2020年秋華賞 回顧

秋華賞2020 - レース結果・払い戻し・オッズ一覧

着順馬番馬名タイム着差調教師単勝人気
113デアリングタクト2:00.6 -杉山 晴紀1
212マジックキャッスル2:00.8 1 1/4
国枝 栄10
38ソフトフルート2:00.9 3/4松田 国英9
416パラスアテナ2:00.9 ハナ
高柳 瑞樹12
515ミスニューヨーク2:01.5 3 1/2杉山 晴紀16
単勝13140円
複勝13110円
複勝12540円
複勝8590円
枠連6-7 2,580円
ワイド12-13 940円
ワイド8-13 750円
ワイド8-12 9,310円
馬連12-13 2,670円
馬単13-12 3,140円
3連複8-12-13 17,920円
3連単13-12-8 44,110円

秋華賞2020 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「ホッとした気持ちとここまで任せてくださった関係者の皆さんに感謝の気持ちで一杯です。パドックから入れ込みもあったのですが、この馬ならしっかりこなしてくれると信じていました。少しゲートでうるさい所もあったのですが、上手に出てくれましたし、ポジションも思っていたようなところで折り合いもつきましたし、しっかり流れに乗れて良い競馬が出来たかなと思います。力のある馬なので、最後はいいところを走らせようかなと思いました。」

松山騎手のコメント

秋華賞2020 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

秋華賞2020 - 回顧(反省、他人気馬の敗因、レース展開)

言うことなしであった。

無敗の二冠牝馬も、無敗の秋華賞馬もいるし、牝馬で無敗の変則三冠馬も登場しているが、

ある意味では変則なのかもしれないが、牝馬限定の3歳タイトルを全て無傷のまま快勝の牝馬は、日本では初めての誕生となった。

それが令和最初の三冠挑戦の馬であり、それに相応しい社台グループが丁寧に育ててきた父母の血筋を、当代随一の目利きとされる岡田兄弟のエキセントリックではない方の弟である・牧雄氏が見出した才能。

誰がどうこうではなく、この成功は日本競馬界の充実を物語る上で重要な1ページである。

勝者は確かに日高の生産者と社台系グループとはライバルになる人物が作ったオーナークラブとなるが、それではスケールの小さな刹那的な感動でしかない。

クリフジという信じられないほど強いダービーウイナーが、秋のオークスと菊花賞を制してから始まる牝系と超名牝のストーリーは、アマゾンウォリアー系のメジロラモーヌ、サンデーサイレンス産駒のスティルインラブ、北米血脈の集大成的存在であるキングマンボ系のアパパネ、アーモンドアイ、三冠馬から登場の三冠馬・ジェンティルドンナと、必ず血の物語が語り継がれる。

タイガー模様の社台レースホースの馬であった祖母のデアリングハートは、小さなサンデーサイレンス産駒だった。

娘のキングカメハメハ産駒であるデアリングバードは、なかなか使えずに、ほぼ未出走のような感じで繁殖入り。

思えば、アメリカの早熟牝馬である祖母と、日本であまり走らなかった母を持つディープインパクト産駒が、来週の主役なのである。

競馬は面白い。そして、叶わなかった夢の続きがこうして結実する日が訪れるようにと、生産者やオーナーがまた違う夢を抱いていく世界なのだ。

一口馬主になれる時代。

そういう喜びを、日高で生産した馬で分かち合う時代というのは、ルドルフの時代まではなかったことである。

軽い競馬ではなかったが、期待した伏兵ではないオークス好走馬たちは、道悪と妙な展開に加え、直線の加速力で勝負するデアリングタクト相手に、外差し傾向の馬場状態は全く味方でなかった。

そもそも、同じ位置では勝負にならない相手。

自慢の末脚を、そこまで見せつけるような感じではなく、相手に合わせながら丁寧に勝利へと導いた松山弘平騎手の技量も、今はもう侮れないと同時に、名手たちの企みは全く通用しなかったのだ。

苦しい競馬をクラシック本戦の好走馬と同じくらい経験しているマジックキャッスルが突っ込んできた。

タフな時計勝負でこのレースを制した経験のある浜中騎手ではなく、もう少し馬に優しい大野騎手へのスイッチは、想定より苦しいレース展望となった陣営に対し、この上ない仕掛けの遅らせ方で満点の回答。

デアリングタクトとまともに併せに行くのは彼女の流儀に合わないから、待って、最短距離で追い上げて見せた。

デアリングハートと同じ勝負服。今度は社台系の出番であったということか。

惜しいのはソフトフルートだったが、大胆不敵な藤岡康太騎手だけに、すでに古馬と2戦、それも前走は休み明けでローズSの比ではないパフォーマンスで、今度は50倍台の評価となれば、当然の結果だったか。

姉はオークスで信じられないほどの凡走を喫したミッドサマーフェアだったが、その父タニノギムレットより2つクラシックタイトルの多いディープインパクトをつけたら、タフな中距離型が誕生。

もしかすると、デアリングタクトの同期のライバルは彼女になっていくのかもしれない。

頭数が少なければ、エリザベス女王杯in阪神でも怖い存在だろう。

ちなみに、ミッドサマーフェアが3歳の年に輝いたのは、ディープ産駒のジェンティルドンナとヴィルシーナである。

内枠の組が目に見えて苦しかったと同時に、デアリングタクト自体も完璧な仕上げに見えなかった。

アーモンドアイと同じ。

しかし、それでも放つオーラは別格。絶好調に仕上がったリアアメリアや叩いて良化の見られたクラヴァシュドールなども、激しい2歳時からのパフォーマンスの反動か、ここぞの場面では力を出せなかった。

2歳時1戦のみ、3歳初戦も馬なり楽勝。

本家の英国クラシックだって、ギニー競走にはほとんど海のものとも山のものとも見分けのつかない馬から、天才的と称される人気馬まで出てくる。

本来はノーザンファームか社台ファーム産であったはずのデアリングタクトが、その生産体系に合わせた成功のフレッシュローテで、いとも簡単に三冠達成である。

大昔の皐月賞にも、キャリアの浅い直前でビューの馬が登場し、どんどん勝っていた。

時代は進んでいるようで、これは単なる原点回帰なのだろう。

デアリングタクトの成功により、ますます、キャリアの浅いクラシックウイナーが登場するわけだが、キャリア5戦で三冠など、空前絶後なのは明らかである。

この記録は、きっと永久に残る金字塔となる。

何故なら、クラシックは3戦であり、未勝利クラス1戦だけでは本番に出られないからだ。