フェブラリーステークス2018 回顧

最後の最後に強烈な脚を使ったのは、かつて道悪でしか走らなかったキレ馬・ノンコノユメだった。

去勢あり、それによるモチベーションの低下、当然のスランプ。

1年前はこういう図は想像できなかったが、少しずつ自分を取り戻していき、武蔵野Sのどうにもならないスローペースでも4着にまで追い上げていた。

根岸Sの驚愕の追い込みには、皆がびっくりしたわけだが、今回は想定以上のハイペース。

そして、古馬になって少しズブさが出たことが、こうした望外の強烈な展開にも、十分に対応できる要素になった。

トータルの時計が速くなりすぎるのは、道悪得意の追い込み馬には苦しいに決まっている。

とはいえ、良馬場で特に例年以上にタフな時計の掛かるコンディション。

一度は、ゴールドドリームと鬼神・ムーアに差し返されたが、首も完全に上を向いてしまって、いつも以上に苦しいところから、腕比べで本来負けることはほとんどない内田騎手の叱咤に、最後もうひと伸び。

まだ立派な男の子?だった時代は当たり前に使えていた素晴らしい末脚を、非常に厳しいローテの中でまた繰り出して見せた。

キャリアがないとできないこと。

得意距離とはいえ、苦手の要素が詰まった大舞台で、久々に6歳以上の馬として、このスピード&パワフルマッチを勝利した。

それにしても、ニシケンモノノフをケイティブレイブが追いかけていたのは見えたし、テイエムは下手をすると1400ベストくらいの配合だから、少し行きたがっていたとはいえ、良馬場で時計がいつもより2秒近くかかっていたくらいの馬場質だから、東京の重賞で上がり3Fが37.7秒にもびっくりでも、やはり、その影響を与えた<34.1-45.8-58.3>というラップは、筆者の想定を遥かに凌ぐ、破壊的なハイペースであった。

行くしかないと内枠を引いた時点で考えていただろう名手たちが、中央でもGⅠを勝ちたいと勝負を掛けたのだが、外枠に人気馬や有力候補がうようよいたことで、タフな馬場であると認識たことが、10年に一度レベルの猛烈なハイペースを作る要因となった。

同時に、1:36.0という、普段なら34秒台中盤の時計になっても何ら不思議ではない展開での平凡な勝ち時計は、この直前に行われたヒヤシンスSで明らかに役者の違う勝ち方をしたスマハマは、ミドルラップから遅めの展開で1:38.5であったから、いかに特殊な馬場だったかが良く理解できる。

先達てのチャンピオンズCを基本軸にレースプランを練ったが、全く違うファクターで、物事が全て決まっていき、地方のGⅠでもなかなか起きえない不思議な追い込み競馬が展開されることになった。

その中で、期待のヴァイスリージェントの血を持つインカンテーションが、武蔵野S以上の動きで快走の3着。

武蔵野Sは平凡も、JBC諸競走の除外馬多数で、やけにオープン特別的雰囲気漂う取っつきにくい競馬だったが、結果、そこからここの上位入線馬が4頭登場である。

それも上位独占。

地方馬が半分以上いる競馬で、中央馬が悠々交流競走を走っている中、中央の多頭数の競馬で揉まれた馬が、いつも以上に活躍した。

となると、このレースの好走馬は今後どうなってしまうのだろうか。

ゴールドドリームは、珍しくムーア騎手からやや反省ともとれるコメントが出されたようが、それは騎手のスタイルもある。

前走のこともあり、今回もスタートはかなり悪かった。

速いという認識は、日本の騎手より案外鈍感なところもあったりする。

こんな流れは少頭数当たり前のヨーロッパでは、まずお目にかかれない。

それでも頑張ったと馬を讃えた、そのゴールドドリームの本格化が本物であると確認できただけ、今日はいいとしようではないか。

もう時代はゴールドドリームのものである。

若手の台頭を許すのも、いずれは必然の流れとなる、だから、これを逃したくない。