チャンピオンズカップ2015 回顧

チャンピオンズCの行われたこの日曜日の開催は、GⅠが行われる競馬場であるということ以上に、外国人騎手や日本の最高レベルの騎手が人気の有無に関係なく、とにかく腕の良さを競うような競馬が続いていた。

直前の準オープンを制した若手の中井騎手や、この人も忘れてはいけないGⅠジョッキーの古川騎手が勝った新馬戦は、共に短距離戦での逃げ切り勝ち。

騎手の腕がどうこうではなく、作戦で勝ることは、特に、短距離での戦いの中では重要なポイントとなるから、それが決まれば鮮やかに勝てるのだ。

しかし・・・。

ちょっと拍子抜けしてしまうようなサンビスタ抜け出しのゴールシーンは、確かに誰よりも直線で輝いて見えたのだが、騎手の腕というより、人気馬の死角が、全て敗因となるような展開になったのだがら、ある意味では仕方のないことだし、中央競馬のダート戦は、言われるほど直線が長くはないにせよ、中京コースは坂もあるから、レースの質が上がったなら、東京のように差し馬に有利な展開にもなる。

ただし、それはGⅠ以外のレースの話。

GⅠでこういう波乱になるには、理由は必ず存在する。

コパノリッキーは、煙幕を張って番手からの競馬でもいいとする陣営の意思が伝わってくるような武騎手のコメントのニュアンスであったが、ガンピットが外枠を引いたことで、敵がコーリンベリーや最大のライバルでもあるホッコータルマエだけではないことを暗示していたようにも思う。

出方を見てではなく、自身がしっかりとスタートを決めてから何をすべきか改めて考えていく。

昨年の出負けのこともあるし、フェブラリーSは惨敗のリスクを背負って、内から進出して出遅れをカバーしたりもした。

大井の時のようにはうまくいかず、外国人騎手が刺客となり、ホッコータルマエには格好のランドマークと化した逃げ馬は、もう直線で自分の競馬などさせてもらえるはずもなく…。

ホッコータルマエは、ソラを遣うことで有名な馬。

おととしは、見事にその穴をつかれて3着に終わった。今まで一番厳しい競馬をしたのではないのか。

ノンコノユメもそれは同じ。春の大井で主役になった彼らは、いつも以上に前を意識し、早く仕掛けていくことを考え、自分のフォームを崩して勝負した。

スピード勝負というより底力勝負。

地方のGⅠより、中央の2GⅠの方が、展開のパターンが多いから、波乱も多い。

それでも、ノンコが何とか見せ場を作って、ホッコーの内を掬ったとき、もう実は好位のインで脚を溜め、余力十分でホッコータルマエを外から豪快に交わしたサンビスタが、あっさりと勝負を決めていたのであった。

タフな牝馬ではあるし、昨年の4着字は大変褒められた牝馬チャンピオンでもある。

中京は、差しが届きにくいのではなく、ロングスパートが利かないコースなのではないか。

そうなると、果たしてこのコースがフェアな条件となるのか。

正解は、まだ出ていない。

ただ間違いなく、時計は出ない。このメンバーで、60秒台の1000M通過。

阪神であれば、49秒台中盤の決着になっていたはず。

芝もダートも、時代の逆をいくタフなコンディションを保持し、ここまではそれを歓迎する向きもあったが、今回確かなことが分かった。

「逆転のチャンスが生まれるのは、この競馬場、この距離だから」

これまでの時計を大きく更新して、というダートGⅠ独特の暗黙のルールが波乱になっても新星の登場を歓迎する材料となっていたのだが、明らかに他のコースよりも求められる時計は遅くなる。

ノンコにしたら、時計がもっと速くなる展開の方が、持ち味の決め手が更に活かされた可能性を最初から奪われた格好になる。

しかし、まあ6歳牝馬がダートチャンピオンをまとめて葬り去ったのである。

超一流騎手を好騎乗をいちいち褒める必要はないだろうが、サンビスタのレース選択に迷いのなかった陣営の判断には、もう脱帽というより他ない。

きっと、阪神でも東京でも、彼女に相応しい条件とは思わず使ってこなかったはずだ。

今年になって、これが9戦目。

体調に自信がなければ、GⅠを4つも使わないだろう。

改めて、サンビスタ&デムーロの劇勝を快挙と称賛すると同時に、厄介なダートGⅠになってしまわないかと不安に思う気持ちが生まれてしまった。

最終のダ1400戦は、アッゼニ騎手が制した。

もはや、本当に腕比べをしていたのかさえ、今では疑わしく思えてきた。