朝日杯フューチュリティステークス2017 回顧

母父インティカブがプラスに出ることもマイナスになることも考えられたダノンプレミアムは、結果的に上位人気3頭の争いになったことと、勝ちタイムの1:33.3でもわかるように、完全な力勝負になった時に最も強烈なパフォーマンスを披露したということで、これまで行われた牝馬、ダートの2歳チャンプに並ぶ、否、この勝利で堂々と来季を展望する余裕を勝ち取った。

血統面の課題は、底力勝負の争いでクリアになった。

サウジアラビアロイヤルCの際は、もっと速い流れで、稍重とはいえ、秋の開幕週だったから、それにわずかに劣るタイムながら、内容は今回の方がずっと上である。

本質的にはもっと上手に競馬できるはずのステルヴィオは、結果的に前走の窮余の策で転じた追い込みを再現するも、名手になったクリスチャンとて全てを掴んでいるわけではなく、前回ほどの強烈さは感じさせないその他大勢の2着争いを制するに止まった。

勝ち馬が相変わらず、もっとパワーアップしたようなところがある中で、今度はアウェイの戦い。

ダノンプレミアムは前走ではもっと増えていてもよかったはずの成長分はわずかに遠征したマイナスがあって6kg増だったが、いい意味で大きく成長する必要はない状態で、全て好調でのレース、前回分のマイナスを取り返して、完成形を示した490kgの馬体は、もはや、単純な力勝負において対抗する手段が他にないほどにまで、しっかりと出来上がっていた。

これで負けたとしても、このメンバーなら…、という言い訳ができる出来。

対して、微増でありながら、立場が変化したステルヴィオは、ルメール乗り替わりは既定路線であった上に、シンボリルドルフの一族らしい底力は持ち合わせていても、ここぞの場面でのパワー勝負にまだ挑めなかった。

札幌の重馬場を1:51.3で走れる才能は素晴らしいが、ロードカナロアの若き日がそうであったように、下げればいいところを見せられる確率が高い一方、レースぶりも完成された勝者には、どうにも敵わないことをこの大一番で示してしまった印象を受ける。

頑張らないといけない。例年以上に激烈なクラシック戦線となる。

期待のタワーオブロンドンは、坂もあるだろうし、距離ももちろん、内から抜け出していく経験はまだ乏しいというのもあるが、一番肝心な先行馬が突き放しにかかった後に追いかける脚は平凡でも、今回は坂のあたりで完全に脚が上がってしまっていた。

ゴール前の脚勢の差は、勝ち馬はおろか、2、4着馬にも見劣り、実に切ない競馬になってしまった。

外に出せばもっとタレていた可能性さえある。

完成度を買ったのだが、残念至極。まるでダノンプレミアムのライバルになれなかった。

頑張らないといけないが、もう対戦しようなどと思わず、自分の道を進むしかない。

ケイアイノ-テックが味のある差しで上位争いというか、混戦の2着争いに加わってきたが、実は、母の名に囚われなければ、意外とこの馬が一番距離延長に展望がある気がした。

パドックの気配も、完全に中距離型ディープのそれだったし、スマーティジョーンズ以外は、日本でもおなじみのダンチヒ、ダマスカス、ラウンドテーブルといった大種牡馬が居並ぶ母系だけに、ダービー以降もチャンピオンディスタンスではさすがに厳しいだろうが、この馬は意外性のある馬だろうし、伸びしろはあるはずだ。

2歳GⅠには常に、こういう発見があってほしい。

チャンピオンを決めると同時に、次世代のスター候補も混じっているはずのレースになったということは、尚のこと、ダノンプレミアムの鮮烈さを際立たせた結果と言える。

この素晴らしい出会いに感謝したい。