安田記念2019 回顧

スタートの前のそわそわから、怪しい気配はしていたが、外の人気2頭は、流れに乗ることはできなかった。

そして、直線はレースをできなかったダノンプレミアムは…。

当然、グァンチャーレがいいペースを作ったところで、アエロリットのスピードには敵わない。

レースの上がりが34秒をわずかに切るという展開で、レース決着は1:30.9である。

アーモンドアイの鬼脚がどうこうではなく、そもそもトラックバイアスに近い内残り馬場であるから、インディチャンプが3分どころからちょっと外くらいを通って、アーモンドアイを上回るほどの末脚で伸びてくるのは、中距離戦ではないからという理由以外はない。

45.8-45.1という展開は、安田記念の前半の流れとしてはアヴェレージだから、アエロリットという馬が常に正確に走れる馬であることを証明するとともに、それにしっかりと追撃してきた勝ち馬のインディチャンプと差し届かずの人気馬・アーモンドアイは、さすがである。

本来はもっとダノンプレミアムが盛り上げてくれるはずのレースになったはずだが、それは時の運も左右したりするから、こればかりは仕方ない。

完璧に乗れるチャンスを、まずくじ運の時点で勝ち取ったインディチャンプは、まだ若いダービージョッキーの福永祐一の今ではお手馬になったから、前回の仕上げに自信の反省を交えた勝利騎手インタビューなどを切り取っても、全然余裕が違った印象を受ける。

そもそも、外に持ち出した時の手応えが、16頭の中では断トツ。

周りに影響されて、さすがに苦しい揉まれる競馬を強いられたアーモンドアイが、少しだけマイラーテーストに戻してきた馬体でも、真の完成期に近づく4歳春だから、才能だけでJCなど勝ったわけではないことを示すように、生涯最高体重ですらっと見せたあたり、高速決着のマイルGⅠは、昨年のスワーヴリチャードのように、もう歓迎にはなかった。

危険性を孕むステイゴールドの晩年の傑作にして、若くして安田記念を制したリアルインパクトが叔父にいる血統背景は、このレースに4歳で挑み、その前にNHKマイルCに出られなかったことを逆手に取り、6月からせっせと古馬と当たって、3歳の冬には、この手の難しさを最もコントロールしてくれる福永騎手に陣営も全権を委譲し、ひとつの完成を見た。

その中で2月の東京新聞杯をレコード勝ち。

内からも抜け出せ、多少のことでは怯まない父の活躍馬の性質を見極め、安田記念は坂の辺りまで馬なり。

もちろん、スタートの問題はあったにせよ、インディチャンプにケチをつけるのは明らかに間違っている。

それで負けたのなら納得。勝てば、今晩から左団扇である。

アーモンドアイはスタートが悪かったということはない。

だから、厳しい位置取りにはなったものの、形は作った。

4歳牝馬が、アエロリットのような型の決まった馬もレースで、総合力だけに出持ち直した直線は、これはこれで圧巻である。

問題は、出来も難しさのある気性面も問題なしに映ったダノンプレミアム。

スタートはやや突進した格好で、下がった時に扉が開いてしまった。

そこで行かねば出た意味のない外のロジクライ<武豊騎手>が、何も斜行したわけではないが、その自滅から立て直せずに、2歩目で前をカットされ、トモを滑らせた時点で実質アウト。

爪に不安のある馬だから、長く活躍しても5歳馬の全戦績程度のキャリアしかなかったデュランダルのように、間隔を意識して使ってきたが、あまりにも作りが立派で、タフさも兼ね備えた体型がちょっと違うプレミアムは、タイキシャトルなどと双璧の可能性を秘めつつ、マイラーズCより更にタフになった今回の直線で、脚を痛めてしまった。

現状、はっきりとした病状は知れないが、窮屈な競馬を好む同期の上がり馬に負けたあたり、残念ながら、その将来性を奪ったのは、あまりに豊かすぎたその才能のせいだったと言わざるを得ない。

事実上初めての高速馬場でのレース。

本命を外したことより、こういう形で終焉を迎えてしまう状況に追い込まれたことが、何よりも恨めしく思う。

しかしここは、アーモンドアイが改めて偉大な名馬であることが、これで明らかになったと考えたい。