2020年 有馬記念【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着クロノジェネシス(2.5倍)2着サラキア(74.9倍)3着フィエールマン(3.5倍)牝馬史上2頭目の春秋グランプリ制覇!

レース名第65回有馬記念
日程2020年12月27日(日曜)5回中山8日 11レース
優勝馬クロノジェネシス
優勝騎手北村 友一
勝ちタイム2:35.0
馬場
3連単配当50,150円

有馬記念2020 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名騎手タイム着差調教師
19クロノジェネシス北村 友一2:35.0 -斉藤 崇史
214サラキア松山 弘平2:35.0 クビ池添 学
313フィエールマンC.ルメール2:35.1 クビ手塚 貴久
47ラッキーライラック福永 祐一2:35.5 2 1/2松永 幹夫
55ワールドプレミア武 豊2:35.6 1/2友道 康夫
610カレンブーケドール池添 謙一2:35.6 同着国枝 栄
78ペルシアンナイト大野 拓弥2:35.6 アタマ池江 泰寿
83クレッシェンドラヴ坂井 瑠星2:35.8 1 1/2林 徹
915オセアグレイト横山 典弘2:35.9 クビ菊川 正達
104ラヴズオンリーユーM.デムーロ2:35.9 クビ矢作 芳人
1116ユーキャンスマイル岩田 康誠2:36.4 3友道 康夫
126キセキ浜中 俊2:36.5 1/2角居 勝彦
131バビット内田 博幸2:36.8 2浜田 多実雄
1412オーソリティ川田 将雅2:37.0 1木村 哲也
1511モズベッロ田辺 裕信2:38.2 7森田 直行
単勝9250円
複勝9130円
複勝14770円
複勝13160円
枠連5-7380円
ワイド9-142,320円
ワイド9-13270円
ワイド13-142,550円
馬連9-1410,330円
馬単9-1411,360円
3連複9-13-147,370円
3連単9-14-1350,150円

有馬記念2020 - レース後コメント(騎手/厩舎

 

「本当に馬に落ち着いてほしいなと思ってゲートインでも自然体を心掛けたかった。
少し前かきをしている状態でゲートが開いたのですが五分にスタートを切ってくれて良かったです!
折り合いはスムーズでしたし、いつものクロノジェネシスの調教の感じで走れていて良かったと思います。
中山芝2500メートルのレースを昨日も今日も乗せていただいて、自分の中でいいイメージを描いて競馬したつもりです。
今年は未対戦の3冠馬が2頭いますのでそこに譲らないように主役となって引っ張っていけるような存在であってほしいなと思います」

※優勝した北村友一騎手のコメント(クロノジェネシス)

有馬記念2020 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

有馬記念2020 - 回顧

キセキの逃げが見られなかったものの、ルメール騎手らしい巧みなペース判断と、フィエールマンの充実を見越した好位付けで大いに、苦手の小回りを克服して見せたが、牝馬との相性がいいクロノジェネシス&北村友一の黄金コンビ、衝撃の追い込みを三度見せたサラキアには北村騎手ではなく松山弘平騎手が一枚上だった。

自分の持ち味をあまりに簡単に出せてしまったがために、道中で、バビットの内田博幸は後ろを何度も見ていた。
正直、案外の逃げの内容であり、相手が一線級とはいえ、直線がだらしなかったが、プラス体重は悪くなかったものの、寸胴に見えた中型の馬体は、ペースメーカー止まりの雰囲気を漂わせた。
尾花栗毛の好漢。母父はタイキシャトル。成長の一端に、長距離路線不適の証明を改めてしたという有馬記念に思えた。
速く行ったところで、フィエールマンには捉えられていただろう。

似たようなレース間隔で、昨年のリスグラシュー以上の一気に古馬になってからの成長を見せたクロノジェネシスは、パンパン度合いはバビットやオーソリティによく似ていたが、こちらは牝馬であると同時に、自在に立ち回れるキャリアと何度となく道悪で好走したようなタフさと共に、最大の持ち味であるマイラー並みの加速スピードが売り物だけに、こうした小回りで決め手比べでは一日の長があった。

終わってみれば、キレの牝馬がワンツー。
時計も40年位前の決着タイムであり、これは秋からの傾向のままながら、ディープがちゃんと上位に入っているから、オッズ以上に波乱の有馬にならなかったとできる。
合っていそうで本質的にお呼びではない、ラッキーライラック、ラヴズオンリーユーに、スローすぎると味が出ないワールドプレミアやカレンブーケドールといった変則型ディープらも、一応は上位争いに入ってきたが、サラキアより中距離適性で上だったのに、3歳馬の不発が大いに好機となっただけであって、これらは勝負に加わったわけではない。

激しい競馬ではなく、何だか変わった環境の中距離戦ならば、直線さえ長すぎなければ何でもOKという感じのクロノジェネシスは、どうしてこんなに強くなったのだろうか。

実は、大きな括りで3つの名牝系の単純な組み合わせ、言うなれば、ベストトゥベストの理想形なのである。

<アルマームード系>・・・○代母とは、基礎繁殖牝馬を成した牝祖との関係性

2代母 ノーザンダンサー<2本>、ヘイロー<2本>
6代母 バゴ<父>

<ハイクレア系>

2代母 ナシュワン<父父>
3代母 ディープインパクト<参照/フィエールマン、サラキアらの父>

<ラスティックベル系>

3代母 クロノジェネシス
3代母 ノームコア<参照/クロノジェネシスの半姉・父ハービンジャー>

複雑に絡み合う主要系統は、何も直系の種牡馬のラインだけに限った話ではない上に、豊かな成長力を秘める欧州型のブラッシンググルーム系<北米型だと超早熟のダート型が多い>が、その重厚さをフルに活用できるように、アルマームード大国の日本競馬にフィットした母系の配合に合わせ、すでに成功例を示した重たい芝への適性を、基本能力としつつも、本質面のフォーマットのようなものは1800ベストくらいのキレる差し馬であり、欧州型に偏った2着サラキア<父ディープインパクト>よりも、G1を勝ち切るに足る才能は多く受け継いでいる印象がある。

古馬になって活躍の流れは、昨年のリスグラシューを見ていれば明らかに自分に有利となっていたわけだが、クロノジェネシス同様、姉のノームコアも4歳になって大舞台で活躍の名牝に進化を遂げたのだから、香港Cを勝った姉と比べて、何一つ見劣ろないクロノジェネシスが、有馬のこの時計を要する馬場を味方につけらないはずはなかった、となる。

机上の推理はそこまでで、では、この日のクロノジェネシスに最も味方になった血は何かと問われれば、案外、主要系統の中に入らない母父のクロフネであるような気がする。
スカした感じの前哨戦全力型だったフサイチエアデールの一族だから、クロフネをつけたところで、大舞台に強くなるわけではなかったが、最初の方で2歳王者のフサイチリシャールを出した。
クロノジェネシスの基本的な距離適性は、その母系の特性そのものであり、距離をこなすだとかそういう能力は凱旋門賞馬のバゴの破壊力に頼ったものながら、至って、スマートなクロスが重ねられたハイバランスの好配合ならでは、どの血の良さも活かすことができる強みがあった。

有馬を勝つには、坂を押し上げる能力も必要としつつ、小脚を自在に使える能力に長けている方がいい。
道悪でも馬なりで上がってくる強烈な適性を秘めつつ、加速力にも魅力のあるクロノジェネシスのクロフネの血を受けたスピード能力の限定発揮の力は、同じ母父を持つソダシとの構造も全く別という感じではないことからも、ゆったり構えたい重い血を持つディープなんかより、ずっと有馬への適性を持っていたことを、宝塚記念以上にわがままな仕掛けから、あっさりと証明。

バゴの遅い時計での強さとクロフネのパワーに、ラスティックベル系の中距離適性などを、絶妙な名牝系の組み合わせで、邪魔をなくした全て4代目以降のクロスにより、無駄がなくなったクロノジェネシスが体を増やしたとて、単なる成長であったとパドックの時点で結論付けられたなら、もうあなたは競馬マスターである。

血統の解釈は色々あっていいが、返って、こういう展開でスタミナが必要となったわけではない流れ不適の3歳馬は、どうにも悲しい敗走だった。
揉まれて弱いとか、強い馬との対戦経験の絶対数の問題も重なり、スローと言えば、名馬の一騎打ちという流れにも抗えず、共に惨敗。
父オルフェーヴルの強引な有馬2勝の内容に、見事にセンスで道中は上回ったオーソリティが、勝負所ではどこかにいなくなっていた。

型を変えてでも、今年はこれで行くんだという信念で究極の自在を体現したルメールに負けたのもあるが、本質の問題は、バビットだけではなく人間に揉まれた経験値の不足の方が大きかったような気もする。
会場そのものがうなり上げているようにさえ思える、各スポーツのビッグマッチで、日本の中央競馬ほど毎度大レースで大量の観客を呼ぶことは、メジャーな球技以外では稀である。

筆者は、3歳馬が弱い説は断じて間違いだと確信しているが、流れをモノにできなかった三冠馬でさえ、何かが足らなかったことになる。
不思議なのは、サリオスもそうだが、JBCクラシックのダノンファラオ<東京大賞典はどうなるか不明だが>から、延々古馬の戦いで見せ場を作れず、みんながみんな、自分の型を忘れてしまったかのように良さを出せなかった。

一方で、競馬場が騒音発生装置と化した環境を戦い抜き、勝ってきた古馬勢はというと、何のしがらみもない静かな環境でマイナスなど何もなく、自分の持ち味をきっちり出し切っている。
もちろん、サリオス、コントレイル、レシステンシアなどは、2歳タイトル戦を多くの観客の前で制した経験はあったが、それが今年はないから、成長したところで、プラスアルファを出すべき古馬戦で全く良さが出なかった。

当然、疲れていたのもあるが、オーソリティとバビットは最高の出来ではあったはず。
適性の問題など先ずないオーソリティが示した能力は、現状の実力に他ならないと同時に、若さを勢いに変えられない残念な環境は、今年の競馬界において、唯一の虚しき負の遺産となってしまった。
無論、人員の配置の関係で、移動制限なども影響しただろうから、若い3歳世代には死角も多かっただろうが、同時に、2歳の牡馬がやけに怪しい挙動を見せている昨今の状況からも、静かな環境が古馬の絞り出すように引き出していかねばならない最後のひと絞りを、どうもいとも簡単に出させてしまっているのではないのか。

競馬は人間のエゴの部分はある一方、ジャパンCのような凄まじいレースで、人間のちっぽけさも同時に示している。
しかしながら、ファンを家に押し込めて、それでも売り上げアップの現状が競走馬に与えた意外な死角もまた、見逃してはならない。
こんなはずでは…。
3歳馬が弱いとは思わないが、総決算とした4、5歳のトップホースの実力は侮れなかったとしても、余計な消耗を防ぐことでより良い成長に繋がり、その威信を守るのにこの上なく幸運なまでに、天国のような環境になっていったのではないのか。
はたと、今年の競馬をざっくり振り返った筆者は、実力をこの日も出し切れなかった坊ちゃんたちの有馬の切ない直線を見て、確信をもって、古馬を味方した要素を看破したと勝手に思い込んでいる。