ヴィクトリアマイル2020 回顧

何も起きないようなところにつけられたアーモンドアイに、どうにも太刀打ちできない競馬をさせられてしまったのだから、牝馬だからという理由は当てはまらない。

出負け気味でもすぐに流れに乗せたから、ノームコアと横山騎手のコンビもそれほど悪い立ち回りではなかったが、途轍もない勢いで破竹の連勝を重ねるサウンドキアラと松山騎手は、どうやってでも前に行かないとお話にならないので、大外枠でもスタートを決めないといけない三重苦くらいを背負わされたのに、レースプラン通りにことを運べたはずだ。

その分で、着順は先にいったサウンドキアラ先着となったが、まあ、レースが壊されても不思議ではない状況で、この外枠を克服した2頭は、アーモンドアイと同格とはさすがに言えないが、絶賛されるべきであろう。

しかし、恐らくは昨年のドバイターフよりは骨太のメンバーに思えたこの相手に、走らせないで楽勝の実質レコード走のアーモンドアイは、思っていたよりも、マイラー化のロードカナロア的気配に傾倒の不安材料も同時に示した。

馬なりで1:30.6なんて、走る能力がそもそもないとできない。

父ロードカナロアは、キャリアの積み重ね方はアーモンドアイより最初緩く、古馬になって、せっせと香港に渡航しては楽勝の連続となった豪傑だが、一生懸命にマイルを走った安田記念は、1:31.5である。

流れももっとタイトだったが、時代の流れも馬場差も最小限で、1秒も違うのだ。

JCを圧倒的スピードで、秋の天皇賞を風のように颯爽と駆け抜けて、両方とも信じられないほどの時計で快勝しているアーモンドアイは、さすがに目一杯に仕上げる道理がない不幸なローテ選択の中で、明らかに、父が最晩年の完成期に示した馬格で他を圧倒したそれを再現しつつある現状、スタートそのものが、ステップ幅がいい意味で小さくなったのだろうか、明らかに改善されている。

クラシックを目指す過程で態と出さなかったというルメール騎手の的確な能力判断などもあっただろうが、総合力がかなり上増しされたデビュー1年3か月後のフォルムとも、もっと言えば、秋の天皇賞のレース直前の体つきとも、もっと変化しているのは間違いないから、そのすると、我々は常に新たなアーモンドアイに出会っていることになる。

そういう馬を作り上げる国枝調教師だとか、ノーザンファームの調教部門のスタッフの手腕は当然素晴らしいとしても、彼らは毎回、変化する名馬の姿に感嘆しているのだろうと推察する。

スタートに不安がなくなって、もうきっとそれは、序盤は全く走らせなかった秋華賞の頃からだろう、有馬記念もそういう普通の能力を習得したからこその敗因なのだ、改めて納得させられた。

凱旋門賞は3歳時には挑む価値はあったが、もうそれはない。

馬場ひと回りなら2400まではこなせるが、宝塚記念の延々スタンド前を走る2200Mは、きっと、コーナーワークで距離ロスを防げる可能性がある有馬記念よりも合わないのではないだろうか。

ダッシュ力は時として、ディープインパクトも罠にはまってしまったように、必然性が出た瞬間に、毒にもなる場合がある。

万能のトリプルティアラ・アーモンドアイとは、もうお別れなのかもしれない。

どういう道を進むべきか。

楽勝だから安田記念もありだが、ドバイに行って走っていたとして、今年も使っていたかどうかは不明。

東京で日本のグラスホースのGⅠレコードを更新する秋シーズンが見えている中、どちらに絞るか、どちらとも出るのか、やはり香港に行くのか…。

もう1年弱しか走らないだろうアーモンドアイに、再現性を期待しないならば、香港狙いもありだろう。

スタートの不安も事実上消えた。

記録更新なれば、香港へ行く。

故障しそうなほどは、最近全力では走っていない彼女ならば、忘れ物を拾いに行く道が、一番合っているのではないだろうか。

残念ながら、日本のマイルに適鞍は少ないから、この方法で仕方ない。