NHKマイルカップ2025の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り
目次
NHKマイルカップ2025の予想と最終追い切りの予想を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!
歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。
| レース名 | 第30回NHKマイルカップ (G1) |
| グレード | 重賞(G1) |
| 日程 | 2025年5月11日(日) |
| 発走時間 | 15時40分 |
| 開催場所 | 東京競馬場 |
| 距離 | 芝1,600m |
| コース | 左回り |
| 賞金 | 1億3000万円 |
| レコードタイム | 1:30.5 |
NHKマイルカップ2025予想-予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)
NHKマイルC2025の予想オッズと登録馬
| 枠順 | 馬番 | 出走予定馬 | 騎手 | 性齢 | 斤量 | 予想オッズ | 人気 | 1週前追い切り | 最終追い切り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 1 | モンドデラモーレ | 戸崎 圭太 | 牡3 | 57 | 21.7 | 7 | 美浦・ウッド・良(戸崎圭) 5F 67.3-52.1-37.0-11.4(馬なり) | 美浦・坂路・重(戸崎圭) 800m 53.5-39.8-26.5-13.2(馬なり) |
| 1 | 2 | ショウナンザナドゥ | 池添 謙一 | 牡3 | 55 | 41.7 | 13 | 栗東・坂路・良(助手) 800m 55.9-40.6-26.1-12.8(馬なり) | 栗東・坂路・重(助手) 800m 56.9-41.0-26.2-12.6(馬なり) |
| 2 | 3 | チェルビアット | 吉村誠之助 | 牡3 | 55 | 56.1 | 15 | 栗東・坂路・良(助手) 800m 57.8-41.5-26.7-12.9(馬なり) | 栗東・坂路・重(助手) 800m 58.7-41.6-25.8-12.2(馬なり) |
| 2 | 4 | ヤンキーバローズ | 岩田 望来 | 牡3 | 57 | 24.1 | 10 | 栗東・CW・良(岩田望) 7F 96.8-65.9-51.5-36.5-11.3(一杯) | 栗東・坂路・重(調教師) 800m 55.0-39.6-25.3-12.3(馬なり) |
| 3 | 5 | ランスオブカオス | 吉村 誠之助 | 牡3 | 57 | 7.0 | 3 | 栗東・CW・良(小坂忠) 6F 84.7-68.0-52.9-37.2-11.3(馬なり) | 栗東・CW・重(吉村誠) 6F 82.8-65.9-50.6-36.0-11.2(馬なり) |
| 3 | 6 | イミグラントソング | C.ルメール | 牡3 | 57 | 5.7 | 2 | 美浦・ウッド・良(助手) 6F 85.4-69.2-54.6-39.4-12.1(馬なり) | 美浦・ウッド・重(ルメール) 6F 84.0-68.3-53.8-38.8-12.1(馬なり) |
| 4 | 7 | トータルクラリティ | 北村 友一 | 牡3 | 57 | 111.1 | 18 | 栗東・CW・良(北村友) 6F 80.4-65.1-50.3-35.7-11.5(一杯) | 栗東・坂路・重(助手) 800m 56.5-40.1-25.3-12.2(馬なり) |
| 4 | 8 | アドマイヤズーム | 川田 将雅 | 牡3 | 57 | 2.7 | 1 | 栗東・CW・良(荻野極) 7F 96.8-65.9-51.3-36.2-10.7(強め) | 栗東・坂路・重(助手) 800m 52.9-37.8-24.3-12.0(馬なり) |
| 5 | 9 | マイネルチケット | 横山 武史 | 牡3 | 57 | 35.0 | 12 | 栗東・CW・良(助手) 6F 82.6-65.9-51.5-36.3-11.3(馬なり) | 栗東・坂路・重(助手) 800m 55.1-39.9-25.3-11.8(馬なり) |
| 5 | 10 | マジックサンズ | 武 豊 | 牡3 | 57 | 10.1 | 4 | 栗東・CW・良(武豊) 6F 82.7-66.6-51.4-36.3-11.0(馬なり) | 栗東・坂路・重(酒井学) 800m 53.8-39.4-25.6-12.7(馬なり) |
| 6 | 11 | パンジャタワー | 松山 弘平 | 牡3 | 57 | 23.5 | 9 | 栗東・CW・良(松山弘) 6F 77.4-63.2-49.0-35.1-11.1(G前仕掛け) | 栗東・CW・重(松山弘) 6F 84.2-67.5-51.4-36.3-11.1(馬なり) |
| 6 | 12 | マピュース | 田辺 裕信 | 牡3 | 55 | 28.4 | 11 | 美浦・ウッド・良(田辺裕) 6F 85.3-69.8-54.7-39.1-11.6(馬なり) | 美浦・ウッド・重(助手) 6F 82.3-65.9-51.4-36.6-11.5(馬なり) |
| 7 | 13 | ミニトランザット | 鮫島克駿 | 牡3 | 57 | 55.6 | 14 | 栗東・坂路・良(助手) 800m 55.0-40.1-25.8-12.9(一杯) | 栗東・坂路・重(助手) 800m 56.6-41.3-26.2-12.7(末一杯) |
| 7 | 14 | ティラトーレ | 木幡 巧也 | 牡3 | 55 | 88.2 | 17 | - | 美浦・ウッド・重(木幡巧) 6F 80.6-64.9-51.1-37.1-11.7(馬なり) |
| 7 | 15 | アルテヴェローチェ | 佐々木 大輔 | 牡3 | 57 | 13.7 | 5 | 栗東・CW・良(酒井学) 6F 81.8-66.1-51.0-36.1-11.0(一杯) | 栗東・坂路・重(佐々木大) 800m 56.0-39.2-25.0-12.2(馬なり) |
| 8 | 16 | サトノカルナバル | D.レーン | 牡3 | 57 | 18.1 | 6 | 美浦・ウッド・良(助手) 5F 65.9-50.6-35.8-10.9(馬なり) | 美浦・ウッド・重(レーン) 4F 52.1-37.4-11.8(馬なり) |
| 8 | 17 | ヴーレヴー | 浜中俊 | 牡3 | 55 | 75.7 | 16 | 栗東・CW・良(浜中俊) 6F 84.1-67.7-52.7-37.5-11.3(馬なり) | 栗東・坂路・重(調教師) 800m 52.2-37.9-25.3-12.7(馬なり) |
| 8 | 18 | コートアリシアン | 菅原 明良 | 牡3 | 55 | 22.3 | 8 | 美浦・坂路・良(助手) 800m 53.2-39.3-25.5-12.1(馬なり) | 美浦・ウッド・重(助手) 6F 83.3-67.2-52.7-38.6-11.4(馬なり) |
| 脚質 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 逃げ馬 | 3回 | 1回 | 1回 | 15回 | 15.0% | 20.0% | 25.0% |
| 先行馬 | 5回 | 8回 | 3回 | 65回 | 6.2% | 16.0% | 19.8% |
| 差し馬 | 7回 | 6回 | 12回 | 134回 | 4.4% | 8.2% | 15.7% |
| 追い込み馬 | 5回 | 5回 | 4回 | 85回 | 5.1% | 10.1% | 14.1% |
| 枠順 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1枠 | 0回 | 4回 | 2回 | 34回 | 0.0% | 10.0% | 15.0% |
| 2枠 | 2回 | 2回 | 2回 | 34回 | 5.0% | 10.0% | 15.0% |
| 3枠 | 2回 | 2回 | 3回 | 33回 | 5.0% | 10.0% | 17.5% |
| 4枠 | 2回 | 0回 | 1回 | 37回 | 5.0% | 5.0% | 7.5% |
| 5枠 | 2回 | 4回 | 4回 | 30回 | 5.0% | 15.0% | 25.0% |
| 6枠 | 4回 | 0回 | 3回 | 32回 | 10.3% | 10.3% | 17.9% |
| 7枠 | 4回 | 4回 | 2回 | 50回 | 6.7% | 13.3% | 16.7% |
| 8枠 | 4回 | 4回 | 3回 | 49回 | 6.7% | 13.3% | 18.3% |
| 種牡馬 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ディープインパクト | 37回 | 16回 | 14回 | 161回 | 16.2% | 23.2% | 29.4% |
| ロードカナロア | 29回 | 32回 | 21回 | 172回 | 11.4% | 24.0% | 32.3% |
| エピファネイア | 23回 | 18回 | 21回 | 133回 | 11.8% | 21.0% | 31.8% |
| モーリス | 20回 | 19回 | 22回 | 128回 | 10.6% | 20.6% | 32.3% |
| ドゥラメンテ | 18回 | 17回 | 13回 | 102回 | 12.0% | 23.3% | 32.0% |
| キズナ | 14回 | 15回 | 9回 | 84回 | 11.5% | 23.8% | 31.1% |
| ルーラーシップ | 11回 | 11回 | 14回 | 118回 | 7.1% | 14.3% | 23.4% |
| ハービンジャー | 10回 | 15回 | 7回 | 82回 | 8.8% | 21.9% | 28.1% |
| イスラボニータ | 10回 | 11回 | 5回 | 56回 | 12.2% | 25.6% | 31.7% |
| キタサンブラック | 10回 | 6回 | 5回 | 42回 | 15.9% | 25.4% | 33.3% |
NHKマイルカップ2025 - 過去10年のデータ傾向
10年で一度ペースは過去最低水準の勝率であり…
1番人気に応えたのは、もう9年前の勝ち馬であるメジャーエンブレムにまで遡らねばならない。 連対馬は他に、レシステンシアとアスコリピチェーノ。 面白いもので、いずれもルメール騎乗の2歳女王、前走桜花賞敗戦というところまで同じ。 おまけにダイワメジャー産駒という共通項で、何だか、参考になっているようで全くなっていないような気もしないではない。
逆に言えば、それ以外は今のところで、人気でも大丈夫なはずだと、堂々断言できるような指名を控えねばならないわけだから、とんでもない波乱は昔からあったレースだけに、安定のヒモ荒れに傾注するのか、それとも、軸馬に堂々とオープン未連対の大穴候補を仕込むのか、波乱前提で組み上げるのが筋であろう。 人気馬は4番人気以内で2頭は絡む傾向で、こうした1番人気の偏りの著しい傾向に対し、穴馬は1頭を仕込んで、それとのワイド、馬連などを拾っておけば、お釣りがくる可能性が十分ある。
昨年3着のロジリオン<このレースで炸裂してきた大穴にしては手ぬるい部類の伏兵だが…>でも、ここから人気勢にパラパラ流せば、ワイド1000円前後、3連複2500円強だったから、損失の部分補填くらいは期待できたのだが、筆者、皐月賞で狙ったジャンタルマンタルという存在をここでは甘くみて、2頭軸本線で狙い通りだったものが、ガミであった…。 もっと穴に振ってもいいのだが、堅軸から流しても、多少の伏兵なら引っかけられるはずである。
正統な西のトライアルとできるチャーチルダウンズC組は押さえておきたい
昨年は走らなかったが、その前は勝ち馬<いずれもアーリントンCの時>が人気で連続好走。 ただ、またその前であると、勝ち馬よりも2、3着だった伏兵の連続好走が見られ、負けていた馬の勝利は、4月開催に移って以降はない。 そもそも、春の阪神開幕週時代から余裕ローテで使われた馬自体が、ミッキーアイル以外にすぐには見つからないのだから、そのような巻き返しの例はこれまでなかったとできる。
比較的平穏で、かつ、人気上位勢はまともに暮れの朝日杯の結果に比例したような格好で、ほぼ力通りという印象のチャーチルダウンズCの内容を吟味するまでもなく、広げたところで、4着のスリールミニョン<前がごちゃごちゃしてくれれば、キング騎手に続けるかもしれない永島騎手のお手馬>までだから、むしろ、滅多に来ない、3着で権利獲りの1勝馬であるミニトランザットはお楽しみとして取っておいて、連対2頭いずれかの実績の取捨が肝になるわけだが、実力そのものでは、アルテヴェローチェの方が東京の実績など含めても上であり、弱いわけではないが、何となく、世代に数頭現れる相手なりに堅実に走るタイプのように見えるランスオブカオスは、その器用さでどこまでやれるか…、という筋読みで大方間違いなさそうな気がする。 軸に加えるなら、断然朝日杯1番人気のアルテの方であろう。
前走が皐月賞でも、そこで大敗では何も期待できない傾向
皐月賞5着以内に関しては、5着のクラリティスカイ、4着のアドマイヤマーズ、3着のジャンタルマンタルと、すでに、朝日杯で結果を出しているトップグループによる、ごくごく当たり前の展開での戴冠が見られたが、前述の人気の組とは別枠で、いずれもが僅差でも何でも、1番人気ではなかった。 だから、あっさり勝てたのかもしれない。
加えて、その他で馬券になったのは、高速消耗戦で強風の中行われた皐月賞が8着、これは少し早仕掛けだったことを修正した直線一気でメジャーエンブレムの2着に入ったロードクエストだけ。 これも旧ホープフルSでは断然支持を集めたような馬。 今のホープフルSで2番人気だったマジックサンズは、皐月賞で信じられない程の低評価<単勝200倍の16番人気は忌避のされ方がいささか過剰な部類だった>でも、中身のある外追撃での6着であり、札幌の結果を踏まえても、ここで適性以外の要素で嫌うレベルではないだろう。 今度は鞍上があのお方なので、3番人気ぐらいだろうが、モレイラかそれ以外であるかの勝負に没頭しすぎると、品位を落とすというくらいの常識を、多くのファンは弁えるべきであろう。
買いたいのはあくまでも本流の人気馬
シャンパンカラーとケイアイノーテックが、とんでもないところから差してきたので、明らかに穴馬枠という印象であるものの、あくまでも本流・正統派向きのローテーションには変わりがないから、この中山での開催ということしか知らないファンも多くなったニュージーランドTの組は、人気になっていた馬への継続投資が、一定以上の回収率を期待する最善策であろう。
何しろ、シャンパンタワーは7→9番人気という異例の形であったものの、これに続いた連続2着のウンブライル共々、重賞を走った前々走ではもっと人気だった組。 マテンロウオリオンや勝ち切ったケイアイノーテックは、左回り実績の差で本番の支持は変わったものの、いずれもトライアルの1番人気馬。
そこそこの人気馬であれば、移動制限が極めて厳格に行われた2020年のみ京都で連日騎乗せねばならなかった超例外を除いて、まず掲示板には確実に持ってくる川田騎手が、2歳王者に乗るというのであれば、ここ2度ともしっかりと中身ある競馬を実践し、残り1枠しか好走例のない、1番人気馬であるグレナディアガーズ<ファルコンS2着を挟んで参戦>の距離適性を考えた時、この馬の完成度なども踏まえても、アドマイヤズームの方が気性面の課題は多いにしても、総合的な実力と相手関係からみて、今年もジャンタルマンタル級の走りを期待できそうなのだが…。
自他共に認めるところである、競馬へ真摯に向き合い過ぎて、ぶっきらぼうな九州男児そのものになってしまう川田騎手には、あまりにも厳しい事後の世界を生きる道が始まったばかりで、不安が多いのも確かかなのだが…。
NHKマイルカップ2025- 出走予定馬の血統/成績/タイム
ユウガよ、まあいいから、今年も勝っておけよと、エールを送りたい一戦
アドマイヤズームの血統
この馬の3代母にあたるプレイヤーホイールは、皐月賞馬・ジェニュインの母であるクルーピアレディ従妹なので、同族として差し支えない。 この繁殖牝馬がアルマームードの3×4を抱えた母と、日本でもお馴染みであるタミーズターンを牝祖に持つナスルーラのクロスを抱えるコンキスタドールシエロとの間に生まれたことで、ノーザンダンサーいらずでヘイローのクロスをつけやすい配合となったことで、アドマイヤズームの母であるダイワズーム<スイートピーS勝ち>はヘイローのクロスを有する。
これにモーリスを配せば、サンデーもクロスし、リファールも薄くかかるので、モーリス的気性的課題が増幅されることは、予測可能なレベルで、成長待ちでは解決の難しい本質的なパワフルモンスター化の危険性を孕むのも、恐らくは織り込み済みだったはず。 その割に、戦績はあまりヘンテコになっていないのは、厩舎の実績と鞍上のモーリスに対する理解があってのことであろう。
元々、メジロ牧場が導入したデヴォーニア系にスーパーステイヤー型の強烈に重厚な欧州型ノーザンダンサーの血を重複させた芝配合のモーリスであるから、ダート指向の前向きさとは一線を画すものの、やっていることが、ほとんどダートの一線級の先行型のような振る舞いにどうしてもなってしまうから、絶対的な時計勝負への本質的な苦手意識と合わせ、本来は東京の高速マイルなど合わないのだが、安田記念で連続好走のモーリスは、アルナシームやジャックドールなど、中距離の快速決着にツボを持っているから、血統は奥が深い。
気性だけでマイラーになったようなところのあるモーリスは、母系の配合イメージだけでスプリンターズSを制したピクシーナイトも出しているから、サンデーにヘイロークロスまで足されたリファールもセットのワンプレートものにより、前向きさを抑えすぎても速い決着には対応できないが、行かすと止まらない課題もあって…。 速い馬とは言い難い配合でも、勝手に前向きになる配合の組み合わせにより、現状、マイル路線を進むこととした陣営と騎手の判断を、この界隈の人間として、ここは強く支持したい。 フランケルのように、モーリスもそうだが、時が経てば、距離をこなす可能性は大いにある。
いつの時代にも、恵まれた環境で走り切り、天寿を全うしていく名馬は比較的多くいたわけだが、そうとは限らないことの方が、実際は圧倒的に多い。 2歳時までは体質面を考慮された仕上げが、結果に反映されずに、最初から強烈だったコントレイルやイクイノックスなどは、ついに、大きく崩れることもなく、出走態勢さえある程度整えてあげれば、文句があったとしても、圧倒的なポテンシャルで他を抑えてしまうことの方が多かった。
アーモンドアイも厳しい戦いを何度も強いられ、オークスの後は熱中症を発症し、ぶっ倒れそうになりながらも、翌春、完全に前哨戦仕上げのドバイターフを完勝してしまった。 そうしたストーリーの陰で、悪い結果に終わったことも数知れず。 リバティアイランドと同じように繋靱帯炎を発症後、皐月賞からのぶっつけでクラシック二冠を達成したサクラスターオーが、ファン投票に応じるように有馬記念・1987年に挑み、大きな損失に繋がる故障による安楽死ということの顛末を、この時代に再び見ることになるとは、さすがに思わなかった。
時代は進み、故障後に行われる適切な治療やリハビリ、再度の進化に繋がるトレーニングなどのハード面の充実を背景とした高度なバックアップ支援は可能となったものの、そもそもの馬のセッティングに過重とすべき負荷をかけ続けられるサラブレッドを、故障から解放する絶対的な手法など、確立できるはずもない。 無理な体のフォルムをトレーニングで形作るから、走りやすくするための改良を経て、脚が異様に細くなった競走馬は、フラミンゴのような脚で使役の農耕馬のようなボリュームは大げさとしても、結果として、それと同等程度の負荷がかかる中で、一生懸命走っている。
リバティアイランドに洋芝は合わなかったのかもしれないが、それでも、挑戦ということ以前に、戦い続けなければならないことが決まったあのジャパンCを経て、では、国内で同じようなことが起きなかったかと言われれば、それもまた完全否定できないという現実があるということだけ、はっきりとわかっているというのが真実。
哀しみに打ちひしがれて、やりきれない思いを抱えながら、戦いの場に戻ってくる川田騎手にとって、G1で勝ち負けに持ち込まなければならない最初の戦いが、このNHKマイルCとなりそうだ。 今のところ、かしわ記念での有力馬への騎乗や参戦そのものが予定されていない。
何とも乗り応えのある2歳王者・アドマイヤズームの真価が問われる一戦。 決してビッグマウスではなく、極めて精緻な分析を行うことに長けた川田騎手のスタンスからして、G1を独走勝利してもなお、ブレーキが壊れたトラック状態の止まない疾駆に、気性面の課題を勝利騎手インタビューでそれとなく陣営に念押ししたような姿は、極めてドライな対応にも映り、同じ友道厩舎のショウヘイがへこたれて敗れたきさらぎ賞後の受け答えも辛辣とも捉えられかねない、直接的な批評が物議を醸したものだが、ある意味、その通りである以上、名門の厩舎であるならば、善処することを期待した、思いやりの裏返しのようにも思うのだが、まともに苦言と呈されたと思うトレーナーもいるだろう。
でも、馬優先を実践する男のこと。 今後も、力のある者にはある程度の厳しさを伝える義務感を全うするかのような物言いを繰り返すはずだ。
一方で、新馬戦のスパートというか、動き出しが早い展開になった、レース序盤に後方でどうも接触事象が発生して、回避する善後策が、展開的にぴったりでも、アドマイヤズームのリズムを著しく崩したことによるダメージを念頭に、2戦目も同じ京都内回りの1600戦を使い、見事に理想の好位抜け出しでポテンシャルの高さを、今度は結果で示した未勝利戦<ここは2番人気、デビュー戦は僅差ながら1番人気>は、実は、次走の独走Vだった京都外回りで34年ぶりに行われた2歳G1<今は朝日杯フューチュリティS、前回は阪神3歳S・この名称で行われた最終年>よりも、自身の叩き出した走破タイム=勝ち時計は0.2秒だけ速かった。
それもそのはず。 新馬戦より1秒近く遅い1000M通過は、内回りと外回りの差を踏まえても、オープン戦としては異例だったのだが、未勝利戦では、半マイル46.4秒、5Fでも58.8秒だから、朝日杯では少し物足りないとしても、未勝利戦では速い方。 これが何となく、これまでのベストパフォーマンスと考えた時、朝日杯で後の皐月賞レコード勝ちのミュージアルマイルを置いてけぼりにした実績が、では、前走の中山・ニュージーランドTとの比較でどうなるのかと考え直したのだが、これがまた、進化したと言える内容だったので、この2歳王者はそこが知れないと思った。
中山らしく、伏兵が飛ばしていくところを、外からのオーソドックスな追走を選択し、強気のスパートでレース全体を動かし、トライアルから勝ちに出たのはよかったアドマイヤズームは、2走前の中山で、スプリングSでの好走が期待されていたデンクマールに激しい逃げ込みを許していたイミグラントソングの上がり33.1秒という豪脚に屈してしまう。 展開上は、こういうことも想定内だったが、アドマイヤズーム自身は弾けた朝日杯よりもコンマ3秒ほど上がりは遅くなったものの、自身のベストタイムに大差をつけるような1:32.4で粘り込んだのである。
これで理解できたことが、多少の上がり勝負であれば、総合力で押し切れるということと、ハードな前傾のラップに、いくらでも対応できそうな下地があるという2点。 とりわけ、前者の見解を推し材料とした時、時に、安田記念よりも速いタイムで決着するNHKマイルCの激烈な高速ラップに平然と耐え抜く持続力を体現した圧勝劇を、朝日杯とは別の展開ながら、そっくり再現することが可能だということにもなる。
強烈な前傾ラップは近年発生しておらず、後のスプリント王者であるピクシーナイトが狙った逃げを打った2021年でも、半マイルは45.3秒である。 わずかに前傾になったこのラップから類推するに、今年のメンバーでアドマイヤズームが逃げたとて、誰も不思議に思わないラインナップからも、期待値以上のものを端から求められる展開は想定しづらく、ある意味で、ホープフルS惨敗により、参戦の見込みのあったマジックサンズなどと共に、世代のマイル王に相応しい競走の主役になることはほぼ間違いない。
朝日杯出走馬は近年ほど強く、10年前のクラリティスカイ<友道厩舎>から数えて、実に6頭が勝利。 おまけに、ここに牝馬の優勝が2度絡むから、G1初出走のシュネルマイスターやシャンパンカラーなど、残念クラシック組への期待感がない限り、狙いは、昨年のジャンタルマンタル<ルメール・アスコリピチェーノに完全勝利>のような、暮れの時点で、ここへの期待感のあったタレントに限る、となってくる。 その手の才能は、勝手に使われるごとに証明されては、レシートは溜まりまくっている状況。 G1を再び勝って、必要分経費を頂戴しておきたいところだ。 もちろん、それは一番高いヤツに限る。
かつて、サイレンススズカの壮絶死から約1週間、なみだ酒に浸った夜もあったと言われる悲しい時間を経て、スペシャルウィークで菊花賞に挑み二冠を狙う直前の新馬戦で、あろうことか、後のダービー馬・アドマイヤベガで新馬戦を1位入線しながら、後に重賞で好走するフロンタルアタックと高橋亮現調教師のコンビを大きく躓かせる進路妨害で、強烈な騎乗停止を食らってしまった。<翌週以降のG1は乗り替わりラッシュだった> 因縁の秋の天皇賞は、その7年前、雨馬場の極悪条件で独走したメジロマックイーンの進路取りを巡る降着処分から続く、嫌な思い出のあるレースだが、つい最近も、天皇賞や菊花賞を勝っている武豊という人がいる。
NHKマイルカップ2025 - レース展開と最終予想
雨の順延を経て、本調子ではないホクトベガに、ややいらない仕打ちのような強引な仕掛けで転倒事故を引き起こした男は、昨年再びドバイの地を訪れ、相変わらずのスタンスで仕事をしたのち、皐月賞での神懸かった精度で競走能力に影響を及ぼす可能性がある綻びの一端を獣医に伝え、名誉の撤退を決めたすぐあとに、常に敬意を払うべき存在としてきた岡部元騎手のJRA通算勝ち数を超えた後、あのダービーを制した。 息子二人も競馬界に欠かせない役者となったビッグパパは、名を横山典弘とつけられ、未だに好き勝手やりながら、ついに国から表彰を受けている。 ホクトベガの死を自分の命と同価値と思わなかったノリちゃんは、真のレジェンドとなり、競馬界に還元したみせたのである。 あのダノンデサイルという馬は、きっと何か持っているのだろう。 隠れたところで、意外なまでの勝負運に恵まれているのだが、当の本人は何のことかわかっていない。
ルドルフと同じ勝負服で期待のパーソロン産駒であったマティリアルの復活勝利の直後の故障発症は、リバティアイランドの父であるドゥラメンテ最後のレース・宝塚記念のシーンとそっくりだったが、運命を分けたポイントは何だったのだろうか。 シンボリルドルフもサンタアニタのサンルイレイSでの故障敗走で引退が決まった。 大立者・岡部幸雄にも、悲しい思い出は沢山ある。
最近の落馬禍の中で、自分も一回転して、軽く記憶が飛んだことぐらいはあったが、安全な騎乗を身上とし、あの皐月賞と直前の盟友の弟の死を経験し、また、より慎重な判断をすることの増えた川田将雅に、本当の意味で、ホースマンとしての真価が問われる場面が訪れた。 恐らく、かつての横山のような後悔があるはずだ。 それと似た感情は、武にも岡部にも、有名なところでは的場現調教師にもあるだろう。 福永現調教師は自身とは関係ないにしても、放牧中の急死でラインクラフトを失ったことがある。
小さなレースも大きなレースもないが、ライフワークホースを突如として失ったのち、また今度は違う幸せに出会う機会も訪れるもの。 速い三冠馬の奔り・ディープインパクト、関東2騎手に関わるタイキシャトル、エルコンドルパサーとグラスワンダーの同時存在に、最後の三冠馬になって不思議もないコントレイル…。 他人が心配するまでもなく、その喪失感は今までにないレベルだろうが、多くの人に支えられる中、不思議な出会いがまたあったりもする。 たまには心を乱して、酒浸りになってもいいではないか。
まず泥酔しないと言われる武豊が、ぐちゃぐちゃになったのに、二番底があったというのは、もはや、今では滑稽話であるが、だからこそ、サイレンススズカへの想いは今でも尽きない。 ある意味、この仕事を続けることで、またリバティアイランドへの想いを馳せることによって、何か責め立てられているかような感じで、贖罪の意識を強く持ち続ける自身を、少しずつながら、内面から解放されていく気がする。 その助力をアドマイヤズームにしてもらえた時、きっと、笑顔を見せてくれるのであろう。 そういう日々の始まりに、意外なほど、暖かい言葉が寄せられることに、我々の不安は杞憂に終わったのだから、そのリスタートは難しいものではなくなったのかもしれない。 少なくとも、ホクトベガの時とは違う。


