2022年有馬記念予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

有馬記念の予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

ファンが選ぶ競走馬が集うレース!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第67回 有馬記念(G1)
グレード重賞(G1)
日程2022年12月25日(日)
発走時間15時25分
開催場所中山競馬場
距離芝2,500m
コース右回り
賞金4億円
レコードタイム2:29.5

2022年有馬記念予想 - 予想オッズ/出馬表(馬柱)/出馬予定馬の馬体/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

有馬記念2022の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11アカイイト幸 英明牡555.0113.410栗東・坂路・良(助手)
800m 51.5-37.6-25.1-13.0(末強め)
栗東・坂路・良(幸)
800m 51.8-37.6-24.5-12.4(強め)
12イズジョーノキセキ岩田 康誠牡555.0152.812栗東・CW・良(助手)
6F 83.2-68.0-52.7-37.7-11.6(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.0-38.8-25.1-12.5(馬なり)
23ボルトグフーシュ福永 祐一牡355.010.44栗東・CW・良(福永)
7F 94.5-63.6-49.6-35.8-11.1(一杯)
栗東・坂路・良(福永)
800m 55.0-39.7-25.2-12.4(馬なり)
24アリストテレス武 豊牡557.0160.313栗東・CW・良(助手)
7F 93.1-64.1-51.0-37.9-13.2(追って一杯)
栗東・坂路・良(武豊)
800m 52.9-38.2-25.3-13.0(馬なり)
35ジェラルディーナC.デムーロ牡455.06.93栗東・CW・良(団野)
6F 84.1-67.3-52.0-37.2-11.7(末強め)
栗東・CW・良(団野)
6F 86.0-69.9-54.2-38.2-11.8(馬なり)
36ヴェラアズール松山 弘平牡557.010.75栗東・CW・良(松山)
6F 83.1-67.8-52.6-37.5-11.8(馬なり)
栗東・CW・良(助手)
6F 83.8-68.0-52.6-37.1-11.5(強め)
47エフフォーリア横山 武史牡457.011.16美浦・南W・稍重(横山武)
6F 83.4-67.4-52.6-37.6-11.4(馬なり)
美浦・南W・良(横山武)
6F 85.8-70.0-54.8-39.1-11.3(馬なり)
48ウインマイティー和田 竜二牡555.0135.311栗東・ポリ・良(和田竜)
6F 76.9-62.0-48.8-36.0-11.2(一杯)
栗東・ポリ・良(助手)
5F 67.4-52.0-38.5-11.4(馬なり)
59イクイノックスC.ルメール牡355.02.41美浦・南W・稍重(ルメール)
7F 96.0-67.3-52.6-38.4-12.0(馬なり)
美浦・南W・良(助手)
5F 67.2-52.2-37.6-11.4(馬なり)
510ジャスティンパレスT.マーカンド牡355.022.27栗東・CW・良(マーカンド)
6F 81.8-67.0-52.1-37.5-11.5(一杯)
栗東・CW・良(鮫島駿)
6F 82.5-66.4-51.5-36.5-11.4(強め)
611ラストドラフト三浦 皇成牡657.0246.016美浦・南W・良(三浦)
6F 81.8-66.6-51.4-37.2-11.9(G前仕掛け)
美浦・南W・良(三浦)
5F 67.2-52.1-37.9-11.8(馬なり)
612ポタジェ吉田 隼人牡557.0170.015栗東・CW・良(吉田隼)
7F 96.6-66.1-51.8-37.1-11.6(一杯)
栗東・CW・良(吉田隼)
6F 87.1-70.6-54.4-37.9-11.3(一杯)
713タイトルホルダー横山 和生牡457.02.82美浦・南W・稍重(横山和)
5F 66.9-52.0-37.6-11.5(馬なり)
美浦・南W・良(横山和)
5F 67.9-51.2-36.9-11.6(馬なり)
714ボッケリーニ浜中 俊牡657.0168.614栗東・CW・良(浜中)
6F 83.5-68.2-52.9-37.8-11.7(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.2-39.1-25.1-12.2(馬なり)
815ブレークアップ戸崎 圭太牡457.075.59美浦・南W・稍重(戸崎)
6F 81.7-66.3-51.4-36.9-11.5(馬なり)
美浦・南W・良(助手)
6F 84.3-68.4-53.4-38.5-11.8(馬なり)
816ディープボンド川田 将雅牡557.023.48栗東・CW・良(川田)
7F 97.7-66.8-52.4-37.7-11.4(一杯)
栗東・CW・良(川田)
6F 83.8-68.7-54.0-38.8-11.8(馬なり)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬2回2回1回17回9.1%18.2%22.7%
先行馬11回7回9回54回13.6%22.2%33.3%
差し馬6回9回7回88回5.5%13.6%20%
追い込み馬1回2回3回85回1.1%3.3%6.6%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠4回3回1回26回11.8%20.6%23.5%
2枠2回2回3回28回5.7%11.4%20%
3枠3回5回1回28回8.1%21.6%24.3%
4枠2回3回5回29回5.1%12.8%25.6%
5枠4回4回3回28回10.3%20.5%28.2%
6枠2回1回2回35回5%7.5%12.5%
7枠1回1回4回34回2.5%5%15%
8枠2回1回1回36回5%7.5%10%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト 6回7回9回59回7.4%16.0%27.2%
ステイゴールド5回9回5回38回8.8%24.6%33.3%
ハーツクライ4回3回7回42回7.1%12.5%25%
ルーラーシップ4回1回2回31回10.5%13.2%18.4%
エピファネイア3回0回0回2回60%60%60%
ゴールドシップ2回3回0回12回11.8%29.4%29.4%
ジャスタウェイ2回2回1回5回20%40%50%
ナカヤマフェスタ2回1回0回5回25%37.5%37.5%
キングカメハメハ1回3回3回22回3.4%13.8%24.1%
マンハッタンカフェ1回3回1回8回7.7%30.8%38.5%
人気1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1番人気11回4回1回4回55%75%80%
2番人気4回1回4回11回20%25%45%
3番人気1回2回4回13回5%15%35%
4番人気2回2回2回14回10%20%30%
5番人気0回3回0回17回0%15%15%
6~9番人気2回4回6回68回2.5%7.5%15%
10番人気以下0回4回3回117回0%3.2%5.6%

2022年有馬記念予想 - 過去10年のデータ傾向

3歳のクラシックウイナーは、ほぼ鉄板ではあるのだが…

古牡馬と2kg差というのは凱旋門賞よりも大きな斤量利を生む。
すなわち、本来は秋の天皇賞もジャパンCも3歳馬は有利であるはずなのだが、秋の天皇賞こそ、ここ2年は3歳馬の勝利が続いているものの、JCは近年では、牝馬しか勝ち切れていない。
歴史上、日本調教馬だけでは牡馬の勝利<1位入線>はたったの2度である。

一方、過去10年をとっただけで3歳馬は半分近くの4勝。
クラシックウイナーでは、キタサンブラックやサートゥルナーリアらも馬券圏内に入っていることからも、他の古馬G1とは一線を画すのが、この有馬記念最大の特性。
論理的には思えないが、もう1週間すれば、4歳馬として古馬の扱いになる事を踏まえれば、斤量利は絶大…、ということ以上に、3歳馬には古馬G1をパスする正当な理由が10月の大レースにあるから、その点で有利というだけであろう。

ただ、昨年エフフォーリアが人気に応えただけでなく、G3を2勝しているだけのブラストワンピースがスケール感だけで勝ち切った例も挙げると、発想からして、例の年を越えれば…理論で、ある程度説明がついてしまうのも事実。
古馬の扱いとは別個で行きたい。だからこそ、イクイノックスの評価は難解なのである。

3歳馬のトゥザワールド、ブラストワンピース問題を読み解く

わずかひと枠を埋めただけだが、いずれも、ジェンティルドンナ、ゴールドシップやレイデオロといった古馬のエース級を相手に、前出の斤量利を活かし切った好走は、しかし、なぜ可能だったのかという話。

ブラストワンピースは前走の菊花賞で1番人気。
前々走新潟記念の独走の内容を買われ、大きく支持を集めたが、大型馬のために大いに苦労した。
スタートを決めた有馬記念は、終始、理想の形で、古馬勢がやや稍重馬場を苦にした面もあったが、血統的なアドヴァンテージ<父ハービンジャー>も味方につけ、唯一のビッグタイトルを勝ち取った。

トゥザワールドも菊花賞で、人気のワンアンドオンリーと一緒に撃沈。
長かったこと以上に、揉まれすぎたというところで、母トゥザヴィクトリーの姿を思い浮かべたファンも多かったが、一方、スローの有馬も大いに窮屈なポジションからの抜け出し。
ある意味、こうした劇的転換がこの時は外国人騎手であり、ブラストワンピースは右回りの非根幹距離というところで、一気に条件好転だった可能性がある。

今年はG12着のジャスティンパレスとボルドグフーシュらが参戦。
ホープフルSから何一つ芸風に変化がないようで、距離短縮の方が味の出そうな前者と、スタミナ任せに直線勝負に打って出る伏兵のボルドグフーシュとでは、キャラが大分違う。
菊花賞の勝負所でほぼ同じ位置にいたわけだが、ボルドグフーシュが差した時の可能性を求める方が筋だろう。
強気に行けるだけのスタミナは前走で証明したが、持ち前の末脚がややインパクト不足であった。
普段の負けている時ほどは、実はキレていないから、こちらも理想に近い距離で一発を狙う手を考えていることだろう。

4歳馬はG1馬だけ押さえるくらいでいいのだが…

前出のレイデオロ、 キタサンブラックらが、クラシックホースでありながら、また古馬タイトルも得て2着。
しかし、前走からのパフォーマンスダウンがあったという感じで、いずれも3歳馬に敗れた。

昨年も似たようなもので、春の天皇賞1番人気のディープボンドが、洋行帰りの死角をものともせず、やばい仕事を難なくやり遂げた、まだ無双時代だったエフフォーリアに続いて、しっかりと2着。
ん、待てよ、となるか。

そう。4歳で勝った馬というのは、ゴールドアクターとクロノジェネシス。
後者は春のグランプリウイナーだが、前者は父父がグランプリ3連覇のグラスワンダーとはいえ、G2を初めて勝ったばかりの伏兵。
その他大勢がいるのに、今年もそうだが、タイトルホルダーに全てが圧し掛かるような展開になりかけているから、いつもの展開が見えている。
5歳のクラシックウイナーはよく駆けるものだが、4歳馬はその前に消耗しているケースがあって、タイトルホルダーなどはそこに合致する。
逆張りの前年覇者狙いでもいいとなるが、自信を取り戻す過程にあるエフフォーリアさんにも、それでも期待しすぎとなってしまうから、来年なのかもしれない。
となると、軸は穴馬の方がいいとなってくる。

狙いの方向性は、5歳以上のミラクル枠である3着に何を仕込むか

一応、オルフェーヴル、キタサンブラック、ジェンティルドンナら顕彰馬級がラストランを快勝したのと同時に、それより強かったとされるアーモンドアイその他のプライドを一気に粉砕したリスグラシューもここに入る。

大物がいるなら、それを推せばいい、という感じ。
同時に、オルフェーヴルの時は復活したばかりのウインバリアシオン、キタサンブラックの相手には意外だったクイーンズリング。
ジェンティルドンナの時も、3着が人気最上位だった凱旋門賞帰り初戦のゴールドシップ。

セット割という概念は馬券の中にはないので、妙味ある定番の組み合わせは押さえたい。
ディープボンドはタイトルホルダーやエフフォーリアに傾く感じだが、ヴェラアズールなんかだと、フレッシュなグループなので、違う才能を自分の頑張り次第で連れてくる可能性もある。
隠れステイヤー枠で同期のアリストテレスだとか、エリザベス女王杯出走各馬を連れてくると妄想した時、こちらを買い目に加えた方が、妙味の面だけなら上。
キングマンボが通用する有馬記念になってから、消えたりまた穴をあけたりだとか、タイトルホルダーには不利でヴェラアズールにはいくらか有利なのか…、軸馬次第でその妙味も変わる。

2022年有馬記念予想 - 出走予定馬の血統/成績/タイム

もし、今回飛んだとしたら、いずれ管理するだろうコントレイルやシャフリヤールの産駒で大レースを制した時に、熨斗つきで回収させて頂こう

ボルドグフーシュの血統

母父Laymanはサンデーサイレンスの直仔。
欧州圏の活躍馬と言うには少し足らないが、非日本産馬としては上々の重賞勝ちの実績を誇り、こうして、孫の世代がジャパニーズグランプリ出走を果したのであるから、間口は広いに越したことはないだろう。

ちなみに、レイマンの近親には、母方に入って存在感を増すことの多い名種牡馬のCape Crossであるとか、日本に来てよく頑張った外国調教馬のドゥマーニ、ディクタットらもいて、種牡馬としてなら短距離向きのゴーンウェスト系・Iffraajも登場するので、サンデーなら本来は何でもありだったはずの種牡馬。
ボルドグザグの仔が母父として、サンデー系の変わり種とするには勿体ない存在であろう。

その存在により、父スクリーンヒーローの母父に入るSSとで3×3という強いクロスが成立。
直系はロベルト系であり、ヘイルトゥリーズンは5・5×5を形成する、偏重傾向の強い日本の芝向きの配合。
代を重ねるごとに、スタミナ型かスピード優勢の快速型には振り分けられるのが、スピード能力を保持できる主流系統の本質ではあるものの、祖父グラスワンダーの代で、母父にダンチヒが入る影響を、同じ孫世代のモーリスは、いくらか短距離志向に振れている面はあって、ただ、スクリーンヒーロー自体はあまり短距離を得意とするタイプは出していない。

サクラバクシンオー直仔なのに障害で大活躍のブランディスの近親であり、となると、大いにライバルとなるイクイノックスも同族となるわけだが、菊花賞の内容の通り、多くのファンが期待したレベルのパフォーマンスを待ちかねた長距離戦で魅せた結果について、今更疑う余地はないだろう。
父父グラスワンダー自身の競走成績と同様、スクリーンヒーローも右回りの中長距離戦が得意な産駒を出すことは、香港でも証明されたばかりだ。

2022年有馬記念予想 - レース展開と最終予想

重賞未勝利馬による有馬記念優勝は、グレード制導入前のリードホーユーにまで遡らないと登場しない。
それ以前は、フルゲートになるのは稀で、当時28回目の開催で3度目となる16頭立てだった。
今年は定員割れの可能性が大いにある16頭の登録。
過去10年で、フルゲート割れの有馬記念はなし。
三冠直後のオルフェーヴルが、キレキレの四冠達成だった2011年の13頭立てが、近年では際立つ少頭数戦だ。

だから、簡単には重賞未勝利馬は勝てない。
とはいえ、同期間で3歳のオルフェーヴルは除外されてしまうものの、翌年のゴールドシップから昨年のエフフォーリアまで4勝。
半分近い勝ち馬が、圧倒的に国内では古馬優勢のビッグレースの傾向から、どの年も圧倒的有利となるのが3歳馬だ。
今年は昨年以上にタフなタレントが揃い、3歳のタイトルを得た馬はいないものの、奇しくも、誰かに敗れたというホープフルS以降の2000M超のG1で2着だったという馬が、3頭すべて登場。

今年こそは勝ち切りたいルメール騎手が、1、2番人気はほぼ確定の天皇賞馬・イクイノックスに乗り込み、神戸新聞杯の完勝が記憶に新しいジャスティンパレスは、菊花賞小差の3着を経て、日本に来て心底良かったと思っているだろうマーカンド騎手を配し、ホープフルSの翌年に有馬という理想ローテで、初戴冠を目指す。

とはいえ、外国人騎手が簡単に勝てる中山2500でもない。
有馬記念初挑戦で勝ち切った外国人騎手は、御大ペリエがジェニュインでしんがり負けの1996年から6年後の初勝利だったように、他の大レースのように何とかなるということは珍しい。
一応、今よりもっと若い印象だったレーン騎手が、コンビ3度目のここも勝って全勝というリスグラシューのラストランが目立つくらい。
手も合っていたが、何より、途轍もなくリスグラシュー自身がパワーアップしていた。

ということは、日本の騎手だって難しいということ。
池添謙一騎手がやたらとこのレースで目立っているが、4勝のうち、3勝はステイゴールド×オリエンタルアート2頭で隔年で制した記録。
グランプリマイスター<宝塚記念は3勝>とて、まるで縁のない馬で有馬記念を勝つことは難しい。

そこで筋悪のこのコンビ、福永祐一×ボルドグフーシュの初タッグに注目では、説明がつかないか。
何しろ、

福永祐一/有馬記念全成績
【0・0・1・12】

インティライミ、ジャミール、アーネストリー、クリンチャー、ラッキーライラックらがテン乗りでの参戦となったが、いずれも着外。
トゥザグローリーは2年連続で3着になった巧者だったが、古馬になってからの主戦は福永騎手だった。
春の天皇賞では1番人気になったほどの馬。
有馬記念の快走がどうこうよりも、エイシンフラッシュやヒルノダムール、当時はまだ結果を残していたペルーサら同期のスターを差し置いての最高支持。
そのレースで崩れたことで、福永騎手が騎乗することになったが、復元には時間がかかった。

アーネストリーやラッキーライラックは最終盤のオーラスに選んだ一戦で、使命も帯びた役割でもあったから、無理はできなかった。
凱旋門賞帰りのクリンチャーは、今のように、地方転戦の砂巧者になるずっと前の話で、上に同じといった具合。
こうした背景から、ジャスタウェイやらキングヘイローとの初挑戦やらで、勝ち切れなかった縁のなさは、レースでの実績に思いきり反映されている。

一転、ラストチャレンジのパートナー・ボルドグフーシュは、バリバリのステイヤー気質。
菊花賞では、吉田隼人騎手がその性質をしっかりと掴みつつ、順調にロスのない仕掛けをしたことで、前には大きくリード広げたアスクビクターモア、隣に人気の一頭だったジャスティンパレス、傍にはガイアフォースなどもいて、有力どころ勢揃いの直線入口から、かなり際どく勝ち馬に迫ったが、タイミングだけの差に思えるハナの差捉え切れずの2着。
普段の中距離戦だと、序盤から順調に喚問をパスするような常識的なレース運びができず、前々走の神戸新聞杯も春よりいい感じに仕掛けていけていたように見えて、時計勝負への限界を感じる3着だった。

直線勝負に執着するもよし、最初から好位を狙ってロスなく立ち回る、それこそ、重賞未勝利のリードホーユーを駆った天才田原のような策も、ないわけではないが、合理策を手順を踏んで、相手に思惑に流される必要もない気楽な立場にある福永騎手は、よほどの好発でも決めない限り、スクリーンヒーローやその産駒ゴールドアクターのような好位抜け出しはしないはずだ。
スタミナに自信があるなら、イクイノックスの周りにいたっていいわけで、徹底マークも可能だろう。
意外と、タイトルホルダーの逃げ脚に惑わされることなく、強かにせこく勝つといった、有馬記念らしい展開に持ち込めるタイプなのかもしれない。

ああ、そういえば、田原元騎手がリードホーユーに乗ったのは、彼にとって3勝目にして故障引退のきっかけとなった有馬記念が初めて。
面白いもので、条件戦→トライアル<当時は10月の京都新聞杯は現神戸新聞杯に相当>→菊花賞というステップまで同じで、その条件戦が現1勝クラスのダート戦だったということくらいで、大方似たような臨戦過程。

思えば、セイウンスカイで横山典弘騎手が初クラシック制覇を果たす皐月賞で、キングヘイローの手綱を執った若き日の福永騎手は、今では死語になった内ラチ沿いのグリーンベルトをしっかり確保し、大外枠で苦戦する後のダービー馬・スペシャルウィーク<その鞍上は言うまでもない>を立ち回りの差で抑え込み、2着に入ったことに満足していたという。
しかし、そのことを当時ステッキを置いたかその直前か記憶は定かではないが、件の田原成貴氏に、何でセイウンスカイを負かしに行かなかったんだ、と叱られたという。

おかしなもので、その福永騎手は皐月賞で怪しげなレースをするコントレイルを外に持ち出して、勝手にまくっていって、サリオスを屈服させるまで、22年も勝てなかったのだ。
一度勝てば、勝ち味を覚える。
有馬のラストライドは、コントレイルに教えてもらった勝ちパターンの一つをしっかり修正し、完全無欠のパーフェクトアシストで木村調教師にクラシックタイトルをプレゼントした2度目の皐月賞制覇の年でもある。
中山の平地G1は、昨年もスプリンターズSを、その後に危うく人馬とも異国の地で天国に連れていかれそうになったピクシーナイトとのコンビで制している。

2、3歳のタイトルは、自身の若い頃とコントレイルの個体の能力で総なめにしたが、宝塚記念とこの有馬記念は最後まで縁がなかった。
コントレイルでの参戦もあり得なくはなかったが、ジャパンCで最初の黒星をつけ、最後の白星が翌年の同レースだったように、彼で挑めなかった両グランプリというのは、せめて片方だけは…、ということでも大いに好機を焦がしたことになる。
ジャパンCはようやく勝てた騎手・福永の戦いは、年が明けると、あっという間に終幕へと加速度的に突き進んでいくわけだが、まだその段階ではない。

ゆっくり考える時間を、オーナーサイドや宮本調教師からもらった「4年でダービー3勝男」の、真の作戦能力にここはかけたい。
この辺の距離でずっとナイスファイトを繰り返すディープボンドとタイトルホルダーが、フランス帰りとはいえ、昨年の有馬位の出来に戻せれば、距離延長にあまり魅力のないここ2年の秋天優勝馬がパッとしない動きを見せるやその刹那、ヴェラアズールとこのボルドグフーシュが突っ込んできて…。

新馬戦の498kgに菊花賞で戻し、比例して、多少は破壊力が増したように見えたボルドグフーシュに、グランプリを3連勝したグラスワンダーの絶対適性が備わっていた時、思うように調教が出来ずに体を増やしたものを削り落とすように勝負に出た晩年を除き、4歳秋頃までもまた体が滅多に減ることのなかった性質を受け継いでいる可能性もあり、適性の証明にこの血の力が影響してくる可能性がある。
奇しくも、前走の馬体重は奇跡の復活を果たした3歳時の有馬制覇時の目方と全く同じ。

キングヘイロー<ピクシーナイトやディープボンドの母父>にグラスワンダーとは…、最後のその呪縛から解放してくれるのは、当時史上最強とされた1998クラシック世代のグランプリマイスターの孫なのかもしれない。
という感じで、ここで負けても、今度調教師としていくらでも挑戦できる<1頭だけでなくてもいいわけで>、そんないい加減な理由で、福永ラスト有馬を堪能しようと思う。