2023年日本ダービー(東京優駿)【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着タスティエーラ(8.3倍)2着ソールオリエンス(1.8倍)3着ハーツコンチェルト(25.6倍)

レース名第89回日本ダービー(東京優駿)
日程2023年5月28日
優勝馬タスティエーラ
優勝騎手D.レーン
勝ちタイム2:25.2
馬場
3連単配当29,810円

2023年日本ダービー(東京優駿) - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
112タスティエーラ2:25.2-
25ソールオリエンス2:25.2クビ
311ハーツコンチェルト2:25.2ハナ
41ベラジオオペラ2:25.2ハナ
515ノッキングポイント2:25.41
単勝12830円
複勝12200円
複勝5120円
複勝11380円
枠連3-6560円
ワイド5-11360円
ワイド5-121,970円
ワイド11-12820円
馬連5-12690円
馬単12-52,330円
3連複5-11-124,700円
3連単12-5-1129,810円

2023年日本ダービー(東京優駿) - レース後コメント(騎手/厩舎)

「とっても特別な勝利になりました。この馬の強いポイントは速いスタートを切って、ポジションを取ったあとにすぐリラックスしてリズム良く競馬ができるところ。勝つことができたのはポジションが一番関係あると思うので、きょうは全て馬のおかげです。(初コンビでは日本ダービーをなかなか勝てないという話は)聞いたことがなかったです。同じ堀厩舎のサリオスのときは、コントレイルという素晴らしい馬がいて2着でしたが、そこから数年しかたっていないのにもう一回チャンスをいただいて、勝利という結果を残すことができて非常にうれしいです」

※優勝したD.レーン騎手のコメント(タスティエーラ)

2023年日本ダービー(東京優駿) - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

2023年日本ダービー(東京優駿) - 回顧

タスティエーラの血統

クラフティワイフ系のトーセンホマレボシは除き、大体が晩成型が成功の定型というファミリーにも拘らず、これが年明け3戦目で、全て主要競走を連対。
天才型ではなくとも、ダービー馬になってしまう理由は、言わずもがな、堀宣行調教師の執念あってのことであろう。

トーセンホマレボシはゴールドシップとワールドエースが人気になったダービーで、前哨戦となった京都新聞杯を凄まじい2:10.0で勝ったディープインパクト産駒として穴人気になり、高速決着になったダービーで勝ったディープブリランテと際どい争いを演じた3着馬。
亜流の挑戦馬が、激しいレースを経験するか、強烈な勝ち方をするかのいずれかしか、皐月賞組に及ばないという型を、負けながらも証明した1頭だ。

サトノクラウンを父に持つタスティエーラは、父と同じディープインパクト・弥生賞を親仔で制した、同じ堀厩舎の期待馬だったが、皐月賞では、途轍もない末脚を繰り出す関東馬に撫で切られるところまで同じ。
しかし、本番というべきダービーでは、ルメール騎手を背に追い込んで3着。
母父のマンハッタンカフェが夏以降にならないと使い物にならないほど、不良馬場の弥生賞・勝ったのはアグネスタキオン で消耗してしまったのに対し、父も母父も日本の一流馬でありながら、それを超えるのだから、このタスティエーラもソールオリエンスに負けず劣らぬ、立派な血統の継承者である。

ノーザンダンサー系のダービー制覇は、奇しくも、2006年にサンデーサイレンス直仔がラストクロップに数頭の参戦馬を送り込んだダービーで、堂々二冠のメイショウサムソン<オペラハウス産駒>以来のこと。
生産者の望むところであったのか…、という結果のように思えたが、陣営の勝利であることは間違いない。
まだまだ伸びしろがある。

1000M通過を見たところ、逃げ切って不思議なかったパクスオトマニカが60秒台中盤であったことからも、強烈な上がり勝負、それこそ、昨秋にこの東京でパンサラッサと、それを追い詰めて捉え切ったイクイノックスの異種格闘技戦のような展開が巻き起こって、何一つ不思議なかったが、直線の馬場傾向からして、その他は超スローの展開の割に、全体の上がりは平凡にも映った。

ムカムカしてちょっと忘れたいと思っていただろう、3年前、コントレイル独走のダービーを引き合いに、ようやく冷静になれたようなところのあるレーン騎手は、普通に乗って、勝てるポジションから抜け出しを図り、勝ち切ったことになるが、今回は2:25.2である。
あのダービーで2着だったサリオスは、理想の追い上げを見せるも、2:24.6なのだから、少なくとも、ペースが1秒以上違うそのダービーに対し、勝ちタイムで遠く及ばないのだから、人気のソールオリエンスや「斃れた」と思われるスキルヴィングのパフォーマンスが、作りに対しても、大きく理想の曲線を描いてダービーで最高潮になったはずなのに、結果振るわずからも、適性がそのサリオスにさえ及ばなかった印象は拭えない。
混戦のまま、皐月賞の経験値を最も活かしたタスティエーラ自身のスキルアップこそが、このダービーを制した理由とする以外、あまり大きな見所がなかったのは残念だろう。

ただ、問題というか、事の本質を如実に突いたような結末の課題として挙げられるのがサンデーサイレンスの血を持たない馬が、少なからず、2頭出走し、チャンスを得ていたということ。
結果、ノーザンダンサー系の馬が勝ち切り、4着ベラジオオペラが惜しい内容で勝ち馬とタイム差なしの接戦を演じ、それに続いたのが、血統のインパクトだけで好走したようにしか思えない良血チェッキーノの息仔・ノッキングポイントである。

わずかに及ばなかった組は、サンデーサイレンス系ではなく、ほとんど、青葉賞組の、そのトライアルの価値を守るためだけに意地を見せたような印象のハーツコンチェルトも、急上昇はよかったが、新馬戦の勝ち方に対し、ダービーで最高潮に持っていけなかった晩成のそれを示しているから、タスティエーラが皐月賞に間に合わなかったとすると、少しゾッとする…。

ただ、皐月賞本流の結果を残した才能は、改めて本物と示した結果。
奇しくも、皐月賞でサンデーサイレンス直仔が初登場の1995年以来、1、2着は入れ替わったものの、連対の2頭は不動という不可思議かつ、非常に理解のしやすい、反動と上がり目のバランスがはっきりと捉えることのできたダービーでもあった。
いつの時代も、才能が天才的なそれでない限り、強烈なパフォーマンスを京都新聞杯やトライアル、負けていないなどの戦績から見られる大きな武器でもないと、まずは皐月賞組に太刀打ちできないことは、濃密すぎる時間を過ごしたスキルヴィングの事故からも、明快な理由で証明された格好となっている。

タスティエーラは中2週の経験を皐月賞前に経験し、皐月賞自体は完璧に松山騎手も勝ったと言える競馬も、結果は2着。
レーン騎手は堀調教師に重用され、あの心を侵されて不思議ない缶詰め状態の2020年シーズンに、サリオスとの濃密な時間を経験しているから、普通に乗れば、今年こそは大丈夫…。
何しろ、2019年のサートゥルナーリアとのあまりに過酷なガス欠の経験があるから、メンタル面でも騎乗者に不安はなかった。
久々のテン乗りダービー制覇とはいえ、かつてのルメール騎手が、JRA所属から3→2→1着の軌跡を辿ったダービーに学べば、慣れ切った日本調教馬への初めて実戦での騎乗となる大レースという死角は、生え抜きよりはむしろ、小さかったことになる。

とは、今にして思えることなのかもしれない。
サンデーサイレンス直系が勝てないのは、奇しくも、2017年に衝撃の向こう流し捲りから押し切ったルメール初戴冠のレイデオロ以来。
同父のドゥラメンテや外国産馬初の制覇となった2010年のエイシンフラッシュを除けば、あとはジャングルポケットやダービーを勝っているキングカメハメハ<産駒も前記2頭が勝利>、親子制覇のタニノギムレットやウオッカ、異例のシーズンであった年の二冠馬・メイショウサムソンくらいしか出てこない。

知らない世界のダービーに望むとき、またジョーカーを引いたようなところのある横山武史騎手<2021年はロベルト系でハナ負け、今年はサンデー系で敗れる>は、何から何まで、いずれ訪れる勝利の時に向けた、大いなる経験であるとここは思うしかない。
出来は兎も角、好位差しに出たというほど、派手に出たわけでもなく、スローで揉まれた面はあったが、最後に前は開いたから、脚は使っている。
ソールオリエンスの距離適性は問題なかったはずだが、いくらか、正攻法で戦える準備が整っていたタスティエーラに、ダービー展望の死角はもろに顕在化した内容。
無敗馬は、ディープインパクト以降でその不肖の仔という感じのコントレイル以外、1頭たりとも勝ち切れていないことからも、ダービー時点での上がり目はなかったのだろう。
本質は少し長いは印象はあるし、もっと派手なレースをした方がいいタイプのように思えるが、この展開では、これ以上は想定できない流れ。
自分を悔いても仕方ないが、武史騎手が前向きなのは何よりである。

一方、武豊の奇跡<テン乗り・こちらは8着まで>も叶わず、本命トップナイフは、変な癖でも付いたようにまた出が甘く、鞍上も仕上げたダービーながら、無理できずに終わる結末。
主役級の2頭が、レースの質を上げる必要に迫られた時、1番人気は超久々の重馬場皐月賞圧勝馬、2番人気は鬼門も鬼門の青葉賞連対馬というイレギュラーな才能は、フルスペックの能力を発揮できずに終わる…、というのは歴史の経験則をそのまま示した結果。
層が薄いことは最初から分かっていたから、その時点で、タスティエーラを推せなかったファンに、喜ばしい幸運は舞い込んでこなかったのであろう。
2:25.4。超スローでもないのにこのタイムは、少し、考えを改めねばならない重大な結果だろ思うべきである。
思われているより、深刻な血統的課題を、コントレイルやシャフリヤールはしっかりカバーしてくれるはずだが、10年もすれば、この水準に戻ってしまって不思議ない。