ダーレーアラビアン系の特徴

まず、主流中の主流の立ち位置の解説からしておきます。

ダーレーアラビアンはゴドルフィンバルブ、バイアリータークと並び三大始祖と呼ばれています。
ここ数年の日本競馬界ではダーレーアラビアン系の割合が99%と言われており滅亡している血統も多い中、比率的にも圧倒的だということがお分かりでしょう。

日本競馬史上で史上初の七冠馬であり顕彰馬にも選出されて有名になったシンボリルドルフも23代前はこのダーレーアラビアンだったというわけです。

このように数多くの種牡馬たちが活躍しており重馬場適性やニックス、相性の良い距離やコースなど様々なタイプが生まれてきましたので下記で詳しく紹介していきたいと思います。

ファラリス

ダーレーアラビアン系の中では目立たない存在で、速さが売りというくらいの魅力しかなかったファラリスは、初期に30戦14勝のファロスを送り出し、その全弟であるフェアウェイがより有能な成績を残すと、ファラリス自身の評価は上がるも、今度はファロスが用なしと、ドーバー海峡の対岸へ追放の憂き目に遭います。
ところが、それを好機とセントサイモン直系の曾孫である繁殖牝馬と掛け合わせたのが、後にリボーを作るF.テシオで、そこからネアルコという偉大なる競走馬が誕生。
イタリア国内でやりたい放題の14戦で、当然の無敗の結果に加え、

  • ・ロイヤルチャージャー
  • ・ニアークティック

というすぐに結果が出せないまでも、快速が売りの後継種牡馬を残し、時代の趨勢そのものを一転させてしまうのでした。

ファラリス自身は4代父のベンドアから優秀なスピードの継承能力を授かったとされ、ベンドアが仔の代から傑出馬のオーモンドをセントサイモンと同時期に登場させると、セントサイモン旋風に呑まれながらも、ファラリスと同じ齢で代を一つ経た代から、

  • テディ<後記・ダマスカスの祖先>

を出して、これが独自の発展を遂げます。

ベンドアから遡ると、今度はその3代父に当たる「奇跡の馬」と称されたバードキャッチャーからの分岐で、

  • ・スウィンフォード<後記・モンズーンの祖先>

が欧州圏を中心に再興の兆し。

最後にバードキャッチャーの祖父で、基礎種牡馬に位置づけられる玄孫のエクリプス(Eclipse) から見ると曾孫のホエールボーンから分かれた、

  • ヒムヤー<後記・ブロードブラッシュの祖先>

が登場し、これは北米圏で血の活性化に役立てられて、生き残っていきました。

ファラリス系の大分類

ファロス−ネアルコ

これをまた細分化すると、

ロイヤルチャージャー−ターントゥ−ヘイルトゥリーズン


他には、
ターントゥからサーゲイロードを経たラインから、初代マイルチャンピオンシップ覇者・ニホンピロウイナーが登場。

ニアークティック−ノーザンダンサー
他には、
種牡馬トランセンドがいるアイスカペイドのラインがある。

ネアルコ直仔にナスルーラ
他には、トロットサンダーが出たダンテ系などがある。

シックル−<2代>−ネイティヴダンサー
→レイズアネイティヴを経て次に繋がる。

※ネイティヴダンサー系は芝向きのエタン、ダート快速系のレイズアネイティヴがいる。
その他は、
有馬記念圧勝のリスグラシューの母父がネイティヴダンサー直系。
有馬記念2勝のオグリキャップはどれも経ず、ネイティヴダンサー直系の孫。

その他では
トムフール系<ファラリスの曾孫>
ここに挙げた全ての系統は、根幹血統のノーザンダンサーとは好相性で、好影響を与えつつも、同時に淘汰される運命にもあります。

ダーレーアラビアン系の傍流

大主流を形成するポイントが比較的近い世代にあることを説明する中で、ダーレーアラビアン系の大分岐点がいくつかあったことを紹介しました。
いよいよ、これにて総まとめのダーレーアラビアン系の完全異系扱いとされた傍流血脈の解説を最後に、ようやくゴールが見えてきたことをお伝えできるわけです。
改めて、競馬が近親交配の積み重ねによって、血統の価値を見出してきたかがよく分かると思います。

では、前記したその他の傍流を挙げていきます。

ダマスカス(テディ系)

芝向きのテディから代を経て北米型ダート血統へと発展!

ざっくり言うと、ノーザンダンサーが出てくるまでは欧州芝向きが主流で、USAスターになったダマスカスが登場する約50年ほど前から、完全にテディ系自体のトレンドがダート向きのイメージに塗り替えられて、スピード優先の巧者が直系を延ばしていきました。
前に行く馬が生き残ってきたので、直系は速さが売り物となりますが、ほとんどそれがいなくなった現在、主流系統に取り込まれながら活力を与える元気玉のような役割を果たし、存在感を出しています。

モンズーン(スウィンフォード系)

芝でないとダメ!!

本流のUKブランドでも、ネアルコが登場した辺りからは、自慢のスタミナを補給する方向で特化して、世界中に散らばったものが絶え行く中でも、ドイツで熟成されていったモンズーンと前後して繋がるラインだけが、スピード能力を他から受け入れる才能を持ち、直系はこれくらいしか主要国では残っていません。
直仔のノヴェリストが輸入されていますが、やはり、欧州圏で流行の血統ほどの好相性ぶりは発揮できていませんが、母方に入っての重しとしては、セントサイモンやハンプトン各系統の種牡馬と同格です。

ブロードブラッシュとホーリーブル(ヒムヤー系)

北米で独自発展のエクリプス系源流!

徹底して色のない独立独歩のサイアーラインを形成したヒムヤーの子孫たちは、時に盛り上がりを見せる名馬の登場で、150年以上も北米というかアメリカ国内で細々と血を繋ぎ、15戦無敗の快速馬・コリンの血を引くブロードブラッシュがGⅠで活躍すると、珍しくコンサーンというチャンピオンホースが登場して、ヒムヤーのところから分岐した子孫で勝率8割超の名馬ホーリーブルが、2歳王者のマッチョウノを出すと、ここから再興の兆しを見せ、GⅠ馬の代重ねに連続成功中。
日本でもダノンレジェンドが活躍して、新種牡馬として現在活躍中です。

ダーレーアラビアン系の中の話ですが、正真正銘最後の紹介となる始祖そのものが違う2系統と比べても、その個性が際立つこの3系統は、ハンプトンやセントサイモンのラインとは異なり、本流という概念からは、自身のラインは守れても、主流系との張り合いで負けてばかりなので、常に他とは分断された存在であり続けました。
同時に、自分の力で何とかしなくても、出番がたまにやってきては一仕事をする。
競走馬の中にはそういうタイプも多いですが、彼らなりの競馬に対する解釈があるのだと思えば、我々の思考にも豊かな価値をもたらしてくれるのかもしれません。