天皇賞(春)2018 回顧

序盤がめちゃめちゃなハイペースではなかったこと、みんながそれでいい位置につけられたこと、有力馬が強引に仕掛けなかったこと、何より、序盤からシュヴァルグランとボウマン騎手が素晴らしいポジションをとれたことで、簡単に伏兵が残れるような展開にならず、それも本命馬の出来は絶好調でもなく、また、負け癖がついている馬だっただけに…。

久々に岩田のイン突き、強襲である。

いいものを見た。

しかし、ゴール直後のあのシーンは、実に痛々しい。

何度も見たことのある故障の最悪のパターンではあるが、GⅠで1位入線後にこう言うシーンは珍しい。

レインボーラインよ、よくやった。

それだけしか、今は声をかけてやれない。

淀みない流れで、しかし、一定の溜めはあったとはいえ、トータルの時計が3:16.2。

レインボーラインのレベルは、菊花賞でもあの驚愕の馬場で行われた秋の天皇賞の時でも示した好走の内容で、全てが証明されている。

その上位メンバーをまとめて負かしたことがあるのが、本命の競馬に徹したシュヴァルグラン。

菊花賞で粘った時は厳しすぎる不良の状態だったクリンチャーも、今年になってパンとしたことで、ここでも好勝負。

チェスナットコートが内枠で人気になって、うまく外に出しやすくなりすぎたことで届かずの5着に終わったのもそう。

4歳馬には簡単には乗り越えられない58の壁がある。

よく頑張ったが、上位2頭は厳しい競馬、それもGⅠにおいてその斤量での好走実績があった。

ミッキーロケットが内スルスル。彼だけが、得をしたレースとなった。

みんなが力を出し切れる展開であり、そういう決着タイムだったのだろう。

それでも、勝者はウイナーズサークルに歩を進めることはできなかった。

昨年よりは…、の評価がオッズの割れ方にも見られたように、今年のこのメンバーは、自分で勝ちに出ることができても、基準が上がりすぎた昨年の競馬を比較材料にすると、かなり見劣ってしまう。

同時に、近10年で見ても、道悪の年の次に遅いタイム。

高速型でも対応できるようになった春の天皇賞は、昨年のレースを経て、元通りのスタミナ比べになったとすれば聞こえはいいが、ここ数年の繰り合わせではスタンダードである「ステイゴールド-ハーツクライ-その他」という組み合わせだったから、あのレインボーラインが示した身体の異変に象徴されるように、この舞台が最後の砦となったメンバーによる一戦だったことは、戦前、戦後でも印象の変化はなかった。

ところで、結果は結果として、今年は大変に順当な結末に終わったのだが、その要因は何だったのかと、時計や実績の面以外に、何かあるかと思って考えてみたのだが、毎回来る血統が分かっていて、ある種の順位付けがはっきりしていることと、最終的にGⅠ実績は馬鹿にできないということが判然とした状況で、

「うまく乗ろうし過ぎない騎手」

というファクターが重要な気がした。

岩田騎手は今回もインからの抜け出しを、希望には入れつつ、恐らくは勝負が決まる内回りとの合流点で決断したのだろう。

器用に乗れる騎手のようで、正攻法が身上、マーク対象がはっきりしている時以外は、極端な策は講じない騎手だ。

だから、あれだけ勝てたのだ。

それはボウマン騎手も同じ。卒なく乗ったJCが彼の本質で、有馬は枠でやや気持ちが萎えた感じ、今回は位置を取れたから、味が出た。

三浦騎手はまだこれからの中堅だが、天才型というイメージはなくなりつつある。

時に武豊、横山典弘ら、日本競馬史における傑出した実力者の出番は回ってくるのは、レースの特性上、それは当然。

ただ、変に癖をつけなかったり、勝負の常道を進む騎手には、実は乗りやすい競馬なのかもしれない。

中距離戦ではほぼ無敵状態のクリストフ、ミルコらは、今年も出番なし。

動かしてはいけない場面でも、テクニックでフォローするタイプには、特に外国人騎手でも向かないタイプは多い。

デットーリよりムーア向き、というべきか。

武、横山らは日本の騎手で、ルールがローカルのもので通用するから、意外な動きを見せたりするが、縛りの多い欧州出身者に、日本は自由に乗れるから…、のイメージが、ここでは通用しないことが理解できた気がする。