2023年高松宮記念【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着ファストフォース(32.3倍)2着ナムラクレア(5.4倍)3着トゥラヴェスーラ(42.1倍)

レース名第53回高松宮記念
日程2023年3月26日
優勝馬ファストフォース
優勝騎手団野 大成
勝ちタイム1:11.5
馬場不良
3連単配当668,280円

2023年高松宮記念 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
113ファストフォース1:11.5-
215ナムラクレア1:11.61
31トゥラヴェスーラ1:11.71/2
46ナランフレグ1:11.81/2
516グレナディアガーズ1:12.03/4
単勝133,230円
複勝13660円
複勝15220円
複勝1770円
枠連7-71,690円
ワイド13-152,360円
ワイド1-136,520円
ワイド1-154,290円
馬連13-157,920円
馬単13-1524,330円
3連複1-13-1581,180円
3連単13-15-1668,280円

2023年高松宮記念 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「今週は、週の半ばから雨の予報だったので、どういう馬場になるかなとずっと思っていたのですが、きょうは内が伸びていなかったので、枠もちょうどいいなと思いましたし、馬もしっかり応えてくれて、本当に力強いレースをしてくれたと思います。ただ、最後の直線でアグリをちょっと挟んでしまって、手放しでは喜べないというか、反省の多いレースではありました」

※優勝した団野 大成騎手のコメント(ファストフォース)

2023年高松宮記念 - レース結果動画(YouTube)

2023年高松宮記念 - 回顧

ファストフォースの血統

思えば、これは在来牝系であり、あの春の日のレイパパレ祭りをふと思い出すことにもなった。
彼女の場合は、日本競馬界になくてはならないフロリースカップ直系の末裔であり、こちらは6代母がコランディア。

その直仔で、ファストフォースの5代母に当たるヤヨイカマダの半兄が、クラシック戦線でも活躍し、4歳時に春の天皇賞を制したベルワイド。
ヤヨイカマダは仔出しもよく、繁殖牝馬もたくさん残したこともあるが、代を経て、牝馬重賞を2勝したルイジアナピットの孫が、エリザベス女王杯を3歳時に制したリトルアマポーラ。
ファストフォースはサクラバクシンオーの血を受けているから、この道は最初から決まっていたようで、2歳時に重賞連続2着のある母ラッシュライフからは、ディープ産駒の超大型馬アデイインザライフが、紆余曲折を経て新潟記念を制覇。

重い血統ということはないから、ロードカナロアをつけて素直にスプリンターと出たが、漸くいまさらという感じで、何だか本格化というのは、母父系を作るプリンスリーギフト・テスコボーイ直系のエアジハードから、突然目覚めたように安田記念を制するまでに至ったショウワモダンのような物語でもある。
彼も春の不良馬場・中山記念好走の後、3連勝でマイルの大舞台を勝ち切った。

一応、チャイナロック産駒には重馬場の皐月賞などを制したハイセイコーがいて、ダイアトムであるなら、重馬場の天皇賞を勝ったクシロキング、マルゼンスキーであれば、フェブラリーHと秋の天皇賞の不良馬場で両方連に絡んだことのあるカリブソングがいて、こうした雨馬場で問われる土着性のような才能が、静かに伝えられたということでは、やはり、この手の馬場が得意には思えなかったレイパパレのジャイアントキリングに通ずるものがある。
今も昔も、こうした血統の不思議は、競馬の大事な場面でふと顔を覗かせることがあるから、知っていて損はない。

妙に折り合いの付く馬になったファストフォース…、という印象は、激しい競馬をメイケイエールが作り出した秋のセントウルS粘り込みから、ずっと続いてきていた傾向でもある。
小倉でこその馬という印象を、CBC賞で超ド級のレコードを叩き出した翌年、連続凡走で覆してからの、セントウルSであったから…。
関西ローカルの妙な土着性を秘めるファストフォースに、この多量の雨は、逃げる馬が明らかに普段より少ないという奇妙なスプリントG1の構図をすべて味方につけることのできる、誰も知らなかった自在性を引き出される可能性に、実は富んでいたことになる。

競馬が上手になったというか、逞しくなったような印象は、似たようなキャラの関東馬で、攻めの手がある同父のキルロードの方と思っていたが、知っている人にとっては、この覚醒に似た、ファストフォースの大人化というキーファクターが、メイケイエールの自滅により、見事に顕在化した。
あと一歩のタイトル奪取となったナムラクレア、今年は着順を一つ上げることに成功のトゥラヴェスーラ、当然の連覇狙いだったナランフレグに、不安も残るが、筆者垂涎の秘めるダート適性?を繰り出したかはまだしも、好走をして見せたグレナディアガーズらの懸命のファイトを、見事に凌ぎ切る余裕があったのだろう。
ファストフォースは普段以上に、全力を出し切ったという感じより、強さが際立ったゴール後にも映った。

誰も知らない世界へと誘う雨馬場のしきたりのようなものは、決まって、強い馬に有利に働くとされるが、スピードの絶対能力そのものを問われなくなるこの路線の頂上決戦において、スローで爆死のメイケイエール、出は悪くなかったのに、勝手にリズムが狂っていったトウシンマカオなど、秋以降の重賞を勝ったヴェントヴォーチェなど、いかにも強いとわかっていた面々は、軒並み崩れた。
裏を返すと、夏からずっと一線級であり続けるナムラクレアこそが、この路線の平定に欠かせない役者であるのだろう。
その他が、不完全であったに過ぎない。
この点では、他の人気馬は少し残念。
売れすぎたロータスランドは除き、未知の戦いは馬場だけでなく、斤量設定の厳しさもあったから、前走半分加算のファストフォースと半分減のナムラクレアらが、前走と着順入れ替えただけとすると、もう、参加者そのものが限られていた一戦とも結論付けられる。

ファストフォースをやっかむ声は聞かれないが、雨馬場に恨んでも仕方ないと思いつつ、己の未熟さを知るのもまた、こうした過酷な条件。
一日してならずは、今の大谷翔平選手のようであって、苦しい経験の後に直面する課題など、あの時と比べたら…、若手では珍しい傾向でも、ベテランのアスリートではこうしたこともあるから、トゥラヴェスーラと同じように、ファストフォースの底力を称賛するより、他は何もできないのである。

35.6秒と35.9秒という前後半のラップは、馬場質を考えた時、トータルが1:11.5だから、バランスが取れているようで、33秒台中盤では普通はスローとなる日本のスプリント重賞の構図だから、上がりが掛かるはずなのに、それがそうではなかったとすべき、この修正点は見逃せない。
ただ、消耗が激しいから、マイルまでこなした経験だとか、ハイレベルの時計勝負への対応力に、ファストフォースの場合はダートの経験<未勝利で地方転出後、門別で3勝している>なども加味して、実は、激しいバイアスもある競馬にしては、本質の能力や現時点での中京適性なども問われた、とすることで、トゥラヴェスーラやナランフレグらの好走の説明がつく。

こういう馬場では、どこに何があっても不思議はないから、自滅のメイケイエール、トウシンマカオらは除いて、あとは力通りに高松宮記念での重賞レースらしい底力は、明確に問われたはずである。
後傾ラップはまずでないのがスプリント戦ではあるが、大半の1分12秒以下の走破タイムでしか走れなかった面々に対し、上位4頭は、1000~1400の高速決着のレースでの好走実績はあった順に、しっかりと収まっている。

と、何とか取り繕ってレースの評価を下したが、昨年の破格の人気馬壊滅の展開に倣うなら、今後の走り一つで、評価は変化する、とするに尽きる。
ナランフレグがずっと元気で、これは素晴らしい。
ポストナムラクレア探し、ピクシーナイトの再挑戦など、見どころはまだあるだろうが、やはりこの路線は、世界的に見れば日本競馬の刺客であることに違いはない。
難しいことであるが、ロードカナロア産駒が勝っているのに、好評価の年に限ってこないだとか、ミッキーアイルもここで好走していたのに、人気のある方が来ないだとか、まだまだ、層の薄さは簡単には埋め合わせることは難しそうである。

何はともあれ、ピクシーナイトに対する評価は変えるべきではないだろう。
戸崎騎手をわざわざ、大レースに配してきたのは、勝ちに出ることも考えなければならない立場がある一方で、モーリスの一番いいところを受け継いだこの血を、こうなってくると、絶対に攻勢に繋ぐ必要があるのもまた事実。
団野大成騎手に素晴らしいチャンスを与えたファストフォースに対し、ミスターMVJがしっかりと、少しは走りやすい大外に振った時、結果はともかく、その時点ではドバイから帰国途中であったろう音無調教師に、悪い報告をしないで済むことが第一。
彼の地のデルマソトガケもイケイケだったが、またピクシーナイトがモンスターらしい姿で、大レースに戻ってくる可能性は大いにあるだろう。