高松宮記念2019 回顧

彼女にしてはスタートがあまり良くなかったモズスーパーフレアと、やや正攻法すぎるのは、ここ2戦の内容からちょっと不安になる面もあったダノンスマッシュが上位争いに加わるところまでいかず、筆者の推したデアレガーロもいつもの出の甘さが影響して、外枠総崩れ。

レースを振り返ると、いいところにミスターメロディがいるなあという好位ポジション。

例年乱戦になる高松宮記念が、1分7秒台で決着しそうな雰囲気は、土曜の競馬を見れていれば確信を持てるものがあったが、それに加えて、例年より遥かに内残りの傾向が出ていたので、同じように差すなら、ダノンの正攻法外抜け出しより、勝負のイン突きを決めそうになったショウナンアンセムと、ブリンカーさえ外してしまえば普通に競馬できそうな気配のあったセイウンコウセイのベテランらしい逃げ込みに、結果的ではない部分でも、穴馬券の伏線があったように感じる。

キングヘイローと言えば福永祐一だが、4歳になってからの鞍上はほとんどが柴田善臣騎手であった。

キングヘイローが勝った時は、ディヴァインライトで2着。

父と騎手候補生として同じ年にこの世界に入ってきた伊藤正徳元調教師の管理馬である。

全てひっくるめて、ベテランの超穴馬を引き連れたこのシーンは、キングヘイローにまつわるストーリーから、来週再び新たなページを刻むことになるワグネリアンと紡いだダービーのゴールシーンと、まるでそっくりだった。

前走は人気を背負ったものの、明らかに外枠で位置取りに苦心することが見えていた開幕週の競馬で、それがそのまま敗因になったようなレース。

しょっちゅう乗り替わりのあるミスターメロディは、乗りやすいとはいえ、一番よく乗っている福永騎手とすれば、内枠を引いた時点で、外に張ってきそうなダノンスマッシュの勝ち気の競馬をあざ笑うような展開を望んでいたところもあるだろうが、予想よりも事実上は格下と思える相手を競り落とすだけの競馬になったのは、少しはキングヘイローによる見えざる力というか、その御加護もあったのかもしれない。

すぐに墓参りに行かないといけない。

勝負のポイントは、内残りバイアスというより、筆者が危惧した4歳馬の過酷な戦歴にある気もする。

ショウナンカンプやこの日やけに調子の良さが目立っていたセイウンコウセイ、実質最初の高松宮記念<1200短縮初期だけは杯のまま>勝者のフラワーパークらは、翌年には別馬になってしまった。

燃え尽きた先輩たちに比べ、新コースになって以降は、ほとんどの年が道悪というトラックバイアスが普通の高松宮記念の中で、かなり渋っていた年の勝ち馬であるセイウンコウセイだけは、昨夏に復活し、シルクロードSの激走を経て、気持ちを立て直すことに成功したのだ。

あのダイワメジャーを復活させた上原博之調教師の管理馬。

これも何かの縁だろう。

逃げ馬がいつの間にか…、という感じで差してきたショウナンアンセムはロゴタイプの田中剛厩舎。

この東の道悪巧者が、歴代トップクラスの1:07.3という勝ちタイプの競馬で台頭したのだ。

その他が凡走したのではなく、33.2-34.1という比較的バランスの取れた部類のレースラップに、今年の挑戦者はほとんどが、対応しきれなかっただけだろう。

上がりのラップを見ても、ショウナンアンセムの33.4秒を上回ったのはレッツゴードンキの33.3で、ショウナンを挟んで、デアレガーロやミスターメロディらが連なる。

この時点で、モズスーパーフレアの完全なる前傾ラップでの強みは全く活きることはないから、惨敗も当然。

ダノンにしても、持ち時計そのものは0.5秒も縮めている。

ただ、ここ2戦上がりが一番でなくても強かったからと言って、福永騎手が乗っていた頃に確立させつつあった差しのスタイルを消してまで、ここでも勝ち切れるほどの迫力はなかったか。

あえて今の北村友一騎手だから言うが、この乗り方でも通用したのは、平坦時代の高松宮記念までであったのだろう。

ただ、同期で水を開けられたということではない。

ミスターメロディは、ダートデビューのアメリカン野郎。

母母父以降はプリンスキロ系、インリアリティ系、ボールドR系を挟んで、マンノウォーの孫が並ぶ、いかにも正しいアメリカ血統ながら、本質はそのままストームキャット系×デピュティミニスターだから、いつダートに戻っても不思議はない。

完成度も人気2頭より本当は早いのだろうし、これをもって世代交代などと決めつけると、秋はもっとひどい目に遭うかもしれない。