NHKマイルカップ2017 回顧

これは現状の3歳マイル戦線における力通りの結果だろう。

3Fから34.5-46.1-57.9。

この流れで好位から抜け出してきた上位3頭は、このレースに関しては文句なしのGⅠ級の走りをしたことになる。

アエロリットはロケットスタートから、ボンセルヴィーソに先行馬の仕事をさせ、終始手応え十分の構えから、直線は完全に自分たちの競馬に持ち込んだあたり、横山騎手の理想とする勝利の形であり、こういう馬に育ってほしいという青写真通りに、獲るべきタイトルをもらったようなところもある。

直前のブリリアントSでは、前走まで手綱を執っていたミツバが人気に応え、見事なオープン3勝目を上げていたが、この追い込み秋に騎乗した際に馬を逃げさせた<それもハイペースで>という戦法は、自分の型にもう一つか二つ引き出しを加えさせるために、自分流の魔法の掛け方というよりは、普通の競馬もできるようにするための準備をする中で、結果がうまいこといったというだけのこと。

主戦のパートナーたるアエロリットの弱点は気性であり、燃えすぎることをコントロールすることには、横山典弘ほどのベテランであれば、いくらでも対応策はあった。

ダシにされる形ながら、逃げたボンセルヴィーソも力を出し切って3着。

ただ、オッズは結構正しい評価をしていて、スピード能力はそのまま結果に反映されることになった。

外の方がいいのでは?

そういう声があったというが、単純な話、内が特別いいという馬場状態ではなかっただけだろう。

最近は高速化が度を越したところもあるから、そういうことに騎手の側もまた記者も敏感になっているのかもしれない。

外差しが連続して決まって、それがバイアスの掛かった馬場状態であるとは限らない。

今は新潟の方が、よっぽど外差し傾向にある。

揉まれないのはいいと思っていたリエノテソーロは、鞍上吉田隼人騎手曰く、勝たなきゃ意味がない。

ちょっと感動した。

でも、最後の坂上でアエロリットとの一騎打ちに持ち込めなかった辺り、北海道で示した通りのスピード型であり、川崎はメンバー手薄、不良馬場で平凡の時計だったように、いくらかライトな芝のマイル戦はこのようにこなせても、本質はもっと本格的な快速馬なのだろう。

坂を上って、少し外へ寄れていた。前も苦しいが、あの辺りに距離の壁があったように思う。

芝適性は、この先に関しては何も言えないが、似たような時計で乗り切ったメイショウボーラーのように、行ったり来たりする馬になるのかもしれない。

タイプ丸被りである。

レースの勝ち時計でも判るように、勝ち馬と2着くらいまでは、このレースの水準くらいのレベルの競馬ができたように思う。

衆目の一致するところだろう。

ただ、1分33秒台になると途端に、10頭が入線しているというのは、既知の牝馬戦線のレベルの高さが証明されたと同時に、割れたオッズが示す通りの展開次第、であったことも明らかになったように思う。

前回のような競馬をするつもりはなかったにせよ、アエロリットが後方にいて、リエノテソーロが内枠であったとすれば、それはぞっとするようなメンバーである。

気配だけならトップ3のガンサリュートは、穴馬評価とはいえ、それなりの流れに乗っても殿負け。

外がいいのに、ほぼ万全の仕上がりだったのに…。

実は、カラクレナイとアエロリットが距離に不安があって、ミスエルテやリエノテソーロの方が適性があるような気がしていたのだが、結局総合力を問われる時に結果を出せなかったわけだから、残念ながら、基本距離でこの結果は力不足を認めざるを得ない。

枠がよかったとはいえ、皐月賞2着のペルシアンナイトに前走で全く歯が立たなかったレッドアンシェルが、体調はともかく、メンバー中唯一の大幅体重減で4着だった。

牝馬は気性で走るところもあるが、桜花賞で疲れるほど走ったわけではない。

関西馬には苦しい番組ではあるが、この先どうすればいいのか、意外と迷うところだ。

特にカラクレナイの次走には、要注目だろう。

苦心の仕上げで体重増でも、大柄な牡馬が少なかったのに、今まであったスケール感の大きさのような気配がなかった。

失敗のローテにならないことを祈るしかない。