天皇賞(秋)2019 回顧

内でしっかりと折り合い、ゆっくりと下げて、かつあまりプレッシャーのかからないポジションにつけ、直線では、いくらか追い出しを待ったアエロリットの内をついて、強烈な決め手を発揮。

そのアエロリットが、異様なペースを作らずに突かれるでもなく離して逃げるわけでもなく、現在の1分57秒前後の競馬になる展開を作りやすい環境を全て整えたことで、本来の進路を取らずとも、後傾ラップで圧倒的な強さを誇る馬らしい直線の抜け出しで、最後は誰も追いつけない競馬へと展開させた。

泣く子も黙る、これがアーモンドアイ女史である。

伏兵のいない競馬だが、アエロリットが玉砕しないレースこそ、この馬に合ったレース。

猛烈なハイペースはまだ経験していないアーモンドアイからすると、あのJCの稀有な経験値が最後は有利に働いた。

友道勢の究極の決め手も見どころ十分だったが、枠の利を十二分に活かした本命馬にとって、ほとんど死角のないレースであった。

アエロリットといういい目標を利用して…。

ヨーロッパの騎手にしてみれば、アエロリットを潰さずとも勝手に消えるはずと高を括っていたはずのスミヨン騎手とすれば、パートナーのサートゥルナーリアの案外の伸びもあるが、それに差し返されるという想定はしていなかったはずだ。

経験値という意味は、同じレースを同じように勝つという中では加算も積算もされない。

日本の競馬はその点、様々な展開が起こる。

特に、中央競馬のGⅠが一桁頭数になることはないから、サートゥルナーリアを理想のエスコートで誘った…、という考えではきっと、対アーモンドアイという観点では、対ルメールでも遠く及ばずの感がある。

あまり派手な仕事をできなかったフランス時代のルメール騎手を考えたら、日本におけるスタンスでは当地での位置づけとはまるで違う。

ペリエが武豊に伍して戦えたのは、彼が日本に来るようになってから5年以上してからのこと。

スミヨン騎手が日本にあまり来られなかった時間の中で、軽い競馬を叱咤によって抑え込むヨーロピアンスタイルだけでは通用しなくなった。

それがまた、欧州戦における日本馬の不甲斐ない結果とリンクする理由となるわけだが、スミヨンにとってこの結果は、残念というよりは、考え方を柔軟にするいいターニングポイントになるだろう。

自分がいい位置につけて、理想の競馬をした時には、アエロリットとアーモンドアイは気持ちよく走れる。

馬の経験値が足らない時、アシストできることが限られた今回は、騎手の騎乗内容になど敗因は存在しない。

それを面白いと思ってくれると、彼の40代は充実するはずだ。

位置取りに関しては、外の方にある程度前につけたい馬が多かったから、それがワグネリアンにとってはよくなかったという結論になる。

そういう状況で、半分よりはほぼGⅠ馬となった上位入線組に対し、ダノンプレミアムが意地と誇りを自力で取り戻した名誉挽回の走りで、決め手比べにも屈せず粘り込んだのも素晴らしいが、それ以上に、4着のユーキャンスマイルの自力アップも侮れない。

最初から位置をとる気など全くないから、悠々後方追走から、厳しい2着争いの中にワグネリアンと競り合って、ねじ伏せていったのだ。

ワグネリアンもきっといい頃の出来に戻っているから、これが実力である。

ユーキャンスマイルには散々悩まされてきたが、この気合いの入り方は大一番でこそのものがある。

しかし、GⅢ2勝馬。この実力を次にどこで発揮するべきか。

アーモンドアイ回避濃厚のJCが、少頭数になった暁には、◎がかなりつく馬になる。

もっと追走が楽になるからだ。