ジャパンカップ2018 回顧

パドックから別次元のオーラを放っていたアーモンドアイ。

そして、2:20.6という想像を絶するタイムの決着。

仕方がない。敗者には問題はない。

みんないい出来だったから、こうなったのである。

キングカメハメハという種牡馬、そして、キングマンボの存在。

凱旋門賞で躍動したパントレセレブルの父ヌレイエフ。

このレースを語るのは、血統の話を詰めるより、論の緒とはなりえないだろう。

キセキが平均ラップを刻んだ。

菊花賞を勝つ前には、新潟の2000Mで1:56.9を繰り出し、楽勝だった。

1年以上経って、日本競馬の頂点を競う秋の天皇賞で1:57.0を叩き出している。

当然だ。

勝ったのは同期のダービー馬。2400Mで負けただけだが、完敗だった。

レイデオロは1:56.8で駆け抜けた。

2000Mでは互角。

奇しくも、このブラッドストーリーには欠かせないキングカメハメハの直仔に敗れたのである。

アーモンドアイは、スプリンターズSを1:06.7で駆け、翌年の安田記念を1:31.5で快走したロードカナロアを父に持つ。

母は実際のところはGⅠを勝てなかったフサイチパンドラ。

その父サンデーサイレンスはJCを勝った馬を2頭出した。ゼンノロブロイが2分24秒台で駆けたのが最高のタイムだったが、スペシャルウィークもディープインパクトも春の天皇賞を素晴らしいタイムで駆け抜け、有馬記念でレコードを出したロブロイも、そのタイムは未だに傑出した記録として、燦然と刻み込まれている。

ヌレイエフはキングマンボの母ミエスクを生み出した。

どこに行ってもマイルなら彼女という一時代を築き、繁殖入り早々に似たようなタイプのキングマンボを産み、今の大繁栄をもたらすに至った。

その血が変則的に、5×3で入っているアーモンドアイ。

キングマンボに入り、フサイチパンドラの母ロッタレースの父として、ヌレイエフは重要な役目を果たしている。

ヌレイエフはスプリンターズSと安田記念というコネクションだけでなく、あまりも関係が強いことを示すように、国枝栄調教師の名を世に広めたブラックホークの父として、あまりにも有名。

負け癖がついた彼を、苦心の横山騎手が追い込ませてこの東京で復活させた時、久しく記録されなかった1:33.0というタイムで駆け抜け、これを最後に引退した。

フサイチパンドラの母系は、エルグランセニョール<ロドリゴデトリアーノの父>、トライマイベスト<ラストタイクーンの父>らを世に送り込んだだけではなく、フサイチパンドラという宝物をこの世界に生み出すことで、キングマンボ直仔のアルカセットが叩き出した日本レコードを、世界レコードに塗り替える仕事を娘のアーモンドアイに託すという偉業をやってのけた。

キングマンボの血にも、フサイチパンドラの一族の底力にも、ジャパンCを勝ち切る能力を備わっているが、爆発的にそれを引き出すためには、世界の名血のいいところか全て出し切らないといけない。

ラップを落とさず、どこまでもスピードが止まらないのは、直系のレイズアネイティヴの影響なのかもしれない。

それを言うなら、根性のサンデーサイレンスだって必然的に関わってくるだろう。

ダート向きのミスタープロスペクターは、芝に特化したキングマンボを血の継承者にすることで、ノーザンダンサー一色に染まった欧州競馬の質を少しずつ変えていった。

だからって、何度も頂点に立つことはできない。

それはJCだって同じはずで、こういう高速馬場を味方につける場面でのキングマンボの底力、快時計を生み出す不思議な才能に恵まれたヌレイエフの血をしっかりとマッチさせることで、アーモンドアイのような破壊力を持った天才が登場するのだ。

最初から勝つのはアーモンドアイをみんなが思っていたが、キングマンボが関わるだけで、こんな顛末にまで発展してしまう。

あの厳しいラップの中、今まで通りに2着馬に1馬身半以上の差をつけている。

どうしようもない彼女の才能は、これを機に、国際GⅠのスイーパーという位置づけにされるはずだ。

時計は素直に評価されない風潮だが、このタイムで低評価になるわけがない。

今後は、国枝調教師と共に、心身のバランスを保つ力が問われていくことになる。