桜花賞の予想 過去10年間のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

桜花賞の予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第83回桜花賞 (G1)
グレード重賞(G1)
日程2023年4月9日(日)
発走時間15:40
開催場所阪神競馬場
距離芝1600m
コース右回り
賞金1億4千万円
レコードタイム1:31.1

2023年桜花賞予想 - 予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

桜花賞2023の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11ブトンドール池添謙一牝355.0219.517栗東・CW・良(池添)
6F 83.0-67.5-52.5-37.1-11.5(強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.4-37.9-24.1-11.8(強め)
12ライトクオンタム武 豊牝355.04.12栗東・CW・良(武豊)
6F 84.7-68.6-53.3-37.8-12.0(G前仕掛け)
栗東・CW・良(調教師)
4F 57.1-40.9-12.3(馬なり)
23リバティアイランド川田 将雅牝355.01.51栗東・CW・良(助手)
6F 84.6-68.9-53.6-37.8-11.7(馬なり)
栗東・CW・良(川田)
6F 84.8-69.1-53.9-38.2-11.2(馬なり)
24ドゥアイズ吉田 隼人牝355.015.44栗東・CW・良(吉田隼)
7F 97.7-66.5-51.5-36.8-11.6(一杯)
栗東・CW・良(吉田隼)
7F 99.8-67.4-52.6-37.5-11.6(稍一杯)
35ハーパーC.ルメール牝355.013.93栗東・CW・良(ルメール)
6F 83.4-67.9-52.4-36.5-11.0(強め)
栗東・CW・良(助手)
7F 99.4-68.0-53.2-37.6-11.3(馬なり)
36モズメイメイ和田 竜二牝355.044.510栗東・坂路・良(和田竜)
800m 52.0-37.9-24.6-12.3(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.6-38.0-24.7-12.3(馬なり)
47コンクシェル丸山 元気牝355.0123.715栗東・CW・良(見習)
7F 97.8-66.6-52.0-37.7-11.9(馬なり)
栗東・CW・良(調教師)
7F 99.2-67.4-53.3-38.5-12.0(直強め)
48キタウイング杉原 誠人 牝355.040.29栗東・坂路・良(杉原)
800m 52.9-38.7-24.6-12.2(馬なり)
栗東・CW・良(杉原)
7F 99.5-68.3-53.7-38.6-11.6(馬なり)
59コナコースト鮫島 克駿牝355.020.75栗東・CW・良(鮫島駿)
7F 97.4-66.4-51.8-37.4-11.9(G前一杯追)
栗東・坂路・良(鮫島駿)
800m 53.2-38.1-24.4-11.9(馬なり)
510エミュー松山 弘平牝355.0113.913美浦・南W・良(助手)
4F 58.7-43.1-14.1(馬なり)
栗東・CW・良(助手)
6F 85.1-69.9-55.4-39.8-12.0(馬なり)
611シンリョクカ吉田 豊牝355.024.47美浦・南W・良(調教師)
5F 67.5-52.0-37.3-11.7(馬なり)
美浦・南W・良(吉田豊)
5F 67.5-52.5-37.7-11.6(馬なり)
612シングザットソング岩田 望来牝355.048.011栗東・坂路・良(助手)
800m 55.8-40.5-26.3-12.8(馬なり)
栗東・坂路・良(岩田望)
800m 53.6-39.3-25.5-12.4(馬なり)
713ドゥーラ戸崎 圭太牝355.054.612栗東・坂路・良(助手)
800m 51.2-37.2-24.1-12.1(末強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.2-39.8-25.4-12.4(馬なり)
714ペリファーニア横山 武史牝355.022.76美浦・南W・良(助手)
6F 84.2-67.7-52.8-38.6-11.6(馬なり)
美浦・南W・良(横山武)
6F 83.7-68.8-52.7-37.5-11.1(直強め)
715ジューンオレンジ富田 暁牝355.0151.816栗東・坂路・良(富田)
800m 53.4-38.6-24.9-12.2(馬なり)
栗東・坂路・良(調教師)
800m 54.6-39.2-24.9-12.1(馬なり)
816ムーンプローブ北村 友一牝355.0270.318栗東・坂路・良(調教師)
800m 52.0-38.4-25.0-12.3(馬なり)
栗東・坂路・良(調教師)
800m 52.2-37.6-24.9-12.7(馬なり)
817ラヴェル坂井 瑠星牝355.024.48栗東・CW・良(坂井瑠)
6F 84.9-68.7-53.5-38.0-11.4(一杯)
栗東・坂路・良(坂井瑠)
800m 54.5-40.0-26.1-12.7(馬なり)
818トーセンローリエ横山 和生牝355.0116.014栗東・坂路・良(助手)
800m 52.9-37.7-24.7-12.7(一杯)
栗東・坂路・良(横山和)
800m 53.0-37.8-24.3-12.0(一杯)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬1回1回1回17回5.0%10.0%15.0%
先行馬8回5回4回58回10.7%17.3%22.7%
差し馬5回9回12回138回3.0%8.5%15.9%
追い込み馬6回5回3回83回6.2%11.3%14.4%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠0回1回3回34回0.0%2.6%10.5%
2枠1回0回3回35回2.6%2.6%10.3%
3枠1回2回1回36回2.5%7.5%10.0%
4枠4回4回0回31回10.3%20.5%20.5%
5枠7回0回5回28回17.5%17.5%30.0%
6枠0回2回3回35回0.0%5.0%12.5%
7枠4回5回4回47回6.7%15.0%21.7%
8枠3回6回1回50回5.0%15.0%16.7%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト43回40回42回258回11.2%21.7%32.6%
ロードカナロア23回22回24回195回8.7%17.0%26.1%
ハーツクライ20回10回18回135回10.9%16.4%26.2%
エピファネイア17回14回13回104回11.5%20.9%29.7%
キングカメハメハ15回11回7回65回15.3%26.5%33.7%
ルーラーシップ14回14回11回123回8.6%17.3%24.1%
ダイワメジャー13回22回12回126回7.5%20.2%27.2%
キズナ11回12回9回102回8.2%17.2%23.9%
ハービンジャー9回9回7回95回7.5%15.0%20.8%
モーリス9回8回11回70回9.2%17.3%28.6%

2023年桜花賞予想 - 過去10年のデータ傾向

基本的には、1番人気を嫌っていいレース

ここ10年とっただけでも、誰もが負けると思っていなかったハープスターであり、筆者は逆張りして大失敗であったが、同じ敗者の視点からすると、(笑) 1勝しかしていない1番人気を、他の年にはいっぱい買って、これもしくじっているからこん畜生である。
5度に亘って、罠に引っかかった。

この前の10年では、現コースだと6回中2勝で、いずれも二冠以上。旧コースでは無敗戴冠のダンスインザムードだけ。
そのまた前の10年だと、ベガ、キョウエイマーチ、テイエムオーシャンといった派手めのスターフィリーが続々登場も、それでも3勝だけ。
皐月賞もそうだが、結局、やってみないことには始まらないのがクラシックレース・3歳戦線であるから、難しい時期の牝馬限定重賞だと思い返すや否や、妙に、腑に落ちる面でもある。

アーモンドアイよりもラッキーライラック、デアリングタクトよりレシステンシアという物言いは、あくまでも結果論。
強いインパクトを残している王道路線組に、しっかりくさびを打ち込めそうな馬がいるかどうか、そもそもが混戦なのか。
そのいずれでもない不動の支持を覆す根拠を探すことも難しく、同時に、好勝負を担保する高い期待値ともならない。
意外にも、穴党のために存在するのがクラシック第一冠なのだと思い至ると、その発想は無限に自由でいいとなってくる。

ジュベナイルフィリーズ参戦の王道組は勝ち切っているわけではないが、絶対消してもいけない

振るわなかった過去があるとも断じられない一方、人気の割に、突き抜けられないという傾向は、単純に、ジュベナイルフィリーズのレベルが桜花賞級になっている年が多いから、その反動なども踏まえて考えたらいい。

今年の組み合わせでは、新馬戦そのままのリバティアイランドが、まさに自由を謳歌する花舞台としそうな雰囲気にあるから、本来の勝ち馬を疑えモードから、謎の2着馬が除外?という展開もあり得る、本賞金高額世代=いつも好走馬が違う、のギリギリ足りている余力たっぷりの組と、本流2着以下組の審査基準に、この傾向を当てはめるのが適当だろう。

その道中、リバティアイランドはやはり怪しいとなれば、乗り換えればいい。
1番人気も2歳女王も簡単には勝てないのが、この桜花賞である。
ただし、その他が横一線なので…、ということを如実に証明しているのが、1600万円でも除外対象になる理由。
クラシック登録をしているから、ぜひ出てみたいという陣営が最も多いのがこの桜花賞だから、2勝馬の抽選というレベルでない以上、こういう年ほど、激しいジュベナイルフィリーズの経験を買うのもありだろう。
筆者はそちらを重視した。

本流でも買い被りが危険なチューリップ、冒険してもリスキーなフィリーズレビュー

いつもハイペースのフィリーズレビュー組の場合、この先にオークス、秋華賞を展望しないグループも多い。
一方、ずっと中距離以上を舞台に走りたいと目論む、ゴーゴー!クラシックディスタンス組が幅を利かせるのが、本来のチューリップ賞。
しかしながら、ジュベナイルフィリーズのあとに何も使わないグループでも、当たり前のように馬券になる時代になったから、ギリギリの状態で勝ち負けをしてきた、死ぬ気で出走権獲りをしてきたような、昨年で言えば、細い体を全く増やせずに本番突入のナミュールみたいなケースは、昔より明らかに、ノー感じで振るわないという気配である。

桜花賞が休み明けでいい・勝ち負けにまで持ち込めるのだから、楽をしないと苦しいという本質は、ジュベナイルフィリーズから連続好走のチューリップ組が、今も昔も不発多めの傾向にあることから、時代を問わず、いささか繊細な牝馬をブルドーザーのごときモンスター級の存在と思った過大評価こそが大敵なのである。

トライアルで権利獲得の馬は、明らかに賞金不足の馬に限れば、チューリップ賞組のシゲルピンクダイヤの連続2着があるくらいで、アルテミス2着にチューリップ賞3着で重しをのっけた10年前のアユサンくらいしか、亜流という感じの勝ち馬の登場はない。
アユサンとて、ジュベナイルフィリーズでは4番人気。
一時期よりは、クイーンC組がベストローテと言われながら、不発の時代も長く続いたものの、少しトレンドが変わったところで登場したスターズオンアースの戴冠で、本格的に、トライアル組の厳しい淘汰の時代がスタートする年になる気もする。

妙味よりも実益というエリートタイプは、出来れば人気のある方から狙いたい

重賞勝ち馬といっても、2歳女王からほぼ確実に人気薄になっている1200重賞勝ち馬までいるが、そこに、1敗のみというフィルターを組み込むと、アーモンドアイやグランアレグリアが見事に引っかかる。
前者は新馬戦、後者は前走の朝日杯で黒星がついたが、以降の活躍をいちいち書き加える必要はないだろう。
歴史的なスターホースである。

無敗の出走馬も少なくなく、近年では珍しくなった無敗戴冠も連続したこともあったが、あくまでもレアケース。
そうなると、ちょうどよさげな2016年に衝撃の不発をみせたメジャーエンブレムの扱いが気になる。
半分は馬券になっていないのだから、それを踏まえれば当然だが、チューリップ賞からの不発が多いのと同じように、自身がNHKマイルCを勝った時より結果的に、0.3秒速いタイムをクイーンCで叩き出したことは、冷静に吟味する必要があるという、いい判断基準となっている。

クイーンCは時計勝負にある年もあれば、強烈な瞬発力勝負になる年もままある。
シンザン記念は時計が遅い年が圧倒的に多く、アーモンドアイは道悪なのに、どこかで脚をやったかと思わせたところから、意味不明な弾丸ライナーでゴール前飛び込んで、突き抜けた。
フェアリーSは改善傾向でも、今年のような難しい決着が大半。
昨年も負けていた、それも自滅だったスターズオンアースによる世代間闘争の平定であった。

で、スターズオンアースは勝ち切っていないから7番人気なのであって…、と常識的な思考に立ち返れば、人気ならば、1、2敗は問題なしとなってくる。
ナミュールも同じではないかということが内容に、全て3着以内と括ったが、本質ではジュベナイルフィリーズの組は色々、トライアルの内容でご破算となるから、厳密には重要ではないが、他の組は重要だから、そうしたまで。
アーモンドアイ、グランアレグリア…、こんな素晴らしい名牝と同じ仲間であるリバティアイランドを消したいと思うのは、小銭を稼ぎたいファンくらいなものだろう。
無論、休み明けを嫌ってもいいが、その辺りも前述の通りである。雨が怖いだけだ。

2023年桜花賞予想 - 出走予定馬の血統/成績/タイム

春のクラシックを戦い終え、完全連対を通した5頭の血の存在感が、三冠奪取も可能と思わせるかどうかのカギを握る

まあ、ほぼ間違いないというジュベナイルフィリーズの内容。
勝った後のことも重要だが、勝てそうな理由がいくらでも出てくる馬だからこそ、リバティアイランドの血統を掘り下げておこうと考える。

リバティアイランドの血統

彼女の父、父母母、父母父、母母父父、母母母父らについては、リバティアイランドとの共通項を絡めつつ、その素晴らしいキャリアを理解することにより、リバティアイランド自身が特別な可能性を持ち合わせていると即座に気が付くわけだが、血統の解釈とすると、ファミリーに高松宮記念に何度も出てきた名短距離馬・ビコーペガサスとその母、リバティアイランドの4代母にあたる、今や凱旋門賞のステップにも使われる昔のヨークシャーオークスを制したCondessaということだけでも、クラシックの本戦では重要なファクターになるが、母ヤンキーローズもオーストラリアのG1を2勝。

重層的な構造上の良血という位置づけは、父が後述する偉大なドゥラメンテであるから、この血統を活かしきるための繁殖牝馬としては、激しい競馬を殊の外好むタイトルホルダーとその母メーヴェとの関係にも似て、邪魔が少ない構造という点で、もうこの時点のキャリアのみでも、すでに繫殖牝馬・リバティアイランドの価値もかなりのレベルにある。
そもそもの出が、サイモンズシューズから展開されるラフショッド中心とした、芯を食ったような核心部分を刺激する、ヌレイエフとサドラーズウェルズ、その両方の血を持つエルコンドルパサーなどが出ている一族であり、こちらはそのライン上にはないが、ファミリーの中では成功している強みがある。
早世のドゥラメンテから、3年続けてクラシックウイナーが誕生することは、ほぼ確実であろうとは思うが、勝たねばならないと思う必要もないほどに、この血統は世界に誇れるレベルにあることはもう証明されているのだと、まず以って記しておきたい。

ドゥラメンテ/父

主な勝ち鞍は2015年・皐月賞、東京優駿。
(ダービー終了時点で、【4・2・0・0】)

キングカメハメハを父に持つ馬には、牝馬三冠のアパパネに世界のロードカナロア、ホッコータルマエもいれば、当然ダービー馬のレイデオロも血統馬なのだから、最低限、彼との比較は可能なはずだが、圧巻の二冠の内容は、他の産駒とは一線を画す。
キングカメハメハ・父はNHKマイルCとの変則二冠であったが、正規の国内基準の二冠というドゥラメンテは、逝くのが惜しいにしても、それが早すぎた。
血統馬の持つ宿命は、その血の濃さとされるが、そうした背景がありながら、この結果。
もう少しは取っつきやすい、アーモンドアイを生み出すためにこの世に誕生したような短距離王・ロードカナロアにはサンデーサイレンスが入っていない。

キレもその持続力も凄まじかったドゥラメンテは誰にも似ていなかったが、誰でも良血と理解できるキングカメハメハ×アドマイヤグルーヴという配合のいいところだけを引き出されたからこそ、枯れるタイミングも永遠の別れも早かったのだろう。
神はその誕生は喜んだが、同時に、危険な果実であると理解した上で、期間限定の大活躍を許したのかもしれない。
やはり、彼は特別な存在である。

エアグルーヴ/父母母

主な勝ち鞍は1996年・優駿牝馬/ 1997年・天皇賞(秋)、同年の年度代表馬に選出。
(オークス終了の時点で、【4・2・0・0】)

エアグルーヴは、2歳時は4戦している。
孫のドゥラメンテは新馬と未勝利戦だけ。
しかし、面白いほどシンクロするように、世代の頂点を極めた、同期同性を制した瞬間までの経過は、全く同じ、2→1→1→2→1→1着。
締める場所、オークス、ダービーを制するその直前のレースの圧倒的な内容が、そこに至るまでの4戦とはまるで違って、強さだけが際立っていたところまでそっくりだから、エアグルーヴはこの存在を、天国でさぞ喜んでいたはずだが、一緒に過ごし始めるタイミングがいかにも早すぎたきらいはある。
両者とも、無念であったことだろう。

偉大なる祖母・エアグルーヴについて、今更、大いなるフォローの言葉など何一つ必要がないほど、サラブレッドとしては完全体であった。
通算成績は19戦9勝。
サンデーサイレンスをつければ、初仔からエリザベス女王杯連覇のアドマイヤグルーヴ、キングカメハメハ初期の活躍馬にやらかしのボンボン・ルーラーシップがおり、この次の世代にもクラシックホースがいるのだから、当然の説明不要の文言が枕としてついてくる。

敢えて、その才能を考察するならば、自身にはオークス馬のダイナカールのらしさを、凱旋門賞馬トニービンの成長力を少し加味したくらいで、センスを受け継いだが、母となってからは、トニービンのパワーを全面で伝えた。
完成期の破壊力に溢れるパワフルな走りとそこの至るまでの拙さまでも…。
唯一、孫のドゥラメンテだけは、自分自身の魅力をダイレクトに伝え、絡む大種牡馬のキングカメハメハとサンデーサイレンスの迫力も完ぺきなまでにコミットさせ、突き抜けるための後押しをした。
何か、ドゥラメンテらしさを体現するリバティアイランドは、このひいおばあさんが勝ちそびれた旧3歳牝馬Sと出られなかった桜花賞制覇に、並々ならぬ執念を持っているのではと、今になって、その容姿も魅力的だったエアグルーヴのことを振り返ると、原点がここにあるような気がしてならないのである。

サンデーサイレンス/父母父

主な勝ち鞍は1989年・ケンタッキーダービー、プリークネスS/ 同年・ブリーダーズCクラシック<ガルフストリームパーク>、その他クラシック前後でG1を3勝
〔ベルモントS2着の時点で、【6・3・0・0】、生涯成績でも【9・5・0・0】なのだから圧巻〕

その戦績もさることながら、獲るべきところは全て獲ったというところでは、孝行息子が例によって、自身が力尽きてから登場の三冠プラス4G1制覇のディープインパクトに、全てが伝えられた。
だからこそ、クラシック本流でこそ強いことを、その直仔の牡馬であったコントレイルだけが、芯の部分だけしっかりと受け継ぐこともできたのだろう。
各々の闘争心にばらつきはあっても、決めるべきダービーの勝ちっぷりは、3頭とも、競馬史に残る内容。
恐らく、彼らは本気でダービーを走らずとも独走という、本物のクラシック制覇者だったのだ。

ただ、サンデーにはイージーゴアーというゴツいタイプのライバルがいて、ベルモントSなどは、彼に8馬身もの差をつけられ、大いに惨敗。
この馬も、サンデーサイレンスあっての良血。
奇しくも、イージーゴアーと同じラトロワンヌ系にコントレイルが属している。
本物を実は多く残さないのが、真の名種牡馬だとすれば、この偉大なる米二冠馬の影響<キレ味や激しい気性>を大きく受けるドゥラメンテから、今年こその三冠牝馬誕生は、桜花賞というよりもオークスの内容にかかっているのだろう。
苦戦はいけないが、余力を残したいと、ベルモントSのガス欠から大いに学びたい、そんな教訓をサンデーサイレンスは授けてくれている。

Zafonic/母母父父

主な勝ち鞍は1993年・2000ギニー/ 2歳時は仏、英でG1を3勝
〔2000ギニー終了の時点で、【5・1・0・0】〕

凱旋門賞と言えば、となれば真っ先に名の挙がる伯楽・アンドレ・ファーブルが手掛けた才能の一頭。
同期には同じく北米産ながら、究極のマイラーとして世界を股にかけたミエスクの直仔・キングマンボがおり、厩舎こそ違えど、後にBCマイルを制するアイルランド産のバラシアまでいたのだから、あまりに豪華。
ニューマーケットではそのバラシアを抑え、快レコードで勝ち切っているから、その後はうまく軌道に乗せられなかったとはいえ、競走馬としての理想の一つや二つは叶えたことになる。
無敗でギニーウイナーになれなかったのは、その後、自国の2000ギニーを制するキングマンボに敗れたからである。

父はミスタープロスペクター直仔で、今や芝でも多くの快速型を出すゴーンウェストであり、北米で渋とく力を蓄えてきた組が強い面もあるが、ザフォニックは直仔にザールがいるからこそ、リバティアイランドも登場してくるわけだから、この芝マイラーの血脈を侮ってはいけない。
大事なところを落とさなかったザフォニックは、ザカリヤという昔のニュージーランドTを制した外国産馬を送り込んでいるから、セクレタリアトのパワー全開とならない代にまで移ったこのラインは、栄光の三冠馬の血を活かしつつ、エースを作る期間をずっと窺っていた雰囲気さえある。
ドゥラメンテ×ヤンキーローズに発生するクロスの内、最も価値があるのは、ミスタープロスペクターのクロス。
コアなラインを支えているわけではないが、確実に高性能のスピードを伝えている。

El Gran Senor/母母母父

主な勝ち鞍は1984年・2000ギニー、アイリッシュダービー
〔愛ダービー終了=生涯成績は、【7・1・0・0】〕

日本では牡馬で初めて、無敗でのクラシック競走三冠・3勝を達成するシンボリルドルフが登場。
1943年に牝馬としてというより、日本競馬界で唯一の変則三冠を達成した伝説の無敗馬・クリフジの名が、頻繁に引き合いに出されたのは、戦後でも、この季節を置いて他にはないだろう。

ルドルフが二冠を達成したのは、今と開催週が同じなので、5月の末だった。
それから約10日後、エプソムダウンズの罠にハマったのが、無敗の二冠にわずかに及ばなかったエルグランセニョール。
2000ギニーでは、直後のセントジェームズパレスSからG1を3連勝するチーフシンガーを、その前哨戦では、後にアイルランドの2000ギニーを制するなど中距離でも活躍したあのサドラーズウェルズ。その種牡馬成績など、今更振り返る必要もないビッグネームだ。

改めてダービーのことを振り返ると、こちらはアイリッシュ2000ギニーで唯一の黒星を喫したセクレトの激走に屈した結果。
ダービー勝ち直しの1か月後のカラでは、後の凱旋門賞馬レインボウクエストを抑えこんでおり、ここの3着馬が、シンボリルドルフの北米挑戦・凱旋門賞展望を一撃で木っ端みじんにしたサンルイレイSウイナーでもあるダハール。

縁あって繋がる名馬の同期物語は、セクレトの日本輸入、レインボウクエストの幻を追いかけた名馬・サクラローレルの物語に引き続き、この同族に世紀の快速三冠馬にして、古馬タイトル6勝のアーモンドアイがいることでも、この存在は偉大である。
尚、エルグランセニョールの母母、アーモンドアイの4代母であるベストインショーというグレートマザーが、リバティアイランドの母母コンデサールの代で3×4とクロス。
母母父に登場するザールは、歳の離れた従弟という近親交配が施されている。

アーモンドアイとは、キングカメハメハとサンデーサイレンスの超ビッグネームだけでなく、名血セックスアピールがアーモンドアイの3代母であり、それが5代内に1つ、計3つ血統内に含まれるのがリバティアイランド。
考えようによっては、大局的に見てかなり方向性が近い、ドゥラメンテとアーモンドアイの示した競走能力から類推するに、アーモンドアイの代で5×3とクロスする大種牡馬・ヌレイエフと、ザックリ言うと同じファミリーに入るリバティアイランドは、両者のいいところを合わせ持っているとできる。
前でも後ろでも関係なく、自分の走りに徹するのみ。
常に相手は関係なかった両者と同じように、このリバティアイランドも同じような道を辿っていく可能性を、両者が不発に終わった新馬戦で見せつけた時点で、このクラシック戦線は終わっていた…、のかもしれないと、予言的にわざと大げさな表現をしておきたい。
少なくとも、ここの至るまでにリバティアイランドのキャリア形成には、在るべき姿を示したにすぎたいという必然性しかないのかもしれない。