有馬記念2021の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

有馬記念の予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第66回 有馬記念(GⅠ)
グレード重賞(G1)
日程2021年12月26日(日曜)
発走時間15時25分
開催場所中山競馬場
距離芝2500m
コース右回り
賞金3億円
レコードタイム2:29.5

有馬記念2021の予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

有馬記念2021の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11ペルシアンナイトC.デムーロ牡757.0101.912栗東・坂路・稍重
800m 57.2-41.2-26.7-13.0(馬なり)
栗東・CW・良
6F 84.4-68.2-52.3-37.2-11.3(強め)
12パンサラッサ菱田 裕二牡457.059.69栗東・CW・良
6F 80.8-64.8-50.1-36.3-11.5(一杯)
栗東・CW・良
800m 51.0-37.1-24.2-12.2(馬なり)
23モズベッロ池添 謙一牡557.0154.814栗東・坂路・良
800m 51.2-37.7-25.4-13.2(馬なり)
栗東・坂路・良
800m 51.5-38.0-25.6-13.3(一杯)
24メロディーレーン岩田 望来牝555.0176.315栗東・坂路・良
800m 54.9-40.4-26.5-13.6(末強め)
栗東・坂路・良
800m 55.2-40.0-26.4-13.6(強め)
35ディープボンド和田 竜二牡457.030.85栗東・CW・良
6F 81.0-65.7-51.5-36.9-11.2(一杯)
栗東・CW・良
6F 82.9-68.0-52.6-37.7-11.7(馬なり)
36ウインキートス丹内 祐次牝455.060.710美浦・南W・稍重
6F 86.0-69.7-53.1-37.8-11.3(馬なり)
美浦・坂路・良
800m 54.2-39.6-25.7-12.7(馬なり)
47クロノジェネシスC.ルメール牝555.02.12栗東・CW・良
6F 82.2-67.4-52.2-37.3-11.7(末強め)
栗東・CW・良
7F 97.2-81.1-66.1-51.8-37.0-11.9(馬なり)
48ユーキャンスマイル藤岡 佑介牡657.0262.516栗東・坂路・良
800m 54.5-39.3-25.1-12.6(一杯)
栗東・坂路・良
800m 54.5-39.3-25.1-12.6(一杯)
59ステラヴェローチェM.デムーロ牡355.0 8.13栗東・CW・良
6F 83.2-66.4-50.9-36.1-11.2(一杯)
栗東・CW・良
6F 84.4-67.4-52.0-37.0-11.2(馬なり)
510エフフォーリア横山 武史牡355.0 2.11美浦・南W・稍重
6F 84.1-67.9-52.9-38.2-11.8(馬なり)
美浦・南W・良
5F 69.0-52.8-38.0-11.4(G前仕掛け)
611アリストテレス武 豊牡457.052.88栗東・CW・良
6F 82.7-67.2-52.1-37.0-11.5(一杯)
栗東・坂路・良
800m 54.7-39.0-24.9-12.3(馬なり)
612シャドウディーヴァ横山 典弘牝555.0153.913美浦・南W・重
6F 82.3-66.4-51.8-37.5-11.7(馬なり)
美浦・南W・良
6F 84.8-68.6-53.4-38.5-11.6(強め)
713アカイイト幸 英明牝455.0 36.36栗東・坂路・良
800m 52.0-37.4-25.0-13.0(強め)
栗東・坂路・良
800m 52.2-37.3-24.6-12.6(一杯)
714アサマノイタズラ田辺 裕信牡355.045.97美浦・南W・稍重
5F 67.5-51.9-37.4-11.2(一杯)
美浦・南W・良
6F 80.9-65.1-51.0-37.5-11.8(馬なり)
815キセキ松山 弘平牡757.064.711栗東・CW・良
6F 82.2-67.7-53.3-38.3-11.7(末強め)
栗東・CW・良
5F 70.0-53.8-37.6-11.6(末強め)
816タイトルホルダー横山 和生牡355.0 9.94美浦・南W・稍重
5F 66.5-52.1-38.0-12.2(馬なり)
美浦・南W・良
6F 82.5-65.7-50.8-37.0-11.6(馬なり)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬2回2回2回16回9.1%18.2%27.3%
先行馬11回8回9回54回13.4%23.2%34.1%
差し馬5回8回6回87回4.7%12.3%17.9%
追い込み馬2回2回3回84回2.2%4.4%7.7%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠4回4回1回24回12.1%24.2%27.3%
2枠2回2回4回26回5.9%11.8%23.5%
3枠3回4回1回28回8.3%19.4%22.2%
4枠3回3回4回29回7.7%15.4%25.6%
5枠3回4回3回29回7.7%17.9%25.6%
6枠2回1回2回35回5%7.5%12.5%
7枠1回1回4回34回2.5%5%15%
8枠2回1回1回36回5%7.5%10%

有馬記念予想2021 - 過去10年のデータ傾向

スター級多めのメンバー構成と言えなくはないが、基本的には前走が目立ち過ぎた馬を買うより、渋い勝ち方、有馬記念惜敗実績のある馬の方が軸にはいい。

エフフォーリアの壁は秋天勝ちから直行の呪縛のみ

1984年のグレード制導入から、40年弱で、当該年の秋の天皇賞<2000Mで施行されるようになった過去37回>を制した馬は、

  • 2000年 テイエムオペラオー
  • 2002、03年 シンボリクリスエス<02年の秋天は中山開催>
  • 2004年 ゼンノロブロイ
  • 2017年 キタサンブラック

一方、2着に終わった秋の天皇賞勝ち馬は、

  • 80年代 タマモクロス、スーパークリーク
  • 90年代 メジロマックイーン・18着降着の1位入線馬>、スペシャルウィーク
  • 2000年代 ブエナビスタ<4歳時>
  • 2010年代 レイデオロ

ミソは、この中にミスターシービー、エアグルーヴ、アーモンドアイといったトップランナーが入っていないというところ。

他にも強い馬がいたのは紛れもない事実だが、近年の余裕ローテを組んでも、特殊な展開も多い有馬記念で、中7週に価値を見出せないというのは、大昔から変わらない傾向。

無論、負けた馬が巻き返した成功例には、サクラローレルやダイワスカーレットがいるわけだが、勝った馬の連勝はなし。

特殊ローテを立て続けに敢行の大エース・エフフォーリアが負けるなら、ここの方が合点がいくとなる。

相手に止めたい。が、そうなると頭になる馬が見当たらなかったりする。

クロノジェネシスのラストVを阻害する、大きく3つ存在しているジンクス

まず、凱旋門賞から直行の馬では、オルフェーヴルの引退戦独走や苛烈なローテを不完全にも立て直され、意地の2着としたタップダンスシチーの好走例がある。

過去10年では、有馬記念勝ちを含め【1・0・1・0】だったゴールドシップも加わる。

いかにも、こういう半端な距離に適性のある馬ばかり。

正しく、引退の花見を飾るに相応しい舞台となるわけだが、2度以上このレースで連対した牝馬に、グランプリを既に勝っていた馬はいない。

おまけに、秋華賞のみの3歳タイトルだった馬は、ファビラスラフィンやファインモーションが無残にも牡馬勢にねじ伏せられたりした歴史がある中で、史上唯一の有馬記念ウイナーになったクロノジェネシスは大いに稀有な存在なのだが、5歳牝馬が凱旋門賞のような大レースを使った後に、元に戻るという保証はどこにもない。

彼女としては精いっぱい走った結果で、十分に彼女のなかの道悪適性は体現されたものと捉えられるが、クイーンズリングを半ば強引に着に持ってきたルメール騎手頼りのところは大いにある。

いい馬ばかり乗っているのに、複勝回収率は単勝のそれを上回る。

何でも持ってくるというわけではないが、テン乗りで宝塚記念を制したコンビであるから…、という一点突破は可能であろう。

穴党が推す理由は見当たらないが、買わない手はある。

有馬記念前年覇者は、遠い昔のルドルフ以降、1番人気で勝った翌年はほとんど人気で飛んでいる。

ジャパンCで好走の必要はないけれども、凱旋門賞組には有馬適性のようなものが必要

ジャパンCを前走に選ぶ馬が多いのは当然。

一番賞金の高いレースと大体同じくらいの有馬記念ということで、世界の大レースの高額賞金化の波にちょっとずつ乗せていった結果、ジャパンCは凋落の一途を三冠馬に最近救われているような体たらくのままだが、有馬記念は一時期より嫌われる雰囲気がなくなり、悪目立ちした一昨年のようなお祭りレース感が強化されつつある。

歴史は長いとはいえ、クラシックとも天皇賞<前身のエンペラーズC・帝室御賞典と合わせて>とも、明らかに狙いが異なるこの秋のグランプリは、40年ほど前に勃興の招待国際G1・ジャパンCにお株を奪われつつ、使い分け全盛時代に、ちょうどいい年間最終戦に再び落ち着いてきた。

ジャパンC勝ち馬が登場することがなくなった影響は大きい。

近年は、やや燃え尽きた感もあったスワーヴリチャードが参戦した2019年が最後

その前はシュヴァルグランやキタサンブラック。

当初から中長距離狙いのローテであり、本質では合っていそうな東京ワンターンなどに挑んでうまくいかなかったスワーヴリチャードは、5歳秋のジャパンCで能力を思わぬ道悪馬場で発揮し、「おまけの有馬記念」にして引退。

ジャパンCを勝っている2015年クラシック世代の2頭も、勝った年は目立った競馬にならなかったというところがある。

勝ち馬にいいところを見せつけられるように、最高潮ではなかった印象が残る。

だから、ジャパンCを勝てなかった馬が9頭絡んでいることに着目したいところ。

今年は少ないから、ヒントになるものが欲しいが、中山ベストではなさそうなジェンティルドンナやその前はエイシンフラッシュが絡んできているのだから、G1馬は例外という感じでいいか。

好走歴はあるアリストテレスやモズベッロをそれとなく押さえるのが、ここは常道であろう。

 3歳馬には宝塚記念時の斤量恩恵以上の魅力が、あと数日で同斤の実数を超えたところである

牝馬はジャパンCかエリザベス女王杯に挑んでいることが多く、秋華賞から直行の例は近年ない。

3歳なら菊花賞だけでなく、古馬重賞他、ここに至る王道路線の東京G1いずれかか、またその両方を使っていた馬、マイルチャンピオンシップの組もちょうどいい年間最終戦ローテにハマるから、古馬だと出てくる。

ほぼ数日で古馬と言われる立派な競走馬にされてしまう3歳馬に、古牡馬相手に最低2kgもらいは常識的に考えても、ほぼ反則。

3歳馬が強いに決まっている、という常識論を敢えて、ここでも唱えておこう。

それでも、苦手分野に入ると厳しい。

キタサンブラックも年を経て、より狡猾に他を翻弄する術を覚え、3歳時から一つずつ着順を上げて、ラストランは完全勝利の逃げ切りであった。

エフフォーリアが強いのはもうみんな知っているが、では他はということになると、もはや、例年の京都の菊花賞ではないのだから、その他が本流の3歳馬だけに、返って扱いが難しい。

ダービーでも見せ場のあった面々ばかりで、面白いもので、エフフォーリアは厳密に言うと違うが、4頭ともクラシックトライアルウイナーである。

こういう場合、その手の馬に合うグランプリレース評…、などという適当な論理も、言い得て妙のようで説得力に欠けた視点となる。

3歳馬でノンタイトルのその手の馬が勝ったというのは、ダービー2着のシルクジャスティスやクラシック参戦不可能だったオグリキャップであるとか、クラシック前に方向性の違うG3を2度勝っていたブラストワンピースなど、各年代ごとに一頭といった趣。

菊花賞がタフだったので、総合点でエフフォーリアの次点評価可能であるステラヴェローチェ<不良の神戸新聞杯勝ち>がベストだろうが、これはエフフォーリア絶対視の人が狙う馬のように思うので…。

この馬は同じバゴ産駒のクロノジェネシスとは違って、途中から位置を変えるのは難しい性格なので、実直な吉田隼人騎手が神懸かったゴールドシアターのような究極の有馬戦法をとらない限り、きっと勝ち切れないであろう。

菊花賞馬は先行型が案外差されるので、相手関係からも、タイトルホルダーはすでに中間で逃げているので(笑)、苦しい先行の形にハマるような気がする。

有馬記念予想2021 - 出走予定馬の血統/成績/タイム

強い日と惜しい日とノー感じの日曜メインとを繰り返すタフマンが、自慢の渋とさで輝く瞬間を見てみたい

ディープボンドの血統

キングヘイローを父に持つローレルゲレイロ<高松宮記念、スプリンターズS優勝>が従兄、半兄にあたるダンケシェーンが、3歳時以来となる勝ち星を6歳春になって挙げるという傾向とは、やや異なる性質は、天下のサンデーサイレンス系種牡馬であるキズナを父に持つ影響と思われる。

種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ステイゴールド8回12回8回52回10%25%35%
ディープインパクト6回6回7回63回7.3%14.6%23.2%
ハーツクライ5回2回7回43回8.8%12.3%24.6%
ルーラーシップ4回1回2回25回12.5%15.6%21.9%
マンハッタンカフェ2回3回2回9回12.5%31.3%43.8%
ナカヤマフェスタ2回1回0回4回28.6%42.9%42.9%
ジャスタウェイ2回0回1回3回33.3%33.3%50%
エピファネイア2回0回0回0回100%100%100%
キングカメハメハ1回4回3回28回2.8%13.9%22.2%
ヴィクトワールピサ1回2回1回5回11.1%33.3%44.4%

キングヘイローがブルードメアサイアーであるから、ヘイローは直系4代目と母父母父のクロスを有する。

このクロスは全くもって平凡なインブリードとして扱われるが、どちらかの3代目に入る所謂「奇跡の血量」を生む黄金配合より持続的な能力発揮をいくらか強める可能性がある。

あと、シュヴァルグランやワンアンドオンリーといったハーツクライの代表産駒というか、シングルタイトルの長距離砲がこの手のクロスを持っている。

直系同士にかかったワンアンドオンリーは、早熟系とは言い難かったが、肝心のダービーでしっかりと横山典弘騎手の妙案に応え、正攻法の抜け出しに成功した。

一方で、クラシックに無縁でも京都2歳Sでは3着であったシュヴァルグランは、到底並ぶことのなかった同期のキタサンブラックに、5歳シーズンで初の逆転を大舞台のジャパンCで成功させる。

ディープインパクトの直仔に当たるキズナは、ダービーを堂々の後方一気で勝ち切るが、キズナ自身が器用に競馬することが苦手だったように、それと似た格好でG1を制したアカイイトが、不器用ながら、強烈な伏兵のスパートで完勝のエリザベス女王杯を目撃し、それが産駒の初G1タイトルゲットだったとした時、妙な納得感があったことを皆が覚えている。

シュヴァルグランは有馬記念に4年連続挑戦するも、3着2回が最高。

一つはキタサンブラックに再逆転を許す引退レース・大団円のアシストで不器用なレースの5歳時、キャリア3戦の休み明けでダービー制覇の奇跡を起こせなかったブラストワンピースが奇跡の競馬でダービーを制したレイデオロを上手さでねじ伏せた翌年のもう一例。

何度も挑戦するチャンスがあるかは、同族で名牝系を形成したセレタの血を引くローレルゲレイロに、同じ戦法で2度目がハマった高松宮記念の例に倣うしかないだろう。

このセレタ系は、大昔の昭和の時代に大井所属時は帝王賞<当時4月の3000M戦>まで制しながら、翌年中央移籍後3連続好走・惜敗から宝塚記念を制したカツアールに、平成の世にクラリオン系を復元させたスプリンターズS大穴走のダイタクヤマトなど、エネルギッシュな古馬を覚醒させる不思議な力が秘められている。

セレタ系を総まとめさせたケンタッキー<ディープボンドの6代母>は、大昔の古馬チャンピオンであるクリペロや牝馬の秋天勝ち馬・クリヒデを出した超名牝ながら、ローレルゲレイロとこのディープボンド以外は、クリヒデ以外の直仔の繁殖牝馬の後継者。

そして、最初の躓きからずっと大舞台に縁がなく、最後に勝つのがいいところ。

朝日杯負けから5歳春の初戴冠など、東スポ杯圧勝から惜敗と惨敗の父キングヘイローとよく似ている。

最初の重要タイトル参戦がダービーのキズナは、栄光のパシフィカス<直仔ビワハヤヒデ、ナリタブライアンとは従弟>一族らしさを姉ファレノプシスと同じように見せつけるも、その後は勝てなかった。

皐月賞に1勝馬の身で挑戦する幸運から、続く京都新聞杯勝ちの強運でツキはなくなったはずだが、セレタ系の成長力をしっかりと体現する凱旋門賞参戦馬は、意外なほど芯がしっかりしているはずである。

特に有馬で推したい馬もいないことだし…。

筆者の中には、未だ一昨年のアーモンドアイ緊急参戦時の有馬記念の記憶が、おかしな形でインプットされてしまっている。

もう少し無難なレースを展開できたのなら、そもそも、フィエールマンにはルメールが乗って、いい感じのレースになっていたのではないのか。

何しろ、リスグラシューの爆発的破壊力を備えた圧巻の直線力で、皆がしぼんで見えてしまったような尋常ならざる有馬記念である。

そうではない場合、つまりは、アーモンドアイ総マークの展開にならなかった場合を、未だに色々考えてしまうわけだ。

スローの逃げも出来るようになっていた快速馬・アエロリットも、ほとんど秋の天皇賞のペースメーカーのようなラップでグイグイ先行していた。

全てがおかしかったから、対抗馬・リスグラシューには思い通りの展開になったとも言える。

レーン騎手も、その時の感触がこれからも残り続けるから、快感に浸りすぎないようにしたい。

今年はそのフィエールマンと同じように、凱旋門賞の凄まじい道悪馬場を経験した上で、そこからほぼ休み明けのような格好で挑む帰国初戦の馬が2頭現れる。

一方は、昨年のグランプリマイスター・クロノジェネシス。

凱旋門賞馬・バゴの傑作でも、当地の道悪にはフィットせず、元よりあった距離不安と合わせて、中身はあったが様々適性外で直線失速。

引退レースは気合いを入れて挑むし、明らかに手が合いそうなルメール騎手に手が戻る。

名手に一歩近づいた主戦の北村友一騎手ではないが、陣営の手腕以前に、馬が競馬をよく知っているので不安は少ない。

気持ちの面だけが死角を生むとしか言えない、若きエースに育ったことにされたまだ古馬戦1戦のみのエフフォーリアには、かなりの強敵だ。

有馬記念予想2021 - レース展開と最終予想

もう一方はというと、クリスチャン・デムーロ騎手が急に乗れなくなったプレップ戦覇者のディープボンド。

こちらはスタートからダメダメで、フォワ賞を逃げ切ったディープボンドには到底思えないほど、道悪をこなせなかった。

阪神の道悪は春にこなしていたが、阪神の良馬場の厳しい展開だった天皇賞の方が、もう少し強かったということなのだろう。

サンデーサイレンス系としてはかなりタフな馬場を好むキズナの産駒とはいえ、限界があったのは事実。

道悪の凱旋門賞制覇はオルフェーヴル<不良の東京優駿快勝>でも及ばず、そのもっと前ではトレヴという信じがたい才女が独走していた。

負け方は似たようなものだが、臨戦過程が全く違う。

道悪の凱旋門賞は日本馬には縁起がいいが、有馬記念に繋がる時、オルフェーヴルはフォワ賞完勝の勢いを本番で活かせず、引退戦のここで爆発させたことが記憶に新しい。

究極のギリギリ到着で、休み明けでも検疫も最低限こなしたくらいで休めず本番参戦のタップダンスシチーは、前々走宝塚記念の数分の一程度のパフォーマンスしかできなかったが、究極の時計勝負で2着に粘り込んだ。

阪神が得意であるということは、中山への互換性のようなものが幾らか認められるから、特に、秋の天皇賞やジャパンCで勝ち負けしていないようなタイプであれば、最もこうした点が味方につけられる要素になる。

グランプリレース3連勝中で、不滅の4連勝に挑むクロノジェネシスの壁が5歳秋・大目標を失った後の最終戦へのモチヴェーションと定義づけられるとするなら、ディープボンドはそもそものG1格である可能性の再確認に、今一度の注力が必要になってくる。

確かに、春の天皇賞は惜しいと言えばそうだが、激しい消耗戦の阪神大賞典独走後、上積みまではなかったように思う。

阪神大賞典は一応、休み明けの括りに入る中山金杯以来のレース。

フォワ賞と凱旋門賞の馬場質の違いに起因した差異は、一定処理の縛りは設けつつ、本質、休み明けから走る過ぎるのは良くないタイプだろう。

再び一間入れたローテでの大レース参戦は、実は、意外なことにG1の間に必ずステップレースを挟んできたディープボンドには初体験であるG1の連戦。

得意ゾーンで強いのがキズナ、セレタ系それぞれの魅力なのだから、手狭な中山2500戦は厳しいとしても、凱旋門賞のように動けないで終わる危険性はそこまでないだろう。

連続の乗り替わりにせざるを得なかった陣営の苦心も、乗り慣れたテイエムオペラオーの和田竜二<伝説の4角11番手からの強襲は23歳の時>に手が戻るのだから、心配もまずない。

意外ではない要素としては、二桁着順がこれまで3度あったのだが、

  • ・皐月賞<10着・稍重>→ 次走・京都新聞杯<1着・良>
  • ・中山金杯<14着・良>→ 次走・阪神大賞典<1着・重>
  • ・凱旋門賞<14着・重>→ 次走・有馬記念<??>

京都新聞杯の後はダービーで、コントレイルの露払い役を買って出たような一戦でも、渋とく伸びて5着。

秋もコントレイルに好きに走られたから、余裕ローテではなかった金杯は、仕上げなかった面がそのまま出て不発だった。

立て直され、阪神大賞典は好走し、天皇賞も結果は残せた。

惨敗は吉兆などとのんきなことを言ってしまうと、凱旋門賞よりは骨のありそうな好敵手揃いの有馬のメンバーに申し訳ないが、大負けの後は必ず好走するこの男は、長い距離では侮れない。

一昨年のようなタフな展開も予測される望むところ。

クロノジェネシスもエフフォーリアも、あのような流れでグイグイ伸びるほどタフな末脚があるタイプではない。

2000近辺を上手に勝つのが彼らの流儀。

好敵手となり得るそうした面々に対し、キレが鈍るようなスパートをかけて見せたい和田騎手に、過去1度乗り替わりがあった時、手の戻った京都新聞杯快勝のいい流れを味方につけたような、理想の抜け出しを期待する。

お手馬だったミッキーロケットを、すべての条件がフィットした宝塚記念で素晴らしいアシストをした時、オペラオーはもう天国に行ってしまっていた。

涙を見せた彼が、こうした燃える条件に戻ってくる時、ここまでたった一度の1番人気で敗れた天皇賞のお返しをする場面がやってきたと、これがそのファーストチャレンジとなるのだとすれば、もう推さないわけにはいかない。

キレ味が勝負を分ける有馬記念もしばらく続いたが、約10年前のゴールドシップ快勝の年から、タフな長距離戦の有馬記念が時たま戻ってくる。

昨年は馬場質の関係にタフさが要求されたものの、今年はその類ではない。

雨の少ない暮れの中山で、もし、3年前のように渋るようなことがあれば、途端に確勝級である。

ライバルは皆、名うての道悪巧者ばかりだが、凱旋門賞の経験があればなんてことはない。

ディープボンドの初戴冠に夢を乗せつつ、今年の有馬は複穴に主眼を置いた結論とする。