2022年朝日杯フューチュリティステークス【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着ドルチェモア(3.1倍)2着ダノンタッチダウン(3.6倍)3着レイベリング(6.5倍)

レース名第74回朝日杯フューチュリティステークス(G1)
日程2022年12月18日
優勝馬ドルチェモア
優勝騎手坂井 瑠星
勝ちタイム1:33.9
馬場
3連単配当4,570円

2022年朝日杯フューチュリティステークス - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
12ドルチェモア1:33.9-
212ダノンタッチダウン1:34.0 クビ
3
14レイベリング1:34.0クビ
4
1キョウエイブリッサ1:34.21 1/4
55バグラダス1:34.3 3/4
単勝2310円
複勝2130円
複勝12140円
複勝14210円
枠連1-6560円
ワイド2-12260円
ワイド2-14520円
ワイド12-14490円
馬連2-12550円
馬単2-121,070円
3連複2-12-141,280円
3連単2-12-144,570円

2022年朝日杯フューチュリティステークス - レース後コメント(騎手/厩舎)

「全ての関係者に感謝したい。4回連続で追い切りに乗せていただいて、この馬のことは分かっていた。打ち合わせ通りいいレースができた。道中もうまくいったし、直線もしっかり反応してくれた。G1を勝つことができて少しは恩返しできたかな」

※優勝した坂井 瑠星騎手のコメント(ドルチェモア)

2022年朝日杯フューチュリティステークス - レース結果動画(YouTube)

2022年朝日杯フューチュリティステークス - 回顧

やけにこのレースに縁のあるファミリーでもあるドルチェモア。

母アユサンは、言わずと知れた桜花賞勝ち馬であるが、このコースで行われる2歳女王決定戦の阪神ジュベナイルフィリーズにも出走。

勝ったローブティサージュに対し、出負けで怪しげな馬になりかけていた、一時低迷の時期だったから、掲示板にも乗れなかったが、多くの先着馬を逆転し、桜花賞を制したディープインパクト産駒だった。

一方で、同父でその全妹にあたるマウレアもいる。

これがジュベナイルフィリーズの3着馬。ラッキーライラックがいた年なので、勝ち負けにまでは加われなかったが、重賞を勝っていない割には、活躍したイメージもある。

春にはチューリップ賞でも2着であった。

それらのコース実績からして、この条件は適しているのだろう。

ドルチェモアは入っているから仕方ないという程度の意味合いしか持たない、ノーザンダンサーの血が多数あるものの、見事に5代目以降のクロス。

フランケルが同系配合で3×4であることで、レイベリングは深いところに母母父ベリファの直系に入るものとクロスしても、結構強く影響してくるが、欧州系で共通するダノンタッチダウンのファミリーと比べても、いくらか強制的な早期出世をアシストする血はないので、ドルチェモアがやや平凡にも映る1:33.9で勝ち切った意味は、後々証明されていくことだろう。

これで伸びしろがないなら、単なる早熟。

配合的にはそうは見えないが、ファミリーの完成度は比較的早い方にシフトしている。

先週のリバティアイランドも上出来の好発を決めていたが、元より先行力を活かすタイプとして、しっかりと序盤からレースに参加できるように育てられたドルチェモアは、テン乗りの坂井騎手とは思えないほどのコンビネーションで、素晴らしいリードを最初の一歩から決めていた。

これは先週とは違い、外枠に入ったファンタジスタタイプのタレント勢も、しっかりとレースに参加。

こちらは先行力で勝負できる馬ではないから、さすがは川田というイン追走を3コーナーの前に決めたダノンタッチダウンは、完全に連続週G1勝ちを狙った策だったものの、結果的には、上手に流れを活かした、外差しに成功しかけたレイベリングの横山武史騎手の判断の方が、いくらか正確だったように思う。

ただ、あくまでも総評でそうなるというだけで、どうしても先行できない今のダノンタッチダウンに、消耗を防ぐ策を施し、後々の進歩に繋げる正しい教育を化した川田流が、完全否定される謂れなどない。

むしろ、発展的な戦略をライバルに先んじて実践したダノンタッチダウンが、完成度上位他の2頭に大きく見劣るのに対し、レースぶりはむしろ、古馬との戦いまでをも備えたそれであった。

前走でいろいろ試そうにも、自分が動けていけないのでは仕方はないという何もないに等しいレースを経て、一気に中身が伴ったダノンタッチダウンは、思われているよりも、進化の速いビッグボーイである可能性を秘める。

半兄・ダノンザキッドよりも迷い道は短い時間で済むかもしれないが、まだまだ課題がひとつ克服されただけ。

自身で体を作るアスリートとしての心得を理解しなければ、あっという間に、ライバルたちに置いて行かれてしまう。

600Mのラップが34.1秒で、短距離戦レベル。

一昨年がもっと速かったから、それに見劣るというだけで、昨年のラップもほぼ同じ。

ただ、ドウデュースらが最後は覇を競った接戦と違い、レースの終いの上がりが35.2秒→36.1秒となると、レベルとすれば、昨年とは一段下という印象。

もっと距離への柔軟な対応ということで、勝ったドウデュースや置いて行かれたものを次戦で克服し、本番は完璧に立ち回ったジオグリフらのようなクラシック展望を見た時、今年は負けたグループにそれを求めたいところだが、先行激化の理由が、そもそもの戦法が被っているといて、逃げるか番手かの馬が多数存在していたという組み合わせだから、この朝日杯で、一旦リセット。

どの馬も、先行力を磨くべきか、差す形をとるべきか、各陣営は再考の必要がある。

そもそも、前走で先行して好走の馬に大ベテランが後方待機で受けたという、地味ながら、興味深い対応が見られていた。

その片棒であるドンデンガエシの横山典弘騎手は、やりたいことの意図が非常によく伝わったが、この勝ちタイプに対し、進路が最後なくなったイン強襲失敗も大いに着順に影響したものの、途中で自在の内ラチ沿い追撃のプランに、川田によるポジション奪取成功の割を食った面もあり、見た目の着順よりはわずかな進化はあったが、直線に入ってから鋭さで勝負できない死角が出てしまった印象。

大いに立て直しというか、路線の転換まで見込まれる。

そこまで速い馬ではなさそうで、そうするとあっち路線であろう。

それにしてもだ。

坂井騎手が若いドルチェモアとしっかりとコンタクトをとってきたという話も聞いてはいたが、あのスタート。

それも、レース直前になって人気が集中していった、完成度の差をダノンタッチダウンのまだまだ幼児性を残した馬体との比較により、優位とされた1番人気を、鞍上はどう意識していたのか。

あまりにも見事であったし、あのスタートで東京での激闘を演じたグラニットは、少し押していくしかなくなったことで、もっと行きたかったというオールパルフェや短距離志向のウメムスビ<期待のルーキー・角田大河騎手>らの目標にされてしまう結果になったわけだから、結果というより、展開に与えたインパクトがかなりのものだったことが、ここから窺える。

前走での東京への挑戦は、札幌1500逃げ切りという、いわば、何の参考にもならない実績を1つだけもって挑んだ、本当の意味での冒険であったが、ダノンタッチダウンに負けず、ポテンシャルだけで今のところは戦っているレイベリングまで含め、このドルチェモアは明らかにこの距離への適性で一歩リードを印象付けたことで、戦うごとにタフさが問われながらも、今時分、坂井瑠星騎手自身がそういう過程にあるように、毎日進化の底力型をレースごとにアップデートする才能は、かなりのものを感じさせた。

特に、グラニットの逃げを後ろというか、他の馬と一緒に走ることで直線勝負で勝ち切った前走とは違う、それより少しタフな流れに今度は自分自身の自在性ある動きで直接参加することで、先行勢をねじ伏せたのである。

非凡なものは新馬戦から…、などという、古典の定説を引き合いに出すことよりは、それがしっかりと戦うごとに身についていることが重要。

先週の中内田調教師は素晴らしいが、癖があまりに強い才能に振り回されつつ、しっかりと競走馬に育てる実績を積み上げてきた須貝尚介調教師の技量にも、ここは敬意を示したい。

オーナーサイドの初タイトル制覇は、そうした意気軒昂の騎手に味のある技術を密かに見せる伯楽らによる好影響はもちろんあるのだが、母と同じ下河辺牧場産のこの才能は、そうした勝ち運を備えたという星の下に生まれた馬なのだと、改めて証明した印象はある。

社台のエアグルーヴ系継承者である種牡馬・ルーラーシップに、ディープインパクト産駒の桜花賞馬。

組み合わせはオーソドックスでも、活躍する下地のある血統背景を味方につけるには、人間の努力も、その都度問われる決断の積み重ねにも、出来る限り不正解を減らすための経験値が必要。

スリーエイチレーシングには、そうした難しい判断を的確にこなせる秘密の作戦のようなものがあるのかもしれない。

人馬というのは、騎手と馬と言う意味が大半を占めるが、このオーナーが今後勝ちうる大レースは、金子オーナーほどではないにせよ、意外なほど豊かな可能性に溢れた、とても注目すべき馬主になっていくのかもしれないなと、ふと感じた。