2022年マイルチャンピオンシップ予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

マイルチャンピオンシップの予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第39回マイルチャンピオンシップ(G1)
グレード重賞(G1)
日程2022年11月20日(日)
発走時間15時40分
開催場所阪神競馬場
距離芝1,600m
コース右回り
賞金1億8,000万円
レコードタイム1:31.1

2022年マイルチャンピオンシップ予想 - 予想オッズ/出馬表(馬柱)/出馬予定馬の馬体/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

マイルチャンピオンシップ2022の予想オッズと登録馬

枠番馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11マテンロウオリオン横山 典弘牡356.042.610-栗東・CW・良(助手)
7F 97.5-66.4-52.0-37.3-11.4(稍一杯)
12ウィンカーネリアン三浦 皇成牡557.031.19美浦・南W・良(三浦)
6F 86.0-69.2-53.9-38.8-12.0(馬なり)
美浦・南W・稍重(三浦)
6F 83.8-67.3-52.4-37.7-11.7(キリ不明)
23ダノンザキッド北村 友一牡457.025.18栗東・CW・良(北村友)
6F 80.8-65.6-51.2-36.7-11.3(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.5-39.6-25.2-12.2(馬なり)
24シュネルマイスターC.ルメール牡457.02.91美浦・南W・良(嶋田)
7F 96.3-66.3-51.8-37.4-11.7(直強め)
美浦・南W・稍重(助手)
6F 85.0-68.0-52.7-37.7-11.5(キリ不明)
35サリオスR.ムーア牡557.04.12美浦・南W・良(助手)
6F 83.6-66.7-51.9-36.8-11.3(一杯)
美浦・南W・稍重(ムーア)
5F 63.0-49.1-36.0-11.8(馬なり)
36ソダシ吉田 隼人牝455.04.33栗東・CW・良(吉田隼)
7F 96.5-63.9-49.3-35.4-11.3(一杯)
栗東・坂路・良(吉田隼)
800m 52.3-37.6-23.7-11.9(馬なり)
47ジャスティンカフェ福永 祐一牡457.018.97栗東・坂路・良(調教師)
800m 55.5-40.3-25.9-12.6(馬なり)
栗東・CW・良(調教師)
6F 83.5-66.6-51.5-36.9-11.2(馬なり)
48ロータスランド岩田 望来牡555.098.813栗東・CW・良(助手)
6F 82.6-66.2-51.4-37.0-11.4(末一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 51.8-37.6-24.3-12.0(馬なり)
59ピースオブエイトC.デムーロ牡356.090.412栗東・CW・良(小坂)
6F 87.6-71.3-55.7-39.9-12.0(馬なり)
栗東・CW・良(C.デムーロ)
6F 84.3-67.6-52.4-37.5-11.4(直一杯)
510セリフォスD.レーン牡356.09.05栗東・CW・良(助手)
6F 87.5-70.8-54.7-38.4-11.4(馬なり)
栗東・CW・良(レーン)
7F 99.3-67.4-52.3-36.6-11.3(直強め)
611ソウルラッシュ松山 弘平牡457.010.36栗東・CW・良(松山)
6F 80.6-65.3-50.6-36.3-11.3(強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.4-38.0-24.5-11.8(馬なり)
612ホウホウアマゾン坂井 瑠星牡457.0123.415栗東・CW・良(坂井瑠)
7F 94.7-64.2-50.3-36.6-11.7(末一杯)
栗東・CW・良(坂井瑠)
7F 94.8-64.2-50.4-36.9-12.0(直強め)
713エアロロノア武 豊牡557.0114.614栗東・坂路・良(助手)
800m 51.6-38.1-24.6-12.2(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.2-38.8-25.0-12.1(末強め)
714ベステンダンク藤岡 祐介牡1057.0278.016栗東・坂路・良(助手)
800m 54.5-39.6-25.8-13.0(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.2-38.6-25.2-12.6(馬なり)
815ダノンスコーピオン川田 将雅牡356.08.64栗東・坂路・良(助手)
800m 51.0-37.2-24.0-12.0(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.0-37.7-24.3-12.0(馬なり)
816ハッピーアワー川又 賢治牡657.0375.417栗東・CW・良(川又)
5F 69.9-54.2-38.4-11.6(馬なり)
-
817ファルコニア池添 謙一牡557.078.811栗東・坂路・良(助手)
800m 52.2-37.9-24.7-12.4(一杯)
栗東・坂路・良(池添)
800m 52.9-38.0-24.6-12.0(強め)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬1回1回1回17回5%10%15%
先行馬3回4回4回60回4.2%9.9%15.5%
差し馬12回13回9回122回7.7%16%21.8%
追い込み馬4回2回6回93回3.8%5.7%11.4%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠2回2回3回33回5%10%17.5%
2枠2回2回4回32回5%10%20%
3枠4回1回1回34回10%12.5%15%
4枠3回7回3回27回7.5%25%32.5%
5枠2回1回0回37回5%7.5%7.5%
6枠3回2回1回34回7.5%12.5%15%
7枠1回2回6回46回1.8%5.5%16.4%
8枠3回3回2回49回5.3%10.5%14%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト47回41回45回273回11.6%21.7%32.8%
ロードカナロア24回22回22回175回9.9%18.9%28%
ハーツクライ20回9回19回133回11%16%26.5%
エピファネイア14回13回12回74回12.4%23.9%34.5%
キングカメハメハ 14回13回8回72回13.1%25.2%32.7%
ルーラーシップ13回14回11回117回8.4%17.4%24.5%
ダイワメジャー 12回25回15回133回6.5%20%28.1%
キズナ11回11回9回90回9.1%18.2%25.6%
ハービンジャー9回9回5回99回7.4%14.8%18.9%
オルフェーヴル8回4回10回77回8.1%12.1%22.2%
人気1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1番人気6回4回2回8回30%
50%60%
2番人気1回5回2回12回5%30%40%
3番人気3回6回0回11回15%45%45%
4番人気4回3回2回11回20%35%45%
5番人気3回0回5回12回15%15%40%
6~9番人気1回0回6回73回1.3%1.3%8.8%
10番人気以下2回2回3回165回1.2%2.3%4.1%

2022年マイルチャンピオンシップ予想 - 過去10年のデータ傾向

死に目と化している毎日王冠勝ち馬の取捨は、惜敗組と同列に扱うべしとすればよい

この組で勝ち馬となったのが、2018年のステルヴィオと翌年のインディチャンプ。
勝つだろうとされた連勝期待の面々の中で、何とか頑張って2着まで上がってきたのが、毎日王冠で接戦を制してきたシュネルマイスター。

強いことを証明しようとすればするほど、アエロリットや3歳時のダノンキングリー、サリオスといった若くしてスターになった面々は苦戦を強いられる。
3歳馬で試練を経ている中で、且つG1も勝っていたシュネルマイスターとの違いを敢えて挙げるなら、桜花賞や皐月賞など、世代で最も強い馬を決する舞台となっている第一冠に参戦していないところ。
アエロリットはレースにならなかった桜花賞から一変、高速の東京でNHKマイルCを制している。

本番を経ているかどうかと同時に、一足飛びにNHKマイルCを制したことで、安田記念参戦の余力があったことが、粘り強い競馬に繋がった才気あふれるシュネルマイスターのような例は、意外と少ないものの、普段なら古馬でG1はいつでも好勝負の馬に有利なことを考えた時に、安田記念は3着というサリオスが毎日王冠で接戦を制しているのは、案外重要なポイント。
相手となったのは、才能があっても重賞勝ちのなかったジャスティンカフェ、迷えるダノンザキッドだとすると、進路選択の分だけ走れなかったところでのレコード勝ち。
普段はそこの部分を補正すべきとなって、勝ち馬の減点法が有効だが、幻の圧勝だったとしたとき、サリオスに余力がたっぷりあると予測が可能だろう。
また負けたら、実力も含め、やはりこの組は連戦するのにタフすぎると、再認識できるはずだ。

スプリンターが距離延長でプラスはほとんどないが、マイルから転戦の出戻り組はノーカウントでいい

ミッキーアイルとグランアレグリアが勝っている。
それ以外は来ていないのだから、かつて連覇したデュランダルがそうであったように、得意な条件に戻ってきたという根拠があるならば、何の問題もない。
いずれもディープインパクト産駒で、イメージよりは快速型に出すぎた印象だが、血統背景からも、スタミナ能力を前進気勢の旺盛さで凌駕した時、破壊的なマイルのスピード勝負を歓迎する能力が全開になる可能性は大いにあった。
最初の方は強かった両者だけに、ほとんどそれらとそっくりのシュネルマイスターは、人気がなければないほど、勝機が濃厚とできる。
控えめな3番人気以下だったすれば、黙って頭からでもいいが、ソダシといい勝負でサリオスと三つ巴であろうから、ソダシに人気は譲ってやりたいようにやらせてもらえるなら幸運であろう。

サマーシリーズを経て、10月のG2群のいずれかで持ち直していることを証明できていれば、それなりに健闘できる

主なサマーマイルシリーズ参戦馬の注目株を挙げるなら、中間何も挟まず関屋記念から直行の3連勝馬・ウインカーネリアンと、自分の良さを見失いかけている関屋記念、毎日王冠両方3着のダノンザキッド。

全体の傾向からして、夏に消耗する馬は苦しいということと、調子が合わせきれないという両面で狙いは下げた方が得策なのだが、休み明けと連敗も連続好走ならば、両者とも無理に消すこともなさそう。
変に人気になっては意味がないファルコニアは、春に同レースで似た結果だったソウルラッシュやホウオウアマゾンの評価と同等でいいとなるが、G1の参戦数が全く違う関屋記念好走の2頭は、いくらか補正をかけた方がいい。

かつての実績で来る馬はいても、例外は、府中牝馬Sや札幌記念というそれぞれの王道路線に直結するG2の好走馬ばかりが、マイルで巻き返したという例があるくらいで、あとは意外と、必ず秋に使っている馬か、モンスター化を堂々天下に知らしめた安田記念から直行のモーリスくらいで、必勝のローテは限定的。
3歳馬も今は、最終戦を経ずして、古馬と対戦してから挑むケースが増えており、2000シリーズからひとつ挟んで挑む例では、グランデッツァやエアスピネルなどのやれることはやり切った惜敗の記録が残されている。
頭狙いでなければ、差をつけずに再評価でもいいだろうから、いくらかタフな経験が多いダノンザキッドを上に取る。
ソダシは少し事情こそ異なるが、理論上は対抗筆頭レベルであろう。

牝馬が来ているようで走れる馬は限られるという現実

グランアレグリアにばかり気をとられていたが、彼女はこのレースに出る前に、すでにアジアのマイル重賞では最高グレードに等しい安田記念を勝っていた。
だから、そうした例がウオッカしかいなかった近年の傾向も反映した格好で、牝馬はここでずっと勝っていなかった。
その前で最後に勝ったのは、ヴィクトリアマイルでウオッカと好勝負であったブルーメンブラット・2008年。

更に前だと、もう1994年のノースフライトになってしまう。
この中で、ファインモーションやダンスインザムード、ラインクラフトに連続好走のサプレザなど、善戦止まりのA級牝馬が続々登場。
負けた相手がデュランダル、ハットトリック、ダイワメジャー、カンパニーなどで、理解できる部分は大いにあるが、牝馬だから強いということはこのレースではありえない。
よほど、安田記念の方が牝馬有利であり、安田記念好走の馬やヴィクトリアマイル勝ち馬は、このレースで消えることの方が多い。

ソダシが人気になり、ロータスランドが穴候補のお眼鏡にかなうか当落線上にいるという組み合わせであるから、どちらを選んでもいいという見解が正論となった時、牝馬寄りのスタンスをとるなら、一応安田記念参戦のロータスランドの方が妙味はあるだろうし、そうなると3着候補くらいがいいか。
ソダシは連敗の内容が悪いというよりも、体重の変動の小ささが武器のようで、全くその辺りから心身のコンディションが見えてこない死角もあって、もはや、狙いづらい存在になってしまっている。
好きなら狙い続ければいいし、勝たれれば当然のスタンスで、気楽に付き合う方が安全なような気もする。
やはり、牝馬は難しい。

2022年マイルチャンピオンシップ予想- 出走予定馬の血統/成績/タイム

普段は絶対にやらない方がいい毎日王冠組をグイグイ推したくなるほど、安田記念はライトな競馬だった

サリオスの血統

ハーツクライ×サロミナのサリオスは、血統登録前の1、2歳馬以外に同配合馬はおらず、比較は難しい。
リファールとニジンスキーの共通父・Northern Dancerに掛かる5×5は非常に重厚ながら、サロミナを作る時に生じたニジンスキーとダンチヒの前に掛かる4×5と合わせ、芝のエース級を生む3種のノーザンダンサーパラダイスを効果的に体現するための、基本軸のしっかりとしたクロスを意図して掛けている。

裏を返せば、それ以外に取り込まないというドイツの名牝系特有の育むという技法を踏襲した流れに、最もふさわしい配合相手をサンデーサイレンス直仔と決めて、グループが成功させるために導入した手前、ほとんどが半姉サラキア、レコードホルダーの半弟エスコーラらと同じディープインパクト産駒であった。

ところが、それらがどんなに活躍しているといっても、ついにサリオスを超える可能性は、現状未完成のエスコーラくらいで、競走馬になれるか現状不明のハーツクライ産駒らはどうなるか読み切れない。
サラキアらと決定的に違うポイントは、ノーザンダンサーの関わるクロスの入り方は全く同じながら、ディープインパクトはリファール直系を母父に持ち、サンデーとリファールの間にトニービンという別のネアルコ系が配されるサリオスなどは、一つ完成度の点で、一枚上であるように思う。

リファールとトニービンは比較的相性がよく、先日の秋の天皇賞はリファールクロス持ちの母母父トニービンというイクイノックスが制している。
リファール直系はニッポーテイオーが昭和期最終盤に同レースを逃げ切り、トニービン直仔は3勝。これは短期間で4年間での記録。
全く同じではないが、重くても日本で走れる条件は長い距離よりも短めの条件という傾向からも、距離短縮はプラスの面があり、底力勝負こそ歓迎の本格派ミドルディスタンスホースは、根幹距離でこそ強い。
ディープではスピード能力が先行しすぎて、この重厚さを上手に活用させる馬体を得られないのかもしれない。
大型馬には向く配合。速い馬であると2戦目で証明したサリオスは、それが重賞であったことで、エスコーラのいい目標にもなっている。
今のサリオスに、ワンターンのマイル戦は底力勝負に持ち込んで、それこそしっかりと勝ち切りたい戦いとなる。

2022年マイルチャンピオンシップ予想 - レース展開と最終予想

距離が違うし、馬場状態も出走メンバーも大きく異なることは前提にあるとして、しかし、東京の古馬重賞で古馬王道路線の秋G1ふたつと比べて、時に同格になる事もある安田記念、毎日王冠両レースのクオリティに、今年はいくらか差があった気がする。

サリオスが勝った毎日王冠だったが、これが恐ろしいほどに正確な高水準ラップが継続して記録された、まさに今日の中距離路線の充実を天下に改めて知らしめるかのごとき中身であった。

序盤の1Fは当然、助走の区間であるから12.6秒。
しかし、先行勢の位置取りがレース全体の流れを決定する400M通過が23.2秒
都合、この間のラップは10.6というマイル以下に近い先行争いになっていた。

ただ、これはスピード自慢の先行型がいる1800重賞では珍しくはない。
かつてのサイレンススズカは、2F通過こそ23.7秒だったが、次に最速の10.9を叩くことで、3F・34.6秒のハイラップとした。
実は、これを指標としたかのように、今年のレッドベルオーブは、11.3に落ち着かせたことで、34.5秒とほぼ同じラップにしたのである。
ここでラップ分析の肝となる中盤以降のハロンごとのラップを書き出すと、実に素晴らしい。
以降800M通過からハロンラップを記すと、

11.7→11.7→11.8→11.3→11.3→11.8
<この間の合計タイム/ 69.6=1:09.6>

速すぎない強めの高水準ラップのままゴールしているのだ。
気性面で怪しすぎる面があるレッドベルオーブが、直線勝負でリードをとって逃げ粘った展開では、この数字にはならない。
どの道、この厳しい展開を各馬は適応するように、一定の対処が必要になったわけだ。

結果的に、この組から本番の天皇賞<本来は秋の天皇賞のトライアル・プレップレース的位置づけ>に向かった馬が、上位入線馬には皆無だったから比較はできないのだが、最先着だったノースブリッジは、本来の形に近い、平均からスロー寄りの2番手以降では先行位置につけて、形は作っていた。

一方、レース水準にいくらか疑問符の付いた安田記念の序盤3Fはというと、ごくごく平均的な34.7秒
馬場差を考慮した時、毎日王冠と同格であったはずだ。
ところがここからが妙であった。逃げたのがハイペースなど一度も作ったことのないホウオウアマゾンであったこともあって、以降は、

12.0→12.0→11.2→11.0→11.4
<この間の合計タイム/ 57.6→毎日王冠の3~8F間のタイムは57.8>

時に、スローも決して少なくない両レースながら、終いのラップ分だけ無機質に足すと13秒以上の差がつくことの多いこの両レース、格の違いとメンバー構成からして、いくらか水準的には毎日王冠の方がレコード決着であったということ以上のレベルにあった、と言えなくはない。
むしろ、安田記念の激しい後傾ラップは、力を出せた上位勢とそうではないグループとの差が激しい一方、毎日王冠はほぼすべての馬が実力を発揮したように感じる。

ほとんど不利を受け続けていたに等しいタイトなコース取りは、サリオスとのいい思い出のなかった松山騎手に、執念のようなものを感じた勝負に賭けた狙いであったわけで、その気持ちが、客観的にも最後はどうしたって前が止まる展開になるから、動けなかった分を爆発させた終いの伸びに必然性こそあれ、その内容に皆が驚いた。
実力は当然、確勝級であったはずだし、安田記念の好走馬でもあったが、明らかに、その内容は安田記念の差し脚よりずっと力強かった。

かつて西でタイトルを得た関東の2歳王者ではなく、進化を遂げ、エース級に上り詰めようとする新勢力とも言える。
呼び水は香港マイルでの好走であり、安田記念で一気にシェイプアップを果たした中で、一定以上の結果を残せたという新たな実績作りにあったことは間違いないが、もはや、その時点のサリオスでさえない。
いつの間にかわがままで、ふて腐れることも増えた利かん坊のように堕ちていった姿はもうなかった。

無論、長く死に目であり続けた毎日王冠→マイルCS連勝の死角は大いにある。
現に、自分の前に同じ道程を進んだダノンキングリー、アエロリットらもあえなく失墜であった。
近代的ローテーションではあるが、天皇賞かスワンS、富士Sを使う例もあったが、中5週という最初から不動のローテで連勝の馬は、未だに存在しない。
今年で39回目のこのレース。
モーリスに喝を入れると同時に、やや不甲斐なかった短期免許で騎乗の序盤の自分にも別れを告げた2015年優勝のムーアに、再びの戴冠の補助をしてもらおう。
キレすぎるグランアレグリアがいなければ、同格となったダノンザキッド、シュネルマイスターらといくらでもやり合える。
リボーン・サリオスがどんな姿で阪神のパドックに現れるか、馬体重発表の瞬間から楽しみである。
ムーア騎手に下げる手はないから、松山騎手以上に好位置を狙ってくるはずだ。
それが最も勝機に近づく、正攻法の作戦となるだろう。

ライバルは4歳3頭以外で、3歳馬も挙げておいたが、彼らが戦った富士Sは、好記録こそ出たものの、終いのラップが落ちたところに軽斤のセリフォスの決め手が活きた展開で、着順は入れ替わりそうだが、NHKマイルCと同等レベルであり、頭までを狙えそうな雰囲気はない。
古牡馬と1kgのアドヴァンテージしかないから、ダノンスコーピオンは同斤で可能性を感じさせるも、大きな武器は見当たらない。
3歳で勝ったのは、サッカーボーイ、タイキシャトル、アグネスデジタルなど、万能の武器を秘めた強烈な才能ばかり。
近年の制覇時は、京都が荒れ馬場になる影響で時計が平凡だった。
晴雨両用の3歳勢だが、この点で経験値の上回る古馬に不利な要素はほとんどないので、評価はほどほどに抑える。