皐月賞2020 予想

暮れのホープフルSとほとんど同じ内枠からの発走。

周りに極端に振れ幅が大きいスタートに難のあるタイプも少ないように思うから、コントレイル自身が酷いスタートを決めない限り、ホープフルSも1角では危ういくらいの格好で掛かりかけても、その後は涼しい顔であったくらいだから、フルゲート初体験の死角はそれほど気にはならないだろう。

馬場も軽い馬場しか経験していないようで、同質の馬場ながら、東スポ杯と新馬戦では時計にして4秒ばかり違うのに、上がりはむしろ、東京の方が速かったような馬。

走らせ方がまるで違うムーア騎手での結果がベストというわけでもなく、一番の楽勝は実は、相手関係が大分レベルアップした中山での好位抜け出しが、最もスムーズ見えたような底知れなさこそ、コントレイルの最大の魅力。

結構な相手だったと思ったが、コントレイル自身は意に介していなかったように思う。

ライバル勢は一気に強化と見る一方で、そのライバルの方が今度は、本物との争いに初めて挑む立場になる。

どの道、経験値という意味で大差のない5戦以内の有力馬による争い。

タフな競馬を何とも思わず、上がりが一気に2秒半以上かかってしまうような競馬でも、全く危なげなかったコントレイルのスケール感は、そうした結果を盾にしただけで、大抵の馬にはとても及ばないレベルにあるように思う。

コントレイルは、BCジュヴェナイルFを制したフォルクローレとそのジュヴェナイルとKダービーの重要前哨戦であるフロリダダービーを制したアンブライドルズソングの組み合わせから産まれたロードクロサイトを母に持つことで、大変な早熟の可能性を示していると巷間囁かれているが、母系そのものは、ラトロワンヌから派生した孫にあたるストライキングの牝系。

それが米三冠のウォーアドミラルの産駒で、以降はトウルビヨン系で日本でもよく見かけるアンビオリクス、エルバジェ、インリアリティと並び、5代血統表の端っこに登場するファピアノが、ミスプロ直仔でアンブライドルドの父として母ロードクロサイトの父系にも現れるから、彼女はその3×4を持つ。

それとストームキャットや二冠馬のインテント系・ティズナウとアンブライドルズソングが組み合わさるのだから、コントレイルという馬は、そもそも、母の配合が豊かなスピードをいつでも繰り出せる持続型の成長曲線を描きそうな血統構成であるから、当然のことながら、距離の壁は一定程度存在するものの、血統の進展度合いにかなりの影響を及ぼすだろうサンデーサイレンスと直仔のディープインパクトをそれに組み込むことで、ハイバランスで前衛的なクラシックウイナーになるべき才能を持ち合わせていると、血統的見地では断言できる。

休んでいて寝ぼけてしまうような馬は、きっと、万能のようで完成までしっかりとキャリアを積み重ねることが望ましいハーツクライ産駒の異端児・サリオスの方だろうし、あまり体形が変化しない方がよろしいコントレイルに対し、同父のダービー候補であるサトノフラッグは、見た目はマカヒキなんかよりもコロンとしているのに、ストライドが最もきれいに映るゴール前抜け出し後のフォームが父似とすると、ここを使った後の方が本物により近づく可能性も父の名を冠した弥生賞で示したようにも感じるわけで、実は、敵が外にいると言える存在は、トラックバイアスや多頭数の競馬にわずかながら危うさを持つコントレイルだけなのではないか。

そう言いながら、完成度の高いの馬はことごとくクラシックの壁に粉砕されてきたという皐月賞の分厚い歴史があるから、発展途上のままでいいと考えてもそれはそれでよい。

ただし、ストームキャットの血を持つ馬がフレンチデピュティやフジキセキの後に続き、ディープインパクトやキングカメハメハとの組み合わせにより、より日本の競馬にフィットした形でハイスペックなパフォーマンスを連続して皐月賞で披露してきた近年の傾向も踏まえねばならない。

またロベルトの時代が戻ってきたり、もっと速いサンデー系の台頭もあり得る端境期にあって、ディープインパクト産駒の傑作同士が杯を酌み交わす舞台には、この一戦が最も相応しいと思えるわけだ。

何が勝ってもいいが、何も残らないのでは面白くない。

壁などないことを、殊、ディープの人気馬には証明してもらいたい。