予想会社の社員になるまで(4)

果てしない出目研究のはじまり(その1)

その予想屋から買った本の裏表紙にはサインペンで名前が書いてありました。たぶん販売していた予想屋の名前のようでしたが、まさか本名が書いてあるとは思いませんでした。胡散臭いと知っていて、なぜそのような薄っぺらな冊子に、私は2万円もの大金を払ってしまったのでしょう。

私は中学生のころ露店商からガマの油を買って、親にさんざん叱られた記憶がありますが、そのようなものによく騙される性格みたいです。

私は早速、その本に印刷してあるままに1レース1点ずつ後半のレースを買いました。なぜか信じて期待していた自分を思い出します。

馬券を買った私は、そのまままっすぐ家に帰り、テレビ神奈川の競馬中継で結果を確認しました。なんと買った馬券のうち1レースが当たっていました。1点買いなので、それなりに儲かりました。

やはり馬が走っているのではない、数字が走っているのだ。

当時、私は競馬報知という週刊誌を毎週買って読んでいましたが、そのなかには競馬予想会社の広告がたくさん載っていて、いわゆる電話して予想を聞く予想会社とは別に、私が渋谷の場外近くで買った小冊子と同じような本を通信販売している予想会社がありました。

そしてそのような小冊子のことを「出目本」と呼び、「出目」とは連勝買目(当時は枠連のみ)の出方、傾向を分析してその偏りを生かして馬券的中に結びつける予想法であることを知りました。

会社の部長が自慢していた「あんちょこ」が実際にどのようなものだったのかは見せてもらえなかったので定かではありませんが、たぶん出目本の一種だったのだろうと気づいたのもそのころだったと思います。

実力通りに人気馬が必ず勝つわけでない、神秘性がある競馬というものに、科学的な理屈だけで立ち向かっていくべきではないと考え始めていました。そして数字だけで解決できる単純さがなんとも私にぴったりだったようです。

すっかり出目に魅了されてしまった私は、この出目さえ極めることができれば、馬券で大金を稼ぐことができる…。そんな夢を、抱きはじめていました。

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