2022年安田記念の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

安田記念の予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第72回 農林水産省賞典 安田記念(G1)
グレード重賞(G1)
日程2022年6月5日(日)
発走時間15時40分
開催場所東京競馬場
距離芝1,600m
コース左回り
賞金1億8,000万円
レコードタイム1:30.9

2022年安田記念予想 - 予想オッズ/出馬表(馬柱)/出馬予定馬の馬体/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

安田記念2022の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11カフェファラオ福永 祐一 牡558.027.510美浦・南W・良(助手)
5F 66.2-51.4-36.8-11.2(馬なり)
美浦・坂路・良(助手)
800m 54.7-39.7-25.7-12.5(馬なり)
12ヴァンドギャルド岩田 望来牡658.086.314栗東・坂路・良(岩田望)
800m 54.7-39.2-24.9-12.1(末強め)
栗東・CW・良(岩田望)
5F 68.8-52.2-36.4-11.2(馬なり)
23ロータスランドM.デムーロ牝556.0 32.811栗東・CW・良(デムーロ)
6F 84.0-68.2-52.6-36.9-11.2(末強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.6-39.5-25.6-12.4(馬なり)
24ダノンザキッド川田 将雅牡458.014.37栗東・坂路・良(助手)
800m 50.8-36.6-23.7-11.9(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.0-39.0-24.9-12.2(馬なり)
35ホウオウアマゾン坂井 瑠星 牡458.086.815栗東・CW・良(坂井瑠)
7F 96.6-66.5-52.3-37.2-11.5(一杯)
栗東・CW・良(坂井瑠)
7F 96.5-65.9-51.8-37.5-12.0(一杯)
36カラテ菅原 明良牡658.069.313栗東・坂路・良(助手)
800m 53.2-38.4-25.0-12.5(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.0-38.6-25.3-12.7(馬なり)
47ファインルージュ武 豊牝456.08.94-美浦・南W・良(助手)
5F 68.4-53.3-38.7-11.6(馬なり)
48イルーシヴパンサー田辺 裕信牡458.04.22美浦・南W・良(田辺)
6F 80.4-64.9-50.4-36.1-11.3(直強め)
美浦・南W・良(調教師)
6F 81.5-65.1-50.5-36.9-11.4(直強め)
59シュネルマイスターC.ルメール牡458.02.91美浦・南W・良(ルメール)
6F 84.8-67.8-52.3-37.8-11.5(馬なり)
美浦・南W・良(嶋田)
6F 83.2-66.9-50.8-36.9-11.3(馬なり)
510エアロロノア幸 英明牡558.0221.918栗東・坂路・良(助手)
800m 51.3-37.8-24.5-12.1(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 51.4-37.6-24.5-12.2(末強め)
611カテドラル戸崎 圭太牡658.0191.317栗東・坂路・良(助手)
800m 54.3-38.9-24.1-11.9(強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.5-37.9-24.1-12.1(馬なり)
612ダイアトニック岩田 康誠牡758.0156.516栗東・坂路・良(斎藤)
800m 51.0-36.9-23.6-11.8(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.6-39.7-25.6-12.6(馬なり)
713ソングライン池添 謙一牝456.06.23美浦・南W・稍重(津村)
5F 68.1-52.2-37.6-11.1(馬なり)
美浦・南W・良(池添)
6F 83.5-66.9-52.3-37.7-11.5(馬なり)
714ソウルラッシュ浜中 俊牝458.012.56栗東・CW・良(浜中)
6F 81.6-65.7-51.8-36.4-11.0(稍一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.4-38.6-24.9-12.2(馬なり)
715セリフォス藤岡 佑介牡354.011.35栗東・CW・良(藤岡佑)
6F 79.5-64.8-50.8-36.6-11.4(馬なり)
栗東・CW・良(藤岡佑)
4F 51.7-36.2-11.1(馬なり)
816レシステンシア横山 武史牝556.019.59栗東・坂路・重(助手)
800m 56.0-40.5-26.4-12.9(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 51.3-37.0-24.2-11.9(馬なり)
817サリオスD.レーン牡558.014.68美浦・南W・良(レーン)
5F 70.1-53.6-38.0-11.6(馬なり)
美浦・南W・良(レーン)
5F 70.4-54.5-39.7-12.6(馬なり)
818ナランフレグ丸田 恭介牡658.048.812美浦・南W・良(丸田)
5F 68.1-52.5-37.6-11.0(G前仕掛け)
美浦・南W・良(丸田)
6F 84.0-67.5-52.3-37.5-11.5(馬なり)
人気1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1番人気4回3回3回10回20%35%50%
2番人気3回2回1回14回15%25%30%
3番人気2回4回2回12回10%30%40%
4番人気2回1回2回15回10%15%25%
5番人気0回3回3回14回0%15%30%
6~9番人気9回3回4回64回11.3%15%20%
10番人気以下0回4回5回151回0%2.5%5.6%
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬1回3回0回16回5%20%20%
先行馬5回4回4回54回7.5%13.4%19.4%
差し馬11回6回10回134回6.8%10.6%16.8%
追い込み馬3回7回6回76回3.3%10.9%17.4%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠1回3回3回30回2.7%10.8%18.9%
2枠4回2回3回28回10.8%16.2%24.3%
3枠3回2回1回33回7.7%12.8%15.4%
4枠1回2回3回33回2.6%7.7%15.4%
5枠4回2回0回34回10%15%15%
6枠0回3回3回34回0%7.5%15%
7枠5回2回2回44回9.4%13.2%17%
8枠2回4回5回44回3.6%10.9%20%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト67回40回46回277回15.6%24.9%35.6%
ロードカナロア20回23回19回151回9.4%20.2%29.1%
ハーツクライ18回18回25回112回10.4%20.8%35.3%
キングカメハメハ17回16回14回86回12.8%24.8%35.3%
ルーラーシップ17回14回11回107回11.4%20.8%28.2%
ダイワメジャー13回9回7回116回9%15.2%20%
エピファネイア11回7回8回63回12.4%20.2%29.2%
ディープブリランテ8回9回7回92回6.9%14.7%20.7%
ハービンジャー8回5回6回76回8.4%13.7%20%
スクリーンヒーロー 7回12回12回79回6.4%17.3%28.2%

2022年安田記念予想 - 過去10年のデータ傾向

イレギュラーなローテの馬がよく勝っているレースだからこそ、近走G1組の中から最善のレースをピックアップしてみると…

2013年のロードカナロア、2020年のグランアレグリアらが、高松宮記念組の勝ち馬。

傑出したマイル以下における歴史的名馬という評価に対し、皆異存はないはず。

ただし、前々走はいずれも阪神1400であり、これがまた中途半端な条件なのだが、そこを力で制しているというのがポイント。

短距離型であることは確かなレシステンシアは、いくらか渋とさが備わってきた5歳G1馬であるから、好走確率は意外にも高いし、そのキーとなる1400重賞を2戦とも快勝しているのは推挙すべき場面での補強材料くらいになる。

4歳馬がモーリスという前2者と同等レベルの偉大なる名馬になって、これも特別だとしてしまうとあとは基本的には揮わず、モズアスコットやインディチャンプなど、やや危険な何かを秘めたワンダーボーイならば、ギリギリ何かを引き出される環境にあったとて、エース級の騎手が前走のパターンと何か変えられるということもない限り、G1好走馬ばかりが集まる一戦のこと、古馬が有利である。

若い方がいいこともなく、クラシックからの再成長に成功の5歳馬などが狙い目。

そうなってくると、ドバイであるとか高松宮記念を使ってきた5歳馬は最有力。

後述のヴィクトリアマイル組が、来ている割には、十分に好走したと言えない負け方をしているので、狙いが絞られるのであろう。

前年出走の上位人気馬、シュネルマイスター、サリオスなどは着順に関係なく、以後もそれなりにG1で走っているから、条件ベストとしたとき、人気面で買い方を考えればいいとなるが、その辺りはインパクトの差もあり、評価の差は歴然。

58の経験か古馬G1連対実績かとなれば、意外と互角に評価できるはずだが、ピントのずれた近走選択でよくわからない部分は修正したい。

そこに5歳以上か否かのフィルターが機能してくる、という話なのである。

ヴィクトリアマイル組は、ちょい負け組の逆襲に限る

勝っている馬が不発。

ウオッカは同一ローテでの連覇も、4歳時はヴィクトリアマイル負け、5歳時は強烈な雨馬場ダービーの影響で馬場質に異常な変化があり、時計が掛かりすぎていた。

今年はウオッカ的な狙いをすべきということでは、それは当然、ヴィクトリアマイル好走の若い馬になるわけだが、完敗というのも大事。

前に行って負けたレシステンシアの方が、いくらか可能性がありそうだが、出走してきそうな掲示板内の面々は、抜けて強いというソダシ的な雰囲気まではないから、血統的には父母父ストームキャットにパワーを補強したボストンハーバーを持つファインルージュとレシステンシアのどちらを上位に取るかとなって、G1の経験数とローテの関係で、様々相殺。

中3週以内での好走実績が短距離にもあるレシステンシアと、同期同士の争いでわずかに経験の差が出るのかどうか。

ソダシがいないだけに、薄めに引っ掛けることは可能だから、オッズのことも気にならない舞台設定ながら、3着臭い馬の狙い方にもなっていそうで、アエロリットのような迫力を備えた馬はとなった時に、やはり、レシステンシアの短距離実績をいくらか重く受け止めておきたいとなった。

3歳馬は来ないのではなく、トライアル終了時点でクラシック路線から離脱していることが重要

シュネルマイスターだけしか記録上、G1馬として3歳の好走馬になったことはないのだが、消極的というよりは、意外な伏兵扱いだったタイトルホルダーに適性の差を見せつけられたことが、NHKマイルC→安田記念のタイトなローテ選択の第一要因であり、やれることは全て尽くした感じ。

それも、片方は勝っている。

NHKマイルCの勝ち馬は、何頭も3歳時に参戦しているし、連対した例も2011年にリアルインパクトの勝利で、ほぼ出揃った印象。

牝馬には桜花賞があるから、このローテはほぼあり得ない。

獲りに行くべきはNHKマイルCであり、皐月賞を経た牡馬がNHKマイルCを好走後、再び安田記念という考えを持っている調教師そのものがいない。

メイショウボーラーが2004年にトライアルから皐月賞とマイルCまで連続好走後に挑んできたが、厳しい雨馬場で、マイルも芝では少し長く、見せ場なく敗れた。

だから、NHKマイルCに出られず、やむに已まれぬ事情で登場のスピードワールド<1997年3着、3歳馬が出走可能になって2年目>が、外国産馬の隆盛期に力を示してから、昨年久々に登場の本格派外国産馬のシュネルマイスターらに共通する、特殊な才能の持ち主であるということが重要。

リアルインパクトと同じく、朝日杯の2着馬であるセリフォスの消耗は最小限であり、その点では、スピードワールドのような性質の持ち主ではあるが、シュネルマイスターは昨年よりは多少はスケールアップしている。

いきなり挑むには、その他大勢の方も厄介であるから、やはり、戦いに挑めるかどうかレベルで判断したい。

力は足りるし、ダイワメジャー産駒は叩いてからの方がずっといいわけだが、如何せん、この中に入るとかなり地味。

お父さんは3度目の安田記念挑戦で戴冠である。

出てきたら、完走したことをまず褒めてあげるべきであろう。

鬼のように来ないマイラーズC勝ち馬をどう扱うべきか

1994年にノースフライトが連勝の勢いそのままに優勝し、秋もチャンピオンを防衛で花道を飾った。

3歳馬も出られず、また5月の開催というのは、もう若いファンの知る世界ではない。

オークスの前にこのレースを行っていたことを知っているというだけで、結構なベテランである。

無論、途中で東京競馬場は大改造され、ダービー最終便であるプリンシパルSが2200Mが取れなくなったことで、2000Mになった。

どうでもいいか。

前記、3歳馬であるリアルインパクトの劇的混戦断の一撃が、戸崎騎手を男にし、キンシャサノキセキを管理する・その時点ではしていた堀調教師の名が世に知れわたり、また高く評価されることになったのが約10年前。

安田記念の変更要件や周囲の条件も少しずつ様変わりするところで、このマイラーズCも阪神開催から京都開催へと変更されるというようなこともあった。

開催時期もノースフライトの時代は皐月賞や桜花賞のトライアルと同時期だったが、今はオークストライアルの裏で行われる。

少し前までは皐月賞前日であり、震災の年は、中山が開催不能であったから、日曜メインにそのマイラーズCが設定された。

話は長くなったが、そんな四半世紀から30年もの期間がありながら、ずっとG2であるマイラーズCから、連勝で安田記念を制した馬はながいこと登場していない。

負けてから勝った馬は、直行が2019年のインディチャンプ、炎の連闘で一つ挟んだモズアスコットがあとはいるくらいで、五万と存在する安田記念敗戦馬の多くは、意外とこの主要路線に数えられるマイラーズC組が占めている。

単純計算で16頭立てなら、4頭はこの組。

ノースフライト快勝後、京王杯スプリングC組はどれだけ軽視されようとも、近10年だけでも同じ2頭おり、連勝馬は当然少ないが、その前は3年に一度ペースで勝ち馬を送り込んでいたから、比較もできない。

ダービー卿チャレンジT組もモーリスやロゴタイプがいる。

同列になっただけいいが、前走負けた方がいいという変わった性格の大マイルG1・安田記念は、1600での消耗を嫌う。

ヴィクトリアマイル好走馬が多く敗れ、NHKマイルC組の消耗も長く唱えられてきた走りすぎ現象で、凡戦ではだめで、ほどほど好走のG1好走馬だけがチャンスありの傾向。

いずれも余力がなければ、勝負にならないということでは、年明けから4戦目くらいの馬もざらであるマイラーズC組だから、少なくとも前哨戦で全力投球ではまずい。

休養明けから連戦連勝のダノンプレミアムが、ロジクライの謎斜行に沈み、前走で沈ませたはずのインディチャンプの逆襲にアーモンドアイさえ突っ伏したことで、全てがわかる。

稍重で時計平凡の今年は、ソウルラッシュもホウオウアマゾンもややまだ格下の印象で、東京マイルの実績もないに等しい。

キャリアではホウオウアマゾンの方が有利に思うが、思ったより頑張るというだけで、まだまだ実力不足なのは明らかだ。

今年も苦しいだろう。

展開や馬場が向けば、ソウルラッシュの着はあると考えるが、G1馬を一気に負かすイメージまでは湧いてこない。

2022年安田記念予想 - 出走予定馬の血統/成績/タイム

もう一度ダミアン・レーンと共に…、という再生物語は、安田記念の歴史に意外にもフィットする成功例になっている。

  • サリオスの血統

サンデー系×ノーザンダンサー系の配合で、最後に安田記念を制したのは昨年のディープインパクト×ストームキャットの伏兵・ダノンキングリーであるが、その前も同じ配合のサトノアラジンが2017年、同じく5歳以降に勝っているという共通項がある。

サンデーサイレンス系はなかなか勝てないレースとされてきたが、旧コース<直線500Mでの開催は2002年春まで>ではジェニュインの2着が最高だったものが、2003年にアグネスデジタルが勝った改修後最初の開催では、2着に後の高松宮記念優勝馬となるアドマイヤマックスが早速突っ込んできている。

翌年もサンデー系のツルマルボーイが、安藤勝己元騎手にすれば、ダービー制覇のおまけにお祝いがてらの優勝。

これが重馬場に近い雨降り競馬であったから、実に印象深い。

アドマイヤマックスと同じ昔風に言うと「サンデー×ノーザン<テースト>」のダイワメジャーがこれも6歳で優勝。

ディープインパクト初年度産駒で3歳時に勝ったという、リアルインパクトの極めて稀な好走例は、昨年のシュネルマイスター激走の隠れた伏線となったが、血統はまるで違うし、サンデー系だからという理由で来た、極めて古典のサンデー直仔に対する例外的位置づけを復活させたような屁理屈でいうならば、他のG1では来ない系統が大威張りする安田記念など短距離G1に対抗する異例の好走要因を持つのがサンデー系であると言いたいのだ。

かつては、様々な条件でサンデーサイレンス産駒であるから仕方がない…、という強引な突破方法がデータ解釈上存在していたのだが、あれから20年ほどが経過し、今何が起きているかと言えば、サドラーズウェルズ直系<ロゴタイプ、モズアスコットなど>が母父パワー型の短距離型サンデー系と一緒に来る<グランアレグリアやインディチャンプ>のが安田記念なのだから、サンデー系はスピード不足というより、ストームキャットのようなパワー全開の血を受けて、本領発揮となるわけだ。

生まれた時から大きかったわけではないだろうが、競走年齢に達してからは常に500㎏台中盤のデカい野郎であったサリオスには、筋繊維の太さと欧州系特有の緩い体<シュネルマイスターと同族のドイツ牝系・日本で活躍する欧州調教馬は中型ばかり>の影響で、ハーツクライ産駒らしからぬ先行力が若いころからあったが、気性がおとなしかったので、同齢同士のクラシックでは12Fも相応の内容でこなして見せた。

最初から無理がある使い方をせず、付き合い方を考えて狙いを絞ってきた陣営からすると、早い段階で賞金を加算<2歳G1勝ち>に成功の優位性で、ハーツクライというかその母父トニービンが持つ後躯の頼りなさを気にしないローテが可能になった。

高松宮記念で渋馬場も、短距離にも対応限界があるとなった今、サドラーズウェルズ系が平気で走る安田記念で、もっと前からノーザンダンサー系エースにニジンスキー系・ロミタスが母父、欧州系の両輪を成すダンチヒ直系・デインヒルの産駒が母母父のサリオスは、そもそもが走れる条件が限られていた。

前年大いに自信を失った安田記念を経て、一年後に変身のダノンキングリーはまさにその実例。

4歳で勝つと5歳に苦しむ近年の例からも、重厚すぎる大型馬のわかりやすい形を地で行くサリオスに、意外な敗戦は近走ほど無意味な減点材料に過ぎないのかもしれない。

5歳以上で前走から連勝の馬は不良馬場のジャスタウェイだけであり、これもハーツクライの仔。

例外を最も作るのがハーツクライなのか…、という見立てもあっていい。

  • 【1・2・1・0】… サリオスとレーンのコンビ

堀厩舎には、同じ5歳馬に今回再び芝に転じてきたカフェファラオがいるのだが、この馬もまた、二度目以降の騎手との相性が悪い。

サリオスはレーン、石橋脩、ムーア、ルメールの順で計4勝しているが、カフェファラオがそうであるように、乗り替わりの初戦が買い目。

しかし、レーン騎手は香港マイルでも乗っている。

だから、この唯一連外しの一戦に、クラシック二冠戦いずれも2着の記録と同等レベルの好相性ぶりが伝わってくる。

ルメール騎手がしばらく続けて乗っていたことで2勝を挙げているカフェファラオより、もっと繊細であるサリオスの内面は、意外なほど、実はゴーイングマイウェイで無頼漢的な危険な何かを秘めているではないか。

大人しい優等生。

しかし、デビュー3連勝で2歳王者になったような馬である。

並外れた競走能力を支える勝負勘に関し、思われているよりずっと聡い一面があるようにも思えてくる。

俺のモノは誰にも渡さないが、誰かがそのタイトルに最もふさわしいのであれば、自分は悪目立ちするような振る舞いは一切するつもりはない。

勝手な解釈ではあるは、サリオスは賢い、は正しい見立てであるはず。

正攻法の皐月賞も差して好走のダービーも、フロックであるはずもなく、またそれ以降のG1での戦いにも相手に不足はなかったことが最大の敗因。

そこがポイントだったのか。

独走というか、彼風に解釈するところの「相応しい勝ち馬」が自分しかいなかった3歳の毎日王冠以降、

【0・0・1・5】

ただし、終わるも何もわずかに6戦なのだから、いかにもスター、それこそアーモンドアイのような余裕ローテの連続ながら、その消耗の少なさで、中5週以内の連戦などほとんど経験していなかった彼が、久々の連戦であった香港で、レーン騎手が乗ると素直に言うことを聞いていた。

中間、デムーロ、松山両騎手とも戦ったのだが、動かすということに自信のあるタイプは合わないのかもしれない。

世界のムーアでは勝ったことがあるが、ちょうど自信をつけてレースを運べるようになった3戦目。

無傷である時、不安の3戦目ではなく、無敵の好走機と直結する面はある。

現阪神開催の朝日杯になってから、昨年のドウデュースまで3戦不敗の王者は3頭も出ている。

いずれもが弥生賞か皐月賞の連対馬になった。

早熟性は大いに、ハーツクライ産駒に足らない要素であるから種牡馬になった後の特性として評価されるが、今のままではサリオスは単なるビッグボーイ。

熊だか水牛だかなど、無茶苦茶な言われようで垢抜けなかった新馬戦は、ダービー翌週のそう、安田記念の週のレースだった。

その日、アーモンドアイの連勝が止まったわけだが、また一年後の安田記念で勝ったグランアレグリアは、サリオスの前年に安田記念当日の東京で圧勝した牝馬。

そんなグランアレグリアは、昨年はサリオスと共に散った。

同じ大阪杯組であり、前々走も同じマイルチャンピオンシップ。

自分が勝ち馬に相応しくないことは承知していたのかもしれないが、レーン騎手と共に香港で復活の足掛かりを示した、そこそこ渋とかった香港マイルの競馬は、松山騎手ではうまくいかなかったが、2歳時は出来ていた先手必勝の手。

ゆっくり出して勝たせることに成功の新馬戦を経て、そこから上げていくことも、下げる競馬もしながら、昨年のこのレースで松山騎手と不完全燃焼に終わったものも含め、レーン騎手が乗る時には、最近妙にコントレイル的な内枠引き当てのくじ運を全く活かせないサリオスが、不遇の中で最内枠発走でも、直線に入ってもまだ勝負圏内だった唯一のレースとしたことでも、明らかにレーン騎手でないといけない面がある。

2022年安田記念予想 - レース展開と最終予想

なんだか強そうに見えるサリオスは、これまで一度も5番人気以下に落ちたことがないが、今回はレーン騎手がダービーでも勝たない限り<青葉賞2着のロードレゼルなので、それはさすがに難しい>、大丈夫であろう、というのはおかしな表現でも、10倍前後の支持のはず。

前走の高松宮記念が唯一の単勝10倍超えでの出走であり、負けても1番人気というブエナビスタやトウカイテイオー、グランアレグリアなどの逆襲を思い起こす何かがある。

ジャパンCで連続出走1番人気記録が共に途絶えた時、またアーモンドアイに安田伊左衛門の格を知らしめる使者になったグランアレグリアなどは、いずれもあまりテン乗りや初挑戦がフィットしない性質が当てはまったが、同時に、手が合う第二の騎手という存在もまたいた。

サリオスは一番手が合うレーン騎手を得たが、その他二番手に入る石橋、ムーア、ルメールらは、三冠馬に対し差し向けられた刺客の立場で大いに働いたキャリアを持ち、ライアン・ムーアに至っては、コントレイルに縁あって騎乗した福永騎手以外の唯一の存在となった。

サリオスに東京のマイルは合うが、もう条件が整わないと、誰が何を施そうとも笑顔を振りまくことはない。

ロゴタイプなどは、皐月賞を勝ってから3年後のこのレースで復活しているから、連敗など気にならない。

連勝の馬より、高く分厚い壁を常に乗り越えることができなかった馬たちに、このレースは時に、勝利をプレゼントしてきた。

突然何かの拍子に…。

今年のそれは、シュネルマイスター有利の評価を覆す、昨年はシュネルマイスターよりわずかに単勝支持が上だったサリオスが、きっと甦る。

そんな気がするのは、飛ぶ鳥を落とす勢いだったダミアン・レーンがやけにおとなしいからに他ならない。

もっと勝ちたい。そう思ったときにぶち当たった、無敗の三冠なるレアケースの被害者になった同士の絆は、思われているより深いところで強く繋がっている、はずである。