NHKマイルカップ2020 回顧

46.0-46.5というのは、他の馬のスピードがもっと繰り出せれば違う展開もあったのだろうが、明らかに体を減らして自身漲る気配とは映らなかったレシステンシアには、二の脚の絶対的な加速能力が備わっているから、普通に出ただけで、グイグイ行く馬はいなくて、結果的に勝ったラウダシオンだけの攻撃的な競馬に屈したのみ。

正直言って、もっと厳しい流れだったら、レシステンシアに初騎乗でも、ルメール騎手は無理に直線では無慈悲な右鞭は入れなかったはずだ。

そんなレシステンシアは、他の16頭には負けなかった。

レシステンシアに敵わなかった16頭は、高水準のスピードを求められた時の可能性は秘めていたが、このバランスラップで内ラチ沿いの4頭だけの競馬である。

ペースはスローであり、期待された支持通りの前残りだが、差し馬の迫力もやや不足していたか。

16頭はレシステンシアに完敗。

しかし、これをいい経験としたい。

素晴らしいラウダシオン。

前々走の武豊騎手で勝ったレースより、シャインガーネットにこそねじ伏せられたが、前走の道悪のファルコンSで改めて左回り適性と、高性能エンジンぶりを見せつけていた可能性のある裏路線組である。

奇しくも、武豊騎手も見事な立ち回りを見せた3着のギルデッドミラーに騎乗した福永騎手も乗っていたかれが、朝日杯とその前で乗っていたのがルメール騎手。

滅多にテン乗りは決まらないとした筆者だが、ヴィクトリアマイルに無類の好適性を誇ったかつての名牝たちと同じで、男・デムーロ、この東京マイルは大好きである。

NHKマイルCで3年連続で、違う騎乗で全て連対。

今年の勝負手は、親愛なるクリストフへの信頼感であろうか。

策士ミルコが、アドマイヤマーズで昨年はグランアレグリアを返り討ちにして<厳密には自滅だが>、今年は人気勢での乗り替わりが多い中、戦法に一定の読みが効くレシステンシアにルメール騎手。

競馬が上手で、尊敬するユタカ騎手が先行馬のしての可能性を引き出した手前、大いにそれらに甘える手が可能だった。

内枠のレシステンシアが、色々なことに気を遣いながらの理想に近いスタートで、その後のスピードの乗りはいつも通り。

しかし、出来に大いに不安がある状況では、モリモリの筋肉野郎にきっと育つだろうラウダシオンも好発ならば、格好の目標。

大いに煽って、すっかりミルコの思い通りだった。

3角手前で、行くようで行かないという2騎の勝ちパターンであったから、そもそも、他の馬に並びたてる可能性は皆無に等しかった。

直線では、唸る手応えで、今日はもらったと堂々の抜け出し。

レシステンシアに我慢させる競馬をさせるくらい、ラウダシオンも若干の距離不安を抱える分とがうまくマッチして、伏兵としては最高の本命潰しの競馬だった。

こういう競馬が早いうちからできるのなら、ラウダシオンの父リアルインパクトの後継者としての未来像もすっかり確立されたようなもの。

安田記念を早くに制したが、本領発揮はずっと先の事だった。

さすがにもうお釣りのなかったレシステンシアに、余計な心添えは無用と思った。

そもそも、有力とされた面々で、最も細化著しい限界超えの状態であったのが彼女である。

かなり強力なライバル相手に、ほぼ出来ることをやった中では、凡戦化歓迎せずの自分のフォームではない中での、懸命の粘りはさすがであった。

桁違いの底力である。

同型の配合であったメジャーエンブレムは、マイルに拘って使われ、桜花賞前に完成してしまったわけだが、彼女は秋デビューの元々は伏兵評価の馬。

春に結果を求めることはもう無理だから、しっかり立て直したい。

同じ体重の減りだったサトノインプレッサの方が遥かに体調は良かったはずだが、どことなく、経験の差も影響してか、輪乗りの段階では、こちらの方がずっと頼りがいがある存在と映った。

彼も含め、無敗馬は結果を出せなかったものの、時計平凡はむしろ歓迎。

再戦は大いに望むところだ。