スプリンターズステークス 予想

スプリンターズSを予想

1990年に、日本で最初に誕生したスプリント<短距離>GⅠが、このスプリンターズSです。
初期から、日本の短距離界で活躍するトップホースが続々と制し、1993、94年と連覇を果たしたサクラバクシンオーが、偉大なる功績を残すことで、短距離GⅠの存在意義を大いに示すのでした。

スプリンターズステークスの歴代優勝馬

 1着馬
性齢
斤量
騎手
人気
前走
父名
備考
2着馬
性齢
斤量
騎手
人気
前走
父名
備考
3着馬
性齢
斤量
騎手
人気
前走
父名
<2000年>
ダイタクヤマト
牡6
57
江田照男
16セントウルS⑦
ダイタクヘリオス
アグネスワールド
牡5
57
武豊
1ジュライC<1>(英)
ダンチヒ
ブラックホーク
牡6
57
横山典弘
2セントウルS②
ヌレイエフ
2001年
トロットスター
牡4
57
蛯名正義
4安田記念⑭
ダミスター
メジロダーリング
牝5
55
田中勝春
3アイビスサマーD①
グリーンデザート
ダイタクヤマト
牡7
57
江田照男
2セントウルS②
ダイタクヤマト
2002年(新潟)
ビリーヴ
牡4
55
武豊
1セントウルS①
サンデーサイレンス
アドマイヤコジーン
牡6
57
後藤浩輝
3安田記念①
コジーン
ショウナンカンプ
牡4
57
藤田伸二
2函館スプリントS④
サクラバクシンオー
2003年
デュランダル
牡4
57池添謙一
5セントウルS③
サンデーサイレンス
ビリーヴ
牝5
55
安藤勝己
1セントウルS②
サンデーサイレンス
アドマイヤマックス
牡4
57
武豊
2セントウルS④
サンデーサイレンス
【2004年】
カルストンライトオ
牡6
57大西直宏
5アイビスサマーD①
ウォーニング
デュランダル
牡5
57
池添謙一
2高松宮記念②
サンデーサイレンス
ケープオブグッドホープ
騸6
57
B.プレブル
8ジュライC<4>
インチナー
2005年
サイレントウィットネス
騸6
57F.コーツィー
1安田記念③
エルモクシー
デュランダル
牡6
57
池添謙一
2香港マイル⑤(香)
サンデーサイレンス
アドマイヤマックス
牡5
57
武豊
3安田記念⑫
サンデーサイレンス
2006年
テイクオーバーターゲット
騸6
57J.フォード
1セントウルS<2>
セルティックスウィング
メイショウボーラー
牡5
57
福永祐一
10セントウルS<7>
タイキシャトル
タガノバスティーユ
牡3
55勝浦正樹
16北九州記念⑨
ブライアンズタイム
【2007年】
アストンマーチャン
牝3
53
中舘英二
4北九州記念⑥
アドマイヤコジーン
サンアディユ
牡555
川田将雅
1セントウルS①
フレンチデピュティ
アイルラヴァゲイン
牡5
57
松岡正海
5セントウルS⑤
エルコンドルパサー
2008年
スリープレスナイト
牝4
55
上村洋行
1北九州記念<1>
クロフネ
キンシャサノキセキ
牡557
岩田康誠
2キーンランドC③
フジキセキ
ビービーガルダン
牡4
57
安藤勝己
6キーンランドC②
チーフベアハート
2009年
ローレルゲレイロ
牡5
57
藤田伸二
5セントウルS⑭
キングヘイロー
ビービーガルダン
牡557
安藤勝己
2キーンランドC①
チーフベアハート
カノヤザクラ
牝5
55小牧太
8セントウルS④
サクラバクシンオー
2010年 *2、3位入線馬はそれぞれ着順を繰上げ
ウルトラファンタジー
騸8
57
H.ライ
10シャティンヴァーズ<14>(香)
エンコスタデラゴ
3位
キンシャサノキセキ
牡7
57
四位洋文
3セントウルS取消
フジキセキ
4位
サンカルロ
牡4
57吉田豊
7セントウルS⑤
シンボリクリスエス
2011年
カレンチャン
牝4
55
池添謙一
3キーンランドC①
クロフネ
パドトロワ
牡4
57
安藤勝己
9キーンランドC③
スウェプトオーヴァーボード
エーシンヴァ-ゴウ
牝4
55福永祐一
7セントウルS①
ファルブラヴ
2012年
ロードカナロア
牝4
57
岩田康誠
2セントウルS②
キングカメハメハ
カレンチャン
牝5
55
池添謙一
1セントウルS④
クロフネ
ドリームバレンチノ
牡5
57
松山弘平
9キーンランドC⑦
ロージズインメイ
2013年
ロードカナロア
牡5
57
岩田康誠
1セントウルS②
キングカメハメハ
ハクサンムーン
牡4
57
酒井学
2セントウルS①
アドマイヤムーン
マヤノリュウジン
牡6
57
池添謙一
15セントウルS⑦
キングヘイロー
2014年(新潟)
スノードラゴン
牡6
57
大野拓弥
13キーンランドC⑧
アドマイヤコジーン
ストレイトガール
牝5
55
岩田康誠
2函館スプリントS⑪
フジキセキ
レッドオーヴァル
牝4
55田辺裕信
5キーンランドC②
ディープインパクト
2015年
ストレイトガール
牡6
55
戸崎圭太
1セントウルS④
フジキセキ
サクラゴスペル
牡7
57
横山典弘
11安田記念⑰
サクラプレジデント
ウキヨノカゼ
牝5
55四位洋文
9キーンランドC①
オンファイア
2016年
レッドファルクス
牡5
57
M.デムーロ
3CBC賞①
スウェプトオーヴァーボード
ミッキーアイル
牡5
57
松山弘平
2高松宮記念②
ディープインパクト
ソルヴェイグ
牝3
53
田辺裕信
9キーンランドC④
ダイワメジャー
2017年
レッドファルクス
牡6
57
M.デムーロ
1安田記念③
スウェプトオーヴァーボード
レッツゴードンキ
牝5
55
岩田康誠
5ヴィクトリアマイル<11>
キングカメハメハ
ワンスインナムーン
牝4
55
石橋脩
7朱鷺S①
アドマイヤムーン
<2018年>
ファインニードル
牡5
57
川田将雅
1セントウルS「1」
アドマイヤムーン
ラブカンプー
牝3
53
和田竜二
11セントウルS「2」
ショウナンカンプ
ラインスピリット
牡7
57
武豊
13セントウルS「5」
スウェプトオーヴァーボード
2019年
タワーオブロンドン
牡4
57
C.ルメール
2セントウルS①
レイヴンズパス
モズスーパーフレア
牝4
55
松若風馬
3北九州記念④
スペイツタウン
ダノンスマッシュ
牡4
57
川田将雅
1キーンランドC<1>
ロードカナロア
2020年
グランアレグリア
牡4
55
C.ルメール
1安田記念<1>ディープインパクト
ダノンスマッシュ
牡5
57
川田将雅
3セントウルS①
ロードカナロア
アウィルアウェイ
牡4
55
松山弘平
10北九州記念<3>
ジャスタウェイ
2021年ピクシーナイト
牡3
55
福永祐一
3
セントウルS②
モーリス
レシステンシア牝4
55
C.ルメール
2
セントウルS①
ダイワメジャー
シヴァージ
牡6
57
吉田隼人
10
パラダイスS⑤
ファーストサムライ
2022年ジャンダルム牡757荻野極8北九州記念⑰Kitten's Joyウインマーベル牡355松山弘平7キーンラン②アイルハヴアナザーナランフレグ牡657丸田恭介5安田記念⑱ゴールドアリュール

日本の調教馬

タイキシャトル 1997年優勝/顕彰馬

−その他勝ち鞍−
マイルチャンピオンシップ 1997年~1998年
安田記念、ジャック・ル・マロワ賞(仏)1998年

日本の調教馬

デュランダル 2003年優勝

−その他勝ち鞍−
マイルチャンピオンシップ 2003年~2004年

日本の調教馬

ロードカナロア 2012年~2013年優勝/顕彰馬

−その他勝ち鞍−
香港スプリント 2012年~2013年
高松宮記念&安田記念 2013年

外国馬

サイレントウィットネス(香)2005年優勝

テイクオーバーターゲット(豪)2006年優勝

ウルトラファンタジー(香)2010年優勝

スプリンターズステークスの特徴

スタート地点が独特で、3コーナー手前の外回りコースから真っ直ぐにコーナーに入り、中山らしいごちゃごちゃしたイメージというより、位置取り争いはセパレートコースの中でフェアに行われることも影響し、序盤は少しだけ下り坂で加速がつきやすく、一方でゴール前の急な坂の存在もラップを大きく左右するので、まず前半から遅いスローの展開は、ハイレベルのレースほど少なくなります。

スプリンターズステークス 過去10年~20年データベース

 1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1番人気の馬9回3回1回7回45%60%65%
重賞勝利の牝馬5回7回5回48回8%18%26%
重賞未勝利の牝馬0回1回1回17回0%5%11%
古馬重賞勝ちのある4歳牝馬3回1回1回11回19%25%31%
G1掲示板がない牝馬3回3回5回35回7%13%24%
両方の条件に当てはまる牝馬3回1回0回4回38%50%50%
古馬G1勝ちのある4、5歳の牝馬0回2回0回2回0%50%50%
桜花賞を制している4歳牝馬0回0回0回1回0%0%0%
キーンランドC敗戦馬2回2回4回38回4%9%17%
前年の京阪杯勝ち馬1回1回1回4回14%29%43%
池添謙一2回3回1回7回15%38%46%
岩田康誠2回3回0回6回18%45%45%
M.デムーロ2回0回0回1回67%67%67%
馬番が⑧4回0回0回16回20%20%20%
馬番が⑬3回0回3回12回17%17%33%
馬番が④2回3回1回14回10%25%30%

前傾ラップになりやすいレースなので、前も後ろも有利ではありません。
(2020年を除く過去10年は、勝ち馬は全て4角⑤〜⑩番手)

4コーナーで10番手以下にいた馬が勝つのは、前が速過ぎたか、単純に勝ちタイムが平凡でどの馬でも走れるレベルに低下したからであって、その他沢山あるマイル以上の重賞レースと同様、極端な作戦に出る馬に有利な競馬ではありません。
もっとはっきりしているのが、不良馬場の2度しか逃げ切りがないように、前に行きすぎるのも厳しいレース。
無難に5番手以下から、直線でそこまで温存していた末脚を爆発させるのが、勝利に一番近い作戦となります。

歴史上、連覇や2年連続連対、最大はデュランダルの3年連続連対まであるので、スプリンターには走りやすいコースだからこそ、前年の好走で過剰な人気になることが、あまり死角になることのないGⅠというのは、他のレースとは違うところではあります。
サクラバクシンオーは2番人気で最初の勝利を挙げ、翌年が断然支持で連覇という偉業も成し遂げていますが、3歳時にも3番人気で出走して、逃げの手に出るも6着でした。

スプリンターズステークスの攻略ポイント

大まかな傾向はすでに記したとおりですが、決定的に重要なポイントとなるのが、重賞の勝ち負けがこれまであったかどうかではなく、評価をまずされているかどうか。
高評価であるなら、勝つ確率は格段に上がるというほど甘くないとはいえ、重賞を勝っていても人気がないということは、強くはないとされているに等しいわけで、単純能力を競う争いにおいて、その時点で普通は苦しいわけです。
重賞未勝利馬は過去何度か制していますが、GⅠ2着の実績や芝1200Mで人気馬たちと同格の好走率があり、時計が遅くなったので台頭というだけで、その後も活躍しました。
1番人気の勝率が5割を切っていても、3着以内には8割方入ってくる傾向からも、評価されている馬を切るレースではないと言えます。

スプリンターズステークス2023の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

スプリンターズステークスの予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第57回スプリンターズステークス(G1)
グレード重賞(G1)
日程2023年10月1日(日)
発走時間15時40分
開催場所中山競馬場
距離芝1200m
コース右回り
賞金1億7000万円
レコードタイム1:06.7

スプリンターズステークス2023の予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定前)

スプリンターズステークス2023の予想オッズと登録馬

出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気
ナムラクレア浜中 俊牝456.03.71
アグリ横山 典弘牡458.05.12
ママコチャ川田 将雅牝456.05.93
ジャスパークローネ団野 大成牡458.09.44
モズメイメイ武 豊牝354.016.05
マッドクール坂井 瑠星牡458.016.36
ピクシーナイト戸崎 圭太牡558.016.87
メイケイエール池添 謙一牝556.020.08
キミワクイーン横山 武史牝456.022.99
トウシンマカオ横山 和生牡458.026.610
テイエムスパーダ富田 暁牝456.030.511
ウインマーベル松山 弘平牡458.036.912
ジャングロ○○牡458.039.813
エイシンスポッター角田 大河牡458.041.014
オールアットワンス石川 祐紀人牝556.041.315
ナランフレグ丸田 恭介牡758.050.816
ジュビリーヘッド北村 友一牡658.051.717
ボンボヤージ川須 栄彦牡656.075.018
ドルチェモア西村 淳也牡356.085.919
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬4回3回1回12回20.0%35.0%40.0%
先行馬5回8回5回51回7.2%18.8%26.1%
差し馬9回7回7回109回12.1%17.4%17.4%
追い込み馬2回2回7回87回2.0%4.1%11.2%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠2回2回5回30回5.1%10.3%23.1%
2枠1回5回3回31回2.5%15.0%22.5%
3枠1回1回4回34回2.5%5.0%15.0%
4枠5回3回0回32回12.5%20.0%20.0%
5枠4回3回0回32回10.3%17.9%17.9%
6枠0回2回3回35回0.0%5.0%12.5%
7枠5回2回4回29回12.5%17.5%27.5%
8枠2回2回1回36回4.9%9.8%12.2%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ロードカナロア14回11回10回95回10.8%19.2%26.9%
ダイワメジャー10回14回12回86回8.2%19.7%29.5%
アドマイヤムーン8回8回9回45回11.4%22.9%35.7%
マツリダゴッホ5回3回10回56回6.8%10.8%24.3%
ヴィクトワールピサ5回2回1回20回17.9%25.0%28.6%
エイシンフラッシュ5回1回3回31回12.5%15.0%22.5%
キンシャサノキセキ4回6回5回68回4.8%12.0%18.1%
スクリーンヒーロー4回3回4回28回10.3%17.9%28.2%
シルバーステート4回0回1回16回19.0%19.0%23.8%
ルーラーシップ4回0回1回14回21.1%21.1%26.3%

スプリンターズステークス2023 - 過去10年のデータ傾向

人気になると厄介な、順調に叩かれてきた実績馬の不発の多さ

一昨年のダノンスマッシュは、そろそろ、怪しいことが起きても不思議ないなという、約束の休み明けぶっつけローテが、ついに不発に終わった一戦。
レシステンシアの巧みなレース運びを上回り、1210Mくらいしか走らず、完勝であったピクシーナイトの凄まじいまでの才覚に、皆が称賛の言葉を送った。
これは何となくいいとできるが、実は、セントウルSを勝ったG1級たちが、レシステンシアこそ消えなかったが、昨年なら、困り者の極致を象徴的な結果で、常に書き換えていく女・メイケイエール<今年はダノンスマッシュローテを採用>が見事に飛んで、その前は、レッドファルクス初戴冠の陰で、罠にハマったビッグアーサーと福永の沈黙が、異例の謝罪弁明に繋がるなど、色々とややこしかったことが思い起こされる。
ダノンスマッシュは二年続けて、人気には応えられなかった面はあっても、重要前哨戦を勝って出てきて、結果そのものは、大して負けていないのであるから、気にする必要などなかったが、目標を香港に置いた時に、6歳、危険すぎる香港有事直前のマッチアップで、結果、動けなかったことが、転倒防止の最善策に繋がった面もあり、休み明けでも、理想のひと叩きでも、怪しい面はある。
それなのに、前哨戦勝ちの馬ではファインニードルも春秋連覇を決める快走もあるから、高速馬場が続く今年のようなケースでは、重馬場快勝のナムラクレアには一定の配慮は必要でも、大崩れせず、また掲示板内の好走止まりという図が、やや見かけているか。
キーンランドCの重馬場で勝った馬は、大体反動は出るが、時計が速すぎるよりはずっといい。

主なG1直行組の成功パターンとは

レッドファルクスとグランアレグリアは、この路線での実績もあったので、休み明けでも断然の支持。
前走安田記念も好走であった。
グランアレグリアに至っては、リカバリー不足とはいえ、秋にG1を連勝するアーモンドアイを完封していた。
ローテーション的にも、また季節感に関わる、その耐性と順当なステップを踏んだ調整も可能な夏季を股にかける、この4か月というレース間隔は、決して無理もないから、昨年も結果は今一つも、春の王者であるナランフレグが、トラックバイアスラインギリギリの4分どころから追い上げ、安田記念から直行ローテの安定感を示した。
何しろ、秋開催の初期に春秋連覇を果たしたトロットスターも、高松宮記念のあとにブラックホークの逆襲に遭いながら、安田記念を使っていたことをテコにした、理想の休み明けローテを体現。
驚くようなスローのストレイトガールが勝った年の2着も、安田記念で走らなかったサクラゴスペル。
中山で走ったことがある馬なら、メイケイエール、ナランフレグどちらも人気や実績で、妙味ある穴馬に挙げられるはずだ。

セントウルS負けの程度問題は、いつも難解なまま未解決に終わる

好走馬が半分勝っているというのが、前走セントウルS組の本流たる所以ともなっているが、連続好走に関し、勝った馬の前走内容は、2、4、1、1、2着。
当然人気になる事を踏まえた時、前走時の人気も気になってくる。
同順の前走人気であると、これが1、3、1、1、2番人気。
ここまでは何となくわかる。2番目に登場のストレイトガールは、みんなにプレップだと堂々と伝えるような出来で、本番はしっかりと仕上げて勝ったわけだから、誰も文句は言えない。
問題はここからで、アグリは人気通りの2着だったが、他は、人気は兎も角、着順が少し悪い。
全く来ないというわけでもないし、枠の利でイン強襲のラインスピリットは世界のユタカであったという以外に、両方とも人気薄快走の、ちょっとした意地悪問題を演出。
秋開催最初の年が、江田照男スペシャルのダイタクヤマトであるから、これがサマーシリーズ整備前の函館スプリント2着→セントウルS7着で、いずれも、人気以上に頑張ったということもない結果からの、見事な大立ち回りだとすると、このラインスピリット問題は案外、身近なところにある課題と言える。
滅多に来ないが、G1馬だから来るというわけではない。
間口を広げて、様々なタイプを拾っていく3連勝式馬券の買い目には、この組の穴馬は絶対に押さえるべきであろう。

G1連戦の馬になど、あまり食いつかない方がいいのだが…

押せ押せのローテになるのは、南半球産の馬が欧州遠征などを敢行した時くらいで、高松宮記念からの直行がミッキーアイルくらいしかハマらず、蹄に問題を抱えた天才スプリンター・デュランダルを除くと、ずっとG1をせっせと走ってきた組は、案外厳しいのが、このレースの特性。
何しろ、暮れ開催時代に、同時期にフランスG1を制した北米産最高クラスの日本調教馬2頭が、別の若い北米産馬に敗れたくらいで、マイネルラヴの衝撃はそのまま、昨年から続く、吉田豊&パンサラッサ祭りに引き継がれたかのように、世紀を跨ぎ、なお尾を引くくらいのインパクトがある。大袈裟か。
近年は、シュネルマイスターの大不発が、阪神のマイルチャンピオンの再不発に直結し、結局、加速装置待ちだったことが判然とした春の京都・マイラーズCの結果により、どうしても不適の馬が出てくるケースが多いローテでもある。
日本には短距離の番組が、G1を頂点にすると言いつつ、全体の層の薄さも影響して、主だった改革があまり進んでいない。
世界には星の数ほど、短距離G1があって、日本のG3以下と思われる、謎のローカルタイトルも五万と存在する。
そういう番組の構成ではない影響で、滅多に、エース級以外はこのG1ローテをとってこないわけだが、G1で何度も人気になっているメイケイエール嬢にとって、これが5連続出走というのは、本来は一般的なスケジュールにも思える。
日本は高速馬場過ぎるから、昨年のような負け方をする馬も少なくはないのだが、動きが悪くなるのではなく、いつも勝手にパニくるだけの彼女に、実は、最もいいステージを提供するローテーションが、藤浪晋太郎的・細かいことは気にするな、という大胆な挑戦と、それに伴うトライアンドエラーの形でその蓄財を結果に反映する、この方策にも思える。
死ぬほど無駄な手を繰り出し、自滅を重ねたとて、気持ちさえ萎えなければ、誰でも復活する。
回転のいい100マイルを毎度繰り出せるパワーピッチャーではなれていないが、たまに出る103マイルくらいでシュート回転する破壊力あふれるパワーピッチができるメイケイエールには、一度見放されたこのくらいの感じの雰囲気がちょうどいいのだろう。
藤波投手の復活と覚醒に役立ったフォーシームの回転軸の傾きと投球フォームとの結びつき同様、メイケイエールに必要な馬具、特にハミに関連する指示系統の問題解決法と、根本的な気持ちの部分にプラスに働く心身のフレッシュさとの関係性は、両者、驚くほどよく似た成否のバランスとなっていて、胸騒ぎがしてならない。
両者にとってのジョーカーは、スライダーと内枠。
大一番では頼りにしない方がいい、時に猛毒となって、両者を襲うものだと忘れはならないが、メイケイエールの枠順はまだわからない。

スプリンターズステークス2023- 出走予定馬の血統/成績/タイム

春G1連続惨敗という重い事実に反し、その救済の道が見つかったメイケイエール

メイケイエールの血統

何度もこの血統表を眺めた人も多いと思うが、母母ユキチャンの半妹であるブチコを母に持つママコチャとは、当然同族。
しかし、ノーザンファームから出された母シロインジャーは、自身の戦績が振るわなかったというよりも、健全な馬産を行うための間伐の一環なので、デアリングタクトの母が社台グループの手から離れて、ああいう結果になったということでは、自由度が高まって、価値ある日高の生産活動に寄与することに繋がった。
完全にハービンジャーを持っていることを、失敗の位置づけにしたようなところにきて、デインヒルの4×4と同時に、サンデーサイレンスを3×4で配合できるミッキーアイルという存在は、まさに渡りに船。
母の初めての産駒であるこのメイケイエールは、デビュー3連勝を果たし…。
競走馬的には死線を彷徨った期間も長く、無駄の多いキャリア内の黒星増加に、このクロスは影響を及ぼしたような面がある。
輸入繁殖のウェイブウインドは、アサティスやデュラブといった、ダートの傑物を多く出した欧州芝路線の出身の北米産馬が目立って活躍したトップサイダーの直仔であり、この種牡馬は、ヌレイエフやサドラーズウェルズと近いラフショッドのファミリーで、それが成功の要因となっている。
一歩間違えるとダート…、ユキチャンもブチコもそうだったが、本質芝向きのキングカメハメハやミッキーアイルの血を得たソダシとママコチャの姉妹に、このメイケイエールは…。
いや、ミッキーアイルはたまに快速系の牝系と合わせるとダートのスプリンターを出すから、と言って行くとキリはないので、顔も体つきもビジュアル系マイルクイーンの体をなしておいて、内実、不安障害にも似た心理的弱点により、短距離しか走れないということで、最後まで行くのであろう。
こういう馬の方が、タフなスプリントG1は合うはずなのだが、さて、気持ちはキレていないだろうか…。

不安も何も、ここ2走の春季大レースと、ほぼ、アーモンドアイ的不発に終わったことが確定的だった昨年このレースにおけるメイケイエールに、今や、勝利の女神はついにソッポを向いて、ガン無視状態。
掛かるだけで、エンジンは高性能…、という言い訳じみた重賞6勝の実績に疑いナシの、字面だけ素晴らしいキャリアに対し、案外絶望的な着度表でもある【7・0・0・9】という、かなりワイルドな戦績に見る本質は、可憐な容姿に対し、あまりに哀れな実相を反映したもので、ある種、全く無機質な数字の羅列となっていない。
いつも誰かが、彼らの・彼女たちのために、せっせと働いてくれるはずと、どこか安直に過ぎる楽観論を陣営が、騎手任せにしていると、
「競馬以前の問題だね」
と、某名手に皮肉られる始末。
あの3歳春から本格化した、安定の暴発事象は、恐らくは、心身の発達と同時に、人間も同じように備えるアイデンティティの自認というか、自我の芽生えによる、抗う気持ちというものが人間に対し、レースの本質を否定するような振る舞いで、継続的なアンチテーゼの姿勢が定着化することで、我慢すべきものを、未だそこまで耐えて見せようと思えないままなのであろう。
素直さを前面に出すならば、故障から復帰後のレッドベルオーブ<天下のダービー2勝トレーナーを思考の沼へと押しやった、たいそうなとっちゃん坊や>のように、ゲート難の解消を最優先に、恐らく、本質ワンターンの1600・1800向きの本能を引き出す先行型に育てればよかったが、武英智調教師がまだ若いとかどうか以前に、安田記念で内にナランフレグ、外がジャックドールというところで、煽って出てしまった心理的弱点のようなものが、永久に解決できない雰囲気であると察した時、無駄は多くとも、短めの距離で戦い続けるより他、解消できない問題=なかなか勝てないという部分を、納得した形で結果で示すことにならないと、結論が出てしまったのであろう。
サクラバクシンオーだって、考えてみれば、アンバーシャダイという名ステイヤーの甥にも関わらず、1400以下で徹底して好走する短距離型として、結果的に、トウショウボーイやキタノカチドキにできなかった直系の発展を見せつけることに成功したのだった。
その父サクラユタカオーは、レース史上3年連続でレコード決着となった秋の天皇賞を、ものの見事に完勝して見せたが、本当はもっと短い距離が合っていた可能性もある。
この馬の父であるミッキーアイルは、徹底先行ということで、サクラバクシンオーにも見劣らないものがあったマイルG1の2勝馬。
ディープ産駒の中で、初期の段階ですでに、短い距離で結果を出した馬だった。
思えば、その本質も最も受け継いでいるのが、このメイケイエールなのだと思った。
ナムラクレアはいつも文句を言わず、むしろ、合わないようなイメージの厳しい重馬場を幾度も克服し、前走は洋芝で圧勝だった。
渋馬場の高松宮記念で好走している父だが、翌年のビッグアーサー<サクラバクシンオー産駒>が快レコードで制した時、このミッキーアイルは2着だった。
そして、次走に選択のスプリンターズSも同じ着順。
渋く活躍というほど、常に堅実なイメージはまるでないが、その雰囲気はナムラクレアに受け継がれたのだろう。
ただ、孝行娘はいずれも小倉2歳Sの優勝馬であり、また、3歳の時点で古馬に伍して戦えることを示した才女同士。
個性に若干のというか、性質の部分の差異はあろうと、ナムラクレアにできることがメイケイエールにできないこともない。

スプリンターズステークス2023 - レース展開と最終予想

一緒に走ったのは昨年のこのレースが初だったが、高松宮記念でも結果に大きな差が出たことで、極端な能力の違いが出たとするのもおかしい。
ナムラクレアの雨馬場のヴィクトリアマイル走破タイムは1:32.9、メイケイエールの安田記念は、普通に闘えないいつもの感じでも1:32.7だから、同じソングラインに完敗で、今回オッズにかなり差が出る状況は、むしろ狙い目。
死角にあった気性難の部分は、苦しい展開必至の中で、内枠での発走はやる前からちょっと…、という見えざる力が働いたという不運もあった。
香港でマクドナルド騎手が乗っても、しっかり掛かったのだから、それも展開予想に織り込まねばならないが、本当は、グランアレグリアのように流れに乗る乗らないではない形で、前半のペース次第で、自分の位置を確保すればいいタイプなのだろう。
32秒台で展開した、ほとんど小倉重賞だった昨年のセントウルSは、あまりにも掛かるから、滅多にない上がり1位。
超高速レースだったが、急坂があるにもかかわらず、自身の上がりは32.9秒だから、アーモンドアイが楽勝した時のような競馬だった。
近親のソダシよりもかなりキレるが、その分、モタモタ感が異次元というメイケイエールに、普通の枠を当てはめること自体、まるで不適当。
唯一、この馬にとってかすかに残る可能性の一端が、池添騎手の存在もさることながら、キーンランドCで敗れた時以来、一度も、直線に入るまでは先頭に立っていないこと。
セントウルSの内容も含め、決め手のある差し馬であることだけは、恐らく揺るがない。
行かせたというより、普通に先行できそうだと思って、好位付けに出た昨年は、乳酸溜まりまくりで全身疲労真っ只中の体調ではダメだったという以前に、行ったのが悪かったのであろうと、ふと思った。
香港も同じ。
ただ、今回はフレッシュな状態だから、行きたい分はある程度抑えずに、自由にさせるのがいい。
セントウルSの1:06.2で圧勝後、一度も4着以上に入っていないが、最もハイレベルだったはずの香港スプリントで、厳しいスプリンターズSを経た後の、内容ある5着には、本来、今年でもまだチャンスが残るという結果に思えるものがあった。
雨に始まり、ヴィクトリアマイル回避後の安田記念と、まるで己の運命を他力本願状態とは、神仏に全権委任なのだから情けない限りだが、春はダメでも、夏のデビュー3連勝の2歳時、鬱屈した春を経て、スプリンターとして生きる道を勝ったピクシーナイトと同時に確立した一昨年のこのレース、そして、昨年秋緒戦の独走劇。
終わった馬ならば、もっと淡白に序盤からじっとして、頑なに動こうとしない、昨年のこのレースのような挙動であるはずだが、まだ、無駄ではあっても、走ろうとはしている。
マイラーの姿かたちだが、グランアレグリアがそうであったように、自分の型にハメて、この高速レース必至の一戦を制し、皆を再び驚かせてほしい。

スプリンターズステークス 過去の予想と結果