2021年天皇賞(秋)【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着エフフォーリア(3.4倍)2着コントレイル(2.5倍)3着グランアレグリア(2.8倍)

レース名第164回 天皇賞(秋)
日程2021年10月31日(日曜)
優勝馬エフフォーリア
優勝騎手横山武
勝ちタイム1:57.9
馬場
3連単配当2,040円

天皇賞(秋)2021 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
15エフフォーリア1:57.9-
21コントレイル1:58.01
39グランアレグリア1:58.1クビ
48サンレイポケット1:58.41.3/4
515ヒシイグアス1:58.71.3/4
単勝5340円
複勝5120円
複勝1110円
複勝9110円
枠連1-3400円
ワイド1-5170円
ワイド5-9200円
ワイド1-9170円
馬連1-5390円
馬単5-1850円
3連複1-5-9350円
3連単5-1-92,040円

天皇賞(秋)2021 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「人生で初めて嬉し泣きしました。大勢の前で勝てて良かったです。スタートもいいですし器用な馬なので、馬のことを信じて乗るだけでした。(親子3代制覇について)デビューした時に3代制覇がかかっているという理由で勝ちたいレースに天皇賞・春を挙げていました。今回は秋ではありますが、親子3代でなかなかできることではないですし、ひとつの小さな目標ですが達成できて良かったです」

※優勝した横山騎手のコメント

天皇賞(秋)2021 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

天皇賞(秋)2021 - 回顧

面白いレースになりそうな予感があるのは、ちょうどいいバランスの3強が形成されるから。

そのバランスの通り、人気順ではなかったが、3世代のギニーホース<桜花賞馬、皐月賞馬>が力を出し切った。

否、エフフォーリアが全て撫で切ったようなレースであった。

古馬になったギニーホース2頭は、若き勇者に対し、いくらかスケールダウンした走りに終始した印象もある。

充実の秋。一歩早く、背伸びした挑戦を大舞台で完遂、完全勝利したピクシーナイト同様、エフフォーリアには、困難な課題がますます少なったことを改めて示したのであった。

正攻法の逃げの手もあったグランアレグリアやコントレイルらに対し、「正攻法が似合うクラシックウイナー」そのものを体現したようなエフフォーリアは、その両者の真ん中で、スローの展開にも動じず、頭もキレキレで乗れ過ぎているほどにも映る横山武史騎手と共に、あくまでも正攻法の好位差しを選択。

出負けでも何でもないコントレイルは、結果的に内枠は災いしたが、それを追う位置で何も問題なかった。

一方、走る馬であるが故に、馬力優先の走りをしたがるのをどう抑えるかが、好結果に繋げるための第一歩であろうグランアレグリアは、スローが見える良馬場で下げない手をルメール騎手は選択。

ベストポジションのエフフォーリアは、斤量利のない古馬に対し、キャリアの不足を補うに十分な差しポジションから、理想の形を完璧に道中で作ったことになる。

ところが、直線で見せたディープの古馬2頭の反応と、やる気満々の高性能ブルドーザーと化したエフフォーリアとでは、順を経て、正しいストロークでギアを上げていく過程で、全く以って差がついてしまったようなところがある。

瞬間点火型として、グランアレグリアもコントレイルも、大いに破壊力を示してきたわけだが、どうも今回は彼や彼女に欠如する「王道を進む能力」で、勝負をつけられたところがある。

何一つ、エフフォーリアは後ろ指差されるような競馬をしていないから、古馬勢も全く言い訳できないが、もし言い訳できる要素を探れば、

「休み明けは若い馬の方が少しだけ有利」

という、身体能力の発揮に関わる、筋肉や股関節の可動域といった、アスリート的視点に立った柔軟性の違い、ではないかとも思った。

考えてみれば、おまけにではあるが、3頭ともが前走で負けているのである。

変わり身は古馬の方が、得意条件でこそ、いつでも走ってきたキャリアで何とかできそうなものだが、そういう類のチャンピオンシップではないから、本当の古馬の中長距離戦を知らないグランアレグリアとコントレイルは、物差しが違う「瞬発力」に我々は惑わされ、自分を崩すことなく力を発揮できる真の万能型であるエフフォーリアを、力でねじ伏せにかかるという困難なミッションに、あえなく失敗したのであろう。

死角を失った若いスター候補生は、誰よりも加速能力を備えているわけではないが、中距離で止まらない破壊力を示した。

「2000Mチャンピオン」

と評するための尺度となる要素を挙げるなら、コントレイルの皐月賞における道悪でのレコードタイムをいくらか、しかし、内容は菊花賞を勝ってしまうような後の活躍馬を完封の圧勝で更新していたエフフォーリアに、スケール感でも見劣ったことになる。

一方で、良馬場の東京2000は言い訳が利かない一方、初の58という死角と喉の怪しげな気配に対する措置、というそれぞれの宿題が、結果で回答できないことで、違った側面での可能性を見出した古馬の2頭にも思った。

言い訳不能の完敗だけに、陣営は苦しいわけだが、コントレイルはジャパンC、グランアレグリアは使うなら香港のレース<負けてしまったので、喉が問題ないなら意地でもどこか使いたいはず>ということで、馬場状態というか、必ずしも正攻法でなくても好勝負の結果が出せそうな条件へ転じ、まだまだ名誉回復の快走の可能性は残された、とも言える。

古馬はいくらか、叩いた方がいい。

5歳秋にして初めて、一度使って出来キープを可能とした9冠・アーモンドアイのように、良いレースの後に負けたことで、闘志が復活してくる可能性は大いにある。

ただひとつ、コントレイルが妙にもたれていたような気がする。

脚に不安があるようなタイプではないから、自分の判断で体を作ってきたようなところがある自身の判断の誤りはないだろうが、見かけに似合わず、恐ろしくスピード型として進化してきた可能性も考えられる。

牝馬のように、あまりに格好よく見せすぎた大阪杯では太いと、自身も陣営も悟り、しっかりと作ってきたから、敗因は斤量も休み明けも出てくるとして、そうしたバランスの悪さが解消された中、それでも懸命に走ったとて、それほどフォームのバランスは崩れないのがコントレイルだったのだが、言っても目方は増えたのだから、問題ない点ばかりを強調した筆者の中で、結果的にはグランアレグリアのような位置をとった方がもっと持ち味が出せる可能性を感じた。

そう言えば、ウオッカやジェンティルドンナが途中からというか、最後の最後で鞍上が替わった時、今まで溜めることであるとか折り合い重視の部分を取っ払って、あまり知らないことを武器として、正攻法で距離不安のあったジャパンCや有馬記念を勝ったという歴史がある。

牝馬にはそういうルールがあるものだが、牡馬にそれを当てはめるのは難しいのか。

否、あのキレすぎる反応を見事に抑えたところで、持ちうるスピード能力を全開にしても、差して限界があることを図らずも今回、証明してしまったのである。

逃げても良かったと考える筆者だが、陣営がゴールを設定したことで、大事に乗ることを重視したのだとすれば、立場上<ディープインパクトの後継種牡馬として>、福永騎手は攻めの戦略は取れなかったのかもしれない。

大阪杯では少しやりすぎたが、モタれの原因を詰めていくと、疲れていること以前に、キレ味という部分を疑った方がいいようにも感じた。

上手に出来過ぎる優等生という考えはあったようだが、実は、菊花賞で危険な感じもありながら、何とか押し切った正攻法の方が、もう見た目以上にパワー優先のスピード型になったように思うコントレイルには、戦いやすいような気がする。

持ち場に戻れば、その他健闘の2頭には自分の型で攻める手が合っているとなるが、その点が、牝馬並みのエンジンの掛かりの良さで自在性を活かし過ぎてきたのに対し、少しだけプッシュした競馬を自分自身でさせていくような厳しい戦いを、出来るだけ選択した方が、結果はいいはずだ。

ジャパンCを昨年使った頃から、もしかするとそうだったのだろう。

調教の時計を自分で決めるような馬相手に、あまり素晴らしい正攻法は合わないのだろうから、攻めるかもっと引いてしまうか、はっきりしたジャパンCを期待する。

出走が決まり次第、それを信じて、本命に推すつもりだ。

あと最後に、血統構成の特性から、キレ負け必至としたエフフォーリア評を反省すべく、正しい王者となった彼の作った新常識を記しておく。

祖父シンボリクリスエスは、宝塚記念を同じように休み明けで使い、ハイペースで正攻法に出て、力を発揮しきれず敗れた後、フレッシュな状態でこの秋の天皇賞に挑んできたのだが、妙にキレまくっていた。

引退レースの有馬記念が、実に9馬身差圧勝だから、みんなそちらを記憶しているわけだが、ロベルト系と言えばブルドーザーにように伸びてくる急坂のあるコース向きの系統という認識を、一気にこのレースで破壊したのだ。

その後、ロベルト系からはウオッカもスクリーンヒーローも出てくて、気が付けばグラスワンダー閥のモーリスが現れ、あっさりこのレースを勝った。

時間も経過し、シンボリクリスエス閥のエフフォーリアが登場してきた。

モーリスもエフフォーリアも、距離適性はそっくりだろうが、気性が幾らかエフフォーリアの方が優しいか。

その分、末の持続が10F以上でのレースでも可能になる。

ダービーからの直行ローテは、とっくの昔に不可能性はないことは証明されていたのだろうが、ロベルト系はスローペースでも強いことを示した。

ディープインパクト相手に、過度にキレる相手ではあるが、止まらないエンジン性能という大いなる武器で、3歳馬として勝った意義は大きい。

ディープも3歳馬なら、もっとチャンスのあった馬は多いのだろうが、軽い流れでもギアチェンジのリズムに破綻なく、バタバタにならない終いは素晴らしい。

サンデーサイレンスのクロスの恩恵はあるが、ロベルト系のそのままの体型をしながら、中身が速い馬ということはすごい進化だ。

その点が、あの皐月賞で証明されていた。今にして思えば、ではあるが。