フェブラリーステークス2023【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着レモンポップ(2.2倍)2着レッドルゼル(9.0倍)3着メイショウハリオ(10.7倍)

レース名第40回フェブラリーステークス(G1)
日程2023年2月19日 (日)
優勝馬レモンポップ
優勝騎手坂井 瑠星
勝ちタイム1:35.6
馬場
3連単配当7,700円

フェブラリーステークス2023 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
17レモンポップ1:35.6-
215レッドルゼル1:35.81.1/2
36メイショウハリオ1:36.22.1/2
44ドライスタウト1:36.31
58アドマイヤルプス1:36.4アタマ
単勝7220円
複勝7130円
複勝15230円
複勝6260円
枠連4-81,140円
ワイド7-15450円
ワイド6-7470円
ワイド6-151,180円
馬連7-15970円
馬単7-151,420円
3連複6-7-152,630円
3連単7-15-67,700円

フェブラリーステークス2023 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「このような人気になっている馬でチャンスを頂いて、何とか結果で応えたいと思っていたので、凄くホッとしています。 とにかく精神的にどっしりしていて、馬が『緊張しなくて良いよ』と言っているようで、僕はただ乗っているだけでした。その辺りが強みだと思います。今年最初のGIを勝たせて頂いて、明日からはサウジアラビアに行きますが、そこでも結果を出して、これからもっともっと勝てるように頑張りたいと思います」

※優勝した坂井 瑠星騎手のコメント(レモンポップ)

フェブラリーステークス2023 - レース結果動画(YouTube)

フェブラリーステークス2023 - 回顧

母母Harpiaは、天下の大種牡馬・Danehillの全妹である。
5代母が偉大なるノーザンダンサーの母であるNatalmaというだけで良血なのだが、わざわざ直系にノーザンダンサーの血を取り込むことで、この兄妹はナタルマの激しい3×3を作られて、この世に生を受けた。

しかし、血を味方につけたレモンポップの流れをつかみ取る力は、それだけに限らない。
直前の芝重賞・小倉大賞典は、道悪だったとはいえ、ハービンジャー産駒のヒンドゥタイムズが、激しい1着争いを制し、2着も母父デインヒル直系のカテドラル、3着は母父ハービンジャーのバジオウが来た。

激しさを呼び起こすこともあるダンチヒがクロスしない代わりに、ノーザンダンサーとその母ナタルマに関わるクロスは多発しているが、レモンポップ自身はスピード型であるから、北米ダート戦線で準エース級になったこともあるキングマンボ産駒でベルモントS勝ちのLemon Drop Kidが秘める総合力を、スピード優先で作られた芝向きストームキャットのGiant's Causewayのパワーも活かしつつ、8Fまで持ち堪えられるパワー型としての耐性に繋げることができたのは、ノーザンダンサー系がそうであるように、同系・同族のパワーの集結を決して嫌がらない性質があるからこそ。

普通は成功しない3×3があるデインヒルは、ハービンジャーに関わる全姉妹クロスを秘める先週の共同通信杯を勝ったファントムシーフのような芝馬を出すのが普通でも、自身が血統内にないから、スピード型のダート専用になるとは即座には言えないが、ディープインパクトとブラックタイドがまるで違うように、同じ配合でも個体差は出る。
牡牝の差が個性の違いとなったことで、芝適性が強化されなかったレモンポップは、いくらか芝向きの面も秘めていたのだろうドライスタウトの良さを完全に消し切ったのも、坂井瑠星騎手と自身の充実度以外では、その根拠と成しているように思える。

褒めるしかない。
まずは、浜中俊騎手である。
煽るというよりは躓いて、一旦は鐙まで外れてしまったかのような、豪快なロデオスタイルを無駄に披露させつつも、大外強襲。
メイショウハリオも諦めの悪い男として、いい意味で成長を遂げたが、よく落ちなかった鞍上はさすがダービージョッキー。
再びのG1獲りが近づいてくるような、妙に幸運のG1を完走、かつ好走の重みは、馬自身の左回り適性というより小回り不適の可能性を顕在化させたことで、陣営の選択肢を増やすという副作用までもたらしたのだから、怪我の功名もここまでくると痛快である。

川田将雅騎手も素晴らしかった。
意図して下げて、これも後方一気。
何しろ、日本の砂馬場よりはるかに北米圏の本格的なダートに近いドバイのスプリントG1で、毎度追い込んでくるような猛者である。
信じるも何も、マイルは長いのだから、こうするしかないと言ってしまえばそれまでだが、我慢して弾けさせるまでの段取りは、他の追随を許さぬ戦績を年初から残す騎手大賞男ならではのもの。
レッドルゼルにマイルは長いが、来年あたりはここでも通用するのではないか…。
ズブさが増すとは限らない、ダートのスピード型ではあるが、父ロードカナロアは短距離専門から、工夫を重ねて安田記念まで勝った偉大なる競走馬でもある。
一昨年など、良馬場の高速決着ながら、強いカフェファラオの次に8歳馬が2頭も続いたこともある。

しかし、戸崎圭太を封じた坂井瑠星は恐ろしい。
レッドルゼルほどではないが、それなりのスタートを決めた後、わざと競馬が上手なドライスタウトに位置をとらせるように、内への進路をあえて誘った節がある。

そうすれば、どちらも大型馬だが、東京への親和性やそのキャリアの多さ、現状の充実などを踏まえ、自分の乗った感覚からも<当然、それは調教だけであるが、一度乗れるだけでも騎手の引き出しを大いに増えることは目に見えていた>、調子はむしろ、好調キープ以上の手応えがあったからこそ、自身の封じ込めだったのではないか。
テン乗り騎手にしては、実に出来過ぎの立ち回り。
坂井騎手もレモンポップも素晴らしいが、当面の敵が見えている中で、他馬をすべて勝利を手繰り寄せる駒として使い切った鞍上に判断に、血統のいい5歳の大型スピード馬という、勢いがなければ簡単ではないJRAG1獲りの段取りから言って、最も味方につけたい要素を、策をしっかりと練った上で実行したのだから、騎手で勝ったと言われたって、何も異論は出ないところか。

田中博康調教師の心中を慮れば、主戦が乗ってくれないというだけでもかなりの負担だったはずだが、根岸Sを好時計で勝ち切れば、フェブラリー獲りも手中にあるという歴史を考え、ファンが票を投じることはわかりきっていたことで、この采配、それも鞍上はしっかりと仕事をしてくれたのだから、お見事とするしかない。

46.6−49.0
というラップで、ドライスタウトなども力を発揮することができたが、アドマイヤルプスがやけに頑張ったとはいえ、その後にあのスピーディキックである。
芝スタートが合う合わないの違いで着差が体ひとつと半分ついたが、アドマイヤルプスも府中でばかり走っている馬。
経験の差も、最後は影響する。
それは舶来のシャールズスパイトも同じだろう。

にしても、ドライスタウトは出来も問題なく、最後も伸びているのだから、力負けではないとはいえ、やや不完全燃焼。
今回も前にケイアイターコイズがいて、前走はレースの自由を奪われている隙に、川田騎手のバトルクライの出し抜けを食らったのだが、どうしたって完成度やいい意味での経験を積むために必要なストレスが、まだ本格的に掛かっていないという死角は、体を大きく使って走る馬には、あまりにもタフすぎたのだろう。
それを見越して、主戦の戸崎騎手は少し諦めようなところもみられたが、馬が必死にアドマイヤルプスに負けまいと差し返す姿は、この馬の本質なのだろう。

淡白な面も実はあって不思議ないレモンポップとドライスタウト、浦和のスピーディキックらが、勝敗を分ける場面で完璧な立ち回りをした分だけ、結果として差がついてしまったわけだが、来年は浦和で1400のG1が誕生する。
レッドルゼルさんも元気なら登場するだろうが、まだ若い彼らの出番になってくるはずだ。
スピード勝負のフェブラリーSは、中距離型も真の意味で育ってきた日本競馬の馬産界で、サウジ=メインは1800戦 向きもあるのだが、このレモンポップの完勝に見える結論は、本質のダート適性を問うた時、真の価値ある種牡馬としての質に関しては、こちらを制した馬の方が確率の面で上のように思える。

どこかにマイル以下に適性のある快速種牡馬が直系に入っているのが当たり前の時代にあって、スピードを増して、それを再度加速度的に生産へのプラス面を出す優秀さを示す可能性は、中距離もマイルの方が上だろう。
競走馬としての才能だけでなく、真の意味で有能なディープインパクト→コントレイルのようなスペシャルなサラブレッドを生み、その血を繋ぐという作業に、まだこの国の競馬界は参加したばかりなのかもしれない。
スピード型も北米圏やドイツのように、異系色の強い血を残すという意味でも、この選別に予断をもって取り掛かるべきであろう。
今年のサウジ組で、いい産駒を出しそうなのは、意外にも一見怪しげないクラウンプライドやパンサラッサであったりしても不思議ないのが、競馬の面白いところなのだから。