オークス(優駿牝馬)2025【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧
【レース結果速報】1着カムニャック(14.3倍)2着アルマヴェローチェ(3.4倍)3着タガノアビー(49.0倍)
レース名 | 第86回オークス(優駿牝馬) |
日程 | 2025年5月25日 |
優勝馬 | カムニャック |
優勝騎手 | A.シュタルケ |
勝ちタイム | 2:25.7 |
馬場 | 良 |
3連単配当 | 130,640円 |
オークス(優駿牝馬)2025 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 着差 |
---|---|---|---|---|
1 | 15 | カムニャック | 2:25.7 | - |
2 | 1 | アルマヴェローチェ | 2:25.7 | アタマ |
3 | 13 | タガノアビー | 2:25.9 | 1.1/4 |
4 | 3 | パラディレーヌ | 2:26.0 | クビ |
5 | 5 | リンクスティップ | 2:26.2 | 1.1/4 |
単勝 | 15 | 1,430円 |
複勝 | 15 | 340円 |
複勝 | 1 | 160円 |
複勝 | 13 | 700円 |
枠連 | 1-7 | 1,590円 |
ワイド | 1-15 | 900円 |
ワイド | 13-15 | 3,890円 |
ワイド | 1-13 | 1,900円 |
馬連 | 1-15 | 2,470円 |
馬単 | 15-1 | 6,700円 |
3連複 | 1-13-15 | 21,380円 |
3連単 | 15-1-13 | 130,640円 |
オークス(優駿牝馬)2025 - レース後コメント(騎手/厩舎)
「ありがとうございます! よろしくお願いします! 素晴らしい! 頑張ります!(ここまで日本語)前半ペースがゆっくりでどうなるかと思っていたんですが、直線に入ってから前が開いて、そこから追い出した時の反応が素晴らしかったです。最後は岩田さんの馬(アルマヴェローチェ)との戦いになりましたが、気持ちを切らさずに最後までしっかり走ってくれました。すごくレベルの高い馬だと思います。今後が楽しみです。1997年のジャパンCで初めて日本で乗ってからずいぶん時間がたちましたが、日本でGⅠを勝つのが夢でした。それをかなえることができて、ゴールを切った瞬間は本当に素晴らしい気持ちでした」
※優勝したA.シュタルケ騎手のコメント(カムニャック)
オークス(優駿牝馬)2025 - レース結果動画(YouTube)
オークス(優駿牝馬)2025 - 回顧
カムニャックの血統
皐月賞のレース中に故障したため、ダービーへの参戦が叶わなかったブラックタイドの娘。 3代母がこのレースを武豊騎手と共に制したダンスパートナー。 そのファミリーの説明は今でも不要なわけだが、一つ下の弟が、翌年のクラシックを沸かしたダンスインザダーク。 ダンスパートナーとの姉妹制覇を狙った2004年の桜花賞無敗制覇がダンスインザムード。 全て、武豊騎手と共に、重要なクラシック戦を一つずつ制した名馬たちである。
父にとって、夢が叶うならば…、というダービーの参戦の可能性を、キングカメハメハという絶対的な存在によって、ほぼチャンスを奪われたようなハイレベル世代であったが、今の流れの作る、トップサイアーのラインに対抗するように、サンデーサイレンス<ダンス姉弟妹らの父>が、カムニャックには2×4と掛かる。 強いクロスであると同時に、不安定化の最大原因にも繋がるところで、川田騎手と共にデビューし、前走からドイツの12F戦の戦いを熟知するベテランのシュタルケ騎手を配し、この答え。 血統的な強みも、若干の死角も抱えるこの血統馬は、名伯楽のタクトにより、名手と共に、味わいあるクラシック制覇を果たすことになったのは、何も偶然ではないということを、この血統表が雄弁に物語っている。
1000M通過が60秒ちょうどで、逃げたのは桜花賞と同じエリカエクスプレス。 ルメール騎手が若干注文を付けたようなエンブロイダリーは、すぐ内にアルマヴェローチェを置く絶妙なポジショニングだったことで、どうも行く脚があまりつかなかったというか、動き出しのタイミングをルメールに任せたようなミルコの判断もあったのだろうが、2歳女王の手応えが、パドック気配の通り、素晴らしい雰囲気だったように、この時点で、大概のレース展開の予測、直線の攻防の趨勢というものは、一定程度、その展開の推移からも、容易に予測がついた。
デムーロ騎手とすると、エンブロイダリーと共に押し上げて行くイメージであったのだろうが、パートナーのリンクスティップも、想定以上に反応が悪く、馬場なのか、それとも距離なのか…、という不可解にも等しい完敗。 伏兵陣にインを突かれて、抵抗もできなかったから、臨戦に至るキャリア形成にまで、わずかな敗因の要素の一つに挙げられるほど、期待を裏切る結果だった。 思われたよりは、スケールの点で…、という印象も正直残った。 陣営も筆者も残念無念である。
エンブロイダリーも最後は無抵抗状態で、ライバルにしこたまおしくらまんじゅうの洗礼を浴びていたから、残念ながら、絶対的な才能と含めて、1800くらいまでの距離適性が正当なジャッジとなるような負け方。 それは今回も期待ほどは粘れなかったエリカエクスプレスもであり、オークス伏兵の1番手に挙がったレーゼドラマなども同じだろう。 少なくとも、一度も崩れていた若武者駆る才能・アルマヴェローチェとの勝負付けは、総合力の一点で、完全にこのレースでついてしまったようなところもある。
とはいえ、渋残りの東京。 そうそう、海外経験を二つ重ねていた先週のアスコリピチェーノのような、タフネスな姿を見せられる才能は限られる。 その中で、一際レースで輝きを放ったのが、オークスを勝つために生まれてきたようなキャリアとなっていた、トライアルホースのカムニャックだった。 渋馬場の中長距離戦、主に、2400Mの12Fカテゴリーにのみ、欧州圏における覇権の激しい争いを制するために、特化した距離体系を形成し、また生産にも特異なファミリー重視のインブリードに頼らない健全な姿勢を長く貫いてきたという下地を、このレースで日本のクラシックレース、G1級競走そのものが初めての勝利となるシュタルケ騎手が制する展開は、ある種、血統に恵まれたようなところもあるカムニャックを委ねられたその瞬間から、勝ち運を独り占めしていたのかもしれない。
昨年の桜花賞馬・ステレンボッシュも、欲しいところを目指す過程で、堅実さも武器になったが、大きなタイトルをいくつも奪えないでいるように、素晴らしい2歳女王戴冠となったアルマヴェローチェには、その点の強みがなかった…。 勝負の世界、どうにならないことは沢山あるが、ベテラン騎手にそうしたテクニカルな要素を多分に求められる場面で、このようないい流れが生まれた時、外すことは絶対にない。
シュタルケ騎手は、猛烈に過ぎた、あの怒涛のG1・3連続圧勝で凱旋門賞を奪取したデインドリームとのコンビで知られるが、この著名なベテランも、その後に、ボーナス狙いのジャパンCでブエナビスタの逆襲に泣いてから、日本でよく見る外国人騎手になっていった。 そういえば、昨年の夏前半にフランスで武者修行に赴いていたのが、岩田望来騎手である。 何が足りないということではないが、100回に1度くらいはハマって勝ち切れる可能性がある乗り方を、今のうちに学ぶべきなのかもしれない。 とはいえ、こう抜け出しにも等しい、完璧な抜け出しでの惜敗は、自分自身に掛かる責任の重荷として、最も厳しいものをもつから、苦しいのは事実。 だが、今のベテランはもっと不可解な完敗で、G1敗戦後に、散々叩かれた経験がいくらでもある。
何も悪くないのに、どうすればよかったのか、ずっと謎を解かさせる場面に再び出くわしたというのは、不遇でも何でもない、G1を勝ち切るために必要な何かを求め、また彷徨い始める合図でもある。 少し上の世代である目標でもあるはずの坂井瑠星騎手や横山武史騎手らも、ついこの間、そうしたことを経験してきたところで、何度か、その有意義な敗戦を、他との戦いの中で、勝利という結果で糧にしたことを示していた。 まだ、早いのではなく、こうした場合の解釈について、しっかりと考察していったとき、仕方のないことが理解できると、急に、そのスタンスが大胆に、かつ、大きなジャッジをしやすくなるような心理面の余裕にも繋がる。 連続して短期免許のベテランに敗れたのは何とも不運だが、今度また彼らにあった時に、尋ねてみるのもいい。 自分は何が悪かったのか。 こちらの馬の方が素晴らしかっただけだよ、と言われるだけだろう。 自分もそう言ってあげられる先輩になっていきたい。
内の方から、炎の連闘を経た、あのタガノアビーが現れた。 パドック気配がどうこうではなく、馬体重が減ったとはいえ、3走前の未勝利戦を勝ち上がった時の作りになっただけで、連闘のここ2走は同じ496kg。 お手馬であるセキトバイーストが、京都のメインを制していたことに気を良くしたかのように、藤岡佑介騎手が鮮やかに、伏兵の差しに徹し、見せ場を作った。
カムニャックのシュタルケ騎手が、オークスの黄金ポジションに近い、中団やや外目の丁寧な仕掛けをすれば、まず力を出し切れないということはないという理想の型にハメこんだのとは反対に、決め打ちにも近い4コーナーイン潜り込みの強襲による、ロスの最小化作戦は、同じようにインを突いた同期騎手の丹内さん<川田騎手より勝っているので、今はさんづけになっているようだ>が、鮮やかに追撃してきた3着争いの一点でも、馬場を苦にしない<自身は未勝利で初勝利、父アニマルキングダムはケンタッキーダービー制覇翌年に、オールウェザーのドバイワールドCも制した稀有な存在、どうに見ても欧州圏で活躍しそうな配合という点で有名になった馬>という性質が、良馬場に回復でも、芝が飛ぶ厳しい条件にフィットしていた。
良馬場の開催で2分25秒後半の決着は、近年では一度もない最遅級の記録。 勝ち馬が速い上がりを使ったが、所謂、ゴルシワープに近い戦法を獲ったダガノアビーは、賞金面では未だに苦しいものの、恐ろしくタフな、かつてのディアドラに似た軌跡を辿っていく可能性にも期待をしたいところだ。 こういう性質の馬は、何代目が登場したところでも、ファンは喜んで受け入れてくれる。 しっかりと疲れを取ってほしい。