネリアンはもう少し優等生である。何かを打開する根拠は、条件に求める。
一方で、エタリオウは気持ちの持っていき方に、好転の理由を求めるところがあるだろう。
普通ではない組み合わせの時に、こんなものだろうという程度の人気はアテにならない。
ステイゴールド産駒は東京は苦手だが、何かが起きそうな場面では案外外さない。
密かに流れが来ている直系の勢いに乗って、ダービー馬が不振という近年の傾向も味方に、不条理な1勝馬の汚名をここで返上したい。
◎エタリオウ
○ワグネリアン
▲スワーヴリチャード
☆ユーキャンスマイル
注ムイトオブリガード
△カレンブーケドール、レイデオロ、ジナンボー
京都2歳S 回顧 – この世代、ハーツクライ産駒が元気すぎる?
ちょっと道中というか、勝負所の反応を見て思ったのだが、ミヤマザクラは少し距離が長いのかもしれない。
いい反応で上がって行ったようで、弾けるような前走の感じではなかった。
距離適性に関しては、これからもっと延ばしていってもよさそうなマイラプソディは、それ以外は正直敵ではないという組み合わせで、少し置かれそうになったところを、現状の総合力で封じ込めたような印象もある。
確勝級の場面で、鞍上の武豊騎手は焦るようなことはないが、ゴール前の手応えが、4角手前とは上位入線の3頭の中で一番変化したくらいであり、置かれ過ぎなかったことも良かったか。
きっと、ミヤマザクラにはもっとタフなコンディションだとか、展開上の厳しさのようなものがプラスされることで、その良さが引き出されるタイプだろう。
兄よりは動けるが、その分、位置取りや動き出しに、距離延長だと課題が出てきそうだ。
ハーツクライの産駒が元気で、この世代ではもうクラシック候補がゴロゴロ出現している。
活力の源は、いい競馬は多かったが、勝ち切れなかった時期が長かったからこそ生まれる余力と、絶対的な爆発力をまだ止めていたことによる生命力が消耗しなかった点が挙げられる。
それが、種牡馬生活の晩年のおける充実に繋がったように思う。
ディープも彼と同じ歳のキングカメハメハがいなくなった現状、サンデーサイレンス直仔の種牡馬は、もうトップサイアーとして君臨する時代ではなくなった。
ある意味で、それが貴重になり、重宝されているのか。
競走生活の終盤にいいことがいっぱいあったハーツクライの仔たちは、それと似たように、この先を期待される何かを、結果を残した馬ほど感じることができる。
このレース3着のシュヴァルグランが出走したのは、もう5年も前の事である。
ラジオNIKKEI杯京都2歳S 予想 – 武豊と欧州のトップ騎手を狙うのが基本戦略
2戦続けて圧勝のマイラプソディが、このレースが重賞昇格した14年のティルナノーグと似ていなくもないと思えた時点で、急に他の馬が怖く感じた。
その時は2勝馬のベルラップがシュヴァルグランらを封じたわけだが、まだ若かったビュイック騎手の巧みなリードも光った。
武豊と欧州のトップ騎手を狙うのが基本戦略。
今年もスミヨンとマーフィーがいるから安心だ。
ここはマーフィー騎手のミヤマザクラから。
藤原厩舎の良血馬で藤岡兄を配してきたのは意外だった札幌では、初戦が既に2勝のホウオウピースフルが、その他良血馬もろとも一刀両断。
うまく仕掛けていなかったのもあるが、クロフネの一族だけに、ズブの側面は皆が隠し持っている。
2戦目はタフな中1週でも、そうした面がフルに活きて、4角で勝負ありの手応え。直線は独走だった。
全兄マウントロブソン、甥のグリュイエールなどは早くから活躍したが、どういうわけだか、ミスパスカリのディープの牝馬はいなかった。
仔出しがいい割に…、とは馬でも失礼になるだろうが、なまくらな一面がクロフネの幻影となって成長を邪魔したとするなら、牝馬で、ミヤマザクラのように中型に出れば、少なくとも使うことへの躊躇は出てこない。
タフさを証明し、近年の傾向通りに、洋芝や道悪で結果を出してきた馬に有利な2回開催の最終週の馬場も大きな味方。
どちらかと言えば、アメリカンタイプに属する配合は合わないようで、2000Mという距離も影響してか、ダート適性のある血統の馬も荒れ馬場を好走要因としている。
タフな牝馬に持続力勝負歓迎の牡馬もかなりの強敵。
ここは牡牝の問題ではなく、真のスケール感が試されることだろう。
ただ、昔のOP特別時代と一緒で、負けている馬も出世する。
後のGⅠ馬が負け、ここを勝つとそれが勝てない。
マイラプソディの最低目標は、2か3の好走実績を作ることになる。
そんな結果を、陣営は望んでいないだろうが…。
◎ミヤマザクラ
○ロールオブサンダー
▲マイラプソディ
△トウカイデュエル、ヒシタイザン
平成の出世レース・格が定まる一戦
・京都2歳S
18③ワールドプレミア
17②タイムフライヤー
14③シュヴァルグラン
OP特別
12①エピファネイア
09①ヴィクトワールピサ☆
【ジャパンC】
勝った外国馬のその後
05 アルカセット<牡5>
2:22.1<レコード勝ち後に引退、種牡馬入り>
02 ファルブラヴ<中山2200>
2:12.2→仏英香で翌年GⅠ5勝して引退<インターナショナルSなど>
97 ピルサドスキー<牡5>
2:25.8<ここで引退>
96 シングスピール<牡4>
2:23.8→ドバイWCなど英でもGⅠ2勝。
95 ランド<牡5>
2:24.6<ここで引退>
91 ゴールデンフェザント<牡5>
2:24.7→GⅠ勝ちはこれが最後、日本で種牡馬入り。
90 ベタールースンアップ<セ5>
2:23.2→帰国後は順調に使えず、GⅠ1勝のみ。
89 ホーリックス<牝6>
2:22.2<WR>→あと1年走って、GⅠも2勝。
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やたらと出世した参戦馬
11⑥デインドリーム
独仏GⅠ3勝/凱旋門賞など→→英独で2勝/キングジョージなど
05⑤ウィジャボード
英愛米GⅠ3勝/英愛オークスなど→→中1週で香港ヴァーズ制覇、以後英米GⅠ3勝/POWSなど
→06③
00③ファンタスティックライト
米GⅠ1勝→→直後の香港C勝利後、愛英米で更に4勝/ベルモントBCT・2:24.36でTR勝ち
99④モンジュー
仏愛ダービー、凱旋門賞勝ち→→休養後は、キングジョージなどフォア賞まで4連勝後、凱旋門賞連覇に失敗し、英米でも不発も、英ダービー馬4頭を送り込む名種牡馬に。
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国外GⅠ覇者
18①アーモンドアイ<ドバイT>
12 13①ジェンティルドンナ<ドバイSC>
05②ハーツクライ<ドバイSC>
04③デルタブルース<06メルボルンC>
98⑩から毎年⑥⑧④ステイゴールド<01香港ヴァーズ>
98①エルコンドルパサー<サンクルー大賞>
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有馬直結度
17③14④10③06①05②04①03③/02③<中山>
改修
00①97⑤90⑪89⑪
・京阪杯 06~
15②ビッグアーサー
12⑤ハナズゴール
11①ロードカナロア
若ければ、その後は何とかなる。古馬にはゴールになるのも、昔から変わらない。
ダービー× JC○
JC、ダービーの兼ね合いが、今変質している。
<開催年/騎手/調教師>ダービー○×JC○×
84【西浦勝一 ×○ 土門一美×○】
85岡部幸雄 野平祐二<シンボリルドルフで両制覇>
92<勝利済み> 松元省一-<トウカイテイオーで両制覇>
93河内洋 ○○ 森秀行×○<前管理者・戸山為夫師はダービートレーナー>
94南井克巳 ○○ 大沢真×○
98【蛯名正義 ×○ 二ノ宮敬宇 ×○】
99武豊 ○○<スペシャルウィーク、ディープインパクトで両制覇> 白井寿昭<スペシャルウィーク>
00【和田竜二 ×○ 岩元市三 ×○<*ダービージョッキー>】
01<外国人/ペリエ> 渡辺栄-<ジャングルポケットで両制覇>
03佐藤哲三 ×○ 佐々木晶三○○
04<外国人> 藤沢和雄○○
06<勝利済み> 池江泰郎-<ディープインパクトで両制覇>
07岩田康誠 ○○ 松田博資×○
08ミルコ・デムーロ ○○ 鹿戸雄一×○
09クリストフ・ルメール ○○ 角居勝彦-<ウオッカで両制覇>
10<勝利済み> 橋口弘次郎○○
11<07と同じコンビ>
12<勝利済み> 石坂正×○
13<外国人/ムーア> <勝利済み>
14<外国人/スミヨン> <勝利済み>
15池添謙一 ○○ 高野友和×○
16<勝利済み> 清水久詞×○
17<外国人/ボウマン> 友道康夫○○
18<勝利済み> 国枝栄×○
*三者両レース制覇
85シンボリルドルフ<三冠>
<92>トウカイテイオー<春二冠>
99スペシャルウィーク<ダービー・春秋天皇賞>
09ウオッカ<ダービー・安田記念連覇>
ダービー馬が過去、09年のウオッカまでは定期的にその誇りを内外に示してきたが、その時の優勝騎手は以降、JRAの所属になってから真の意味での活躍を見せるルメールである。
角居が14年にも勝って、調教師もその後は複数回制覇の者が増えた。
98年以降で、外国馬が2勝しかしていないからである。
ダービー制覇というフィルターをかけることで、それに関わった人間のチャンスがはっきりする。
JC制覇後、ダービーを制したのは、
河内洋
岩田康誠
ルメール
佐々木晶三
藤沢和雄
橋口弘次郎
その全てに濃密なドラマがついてくる。
JC株の暴落、ダービー以上のステータスがなくなったと解釈すべきか。
アドマイヤの近藤利一氏死去<平成の名物オーナー逝く>
17日の早朝。予てよりがんの闘病中であることを公表していた馬主・近藤利一氏が、大阪市内の病院で亡くなったことが明らかになった。享年77。
銀幕の名優たちが次々に天国に旅立っている昨今、日本競馬界においてアドマイヤのブランドイメージを確固たるものにした名物オーナーの死もまた、かなりの影響を及ぼしそうだ。
尚、故人の馬主名義変更には1か月の猶予期間があるため、恐らく、香港マイルに出走する予定のアドマイヤマーズは、近藤利一氏名義の最後のGⅠ挑戦になると思われる。
乗り替わりや突然の名義変更などでも話題となった・名血アドマイヤムーンや非業の死を遂げる直前に豪GⅠを制したアドマイヤラクティなど、国内外におけるチャンピオン級のGⅠタイトルをこれまで数多く制し、中央のみでも計13勝を誇る。
2歳王者であるアドマイヤコジーンが安田記念で復活を遂げた2002年には、同じ朝日杯覇者のアドマイヤドンを、菊花賞から中1週で盛岡でダートのトップホースへと変身させた。
M.ロバーツ、後藤浩輝、藤田伸二、安藤勝己…。
もう鞭を置いた名手たちにとっても、実に思い出深い出会い。
しかし、惜しむらくはあの黄金期を支えた武豊騎手と、香港での出来事を機に仲違いしてしまったのは、ファンにとっては残念だった。
ここに挙げたラクティ以外の3頭には、実はみんな乗ったことがある。
心残りがあったとすれば、それであるといいなと思う筆者だ。
タグ :アドマイヤ アドマイヤコジーン アドマイヤドン アドマイヤマーズ アドマイヤムーン アドマイヤラクティ ラクティ 名物オーナー 安藤勝己 後藤浩輝 武豊 盛岡 藤田伸二 近藤利一 馬主名義変更 M.ロバーツ
ルーツドール、デアリングタクトほか新馬回顧<11/16・17>
東西のマイル戦から大物登場の土曜新馬。
特に、東京の牝馬戦を勝ち上がったルーツドールは、様々な意味において、異質そのもの。
500kg超えでも、スタートから準備万端の構えで、小柄な牝馬の究極系を示した人気のゴルトベルクをその時点で圧倒。
直線も悠々の抜け出しで5馬身差。ある意味、ジャスタウェイのスケール感そのものであり、兄フィエールマンにはないタフさが備わっている。
1:33.3は自分で作った時計なので、逃げ切りではないことでの価値は絶大だ。
西のデアリングタクトも、エピファネイアと祖母デアリングハートのちょうど中間の馬格で、レースセンスは祖母譲りの理想形の牝馬。
一瞬でエンジンがかかるタイプで、器用さで勝負できるという強みが、今年の有力馬にはない魅力となっていきそう。
あとは短距離戦。
団野&Tグローリーのデンタルバルーンは福島、ルメール&Kヘイローのライチェフェイスが東京で勝ち上がって、これらは、ルーツドール同様にスタートで勝負を決めた快勝馬。
京ダ1200のプリサイスエンド・ショウゲッコウも評価が低すぎただけの馬。
デンタルバルーンが意外と面白そうだが、いずれも、中央場所の重賞で通用という感じではないか。
日曜日は一転、何とも捉えどころのないレースが続出。
東ダ1400は力通りという感じで、シニスターミニスター産駒でフラストレート系のティートラップが快勝するなど、人気馬が順当に走ったが、その直前の芝2000がよくわからない結果に。
勝ったのはキンシャサ×キングマンボのガロアクリーク。
その後の京芝1200で、若い頃の兄・シュウジを彷彿とされる末脚を発揮したシャイニーズランと同配合。
時計もペースも平々凡々。勝ち馬の33.5秒を他の人気馬が使えなかっただけだろう。
京都の同じ距離のレースも、仕掛けのタイミングが絶妙だったディアマンミノルというイソノルーブルの孫が快勝するも、これはムーアのハーツクライが強引に動きすぎたのが勝因だから、如何ともしがたい。
東西どちらも、本質的なスピードが上位だったのであろう。
マイルチャンピオンシップ 回顧 – 直線の手応えは池添の経験値の中でもオルフェーヴルと双璧だったはず
池添謙一騎手の完璧な騎乗により、ダノンプレミアムの復活GⅠ勝利はならなかった。
ペースの読みも相手のマークの仕方も、勝負のポイントの見極めも、コース取りも…。
これで池添謙一騎手はマイルCS最多の4勝目。
名立たる名手らが、歴史に名を刻んだマイル王者らが3勝、連覇など、また、日本競馬界における重要なファクターとなっている基本距離のGⅠにおける種牡馬選定の貢献度でも、クラシックレースに並ぶレベルにあるマイルCSの輝かしい歴史に、また新たな金字塔を打ち立てた。
前走の毎日王冠は、マイラーズCでの敗戦を糧に、流れる展開が読めている中を中団から余裕をもっての抜け出しだった本番との関連性まで考えると、この完成期に近づいた今は、では、早く抜け出してソラを遣うのだろうかという確認を福永騎手はしたのだろうと思う。
前哨戦の戦い方であり、それが合うという目論見は間違いなくあって、そういう諸々の死角を払拭できたのであれば、アエロリットのような天皇賞行きも想定されたほどの馬。
春のマイルチャンプという次元で捉えるだけではない、既に、もっと大きな展望をできる領域に入りつつあったインディチャンプだから、池添騎手も、場慣れしているというだけではなく、再確認できる条件がはっきりと見えていたからこそ、余裕の好位追走となったのだろう。
直線の手応えは、池添騎手の経験値の中でも最高クラスのものがあっただろうが、その通り伸びたとなると、あのオルフェーヴルと双璧だったはずだ。
デュランダルは確実に弾けてくれるが、届かないことも多かった。
そういう馬相手に、自身は少しは戻っているならば、断然の主役と筆者もきっと陣営も思っていたのだろうダノンプレミアムは、かつての破壊的な直線を再現できないでいる。
秋の天皇賞の伸びようとするときに、やや苦しそうに外にモタれていた姿は、得意のマイルの平均ペースで見られなかったものの、その前に自力でもっと前を潰しに行くような迫力に、どうも陰りが見られるという気配。
可哀相なことをしたというほど、過酷な試練を課されたわけではないが、あの輝いた2歳シーズンから、1つ使いごとに何かを失っているのかもしれない。
皐月賞参戦で全てを失った可能性を回避した今、傍から見ると抜け殻になりかけたダノンプレミアムの未来は、少しずつ暗転しているように思う。残念だ。
一方、小気味いい逃げで見せ場たっぷりのマイスタイルとミスターMCS・ペルシアンナイトは、さすがの一語。
あの厳しい馬場状態だったシンザン記念の3着馬と5着馬。
こういう道の開き方を、陣営は願わずいられないのが、ダノンキングリーの勝ち味の遅さか。
あれだけのスケール感溢れる競馬の後、例年通りに、毎日王冠快勝馬として安定の敗戦を喫したが、皐月賞の時のような内からもがきつつ追いかけるという感じは、あの時よりもっとタフな内ラチ沿いの馬場状態もあり、能力全開とまではいかなかった。
しかし、これもいい経験。
切なくなるほど、GⅠで勝ち運に恵まれないこの未来のスターには、インディチャンプのような躍進を期待されている。
一度きりで燃え尽きさせるような短期免許の騎手が乗っていなかったからこそ、それを期待できる。
課題はもう、自在性のブラッシュアップのみ。
来年こそは、インディチャンプの一泡吹かせてやりたいと、陣営は雌伏の時を過ごすことになる。
マイルチャンピオンシップ 予想 – ダノンのディープ2頭が崩れる図は想像しがたい
直前で有力馬にドタバタの乗り替わり劇が発生するといったこともあったが、
インディチャンプ 福永→池添
ダノンキングリー 戸崎→横山典
MCSは2人とも3勝、レジェンド級の勝ち馬の背も知る名手にスイッチすることになった。
人によっては、これを「鞍上強化」と見ることもできる。
縁のあるベテラン騎手に変更となれば、歓迎したいほどのチェンジと捉えることはできるから、今回は伏兵に乗って期待の欧州トップジョッキーたちの技巧は、昨年見えた出来ること、出来ないことの見極めが、ファンにとっての勝負のポイントとなるはずだ。
◎ダノンプレミアム
○ダノンキングリー
▲インディチャンプ
注ダイアトニック
△プリモシーン、フィアーノロマーノ、レイエンダ、レッドオルガ
とはいえ、ダノンのディープ2頭が崩れる図は想像しがたい。
中2週などこれまでは考えられなかったダノンプレミアムは、前走で燃え尽きたような直線最後の外へのヨレが、休み明けでのもの、案外の平均ペースで強烈な上がりを1頭勝ち馬だけだ繰り出した展開で、本質的な左回りへの適性や言っても万全になる要素には乏しい臨戦過程など、限界の解釈が違うと見ることもできる。
これまで、ダービーで激しく揉まれ、安田記念でレース参加を断念せざるを得ない状況だったケースは、一方は休み明けで、後者は逆に使い詰めの中でのわずかな立ち遅れが影響しての進路カットの憂き目であるから、大きく問題視すべきローテの不備はない。
安田記念から秋の天皇賞直行で、しっかりとそこも好走して、ここで圧勝した関東馬・エアジハードとよく似ている。
彼も4歳充実のシーズンのクライマックスであった。
最初から強かったダノンプレミアムは、皐月賞に出られなかったことから様々な不遇を甘んじて受け入れてきたわけだが、それもまた走りすぎる馬の唯一に近い死角だ。
母系に隠れたグラスワンダーと酷似した母の血統構成は、再び立て直された時に、往時というか、若々しく追い風を味方にして疾駆したあの頃の走りでなくても、そうは簡単に崩れない底力の一端の示し方のようなものもあると、エアジハードの引き立て役に回った後に、ダービー馬を二度屈服させた20年前の雄姿と、どことなくダブる何かがある。
今は、アーモンドアイのような王者が女王様であることも少なくない時代。
それに負けたことがそのまま、力不足と直結する論拠とはならない。
あと、これまで数多くのリピーターが登場した世界一トップマイラーに優しい舞台であるマイルCS連覇の5頭のうち、ニジンスキーやその全弟のミンスキーが入った3頭が20世紀にそれを達成し、サンデー×ノーザンの21世紀の2頭と含め、テディ系やハイペリオン系の血に名牝系の底上げ効果が、その偉業の後押しとなってきた共通項を持つ。
元より、安田記念よる穏やかな競馬になりやすいこのレース。
種牡馬選定の意味合いもかなり強く表れる。
フロリースカップ、スタイルパッチの系統から連覇の馬が登場し、ヘイロー系の3頭だと、アルマームード、ラフショッド、ラトロワンヌの組み合わせのタイキシャトルに、アルマームードクロスのサンデー2頭というように、世界的名血の集積体の名マイラーが大きく羽ばたいた実績は見逃せない。
父ディープはこれまで3頭の勝ち馬を送り込み、母父インティカブは京都で踊るように快走して見せたスノーフェアリーの父であり、その中に入ったクラフティプロスペクター×ダンチヒには、あのアグネスデジタル<母父ダンチヒ直仔・チーフズクラウン>の影を見る。
母系を辿れば、日本に輸入された愛米で活躍したガリレオ・ケープブランコや遠い昔のJC1番人気の名牝・ユーザーフレンドリーがいる。
一番サイクルが遅いところには、盛岡でやけに速かったベストウォーリアなど、クラフティプロスペクターが入っていないのに、様々な適性を秘めた才能が点在する。
ある意味、本当に強い馬ならば、ここは勝たねばならない舞台。
ダノンプレミアムは、ダノンキングリーの末脚をどう封じるか。
否、あの鞍上である。正攻法で一本釣りのプレミアム潰しもあり得なくはないか。
いずれにせよ、いい競馬を見せてもらいたいものだ。
ただ、川田&中内田調教師のコンビで、いい加減GⅠを勝ち切ってもらいたいというのが本音である。
マイルCS 展望
マイルCS展望(2019/10/14)
毎日王冠の3頭の注目度合いが、どの程度のものになるのか。
そもそも、まさかの秋天参戦が既定路線であるアエロリットの存在が、どう影響するのか。
その人気度合いがちょっと気になるメンバー構成となりそうだ。
クロノジェネシスが秋華賞を勝たなければ、もう少し違った展開もあり得たのだろうが、ラッキーライラックも女王杯の方に向かうだろうし、プリモシーンがVマイルなどの牝馬路線組の使者になる。
激しいあの元世界レコード戦を経て、何か上積みがあるとは思えないが、その後中京で先着を許した3歳馬は、中山の高速決着で完敗。
強烈な時計勝負になるとは限らない、ここ最近の11月の京都戦は、どういう才能が優先的に求められるか、ちょっと難しい面もある。
右回りでは今一つ、キレは極上でも使える脚が短い春の覇者・インディチャンプに、復活の目があるのか。
はたまた、強靭な決め手を披露したダノンキングリーに有利なのか。
理想の競馬とは何なのか。
強烈な決め手は京都のそれほど時計の求められない馬場にフィットするのか。
外差しになるのか、昨年のように内が有利なるのか。
実力伯仲とすれば、3歳のアドマイヤマーズなどが登場するだろう富士Sの困った際の頼りがいも、それなりにあるというもの。
ただ、一芸に秀でたトロワゼトワルなどが、非重要戦に登場する流れになっていて、やはり、アエロリットがいるいないの影響はかなり大きいように思う。
これを潰すかどうかに焦点が絞られれば、スパートのタイミングが前倒しになる。
差す力も勝負所が早くなることで、より持続的なものが求められる。
必ずしも実績馬有利にはならない最近のマイルCSだから、安田記念を使った馬に拘る必要はない。
春のマイル重賞重賞は、遅いか速いか極端だったので、プリモシーンのように安定して走っていた馬には、加点は多めにしておきたい。
昔よりは若い馬有利ではなくなったので、またしても登場のペルシアンナイトには期待できる。
逃げ馬には不利だが、シルポートやコパノリチャードも粘って4着がある。
定期的に残る馬が登場するので、その辺りはケアしておきたい。人気があまり関係ない。