NHKマイルカップ2018 回顧

道中からあちらこちらで進路が塞がる等の若駒には走りづらい条件が重なり、最大の不利を受けたのが人気のタワーオブロンドン。

陣営には何とも後味の悪い、実に不完全燃焼の競馬になってしまった。

かつてのタニノギムレットがこういう感じで外に出すのが遅れたレースもある。

今回はその比ではなく、ルメール騎手は最後は手綱を引くより他なかった。

今週はあまり冴えない方のミルコが出ていたから、真ん中の枠のギベオンというだけで、前日のフランツのこともあり、不安は大いにあったものの、極めてオーソドックスな正攻法の抜け出しで、しっかりと形作りはした。

力も出し切り、納得の結果になったはず。

が、外からあれだけの脚を使われてしまっては…。昨年の安田記念のサトノアラジンを思い出した。

じっくり構えて、一気の脚で追い込むというスタンス。

そんなにド派手な競馬をするイメージはない藤岡佑介騎手が、かつて弟の康太騎手がらしさ全開で強気の競馬での初タイトル奪取したのと、どことなく似た雰囲気を醸し出したのは、ある意味で、人も血の成せる業ということだろう。

本来は、武豊騎手が乗る予定だったケイアイノーテック。

かつてここを無敗で制したカレンブラックヒルの平田調教師が、彼と同じように新馬戦から一貫してマイル戦を使われた馬であり、前々走に披露した圧巻の直線は、川田騎手が引き出したというより、そのまた2走前の朝日杯で幸騎手が相手関係を意識した際に、変に競っては損という感じで、伏兵の競馬に徹して、大接戦となった2着争いに加わった4着の内容を動いて失敗した1勝クラスの敗戦も考慮しての作戦勝ちの結果。

この日も行き脚今一つで、テン乗りの佑介騎手も多少は考えることはあったのだろうけど、ここは急がず騒がず。

アーリントンC組は確かにレベルは高ったものの、ケイアイノーテックだって中山では1番人気だったのだから、気分は楽だったのだろう。

ほとんど決め打ちに近い、ほぼ今週の競馬の展開を無視したような大外一気は、見事に炸裂するのであった。

中盤のラップが34.4ー46.3-58.0で、時計も出るし、ある程度までは極端な策でもハマる流れ。

ただ、テトラドラクマもベストローテではなかったことで、順調に使えてきた、不利も受けなかった組のみが上位を競うことになった。

ケイアイノーテックはディープインパクトの産駒ではあるものの、母がダートで大活躍したケイアイガーベラで、これがゴーンウェスト直系のスマーティジョーンズの産駒で、母もダンチヒ×ダマスカスという、実に潔いパワー型の配合で、それでも何だか使っているうちに激しい増減があったにもかかわらず、本番で456kgでまとまったから、阪神の2戦で魅せた素晴らしい決め手をここでも発揮できたのであろう。

その辺りをどこかでしっかりと認識していたからこその、佑介騎手の好騎乗があったのは確か。

13倍のオッズに見られたファンの支持は、熱烈な投資者以外を除き、筆者のような前回はピリッとせずに、本番で痛い目に遭うというしっぺ返しを食らうといった展開を生んだ。

武騎手とて、1番人気にすることはできなかっただろうが、オッズはきっともっと本命党にやさしい数字になっていたことだろう。

めでたい鞍上の初GⅠ制覇があった一方、本来はもう少しオッズが割れていてもおかしくなかった組み合わせで、様々な脚質の馬がゴール前で次々に登場した。

ギベオンが蹄鉄の打ち替えの不運をどの程度不利として解釈すればいいのか、何とも判断しかねる要素になったとはいえ、一番強い競馬をした馬の後ろに1勝馬のレッドヴェイロンが突っ込んできていた。

これがやけにいい競馬をしていたから、とても惜しいなと思ったのだが、掲示板の5頭が全て前走が違うという結果からも、レベル云々以前に、どのレースがレベルが高かったとか決め打ちするのは、今年のレースに関しては、大きな間違いであったのかもしれないと感じた。

この後のビッグタイトルの参考資料となりそうだ。