ヴィクトリアマイル2025の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

ヴィクトリアマイル2025の予想と最終追い切りの予想を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第20回ヴィクトリアマイル (G1)
グレード重賞(G1)
日程2025年5月18日(日)
発走時間15時40分
開催場所東京競馬場
距離芝1,600m
コース左回り
賞金1億3000万円
レコードタイム1:30.5

ヴィクトリアマイル2025予想-予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

ヴィクトリアマイル2025の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気  
11クリスマスパレード石川 裕紀人牝45630.411美浦・ウッド・重(助手)
6F 81.8-65.1-51.0-36.9-11.7(馬なり)
美浦・坂路・良(助手)
800m 54.0-39.2-24.8-12.2(馬なり)
12ステレンボッシュ戸崎圭太牝4566.92美浦・ウッド・重(戸崎圭)
5F 67.9-52.8-37.7-11.3(馬なり)
美浦・ウッド・良(戸崎圭)
7F 99.3-82.4-66.4-50.9-36.1-11.3(馬なり)
23アルジーヌD.レーン牝5569.55栗東・坂路・重(助手)
800m 53.1-38.2-25.0-12.2(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 62.0-44.6-28.8-14.4(馬なり)
24サフィラ松山 弘平牝45620.48栗東・CW・重(松山弘)
6F 81.4-65.8-51.1-36.4-11.2(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.1-40.2-26.1-12.6(馬なり)
35ラヴェル津村 明秀牝55640.613栗東・CW・重(助手)
6F 81.9-65.8-51.3-36.4-11.4(一杯)
栗東・CW・良(助手)
4F 51.9-36.9-11.1(強め)
36ミアネーロM.ディー牝45635.912美浦・ウッド・重(M.ディー)
5F 67.7-52.4-37.6-11.4(馬なり)
美浦・ウッド・良(M.ディー)
5F 66.2-50.5-36.2-11.1(G前仕掛け)
47ワイドラトゥール北村 友一牝45651.614栗東・CW・重(北村友)
6F 83.0-66.6-51.6-36.4-11.3(馬なり)
栗東・芝・稍重(西塚洸)
4F 57.3-40.8-12.3(馬なり)
48シンリョクカ木幡 初也牝55671.816美浦・ウッド・重(木幡初)
5F 66.2-51.9-37.3-11.7(G前仕掛け)
美浦・ウッド・良(木幡初)
5F 67.0-52.0-37.1-11.9(馬なり)
59アドマイヤマツリ田辺 裕信牝45612.27美浦・ウッド・稍重(助手)
6F 81.9-67.0-52.6-38.2-12.4(馬なり)
美浦・ウッド・良(田辺裕)
6F 82.7-66.7-51.4-37.2-11.2(馬なり)
510ボンドガール武 豊牝4567.03美浦・ウッド・稍重(嶋田純)
4F 50.8-36.6-11.2(G前仕掛け)
美浦・坂路・良(嶋田純)
800m 53.7-39.5-25.7-12.7(馬なり)
611シングザットソング斎藤 新牝55672.017栗東・坂路・重(斎藤新)
800m 54.4-38.9-25.0-12.3(末強め)
栗東・坂路・良(斎藤新)
800m 54.1-39.0-25.3-12.4(馬なり)
612シランケドM.デムーロ牝55611.16栗東・CW・重(M.デムーロ)
6F 80.5-65.8-51.1-36.5-11.6(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.6-40.0-25.6-12.5(馬なり)
713ビヨンドザヴァレー菱田 裕二牝55626.09栗東・CW・重(菱田裕)
6F 81.2-65.2-50.6-35.6-11.1(強め)
栗東・坂路・良(菱田裕)
800m 55.8-39.4-24.5-11.7(馬なり)
714マサノカナリア横山 典弘牝45695.718栗東・坂路・良(助手)
800m 52.5-38.3-24.4-12.1(強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 56.6-40.2-25.2-12.1(馬なり)
715ソーダズリング坂井 瑠星牝55629.910栗東・坂路・重(坂井瑠)
800m 51.7-37.5-24.4-11.9(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.9-39.3-25.4-12.5(馬なり)
816クイーンズウォーク川田 将雅牝4568.34栗東・CW・重(川田将)
6F 84.2-68.1-52.3-36.8-11.1(馬なり)
栗東・CW・良(調教師)
4F 55.0-39.1-11.9(馬なり)
817アスコリピチェーノC.ルメール牝4563.51美浦・ウッド・重(助手)
6F 82.4-66.2-51.2-36.9-11.0(一杯)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 79.1-64.4-49.8-35.6-11.2(馬なり)
818アリスヴェリテ池添 謙一牝55669.015栗東・坂路・重(池添謙)
800m 53.4-38.4-24.4-12.3(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.2-37.7-24.4-12.3(一杯)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬1回1回2回15回5.3%10.5%21.1%
先行馬5回7回6回51回7.2%17.4%26.1%
差し馬13回9回8回118回8.8%14.9%20.3%
追い込み馬0回2回3回92回0.0%2.1%5.2%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠1回2回7回27回2.7%8.1%27.0%
2枠3回3回3回29回7.9%15.8%23.7%
3枠7回0回1回30回18.4%18.4%21.1%
4枠0回3回2回32回0.0%8.1%13.5%
5枠1回4回1回31回2.7%13.5%16.2%
6枠4回1回0回33回10.5%13.2%13.2%
7枠2回1回2回48回3.8%5.7%9.4%
8枠1回5回3回46回1.8%10.9%16.4%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト37回16回14回158回16.4%23.6%29.8%
ロードカナロア29回32回22回173回11.3%23.8%32.4%
エピファネイア25回18回21回136回12.5%21.5%32.0%
ドゥラメンテ20回19回22回132回10.4%20.2%31.6%
キズナ18回17回13回102回12.0%23.3%32.0%
ルーラーシップ14回16回9回86回11.2%24.0%31.2%
ハービンジャー10回15回7回82回8.8%21.9%28.1%
イスラボニータ10回11回5回58回11.9%25.0%31.0%
キタサンブラック10回6回5回44回15.4%24.6%32.3%

ヴィクトリアマイル2025 - 過去10年のデータ傾向

実際問題、超名牝以外の1番人気は全く信用ならない一戦

何頭も1番人気が消えては、毎年のようにそれを繰り返し、たまに出る爆弾系万券クイーンの出現により、毎度苦笑いをしてきたという歴史は、クイーンC以降の牝馬重賞が、全て中距離以上でしか行われないという、牝馬の番組の偏りによる弊害とも言い換えられなくはない。
要するに、ここでの人気を担保する実績となる、あくまでも中距離以上のG1好走の記録か、最近、ここに繋がる重賞で連続好走しているなどの要素が、当然のごとく、この東京マイルの高速戦であてになるのかという問題。
極めて単純な論理を展開するなら、誰が見ても強い馬=断然人気の一頭だから、他とは干渉をしないレベルで、勝手にやってきて、普通に好走するということ以外、要警戒なのである。 だから、穴馬から入るべきという1番人気のシグナルから、6頭が連外し<ヌーヴォレコルト、2017年のミッキークイーン、ラッキーライラック、レイパパレ、スターズオンアース、モレイラのマスクトディーヴァ>の件は、総じて、マイラーでなかったから来なかったというより、抜けて強いというような存在ではなかったから、前にもう一歩届かなかったとできる。 アスコリピチェーノなら3番手でいいが、ステレンボッシュやボンドガールが売れすぎるようなら…。

よくわからない1351Mのタイム換算をしたところ…

過去には、まだサウジの国際競走の歴史の浅さも手伝って、ソングラインが○×と交互に繰り返すという、不可思議な凸凹戦績で勝ったり負けたりであったから、あまり信用ならないものがあるのだが、今年は、アスコリピチェーノが人気になることは間違いないから、ここを押さえておく必要があると思ったのである。
距離を1400Mから推理した時、3.5秒後にゴールするとしたら、1351ターフスプリントのソングラインの走破タイム<1:17.8/ソングラインが勝った時とほぼ同じタイム>というのは、日本では1分21秒台前半の計算。 1200から10秒余計にかかると推理したら、凡そ、スプリンターズSのあまり馬場が速くない年というか、どちらかと言えば、荒れ馬場の多い高松宮記念の平均タイムとの換算で、ほぼイーブンのイメージ。
雨馬場の札幌・キーンランドCよりは速く、当然、その直後の阪神で行われるセントウルSなどよりは遅いというイメージ。 雨馬場にはほぼならないから、そのサウジアラビアで走った記録よりも13秒くらい持続させた走破時計でいつも乗り切っていることを踏まえると、本来は結果は関係ないような感じもあるのだが、まず、欧州の大物が出てくることのないレース。 年明けのいいステップになると、今年もアスコリピチェーノが証明してしまう可能性は大いになる。 ソングラインよりも安定して力を発揮するこの馬は、軸に相応しいとする本命党のキーホースであろう。

物量作戦の本流・阪神牝馬S組は、昨年のような出し入れが必要

とにかく、ボンドガールとスウィープフィートが飛んで、タガノエルピーダが完全に展開不適の決め手比べでの不発をかましたので、前走の結果に左右される人が多数出現するはず。
NHKマイルCの内容からも、アスコリピチェーノとボンドガールとの力差は本来はあまりないはずで、ボンドガールがあのレースの2着馬であったところで、誰も不思議に思わないだろう。 降着処分が発生していて何も不思議ないほどの不利を受けていた。
といって、どの距離でも鈍らな印象のボンドガールが安定した結果を残す以上、消せはしない一方で、頭からは狙いづらい。 だったら、昨年の6着→1着という、ヴィルシーナ的ワープ<牝馬Sが1400時代に11→1というウルトラCでレース連覇を決めた>が、過去には何度か起きていて、このレースであるとか、東京マイルでの実績が遠い昔にでもある馬は有利な傾向。
東京マイルは走ったことがないものの、桜花賞もオークスも見せ場十分だったスウィープフィートなどは、1400はもう合わないという印象で、前走も絞り込めなかった感じだから、同じ馬体重だったところで、今度は締まって出てこられそうなのだが、出走枠に滑り込めるか、運も少し必要な状況。
最初は鞍上も決まっていなかったくらいで、不安はあるのだが、変な雰囲気に突入しつつあるステレンボッシュよりは信用できるだろうと、アスコリピチェーノ推しをしながらも、人気面で不利があるG1馬よりも、人気一気にガタ落ちのキレすぎる牝馬を一頭は仕込んでおきたい。 アドマイヤリードやランブリングアレーのようなタイプで、まさに、昨年のテンハッピーローズのような大炸裂タイプのビッグバン的展開を先導して不思議ない一頭だろう。 前走は試しに動いたら、見事に止まった。 動かさないと距離はこなすが、途中から動くとダメで、では、最初から前であると…。 自由度の高い伏兵らしい動きの不確実性には、面白みを感じる伏兵であろう。

危ない橋を渡ることになる福島牝馬組は、代々、超攻撃型の伏兵の生産地である

久しく馬券に絡んでいないが、2着のデンコウアンジュであれば、単勝70倍弱の11番人気。 3着ミナレットは、殿人気ではあったが、にしても低評価の290倍。 前者にはアルテミスSでのメジャーエンブレム差し切りの実績が、後者だと、暮れの重賞昇格前のターコイズS勝ちの記録がある。
ただ、前者は中距離型の印象で、後者であると元は1400が得意だったイメージ。 しかし、1ハロン分余計に距離の適性が問われ、場合により、より短い距離でのスピード実績が問われるほどに高速になる東京のG1であるから、この辺りのピントのズレから、ハマる可能性を探るカギにもなってくる。
ここで推したいアドマイヤマツリは東京で3連勝の記録を作りながら、3走前に東京で敗れ、中山と福島で再び連勝。 これは人気に繋がる安定感の要素になるわけだが、G1未出走の馬が重賞連勝でもしていない限り、上位支持でも高が知れている。
穴男の本分を弁えた東の職人・田辺裕信は福島恋し…<地元での開催なのだが、夏のローカルよりも秋の方が意外と目立つ印象>、先取り牝馬S勝ちの勢いをかって、13倍くらいのオッズに収まれば、どこでも無難に走り、また、前走の上がりが一番ではない馬が良く好走する特殊性からも、自然と人気落ちの要素が生まれる中で、レース上がりトップで一度しか走ったことのないアドマイヤマツリは、本質的に、中距離型ではなく、このマイルの方があっている可能性が大いにある。 福島もそうした上がりの記録が良くなかった馬が巻き返す舞台だが、そうしたコネクションから、前受けで穴を開ける候補の一頭に、この4歳上がり馬を推してみたい。

ヴィクトリアマイル2025- 出走予定馬の血統/成績/タイム

キタサンブラックはマイル向き種牡馬であると、密かにブームが来ていると読んでの勝負

アドマイヤマツリの血統

ダンチヒの直仔であるバウンダリーを父に持つシーズライクリオという輸入繁殖牝馬は、一応、社台の名牝系を築くまでは至らなかったが、母母のアドマイヤカグラが白老ファーム産であるから、そのライン上にいたという分だけの価値は認めるべきだろう。 母系を辿ると、フォーティナイナー系の名種牡馬・ディストーティドヒューマーがいて、決して、鄙びた場所で細々とやっている日高の馬という印象を持つべきではない。 意外性に富んだ、隠れた底力を秘める。
そのアドマイヤカグラはスペシャルウィークの仔であり、その娘であるアドマイヤナイトは、なぞなぞで何となく想像の付く父・アドマイヤムーンの産駒。 この時点で、やや激しいサンデーの3×3をかけられたが、これにまた、直系3代目に同種牡馬を持つキタサンブラックを配したから、3×4・4と相変わらず強いクロスを継続。
馬格のあるブラックタイドとキタサンブラックのラインは、サクラバクシンオーも大型のテスコボーイ直系種牡馬だから、この組み合わせで、小型に出るとサンデーらしさを全開にさせるが、中型以上であると、イクイノックスのような変異系モンスターを除いて、まず距離はあまりこなせない。 まさに、プリンスリーギフト系の種牡馬らしい側面と窺い知れる。
中型だったアドマイヤムーンが、そのほとんどを短距離のフィールドの中で生涯を走り切るという、いかにものフォーティナイナー系スピード型種牡馬らしさを見せたことを思えば、中型牝馬で、牡牝換算でのちょうど中間ど真ん中のような450kg台の馬体重を適正とするアドマイヤマツリは、本質的に万能だが、ズッコケ新馬以外の8戦完全連対の機動力は、ともすると、父と母父は抱える短距離型の宿命とフィットし、マイルで爆発の、昨年の勝ち馬・テンハッピーローズ<エピファネイア×タニノギムレット×サンデーサイレンスであったのに1400と1600限定のサウスポーだった>と似た構図にも思える。
昨年ほど、信用ならない実績の馬や、怪しいローテーションを組んできたグループは少なく、世代レベルからして、まず4歳全飛びは想定されない。 軽くはない血統のスピード型にツボがあるとされる東京マイルのハードな底力勝負で、この隠れた連勝馬の底力が全開になって何ら不思議はない。

4歳馬の割には、近年の傾向に反し、沢山レースを使われてきたアドマイヤマツリは、2歳暮れにデビューの牝馬としては異例にも近い、10戦目をこのレースで迎えることになる。 単純計算で、ひと月半で1走くらいのペース。 無駄なレースを使うタイプではない若き指揮官である宮田敬介調教師としても、極めて珍しい臨戦過程となった。 今年だけでもう4戦目。 年始めは2か月半以上開いた東京連続使いのローテだったが、そこから中5週→中3週で初重賞出走ときて、また中3週で次は初のG1。
鋭い決め手を繰り出す馬のイメージがあった筆者。 戦績を改めて見返して、勉強不足を痛感した上に、面白いと思って、そのレース内容を全て精査したら、想定以上の見立て違いであることを実感した。 自信の◎である。

ヴィクトリアマイル2025 - レース展開と最終予想

まず以って、戦績に瑕がほとんどないというところで、その中で例外的敗戦を喫した新馬を見直すと、スタートでのんびり発進のジエンドパターン。 事情があって、デビューが遅れた組が多い暮れの新馬が、芝の中距離であると、よくこうした多頭数にもなるのだが、コースいっぱいに、プレホープフルSというよりも、皐月賞の予行演習のようなフルゲートのレースで、結果、ここまでの最高馬体重だったアドマイヤマツリの作りの程度が、わかりやすくも透けて見えた。 こういう場合、使えるかどうかわからないので<当然抽選となったレース>、その時にいい状態ではない可能性がそれなりの確率であり得るから、その事情を踏まえた時、あくまでもレースに慣らすという目的が垣間見られたとも言える。
ただ、鞍上の戸崎騎手が、進みが悪くて、今日はこの辺にしておこうかと、直線もあまり本気で走らせる気がなかったようにも見えたのだが、そこから前に馬を置くと、何故か自信が漲ってきたのか、突如として、しっかりと走り出したのである。 当然手遅れ、百戦錬磨の戸崎圭太が無駄に才能を消費する下手な手に出ることはないが、大分後ろの方にいたはずなのに、そこから大して追わずに7着にまで押し上げてきたのだ。
これであとは普通にスタートを決めてきたから、以降8戦では全て連対。 ところが、である。 そこから、この馬の本性が明らかになるのだ。 2戦目はフローラSで人気になるバロネッサに完璧な立ち回りをされたから仕方ないにしても、その後がはいつも人気になっても、大概は、真面目に最後の一頭を交わすところまで踏ん張らないのである。 ソラを遣うには早すぎるタイミングだから、あまり叱咤の意味がない、ワンペースなところが見受けられた。 故に、上がり最上位のレースは一度しか存在しないのである。
ただ、無理やり6月に戸崎騎手が勝たせてから、夏を休んで、また秋の東京で走ると、今度は少し瞬発力勝負に進境が見られる内容で、晩春に無理やり絞り出した33秒台の中身よりはずっと軽く、相手なりに走る、母父アドマイヤムーンがそうであったことを思い出させてくれるようなパフォーマンスであっさり連勝。
上がりの記録では1勝クラスの平場の方が上だったが、秋2戦目の2勝クラス特別は、その後に連勝するディマイザキッド<同期の共同通信杯4着馬、上位2頭以外も案外出世しそうな勢いがある>を抑えて、最後は完全に抜け出しての完勝。 好位から抜け出す形で、決め手も見せるのは、前向きな気性を抑えることで終いの伸びに繋げた武豊流のエリート教育を施された後、陣営のいわばエゴで岩田康誠騎手に鞍上を挿げ替え、好位のイン抜け出しで最後のジャパンCでメイショウサムソンらを返り討ちにしたアドマイヤムーンの競馬を、これも思い起こさせるに十分な内容。
何と言っても、これはJC当日の特別戦なのだから、価値がある。 その後、年明けの東京でキング姐さんとカナテープおねえの強襲に屈した時も、今まで経験のないハイレベルなバランス型スピードラップのレースで、タフな女の在り方を教授されたかのような出し抜けを食らったが、最後まで食らいついていた。 様々な事情で、前々走から田辺騎手にスイッチしたが、あのディマイザキッドを最後に突き放した内容が本物であったことを証明するような連勝であるというだけでなく、抜群の好相性を示す自在な立ち回りで、ほぼノーステッキに近い完勝劇は、1年前の彼女の姿とはまるで違う。 キタサンブラックもアドマイヤムーンも、3歳春からクラシックで好走していたが、4歳になって以降の内容は、同期の中では抜きん出ていた。 そんな姿を受け継ぐアドマイヤマツリを、ここで軽視する手はない。
久しくG1に縁のなかった田辺裕信騎手が、ロゴタイプの安田記念以来となるJRAタイトルの奪取に成功したのが、あの激闘となった阪神の菊花賞を制したアスクビクターモアでの1勝。 その後のあまりに不幸な結末は、言葉にするだけで切なくなってくるが、ほぼ同年代の川田騎手が、それと同期だった藤岡佑介騎手が、期せずして、大事なパートナー、かけがえのない弟を失ったのと同じような経験をしている。 田辺騎手の場合は、一旦、自身の手から離れた後に、春の天皇賞を使った後の夏の悲劇。
その天皇賞では、結果として横山和生騎手のファインプレーで、ややお疲れ気味だったようにも思えるタイトルホルダーに無理をさせずに、完走を途中であきらめさせたことで、あの秋のビッグタイトルマッチでしっかりとした走りで魅了するスーパーステイヤーの輝きを取り戻すことに成功して、スタッドインしたのである。 思惑はそれぞれありながら、うまくいくことやいかないことを繰り返して、その時のベストを尽くす時、川田騎手が後悔してもしきれない何かを抱えながら、それでも戦い続けるしかない現状の立場に、リバティアイランドを管理する中内田厩舎のスタッフへの配慮や、多くいる彼女に関わることとなったクラブ出資者への悲痛な声が、あちこちで聞かれる。
無事是名馬をそのまま体現したキタサンブラックに、タフに4歳のジャパンCVまで17戦したアドマイヤムーンが母父というアドマイヤマツリは、この日まで、命に関わるほどの故障とは縁のない競走生活をしてこられたわけだが、重い経験をしているベテランがこうした馬に乗る時、慎重な振る舞いをしながらも、丁寧なエスコートをすることで、今まで以上の能力が発揮されることがある。 戸崎騎手がかかわったドウデュースやダノンデサイルなども、神からのオーダーに120点の回答を出来る名手の力を借りずとも、案外、普通に能力が発揮できる状態ならばG1でも勝ち負けだったが、決め打つ必要があるところでは、インパクト大の結果を導くためのスペシャルな策を要するために、戸崎流の良さが目立たなかった。
そうしたところでアドマイヤマツリは、ちょうど中山で日曜重賞のない日の特別から、田辺騎手にスイッチし、今まで以上の直線の伸びを発揮。 このような鞍上変更から過去2戦以内限定で、その前の騎乗経験がなかった場合、ここまで19回登場の勝ち馬の内、コイウタ<初G1制覇の松岡正海>、エイジアンウインズ<テン乗りの藤田伸二>、ホエールキャプチャ<中山で攻めた後に普通に乗った横山典弘>、ストレイトガール<初制覇時は戸崎テン乗り>、ノームコア<自国以外のG1初制覇のレーン>、ソングライン<これも戸崎初騎乗>など、成功例が非常に多いレースでもある。
関西コンビの場合は、限定的な成功の確率で、藤田元騎手の巧みなエスコートで変な感じで小さくまとまりかけていたウオッカを倒した例のみとなるが、後の関東馬や関東の騎手が乗った時は、比較的人気面の妙味があり、G1実績もある馬が人気落ちで好走する例も多いが、テンハッピーローズやエイジアンウインズらのジャイアントキリングに近い仕事を求められるアドマイヤマツリにとっては、非常に好相性の騎手を鞍上に迎え、前走の上がりが速くない馬が有利な、差し脚一本では苦しい総合力勝負になるこの東京マイルで、持ちうる才能の大半を見せつけた時、連勝がのびるとして、何ら不思議のない条件が整ったことになる。
渋めの血統の桜花賞やその前のジュベナイルフィリーズから続くライバル関係の同期2頭が最大のライバル。 ただ、両者には海外遠征からの立ち上げに少しだけ不安があり、とりわけ、桜花賞馬のステレンボッシュは、若干の迷い道の最中。 強い5歳馬も散見され、ライバル多数の組み合わせは、ともすると、名手でもターゲットを見誤ることがある。 不意打ちが得意な福島男が、再び府中のマイルで魅せるとなって、今度は前走重賞完勝馬なのだから、いよいよ、誰も文句は言えないはずだ。 今年は強いマイル実績のある有力馬がいるので、昨年ほどの大波乱にはならないと踏んだが、それでも、相手次第では、大いに3連勝式はハネる可能性がある、波乱含みのレースだろう。