予想会社の社員になるまで(26)

社長の馬券を買いに行かされる(後楽園編2)

■コーチ屋に声をかけられる

競馬の仕事をしているというと、馬主、調教師、騎手、厩務員など、実際にレースや育成に携わっている方々のことが思い浮かびますが、その他に競馬でメシを食っている面々というと、トレセンで取材したり編集したりしている競馬マスコミや競馬予想会社など「予想」に携わる方々が思い浮かびます。

しかし私が度々接し、最も親しみを感じたのは、ウインズ(場外馬券売り場)や競馬場の近くで仕事をしている予想屋、両替屋、そしてコーチ屋の方々でした。

ネットが普及する一昔前、馬券の約7割がウインズで売れていた当時でさえ、コーチ屋に遭遇したという方は少ないと思いますし、若い方はコーチ屋の存在自体知らないのではないでしょうか。コーチ屋とは良く言えば個人的に馬券の指南をしてくれる方のことですが、教えてくれた内容の通り的中したら大変、「儲かった!」と喜んでいるところに高額のコーチ料を請求されます。

■「おー、ワタナベ!!」と呼ばれたら要注意

私は当時通っていたウインズ後楽園で、コーチ屋に遭遇したことがあります。そのコーチ屋は「おー、ワタナベ!!久しぶり」と声をかけてきました。話のきっかけになれば相手がワタナベかどうかはどうでもいいのです。

しかしいかにも怪しい感じのヤツだったので「いえ、違います」といいその場を立ち去ろうと思いましたが、いろいろと強引に話しかけてきて、特別な情報を入手して大儲けしたというような話に展開、上着の内ポケットから札束を取り出して私に見せました。

その時点で、おっと、こいつはやっぱコーチ屋か!と確信したので、「いや、けっこうです」と強引に逃げ出しました。

その後も週末となれば、同じ後楽園ウインズで同じように馬券を買いに行っていたのですが、そのコーチ屋に出会うこともなく、すっかり警戒を緩めたころ、また声をかけられたのです。それは大口窓口で払い戻しを受けた後の最悪のタイミングででした。

「おー、兄さん、いつもスゴイね〜」

今度はワタナベではありませんでした。私がときどき大口窓口で大金を払い戻しているのを、遠くから見ていたのでしょう。

「いや、これはボスの馬券ですよ」

私は一言だけ返して、笑顔で立ち去りました。「こいつ、ヤバイ関係かな?」と勝手に思い込んでくれたのかどうかは分かりませんが、その後コーチ屋から声をかけられることはありませんでした。

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