NHKマイルカップ2019 回顧

道中はあまりいい位置につけていないように見えたアドマイヤマーズに対し、ダノンチェイサーはボチボチ、グランアレグリアはちょっと出負けからの巻き返しで、勝負所ではダノンと内外位置を入れ替えたシーンもあり、イベリスのペースには、それぞれ、いいアプローチができなかった印象がある。

あれは17年前だったか。

タニノギムレットが断然人気になった年。

勝ったテレグノシスが内斜行をして、人気勢だけではなく、相当な数の馬が不利を受けたことがあった。

タイプ的には違う、末脚鋭いトニービンの差し馬と、正攻法が似合うダイワメジャーの産駒。

しかし、求める答えが同じくらいのマイルのタイトル戦であるから、不利があった方には大いに不満はあっても、自由なポジションから伸びきれた方からすると、似たような結果が出る。

勝負所で…。

一番熱のこもった場面で、有力馬が全て絡む接触があるケースは、多いようで珍しい。

しかし、揉まれ弱いところのあるグランアレグリアと、トップホースと当たるのが実質的には初めてとなるダノンチェイサーには、野武士のようにタフさを身につけた2歳王者からかけられた、最大のポイントでの外からの圧をはねのけるだけの底力が、まだ備わっていなかったのは事実だろう。

皐月賞も毎年のように厳しいレースになる。

最近は、上がりが速くなったこのNHKマイルCも、同じルメールのタワーオブロンドンが内に押し込められてしまうような展開が、昨年あったばかり。

不良馬場のケンタッキーダービーの二の舞になるような気もしていたが、審議対象は、内から外に出そうとしたグランアレグリアの動きに対する、ダノンチェイサーの不利の度合いに対するものであったが、勝負のポイントは、そこを突き抜ける脚の問題だった。

ダノンチェイサーには、揉まれた経験もなく速い時計で駆けるスキルも、独力でのものとなると、その他大勢と何らさのないレベルであったとされることは事実。

独走する力が評価されたグリグリ人気のグランアレグリア評が、大勢の正論とみなされたのは筆者も異論はないが、18頭の競馬である。

何もなかったかのように、内からはカテドラルが出現し、外からは新潟で辛勝に思われたケイデンスコールが叩き一変で猛追。

その他大勢だったダノンチェイサーは、独走する能力を見せることができなかったものの、エンジンの掛かりそのものは、遥かにアドマイヤマーズの方が良かったし、突き抜ける力も2歳王者の方が上。

しかし、ダノンにとって本当に残念と言えたのが、内からタイトながら、ルメールのイメージとすると少しスライドさせるだけで自分の進路を確保しようとした時の外からの攻めで、牝馬らしい過敏さが災いし、悪質と取られて降着になったということは、それにもダノンは競り負けたのである。

勝ちタイムは、想定よりはちょっと遅い1:32.4だった。

今のマイルGⅠでは、最低ラインのスピード能力であるから、自身も当然バランスを崩したグランアレグリアは、一応は、出来ることはやったことになる。

裁定は仕方ないし、最も不運だったのは当然、4着繰り上げのダノンチェイサーではあるが、3強と目された中で、彼が最も思い通りに競馬できなかったのは、血統の影響もあるのか、ジリっぽさが目立ち、休み明けも手伝って能力全開とまでいかなかった彼自身の問題も少しはあったことに、本命にした筆者とすると残念でならなかった。

上位3頭が33秒台の上がりを、軒並み繰り出している。

日本の芝マイルが合わない…、という可能性を禁じ得ない結果である。