2014年有馬記念 回顧

3強がそれぞれの持ち味を活かして、その前には最近パッとしなかった春先の主役がいた。

「世界一を競う舞台に挑まなかった第四の女」
思えば、宝塚の道悪を苦にするところがあったから、4歳夏の時点でロンシャン行きを諦めていた。メイダンの2400Mでは崩れなかったのに、だ。

あり得ないローテーションをとってきたのは、やっぱりジャスタウェイの方だったのだと、1角を回った時に思った。枠の有利不利がはっきり出る競馬とはいえ、ゴールドシップをスローペースで前に見る位置に押し込められたのは痛かった。
何もさせてもらえず、最後は風船が萎んでしまうかのように、坂を上った時に馬は諦めてしまっていた。

そんな馬に、ジェンティルが2度負けたからと言って、自身がGⅠを勝てなくなったわけじゃなかった。
今年のジャパンカップで再戦するまでのGⅠ勝ち星の差はイーブン。それも2つずつだから、単純に下降線に入ったといわけではなかったのである。はあ…。

ジェンティルとは何度も戦ってきたが、中山で不覚をとったゴールドシップ。器用に見せて、全くそうじゃない競馬観を持つ不肖の男は、自ら上がって行く自分のスタイルを忘れてしまったかのように、この日はおとなしい競馬に終始した。
岩田騎手とは合うようだが、好スタートを決めた割に、普通に走っているのを見て、これでは勝てないと確信した。

個性こそ違えど、父の域に達する唯一の方法論は、GⅠの勝ち星で少なくとも同じにすることだった。多くのファンが7つ目のタイトル奪取に思う、感謝と有馬らしい出来レースへの幸福感。
何にも代えがたい時間を、殿堂入り確信の手応えと共に、皆で共有させてもらった。素晴らしい。

父の域に届かなかったとするならば、日本人騎手では制御できない気難しさの系譜なのだろうか。
結果だけを見れば、そう言われかねないクリスエス-エピファコネクションの怪。エピファネイアには、器用に戦うことはできなくても、スタミナがみんなよりあるはずだったのだが、それを活かすことはできず。
逃げられる器用さがない分、レース場のランドマークに成り下がってしまった。速さは父には及ばずが証明されてしまった。

直線、皆が外を見ている時、ジェンティルドンナと戸崎騎手だけが、外からの豪脚一閃のみを注意する余裕があった。有馬ではよく走る血を持つトゥザワールドを連れてきて、2分35秒と時計を要した競馬を、完全に自分だけのものにできたのも、有力馬で唯一消耗をしていなかったことが要因であったのだろう。
ただ、愛しき彼女の首を振る姿をもう見られないというのは、喪失感が大きい。さよならでは寂しい。
ごきげんよう。