エリザベス女王杯2023【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着ブレイディヴェーグ(2.4倍)2着ルージュエヴァイユ(13.3倍)ハーパー(6.7倍)

レース名第48回エリザベス女王杯
日程2023年11月12日
優勝馬ブレイディヴェーグ
優勝騎手C.ルメール
勝ちタイム2:12.6
馬場
3連単配当9,780円

エリザベス女王杯2023 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
11ブレイディヴェーグ2:12.6-
22ルージュエヴァイユ2:12.73/4
33ハーパー2:12.8クビ
411ライラック2:12.91/2
57ジェラルディーナ2:12.9クビ
単勝1240円
複勝1130円
複勝2290円
複勝3180円
枠連1-2570円
ワイド1-2630円
ワイド1-3380円
ワイド2-31,160円
馬連1-21,580円
馬単1-22,210円
3連複1-2-32,910円
3連単1-2-39,780円

エリザベス女王杯2023 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「古馬相手に3歳としてGⅠホースになってすごいですね。馬場が少し緩かったので心配しましたけど、しようがないね。1枠だったし、ずっとインコースで競馬しました。全然問題なくて、手応えはずっと良かったです。直線ではいい反応をしてくれました。それは関係者の判断でした。今日勝ちましたのでいい案でしたね。まだ伸びシロはあると思いますし、GⅠレベルでまたいいレースができると思います。絶好調です。オオキニ!」

※優勝したC.ルメール騎手のコメント(ブレイディヴェーグ)

エリザベス女王杯2023 - レース結果動画(YouTube)

エリザベス女王杯2023 - 回顧

母インナーアージも準オープンまで制した4勝馬で、十分に活躍したのだから、それだけでもアシスト効果はある。

しかし、母の2つ下の妹には、オークス・秋華賞の二冠に、ヴィクトリアマイルでもエリザベス女王杯でも好走したミッキークイーンがいる。

真ん中の枠のジェンティルドンナ、ヴィルシーナの二代にわたるライバル対決に期待を集めた一面があったというのは事実でも、皮肉なことに、ロードカナロアとハーツクライ軍団に粉砕という、直系は非ディープ系のコネクションに完封されたのでは、適当な時期というやつではなかったことになる。

わずか5戦目の少女に、確信を得るその可能性のヒントを与えたものをあるとするなら、この配合の場合だと、薄っすらなミスタープロスペクターのクロスか。

同時に、ノーザンダンサー系のクロスは薄く、ヌレイエフがその直仔の代というところでこれも薄めに掛かったクロスという面は、ノーザンダンサーが溢れかえって、いくらか活力の面でも目減りしてしまう部分があったところで、ロードカナロア×ディープインパクトの迫力ある配合の強みを、余すことなく体現できるような下地があったということに、血統的根拠を求めるべきだろう。

どういう理屈をつけたところで、近親交配に違いはないが、そのバランスをしっかりと踏まえた上で、ベスト同士の種牡馬を掛け合わせた配合が、父のパワーというよりも、母父のストライドが大きな走りで他を置き去りにする才能の発揮に適した中型の馬体を手に入れた時点で、勝負はあったのかもしれないと思わせる直線であった。

そう簡単に、それこそ生産者の思惑通りに、ベストに近い配合からエース級は出てこないものだが、アーモンドアイよりもずっと、競走馬向きの配合であり、繁殖牝馬として立ち位置も盤石になる可能性を示した、あまりにも大きなルメールアシストであったように思う。

速い馬が出てくるわけがないエリザベス女王杯において、スローに毎度転じる、恒例の展開に対して、ぶつくさ言ったところで何の意味もない。

だからこそ、そうなりに格のある、可能性のあるメンバーだけが集まったのだから、結果を見れば、全てが現れているとできるくらいで、ルメール御大の恩恵に与るまでもなく、信ずるものは救われるというような結果。

ジェンティルドンナ・ヴィルシーナ物語の延長戦に、少し心を持っていかれたファン以外は、納得の結果であろう。

大きな勲章をいきなり手に入れてみせたブレイディヴェーグは、正しく天才のそれを天下に示す、有り余る才能の持って行き所をついに見つけたという完勝であったと同時に、5戦目で重賞も勝たずに出てきたという、3歳馬の新ルートを開発、成功のモデルを生んだということで、今後の秋華賞との兼ね合いで、面白い試みを衆目が一致する正しい結果で魅せたという点でも、大きな価値を持つ一戦とした。

例によって、逃げる予定ではない馬と何なら行ってもいいという組が先手を奪い、その流れは誰でも読めると、有力勢では川田騎手のハーパーが好位付け。

総マークは承知の上で、理想の好位差しに勝負の一手を、ライバルに先駆けて打ったのだから、負けるのは仕方がない。

ルメールとムーア相手に、キレ味勝負を挑めるようなキャラクターではないと知っている以上、これより上の結果は求めるべくもなく、という3着だった。

上がりの34.8秒は、奇しくもオークスで辛くもドゥーラ抑え込んだ時と同じ記録。

ひとつも、川田将雅にもハーパー自身にも狂いはなかったように思う。

ジェラルディーナは大きく立ち遅れ。

モンスター気配で、ひどい時の母ジェラルディーナのパドック気配が、最も重要な場面で出てしまったから、諦めムードではなかったムーアとて、スタートのゴールドシップ化で、さすがにもうアウトだった。

結果、動いたことも、馬場質が少しばかりタフな、良馬場とは言い難い湿り気を含んだ状態で、2分13秒を切ったスローの展開とて、一度も道中の破綻が許されない、本物のG1の展開。

正しく、その全て裏を行ってしまった前年覇者は、もっと昨年みたいに雨が降ってくれれば…、などと恨み言を語る以外できなかった。

明らかに、陣営の思惑とは違う方向に、彼女の心がいってしまったような寂しさも感じた。

立て直せるような雰囲気までは感じられないから、変に使い込んで終わらせる道を選ぶべきではないだろう。

どのみち、香港での大逆転劇はなくなった。

ルージュエヴァイユやライラック、普段は伏兵評価にも拘らず、今回前者は5番人気、後者は4番人気。

3頭が騎手人気も含め、大きく支持を集める組み合わせで、正当な評価とも言い難い過剰さはあったのに、結果は上々の2、4着。

ヘグったのが馬自身だったジェラルディーナだって、意地で5着を拾っている。

レースの破綻はどこにもなかった。

素晴らしいチャンピオンシップレースである。

つまり、ブレイディヴェーグをここに持ってきた宮田厩舎、その他大きな力を持つ生産者グループとその傘下となるクラブの見事な采配であったことは明らか。

しかし、苦しい初G1参戦の重賞未勝利馬が、スローの内々追走で、しっかりと終いで最速の上がりではなくとも、勝負を決める脚を伸ばすのだから、ルメールを褒めても仕方ないが、ブレイディヴェーグの才能には呆れるほどの驚きがあった。

まるで、4歳時にエアグルーヴのインをついて、末脚勝負で封じたメジロドーベルの末脚のようであり、同じく2歳女王で、同じ4歳の時にこのレースをスミヨン騎手と制したラッキーライラックようにも見えた。

本物になれることを示したかのような先人というか、このレースの勝ち馬の中で、数多くいる連覇の名牝の2頭にあたる、この勝ち方というものが、末恐ろしさを助長する。

血統がいいなどと、いくらでも見えていた底力の部分を、事前にひけらかすことは可能であっても、レースは生き物。

福島で落馬事故が連日重なったように、騎手が乗っていないのでは、先頭ゴールも無効となってしまう。

奇しくも、そのような展開でのレースで、カラ馬の次にゴールした経験のあるルメール騎手は、今回と同じく3歳であったリトルアマポーラをG1馬に導いたのだから、もはや、偶然ではないのかもしれない。

何かがつながる時、ドラマが生まれるが、今のルメール騎手は、いい意味で己の個性を出さない。

面白いのはもう一個。

レースの着順を騎手で並べると、

1着・クリストフ ルメール

2着・松山弘平

3着・川田将雅

勘のいい方なら、牝馬限定G1ということも手伝って、10秒のしないうちに気付くであろう。

ここ最近の、牝馬三冠を決めた歴代の名手3人、それも時系列順に並んだのである。

どうでもいいことだが、それぞれにお手馬がいて、各々、自身手が替わった馬であるとか、その他への騎乗を断って、この結果。

言わずもがな、少なくとも前走で乗っていた馬の中では、3者とも最先着だった。

素晴らしいという以外にも、時計がタフ馬場でスローで、上がり勝負となっている感じではないが、極限に近い牝馬G1特有の末脚比べにはなっていて、厳しい秋華賞を勝ち抜いた経験は、何となく、ここで活かされていたのように思う。

同じ京都で、しかし勝手が違う内回りと外回りながら、秋華賞は直後に控える古馬との争いのトライアルでもあるから、エリザベス女王杯にいずれ繋がるような結果が、そうした能力が問われることが普通。

オークスには出られたが、秋華賞は端から賞金不足で参戦を諦めていたルージュエヴァイユも、突然春からよくなって、今に至る。

同じ時期にブレイディヴェーグは2勝目を挙げていた。

夏をどう越すかも重要だが、騎手のスキルをどう扱うかのさじ加減で、ここまでまともな実績上位で決まるというのは、逆らえない何かを反映する結果なのだろう。

来週もまた、ユウガとクリストフを押さえない手はないのだろう。

ブレイディヴェーグが勝ってくれたことで、ますます、今後の秋競馬が盛り上がりそうな予感がする。