2022年マイルチャンピオンシップ【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着セリフォス(9.2倍)2着ダノンザキッド(26.0倍)3着ソダシ(4.4倍)

レース名第39回マイルチャンピオンシップ(G1)
日程2022年11月20日(日)
優勝馬セリフォス
優勝騎手D.レーン
勝ちタイム1:32.5
馬場
3連単配当142,650円

2022年マイルチャンピオンシップ - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
110セリフォス1:32.5 -
23ダノンザキッド1:32.7 1 1/4
3
6ソダシ1:32.8 1/2
4
11ソウルラッシュ1:32.8 ハナ
54シュネルマイスター1:32.8 クビ
単勝10920円
複勝10330円
複勝3520円
複勝6220円
枠連2-51,410円
ワイド3-102,980円
ワイド6-101,170円
ワイド3-62,240円
馬連3-1011,870円
馬単10-319,920円
3連複3-6-1020,530円
3連単10-3-6142,650円

2022年マイルチャンピオンシップ - レース後コメント(騎手/厩舎)

「なかなか言葉が出てこないですが、馬のほうも最高の脚を見せてくれたし、非常にうれしい。素晴らしかった。VTRを見て、2歳からずっと安定感のある走りを見せていましたから。前走を休み明けで勝っていましたし、それから少しでも良くなっていれば非常にいい競馬ができるんじゃないかと自信を持ちました。スタートしてそこそこハイペース。そこからちょっと落ち着いたところで若干折り合うのに時間がかかったんですけど、その後、レース後半はよく折り合って、直線ではすごく手応えが良かったので外に出したところで自信がありました。」

※優勝したDレーン騎手のコメント(セリフォス)

2022年マイルチャンピオンシップ - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

2022年マイルチャンピオンシップ - 回顧

父ダイワメジャーは、2005年は僅差の2着、翌年から正攻法でおなじみの差し返しをゴール前見せ、連覇を達成。

天皇賞も皐月賞も勝っている名馬であるが、有馬記念連続3着もあるし、一番強い競馬を続けていたのがこのマイルチャンピオンシップだった。

しかし、それだけであの末脚は繰り出せない。

母父はLe Havre・ルアーヴルはフランスダービーウイナー。

母母父Noverre・ノヴェールが、ダーレーの生産馬で、散々2着を繰り返した中で、唯一のタイトルが、3歳夏のサセックスSという怪しげな性質を秘める馬で、どことなく、煮え切らない時代のダイワメジャーなどとそっくりなところがある。

母父のラインからトップマイラーはそれほど多く出てこなかったが、ノヴェールの父ラーイは、何しろ、あのアイアンホース・ジャイアンツコーズウェイの母父に出てくる重要種牡馬。

パンチの利いたブラッシンググルーム系のワイルドな性質は受け継いでいるが、どことなく、もっと拡散力のある同じネアルコ系のノーザンダンサー系や日本であればサンデーサイレンス系などと、見事にマッチングした時の破壊力こそが魅力と、今はなっている。

セリフォス自身は、ノーザンダンサーが薄く連なる特徴の薄い配合も、母シーフロントはレッドゴッド・ブラッシンググルームの父 にクロスの入った、母方に忍ばせた際の強力な後押しになるナスルーラ系芝向きの粘り強い脚を、少々強化された配合である。

ダイワメジャーの割に瞬発力があるのは、恐らくこのあたりの欧州芝向きの血脈との関わりが影響したのだと思われる。

今年はソダシはいても、グランアレグリアはいないではないか。

否、牡や牝の壁を取り払えば、別格の差し馬がいたではないか。

驚きばかりのセリフォス圧勝劇だった。

安田記念に無理をして出向いたというより、休み明けで使うことになっていたNHKマイルCがあまりにも不完全燃焼であったという反省が、結果、東京での古馬マイル重賞連戦という蓄財に繋がった。

そして、機を見るに敏の短期免許でお馴染みのダミアン・レーンに、普段から乗り慣れた、当地にたくさんいるだろうA級マイラーへの手ほどきを加えられたとき、普段より後ろのはずなのに、頗る反応鋭く、突き抜けてしまったのである。

恐れ入りました、と他馬を推したファンは、称賛するしかなかった。

瞬く間に加速し、本来は内枠がいくらか有利な荒れなかった日曜午後の渋残り馬場でのレースは、3Fから、

35.1→46.6→58.5

ここから、34秒ちょうどで上がるから、時計は平凡。

メンバーの質からして、想定よりずっと遅いが、逃げそうな馬がうちの方でやや不穏なゲート内での動きを見せ、外から動いていく馬の進出を容易に許す形になってしまった。

ソダシもシュネルマイスターも苦しく、例によって、毎日王冠の呪いに掛かったサリオスは最初の発進のところでほとんど躓いたような加速のなさで、内枠の方でわさわさしていた面々が、どうも気持ちよく力を発揮できなかった印象。

揉まれるのはよくない攻めの差しができるセリフォスと、前回よりずっと大人しかった昨年3着のダノンザキッドが、自分のやりたいようにやれたというところ。

特に、前回はサリオスにやられた間隙を狙う、マイルチャンピオンシップここ数年の名物である、誰が抜け出してくるかという最大の関門を、最も弾けるようにダノンザキッドが伸びてきたので、かなりホウオウアマゾンが苦しい思いをしたわけだが、そこを抜けてきたから、昨年以上の結果を出せたというのがダノンザキッド。

周りには、ソダシもいれば惜しすぎたソウルラッシュも顔を出していた。

シュネルマイスターらとの厳しい叩き合いに入った1分32秒台後半の人気勢グループに、斤量は少しだけ有利でも、先に記したように、3歳馬のキャリアではないセリフォスが能力を全開、いや、これは香港のビューティージェネレーションやゴールデンシックスティ、日本でも強かったモーリスらがそうであったように、マイルの直線勝負で楽々抜け出しの独走。

強すぎたあのタイキシャトルも、4歳時に独走した際に、激しく競合わされた2着以降に対し、誰よりも頑張って駆けたという印象はなかった。

このセリフォスには、かつて3歳で制したサッカーボーイ、タイキシャトル、アグネスデジタルらのような躍動を期待である。

昨年負けた組が、ソダシを同じくらいの能力であることが判然としたのと同時に、フレッシュなパワーで勝負せず、正攻法の形で争った今回の有力馬の中で、セリフォスはともかく、大いに拗らせ続けて悶々としていたダノンザキッドに、再起のチャンスを与えたのだとすると、昨年期待の3歳、今年の4歳に対するマイル路線での評価も、一旦、据え置き以上は望み薄となった印象だ。

ソングラインも小さな課題を抱えながら、もっと問題の多いメイケイエールらとともに、アジア圏でのスピード勝負で、一定以上の結果を求めたくなる面はあるものの、ある程度仕上がっていなければおかしいこの各馬のローテーションから考えると、正直、東京でもセリフォスは結果を出していたのだから、阪神のマイルチャンピオンシップで完敗では、相当苦しい。

スピード能力が急にアップするはずがない古馬勢に対し、古馬相手の目途を立てるどころか、全くレースの流れと関係のないところから飛び込んできた、グランアレグリアやかつてのアグネスデジタル、デュランダルらのような末脚だったのである。

ブレないトップマイラーであることを、東京からの連勝で証明したセリフォス以外、まずは再戦に向け、戦える要素を見つけていく必要がありそうだ。

本命サリオスに関してはもう一点。

一昨年、もっと楽な感じで独走の毎日王冠優勝後も、こうした感じで、序盤から動いていかなかった。

それよりも力を出し切った印象のなかった今年、ほぼ完成に近い印象の馬体の作りに対し、この失望すべき結果であるから、所属の東西に関わらず、快速タイムの出てしまう毎日王冠勝ち馬を軸に狙うことは、そもそも、ヴィクトリアマイル独走馬を安田記念で連続して買う危険性と、全く同じであると再認識させられたのであった。

時計レベルは本番より上という前哨戦組。

ソダシもパッとしなかったように、速さという武器をどう活かすかは、実に繊細なのである。難しい。

この組では、毎日王冠2着のジャスティンカフェ、通常前哨戦・富士S好走のピースオブエイトら、まだ力を出せない状態で見せ場は作ったが本来の形でなかった組の今後2走くらいの走りには、当面注目。

出来一歩も、前述の不利があったホウオウアマゾンも阪神Cでは注目だろう。

もう一、の東京1800組で人気のソダシだが、結果的には、自慢のスピード能力を繰り出す前に、自分から相手に合わせた競馬に出てしまうような消極的というよりも、そうせざるを得ないような展開に、古馬勢に持ち込まれてしまったのはつらかったのだろう。

本来のソダシという感じではないのかもしれないし、変わり身の牝馬が今のトレンドであるから、好位付けそのものの特性はあっても、もっと速い展開だとか、瞬発力を削り取るような、短距離戦線の猛者のような立ち回りこそ、この馬の持ち味が出せる条件であろう。

だから、ライトなマイルG1でキレ負けは少々切ない。

こういうタイプの牝馬は、馬体重に本質的な出来の具合が反映されないから、ゴールドシップ<同じ須貝厩舎>もそうだったが、大いに内面を見抜くのが難しい。

結果はまずまずなのだが、きっと、これは本物の強いソダシではないだろう。

春までのソダシに戻るかは変わらないが、またどこかで、あの白毛の怪物のような猛然とマイルを突進するソダシを見せてもらいたい。

きっと、吉田隼人騎手のいうことを素直に聞くタイプではない。

馬自身の気持ちや体調も、今後はさらに見えづらくなるから、ハラハラさせられるシーンはもっと増えるのかもしれない。