阪神ジュベナイルフィリーズ2016 予想

焦点は、肉を切らせて骨を切る競馬が、特にマイルという距離では勝利の必要絶対条件になるだろうサドラーズウェルズの系統の馬が、人気馬にいるということだ。

左回りとはいえ、前走のヴゼットジョリーとソウルスターリングのゴール前の伸び脚は、他にも牡馬を負かしている馬が多くいる組み合わせながら、ちょっとここでは抜けている。

想像通りのマイルらしい展開で、最も信頼できる底力型と言えるだろう。

では、昨年がそうであったように、何もメジャーエンブレムほど正攻法でなくてもいいが、それこそ59秒前半の1000M通過、半マイルは少なくとも47秒中盤以上の展開になった際は能力全開となるのは目に見えていると仮定し、そうでなかった場合はどうなるかと考えてみた。

昔のトリッキーなコースでは、スプリンター型の早熟牝馬も多く顔を揃えていたから、勿論、勝つためには器用さも要求されたけれども、基本的には然るべきペースの底力勝負が多かった。

が、外回りコースになってからというもの、とてつもなく大物に育つ名牝も勝ち上がるが、ハイペース、もっと言うと、たとえ前述の平均ペースくらいで流れたとしても、展開という概念があってないようなもので、スローでも追い込みが決まったり、メジャーエンブレムのような強引な押し切りも普通に決まるのである。

ある意味、ハイペースなら必ず前は止まるという必然性は、ブエナビスタ、アパパネなど平均より遅いくらいの流れでも差し切ってしまった例を考えたら、もうそれは絶対に勝てたという裏付けにもなるわけで、少なくともまだ成長の程度にバラつきのあるこの時期であれば、力のある馬は能力を遺憾なく発揮できるコース形態なのだ。

スローだから前を押さえよ。

全くの筋違いだ。スロー頻発のここ10年で、超高速決着の06年だけ先行勢のスピード比べになったが、あとは流れに関係なく、後方グループの台頭が定番のレース。

これは、そっくりそのままオークスの傾向そのものである。

後のオークス好走馬、ダービー圧勝のウオッカも含め、その3着以内の馬は連対馬からすでに5頭出ていて、よくいうプレ桜花賞の舞台という表現以上に、もうクラシック展望の初手にこのレースは組み込まれている状況を示していると言える。

桜花賞でもまた好走すれば、次は自ずと…、という流れだ。

オークスを展望するくらいでいいのである。

今年は幸運なことに、そういう舞台に適した才能は多い。

◎ヴゼットジョリー

○リスグラシュー

▲サトノアリシア

☆ソウルスターリング

マイル適性はともかく、ローエングリン、ハーツクライ、ハービンジャー、フランケルに早熟のイメージも短距離型の印象も全くない。

本命にしたヴゼットジョリーは、昨年の覇者同様、サドラーズウェルズ、サンデーサイレンス、レインボウクエストのビッグな血が入り交ざっている。

タレント揃いの新潟2歳Sで、ワンタイミング遅らせてからの仕掛けで決め手も底力も一枚上といい競馬は、どことなく似た血統背景を持つテイエムオペラオーと同じようなないようにも見えなくはない。

無理筋にはなるが、和田騎手が皐月賞を勝ってから常に人気を背負っての競馬を2年以上、延々プレッシャーと戦い続けてきたのと比べれば、多少無理に動かしても渋といサドラー系の馬とは手が合うわけで、上位人気の1頭くらいの評価である今回は戦いやすいはずだ。

同期の福永騎手に手が戻る可能性は大いにあるが、ベテランらしい卒のない騎乗で、この馬の自在性をフルに発揮してもらいたい。

ソウルスターリングは、前回のエンジンの掛けた方が明らかに中距離レースを狙った印象の内容で、マイル仕様の遠征競馬という2つの課題を、いきなりこなすには、このメンバーでは少々キャリア不足の嫌いがある。

ルメールの数少ない欠点は、日本の馬の瞬発力を少々過大評価するところ。

ヨーロッパの競馬スタイルが染みついているから仕方ないが、むしろ、掛かってしまって今までの準備が台無しになるくらいの競馬の方が、父同様合っている可能性はある。

典型的なドイツ血統で、鞍上が無理するとは思えないので、押えないわけではないが、大枚をはたく勇気は湧かない。

以下、

△ジューヌエコール、ディーパワンサ、ブラックオニキス、レーヌミノル

今年はレベルが高いメンバーなので、当然、超新星誕生の可能性を秘めるレースではあるのだが、格下評価の馬がちょっと競馬の内容も血統も地味なので、今のジュベナイルフィリーズにはフィットしないと思い、今回拾うのはやめた。