安田記念2015 回顧

あっ、出ましたね。

いや、行きましたね。4年前の自分を取り戻すかのような僚馬・リアルインパクトの牽引する流れに、好位のそれも前にうまく壁を作る理想的な競馬を、モーリスにとって生涯初めてと言って差し支えない普通のことを、初のGⅠ舞台でできたのだから、2着ヴァンセンヌを含め、立派なレースをしたとまずは称えたい。

加えて、モーリスの場合は、その普通の基本能力で勝負する戦法では、変に内へ飛び込むことも経験がないからできない。下げても揉まれる危険があるから、それはそれは川田騎手も大変だったように感じる。

いや、それが大変になるだろうとは思わない若い頃しか知らない鞍上だったことも、何故か普通の競馬をしたのに、結果判断ミスをしない下地になったことも、陣営の勝負運がある者とそうでないものとの差として現れたのか。

普通は大分引っ掛かって、直線伸びきれませんでした…、という騎手コメントが、他にも多数並んだライバル騎手の言葉を載せた記事のそれこそ真ん中にあっても不思議じゃないわけで、改めてすごい馬だと、すごい調教師だと思わされた。

メジロボサツから発展したデヴォーニア系の主流系統の出身で、かの日のメジロ牧場を支えた血統という面でも応援しがいのあるモーリス。

父は父で、グラスワンダーとダイナアクトレスの娘の間に生まれた良血馬。

そんな少し重厚な配合でありながら、マイルのある程度速い時計への対応力が要求される格の高い競走で連続好走できた要因は、言わずもがな一族で最高の成績を残したメジロドーベルとも通ずる気性の難しさである。

モガミが入っている時点で、少々不気味な印象はあるが、父グラスワンダーとは馬体から醸し出される大物感だけ受け継ぎ、大らかと評すには程遠い気荒さを、パドックの時点から放っていた。

ヴァンセンヌはパドック気配も良かったのに、何故差し切ることができなかったのか。

今にして思えば、そこから輪乗りまでの間に大多数の馬というのは、より気合いをみせるものだから、騎手もコントロールしにくくなるのだが、少しテンションが上がった分を、返し馬で解放することに成功したモーリスは、結局、慣れない好位からの競馬でリズムに乗れなかった点でも消耗はあったのだろうけど、実際は、スタミナロスまではしていなかったのだろう。

前走に引き続き豪脚を披露しながら、今回も届かなかったヴァンセンヌとは、やはり気性の面で制限される戦法の差が、もろにしかも大舞台で出てしまったのである。

筆者は、もしかしたらこの真逆のゴールシーンもある気はしてたが、どちらにせよ古馬オープンでのキャリアの差までみると、着順に違いが出たとまでは言えない。

モーリスが勝ち抜けたことが、今回はっきりした晩春の思い出話となりそうである。