宝塚記念2021【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着クロノジェネシス(1.8倍)2着ユニコーンライオン(27.8倍)3着レイパパレ(3.5倍)

レース名第62回宝塚記念
日程2021年6月27日(日曜)
優勝馬クロノジェネシス
優勝騎手C.ルメール
勝ちタイム2:10.9
馬場
3連単配当13,340円

宝塚記念2021 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
17クロノジェネシス2:10.9-
21ユニコーンライオン2:11.32 1/2
32レイパパレ2:11.4 クビ
410カレンブーケドール2:11.7 2
513キセキ2:12.12 1/2
単勝7180円
複勝7110円
複勝1350円
複勝2140円
枠連1-53,030円
ワイド1-7920円
ワイド2-7200円
ワイド1-21,170円
馬連1-72,780円
馬単7-13,930円
3連複1-2-72,200円
3連単7-1-213,340円

宝塚記念2021 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「馬のコンディションはとてもよかった。パドックではきれいでした。返し馬でもいい感じでしたし、途中も完璧だったね」と振り返ると、「レイパパレの後ろで、すごくいいところでした。我慢して直線を待ちました。そこからクロノジェネシスがいい脚を使ってくれた。だんだん加速してくれたし、ラスト200メートルは楽でしたね。クロノジェネシスの血統はヨーロピアン血統、柔らかい馬場でもいいパフォーマンスができるので、海外に、特にフランスではいい結果を出すことができると思います」

※優勝したルメール騎手のコメント(クロノジェネシス)

宝塚記念2021 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

宝塚記念2021 - 回顧

もう少しわちゃわちゃした展開を期待したのだが、晴れたかったではなく、ルメールが馬の良さをより引き出すアプローチが見事に結実したからこそ、

「2:10.9」

のワンサイドゲームなったのであろう。

これはレース史上3位タイの記録であり、これより上の記録を出した2例には、ブエナビスタ<牝5>の2着、リスグラシュー<牝5>の独走が絡む。

人気馬が順当に来る、良馬場の高水準の古馬G1であることを実証するように、このいずれもが、秋には再び大きな日本の主要タイトルを勝ち取った。

3位タイの記録が、まさに三冠馬・オルフェーヴルの独走した10年ほど前の記録。

あの時よりも馬場は悪くなかったが、展開もずっと今年の方がスローだった。

その価値は同格であり、4歳時にこのレースを制したオルフェーヴルは、凱旋門賞は4歳時に明らかに勝てたものを拒否したような、虚しき2着があったが、凱旋門賞の内容が全く惜しくなかった5歳時は、今度、有馬記念で9馬身差独走の大記録でラストを締めた。

どこで答えを出すかとした時、ここに絡む高速決着の宝塚記念で主役になっていた馬たちの先例に倣えば、もはや、ルメールで凱旋門賞へレッツゴー…。

その答えが思惑通りに出せるかどうかを確かめた一戦で、完全なる形での戦略的完勝が果たせたように思う。

前しか残れない展開で、唯一の差し馬としての好走。

ただ、これには悪い例もある。

5歳春のテイエムオペラオーは、このような馬場質で全くの不完全燃焼で2着だったが、あれはやっとの感じで3着の伏兵・ホットシークレットの粘り込みをねじ込んだ結果。

最初から勝負になっていなかったオペラオーが、メイショウドトウの逆襲に屈したというより、この後訪れる、完璧にレースしようとも生まれてしまう綻びにわずかな着差で敗れたりすることを繰り返す、そんな前触れのような結果だったとも思える。

そんなこと一切関係なく、リスグラシュー同様、春のクラシックでは好走止まりだった馬が、ようやく実が入った古馬戦で、いよいよ、男馬さえもねじ伏せるようになっていった。

そんな歴史を、ただ振り返っただけでも、無駄な抵抗に終わったアリストテレスが高速決着をやけに嫌いつつ、カレンブーケドールと同じく、春の天皇賞の消耗が激しかったことを物語る失速であったことも、念のため記しておく。

来年もきっと同じ番組になる。大いに参考になった。

スローの天皇賞以外、繋がることはない。必ずバテる。

必要な解説など今更あるわけないが、はっきりしているのは、バゴの個性がようやく出てきたということか。

通算16戦8勝で、その勝利の全てが4歳春までだったということで、本当は函館2歳S勝ちのクリスマスやこのクロノジェネシスのように、早くから活躍するのが当然のようなところがあるのだが、どうも全て噛み合わない。

で、分析を重ねていく内に見えてきたのが、その戦歴から見える、現役時に見えてこなかった成長力。

4頭立てのパリ大賞を勝つまでは6戦6勝だったバゴは、インターナショナルS<英ヨーク・10F88Y>と帰国初戦のニエル賞を共に3着に敗れた後、凱旋門賞で当時歴代2位となる「2:25.0」で快勝している。

その後パッとしないから、早熟に見えるだけで、よく考えると、世界レコード級のジャパンC<2005年>で8着だった時が「2:22.8」であり、当然のことながら自己ベストだったのだが、本来は、そうした性質はこのクロノジェネシスのように、時間をかけて引き出した方がいいという可能性があったということ。

クロノジェネシスは桜花賞までは1分34秒前半でしか走れなかったのが、無理に進路を作って押し上げた3着時が、1:33.1なのだ。

日本では早くから時計が求められる馬場質であるものの、欧州圏の芝競馬では、ハイペースという概念すらほとんどないほど、文化的な直線勝負の構造がずっと守られている。

速く走りたくても走れないから、自然と、色々なタイプの馬が登場する場面で、つまりは古馬のG1でしかハイレベルな時計の勝負には出くわさないわけだ。

クロノジェネシスにはオークスの苦しい経験があって、「2:23.2」でこれも3着。

欧州圏の常識よりもずっとスピードレースである日本で、早い時期に時計勝負に対応しようとしても、勝ち切れない馬は過去にもいた。

それがリスグラシューであり、時計勝負に持ち込ませず勝ち続けたのがブエナビスタ。

よりこの宝塚記念に近い距離の秋華賞、大阪杯、天皇賞(秋)では、その時計は自身に大きな差をつけつつ、どんどん更新されて、このレース出走時は、「1:57.9」である。

理論上、この時計を出せる能力は、バゴの母父に入ったヌレイエフとサンデーサイレンスが芝向き血統<欧州型>と組み合わさった際にのみ出せる芸当で、今のブラッシンググルームには、そこまでのスピードはない。

ただ、潜在的に秘めるナスルーラ直系の快速的才能は、自在性を身につけた時に炸裂する。

これこそがリスグラシュー<凱旋門賞馬・トニービンの血を持つ>を覚醒させた、特有の決め手と爆発力。

昨年のそれがバゴ的な馬場適性だったのかもしれないが、今年は本格化して、持ちうる北米圏の血と欧州圏では軽い方のブラッシンググルームの底力とのマッチングで、万能性を備えた中距離型として今完成したのであろう。

昨年は本物ではなかった…。それこそが真実なのであろう。

本格化の理由はもうひとつ挙げられる。

不幸にも北村友一騎手は乗れない状態になったことで、戦略的なルメール据えかえ作戦を、今後を見据えて敢行できた点だ。

偽物の名牝ではもちろんないクロノジェネシスには、まだまだ末の足らない部分があって、それは今回もややあったのかもしれないが、相手がそこまで迫力がなかったことで、全く目立たたなかった。

何より、あのアーモンドアイがそうであったように、スタートがとても良かったことも精神衛生上でも大きかった。

末脚の使いどころにずっと迷いはあったが、それは広い競馬場だからこそ…、というような感じで、それこそ、昨年の大阪杯くらいしか小回りで負けていないクロノジェネシスには、タフな重馬場のパリロンシャン・凱旋門賞を展望する時、その素晴らしい決め手をどうやって引き出すか、一定レベルにパンプアップさせる必要に迫られたわけだ。

その経験値は、残念ながら北村友一騎手にはない。

何故なら、欧州圏で泥にまみれて戦った経験などないからである。

激しい経験というか、実質的には、将来性を冷静に判断して日本に来るしかなかったルメール騎手の気持ちは、彼女の宝塚記念連覇になどほとんど関心なしだったろう。

前週のやややり過ぎ感のあった攻めの追い切りが、目指すべきポイントと自身に課せられた何かを完全理解したそれに見えた。

良かった時の走りを戻すより、余裕を残して走らせて、かつ、中身の濃い競馬を狙う。

クロノジェネシスの実力をずっとそばで見て、冷静に見定めてきたこともあるだろうが、乗ってみて確信した才能の足りない部分の補いに、位置をとって我慢する、欧州競馬の基本形の習得こそ、彼女の選択肢にまだなかった要素として、はっきり捉えたからこそ、キセキなどが競りかけてきたところなどでも、引くわけではなく、抑え込もうという狙いはどこにもない好位付けを通した。

少し行きたがるのは、得意な小回り戦でも1コーナーまでの距離が長く取れるから。

それは昨年もあったし、ペースはむしろ、馬場を考えたら昨年よりずっと楽だから、動かさない。

皆が捲るイメージで乗る気がしたのは幻想。正攻法を覚えさせ、かつ、余裕残しの勝利。

追って伸びる末脚のレベルを理解していれば、逆算は可能。

動けなかったのではなく、動かなかった。

皆さんも、さすがに理解しただろう。

ルメールの狙いは、悲願の凱旋門賞制覇、ただ一つである。

だから、勝てたのだろう。

あの北村友一騎手への変な?メッセージは、その可能性を大いに感じたからなのか。

オーナーがどう考えるかだけが問題であり、雨待ちもしているだろうが、本当は、父のバゴが勝った時のような良馬場が望ましいのだろう。

今までの日本馬が負けてきたのは、良馬場で位置取り争いが激しくなり、勝負所も誰もバテないから、捌けないだけ。

宝塚記念も勝っていなかったルメールだが、凱旋門賞を勝つための一戦だったことは明らかだった。

やれることはすべてやった。

その辺りのモチベーションの差は、各馬のレース内容にも反映された気がする。