パロクサイド系の特徴

日本の名牝系・エアグルーヴ一族の底力

掻い摘んだくらいでも、これほどまでのボリュームがあるパロクサイド系。
特に、エアグルーヴの産駒には、他にも種牡馬や繁殖牝馬になった後継者がいるので、ダイナカール−エアグルーヴのホットラインは、社台系のグループの発展のみならず、日本競馬の成長に最もダイレクトな影響を与えたと言っても、過言ではないでしょう。
牝祖・パロクサイドの輸入から50年ほど、エアグルーヴの初仔であるアドマイヤグルーヴ誕生からの20年が、アスリートで言うところのゾーンに入った状態となっています。

また、その半弟にあたるルーラーシップは、ブレブレの競走生活ではなく、サンデーサイレンスのない血統馬として、本来果たすべき種牡馬として求められる仕事を全うするように、早くから活躍馬を出しており、アジア・オセアニアの芝のトップレースで結果を出したことが、パロクサイド系のイメージとそのまま合致するのも、実に印象的でもあります。

短距離で速い馬はかなり珍しく、血統のイメージ通りに中距離戦で活躍する馬が、その血を繋ぐ役割を果たし、気難しい馬が多いせいか、長い距離にもフィットしないのが特徴です。
キセキは道悪を克服して菊花賞を制覇、という父譲りの性質を示しつつ、最終的には父似の中距離適性が顕在化していきました。

パロクサイド−エアグルーヴラインの末裔では、この2頭に注目しなければなりません。

ドゥラメンテ<種牡馬・父キングカメハメハ>

皐月賞の勝ちタイムは、当時歴代2位の1:58.2。
そこで負かしたのは、リアルスティール、キタサンブラック、サトノクラウンと2歳王者のダノンプラチナ、直後に3歳マイル王になるクラリティスカイという豪華メンバー。
おまけに、前出のビッグネームはダービーでも、2:23.2のレコード走で完封しています。

ディープインパクトの次に強いダービー馬を挙げるとすれば、ウオッカやオルフェーヴルと同じくらい、間違いなく彼の名が挙げられますが、コントレイルが3歳の年にこういう話をするのは、少々虚しさも伴います…。
その速さも力強さも父譲りなのですが、瞬間移動するような激烈すぎる瞬発力は母アドマイヤグルーヴとこの一族に伝わる伝家の宝刀。

2020年からドゥラメンテ産駒がデビューして、2歳種牡馬ランキングで常に勝利数上位と好発進。
まだA級馬は出現していませんが、ドゥラメンテの本気はこんなものではなく、エピファネイア産駒のような爆発的な能力を発揮するタイプこそが輝くことでしょう。

スカイグルーヴ<父エピファネイア>

母父キングカメハメハ<ミスプロ系>
サンデーサイレンス4×3<今後のトレンド>

昨秋、スカイグルーヴが東京芝2000Mの新馬戦で繰り出した、
前半62.3秒→12.5−12.5−11.8−11.2−11.1=2:01.4
というあり得ないラップを、馬なり逃げ切りの形で叩き出し圧勝の結果、将来を嘱望とされたこの血統馬が大苦戦中。

格上挑戦の京成杯も確勝級のフローラSも、本来の力を発揮できずに完敗でした。
彼女の3代母にあたるエアグルーヴと叔父にあたるドゥラメンテは、新馬戦を負けたにもかかわらず、オークス、ダービーを各々制している点がミソ。

祖母アドマイヤグルーヴが新馬戦から3連勝で桜花賞に挑み3着。
残る3歳タイトル2戦も、結果は7、2着。
晩成型の特性を受け継ぐ者がこの血を継承する傾向があって、エアグルーヴもドゥラメンテも無理が祟って、3歳のうちに故障しています。

このままでは競走馬としての大成に疑問符が付きますが、期待の繁殖牝馬としての能力は、いいもの全部乗せの副作用を孕むものの、代を経てからでないとダメとするのは早計で、サンデーサイレンスの継続クロスを取り込みやすいので、キレの相乗効果を期待できる面も秘めています。
また、この手の血統馬を国内に留める必要もないので、意外な大物とのカップリングを画策して欲しいとも思います。